色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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Part参拾捌 僕と影

 

 葵と遊園地を楽しんだ長い1日が、終わる。茜が作ってくれていた料理を食べて、1人で静かにお風呂に入り、本を読んで眠りにつく。いつもは楽しくテレビを見たり、ゲームをしているんだけど、今日は静かに本を読みたかった。不思議なことに、布団に入ったら眠るのに時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 んぅ… ……… 朝かなぁ? よーっし、起きよ… どこだここ?

 

はぁ… 散歩行くか」

 

 あ、葵だ… ここ、リビングか。でも僕、部屋で寝たし、リビングで寝てるわけないよね? 流石の僕でもわかるよ、夢だよこれ。だっておかしいもん、おかしいよね? でも目が覚めないな、もしや夢の中で好き勝手にしていいってことかな。よし、やる気湧いてきた。いやでも、心湧き上がったら夢から覚めちゃうかもだし、落ち着こ。

 

 というか、動けないんだけど。横を見るのは出来るんだけど、体が金縛りにあってるって言えばいいのか、体を起こそうにも全く動けない。右前にソファーの背もたれが見えるから、寝てるんだと思うんだけど… 縛られてるわけでもない、というか自分の体が見えないんだよね。なんでだろ、そういう夢なのかな。何でもありだもんね、夢だから。

 

散歩行くよ、あかり」

ほいほ〜い、行くよー」

 

 ま、届いてないと思うけど。前に夢見た時、僕死んでたんだよね。多分、今回も僕の声は聞こえないでしょ。夢ってそういうもんなんだと思う、誰にも見られず誰にも聞かれず好きに生きれる、それが夢。現実とは全く違うね、寂しいけど今は嬉しいな。葵と話せちゃうと夢の中だからって色々言っちゃいそうだもん。現実じゃ言えないこととかさ。

 

元気だね、今日は」

そうかなー、そうかも?」

うん、そうだよ」

…え、え?」

どうかした?」

いや、なんでもない…」

 

 届いてるんだけど、バッチリ全部聞かれてるんだけど! 危なっ、色々言う前でさ。夢の中だから何言っても何聞かれてもいいんだけどね、夢の中だからって葵に迷惑はかけたくないしさ。それに、夢の中だと、僕にとって都合の良いことしか言われないでしょ? やだよね、それじゃあ。

 

うおあっ!?」

急に動かしてごめんね?」

いや… あぁ、うん」

 

 葵が近づいてきて、急に僕を持ち上げた。おかしいっていうのはわかった、何がどうおかしいのかはわからないけど。まず、葵の指が僕の頭くらい大きい。それと、片手で軽々と持たれた。僕が小さくなったのかな、部屋と葵のサイズは合ってそうだし。不思議な夢だなぁ…

 

首紐取ってくるね」

くびひも…?」

 

 首紐って、首からかけて何かぶら下げるための紐だよね。ネックレスみたいなやつ、何に使うんだろ? 現実の葵が使ってるのは見たことない、オシャレのイメージもない。わざわざ僕に言うってことは、僕に使うのかな? それも、普段から使ってそうな口ぶりだよね。わかんないもんはわかんないし、任せればいいか。

 

つけるよ、あかり君」

わかった、お願い」 

…つけた、動かすよ」

どこに?」

いつもの位置だよ」

 

 …つけられた感覚がしません。っと、動いてる〜。どこに行くのかな、葵の体に近づいて、頭の前にいる気がする。 …頭の前? 小さくなったにしても、何なんだろうな。こんな場所で、っと。急に落とされた、というかぶらんぶらん揺れてる感じがして不思議な気分。上見たら葵の顔が見えるし、首から吊るされてる? やっぱ変だよ、小さくなったにしても首から吊るすことある? 胸のあたりにいると思うけど、何かに触れてる感覚もないのが不思議なんだよなぁ、後ろも見れないから状況がわかんないし気になる。

 

葵、鏡につれてってもらえない?」

いいよ、行こう」

 

 床から天井までの大きな縦長の鏡があったみたいで、連れてきてもらったんだけれど… 正面に、四角い箱に入った僕がいた。箱というか、スマートフォンにそっくりな長方形の液晶にも見える。薄っぺらいし厚みはない板の中にいる、って感じかな。どういうこと?

 

 冷静になって考えようとしたけど、無理でしょこれ。夢の中とは言え何でもありだな、今回は。あれかな、ゲームとかに出てくる、電子世界でだけ存在できるアシスタント的なキャラクター。首紐は僕の入ってる箱についてるみたいだけど、僕は自分の意志で動けないってことか。あまりにも不便な夢だ…

 

ありがとう」

気にしないで。それじゃあ、散歩行くよ」

うん、行こう」

 

 いまいちこの夢の中の僕がどんな存在なのかわからない。葵の反応的に、ずっと一緒にいるんだろうなって気がするんだけど、僕は初めからこういう存在なのか、元は普通の人だったのか…

 

 それはそれとして、手足の動かし方がわかった。前後に動かそうとするから駄目だったんだ、平面的に動かそうって思うといける。パントマイムをやるようなイメージでさ、上下左右の動きだけをするんだ。まぁ、自分が見れないから上手く動けてるのかわかんないんだけどさ。

 

 それと、ぐわんぐわん揺れてるのに全く酔わない。夢の中だからかな。夢の中の僕は耐性がある、というか慣れてるのかもしれない。純粋に、夢だから酔わないと言われたらそれまでなんだけど、少しでも世界観に入り込みたいし、この世界では僕はこういう暮らしに慣れてるから酔わないって思っておこう。

 

同僚に会いたくないから、裏道を歩こうか」

いいと思う、葵の好きにしていいよ」

うん、そうする。面白い話でもしてよ、暇だからさ」

え〜? ちょっと考えさせて?」

 

 考えすぎて目が覚めたらやだし、適当に話すんだけど… そうだ、今日あった事を話そう。2人で遊園地に行って、色んな乗り物に乗せられて、最後は観覧車。僕と葵をAさんBさんってことにして話しちゃおう。面白いかはわかんないけど。

 

とある街に住んでるとある幼馴染が、遊園地に行った話をしようかな」

何でもいいよ、暇潰しが出来たら」

少女は少年を誘って遊園地に行ったんだけど、入園する時に不思議なことがあったんだ。その遊園地では乗り物の年齢確認を楽にするために、入口でリストバンドを渡されるんだけど、本来とは違う色だった。それを不思議に思いながらも、遊園地のシンボルであるお城に近づいて行ったんだ。しかし、なんとこの日はお城に入れない日だった。落胆する2人のもとにスタッフが駆け寄ってきてこういった。オーナーに、お城に入らせるよう命令を受けています、ってね」

へぇ… どうして?」

 

 食いついてきたね、やっぱり葵は夢の中でも遊園地が好きだったりするのかな。そんなわけないか、ただ単に夢の中だから僕に都合の良いように反応してくれてる、んだと思う。違うかもだけどね、夢の中の人が意思を持って生きてるのかもしれないし。

 

なんと2人の親友が、事前にオーナーに根回しをしていたんだ。リストバンドの色が違ったのは、特別な客だったから。2人はお城で記念撮影をして、その後遊園地を1日楽しんだ。夜になると、少年は乗り物で酔ってきてしまった。けれど、なんとしても観覧車に乗りたかった少年は、少女に手を握ってもらって観覧車に乗り込んだ。さぁ、2人はどうなったと思う?」

わざわざ聞くってことは、ただ観覧車を楽しんだわけじゃないってこと。つまり、恋愛小説のようにてっぺんで告白してキスをしたか、アクションドラマのようにゴンドラの上を走り回ったか。前者かな」

…少年はてっぺんまで行くと、しんみりとした空気で話しだしたんだ。何年経っても、ここに来たい。でも、いつかは離れ離れになって、来れなくなってしまう。そんな切なさに包まれて少年は声を殺して泣き出した。2人は、そのまま観覧車を降りて家に帰った…」

その2人はその後、どうなったの?」

 

 えっ、どうなったんだろう。僕の話だけど、今がその後だからなぁ、何も起こってない。どうしよう、面白いオチをつけないとだよね。えーっと、うーんと…

 

少年は少女のそばを離れたくない、そんな思いに駆られた。翌日、少年は姿を消した。その日から、少女は誰もいない空間に向かって話すようになったとさ…」

質の低いホラーやめてよ、もうちょっといい終わり方あるでしょ」

え、じゃあ… 少年は鳥となり、少女の周りを飛び続けましたとさ、とか?」

同じレベルでしょ、急に鳥になったらわけわかんないよ。少年はどんなふうになりたがってたの? 結末がないなら、考えようよ」

…少年は、ずっと少女の側にいたいんじゃないかな。影みたいに、常に存在していたい。僕なら、そう思う」

そっか、それならそんな結末にしよう。実際に影になったら怖いから、人間のまま、少女のすぐそばでずっといられるようにしよう。そのほうがハッピーエンドだよ」

…だね」

 

 自分から話を振って、変な終わり方にしちゃったな。自分自身の話にするんじゃなかった、結局夢の中の葵に思ってることを全部話しちゃった。目の前、ぶら下がってる葵はあくまで夢の中の存在で現実じゃない。僕にとって都合のいいことしか言わないってわかってたのに、甘えるような形になっちゃったな… 弱いなぁ、僕って。

 

 あぁ、頭が痛い。夢が覚めるのかな、考え込んじゃったし。変に色々考えたせいでこの夢ともお別れかぁ、さみしい。僕も、こんなふうに、離れない存在になれたらなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 大切な、友達だから…

 

 

 

 

 

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