疲れた体、疲れた頭、夜遅くまで止まらぬゲーム。太陽が見えなくなっても、画面だけは光り続ける… そんな状態で眠りについたら、何時に目を覚ますと思いますか? 朝起きて、眠いなと思いながら時計を確認したら、なんと…
長針が12を指していたので少し焦りましたが、長針は分でした。それでは短針はというと、10。つまり今は10時というわけです、はっはっは。はぁ…
寮生活になってから、ちゃんと生活リズムは気をつけてたんですけどね、荒れる時はいつも一瞬です。今日は用事がなくてよかった、土日っていいですよね。実家に行こうかとも思いましたが、別に帰る理由もないので吸血鬼になった気分でやることを考えますか。
…私、寮生活なんですけど生まれ育った街なんですよ、ここ。ですから、もちろん実家はありますし、実家から通うことも出来るんですよね。少しは自立しないとと思って寮生活なのですが。親がいたら多少は生活が整いますし、また生活リズムが崩れそうになったら帰ることも考えますか。
さて、そんなことは置いておいて、今日は何をしましょうか。勉強はしなくていい、ゲームもきりが良いところまで進んだので今日はやりたくないんですよね。実績集めをやり始めたら、次の日の出までかけても終わらないので。
そんな時にどうするのか、この街が生まれ育った街であって良かったです。昔ながらの友人であり、かつて激戦を繰り広げた戦友でもある葵ちゃんの家に行きましょう。激戦というには、一方的だったかもしれませんが。私が下です、年齢以外。
少し肌寒いかもしれませんが、紫のワンピースにパーカーを羽織って行きますか。家に入れば暖かいでしょうし、私よりも薄着の人だっているでしょう。重い扉を開けて、私は寮を出て、琴葉家に向けて歩き始めました。
歩き始めてすぐ、つまり学校の直ぐ側の時なのですが、葵ちゃんによく似た人が校庭に向かって走っているのが見えました。白髪もちらっと見えましたし、もしかしたら葵ちゃん本人と蕾ちゃんかもしれません。何をしてるのか分かりませんが、琴葉家に行っても茜さんしかいないかもしれませんね。
琴葉家に着いたのは10時半、朝ご飯を食べずに来たのは失敗だったかもしれません。歩いて疲れた足に、お腹のすいた苦しさが重なります。茜ちゃんに急いで作ってもらいますかね、エビフライでも何でも良いです。ピンポンは、押さないでいいか。本当にお腹がすいてて、余計なことはしたくないんです。昨日の夜食に食べたカップ麺が最後ですからね、お腹がすっからかんですよ。
「おじゃましまーす」
「邪魔するんなら帰ってやー」
「ほな帰る… じゃないんですよ、何か食べ物もらえませんか?」
「ええところに来たなぁ、今ヒメさんがお昼作ってくれとるところやで」
「お邪魔してまーす」
「珍しいですね、ヒメさんと茜さんが2人って。ご飯を貰えるなら何でも良いですが」
「そんなに飢えとるん?」
「寝起きで来たので、何も食べてなくてですね… あ、ここ座りますね」
「好きに座ってなー」
リビングにあるソファーに座らせてもらって、背もたれを使って休んでましょうか。この体勢でご飯が運ばれてくるのを待っていると、ドラマに出てくる嫌な金持ちの貴族になったみたいでいやですね。悪い気分ではないんですけど、2人からどう思われてるか不安になります。
「ほい、ガーリックシュリンプとポモドーロパスタ」
「…なんですか? それ」
「ガーリックのシュリンプとポモドーロのパスタやんな?」
「絶対わかってませんよね、茜さん」
「こほん、にんにくとエビを使ったシンプルな料理がガーリックシュリンプ。今回はバナメイエビを使ってるよ。ポモドーロはトマトソースのことで、シンプルなパスタ料理だよ。つまり、シンプルな料理2つってこと。アーユーオーケー?」
「お、オーケーです」
あんまりわかってませんけど、エビとパスタってことは見てわかりました。美味しかったらなんでもいいんですよ、料理の名前とか歴史とか分からなくたって。私は料理の専門家じゃありませんし、興味があるわけでもないですから。それに今は、何でも良いから食べたいんです。
…美味しかったです。本当に美味しかったです、なんと表現したら良いのかわかりませんが。上手く表せる言葉が浮かばなくて、深みがあるって言えば良いんですかね? いや、なんか違う気がします。よくわからないけど美味しい、ってことで。
食べ終わって、3人で少しの間ゲームをしていたら正午になりました。葵ちゃんとも、蕾ちゃんとも遊びたいのですが外出していてまだまだ帰ってこないようです。12時半頃に、ヒメさんは帰っていきました。ケーキを買いに行くそうです。
…ケーキ、食べたいな。特に祝うような出来事もなければ、頑張ったこともありませんが、ケーキって食べたくなるんですよね。1人で寮生活をしてると、食べる機会なんて自分から買わない限りありませんし、折角ですから
そして買ってきたものがこちら、チョコレートケーキになります。帰ってきたのが13時ですので、思ったよりも早く買ってこれました。すぐ近くのコンビニで売ってるケーキですけどね、専門店の高いケーキを買うお金もなければ、歩く気力もないです。
冷蔵庫にしまわせてもらいまして、茜さんと2人でゲームを再開です。ボールとか本より、手に馴染むんですよね、この黒いコントローラーが。運動も読書も学校でやればいいんですよ、休みの日はゲームに限ります。
勝って負けて、負けてまた負けてそして負けて、いい勝負を繰り広げていたら葵ちゃん達が帰ってきました。どこに行っていたのか聞いてみたところ、学校にいたらしいです。やっぱり私が朝に見たのは本人だったみたいですね。葵ちゃんが部屋に荷物を置いて帰ってきた時、思い出したように聞いてきました。
「そう言えば、ヒメさんって会った? ミコトさんが探してるみたいなんだけど」
「お昼までいましたよ、ケーキを買いに行っちゃいましたけど」
「…あ! 忘れとった! うちもミコトさんに頼まれたんやった、ヒメさんに会ったら教えてって。やばい、ゲームがいいところやったからミコトさんの話を適当に聞いとった… そういえば言っとった、そんなこと。完全に忘れてもうたな…」
「今から伝えたら?」
「おう、電話かけてくる!」
「ゲームに夢中になって人の話を聞かない、流石は茜さんですね… 気持ちはよく分かりますけど」
「わからないでほしいな」
茜さんは部屋に電話しに行き、入れ替わりで蕾ちゃんが足早に駆け下りてきました。いつも楽しそうですが、前に見た時よりも元気に見えます。いいことでもあったんですかね。私と会って嬉しい、なら最高ですけど。
「何しますか? 今日はとても良い天気ですし、運動でもしますか?」
「遠慮します、私は風の子じゃないので…」
「同じく、足が取れちゃうよ」
「痛めてるんですか?」
「ゆかりちゃんの逆だよ、動かしすぎ」
「私はまだ行けますけど、やめときますか」
「重くないのかね、体」
「髪って思ってるよりも軽いんですよ? こんなにあっても、ペットボトルを掲げて歩くよりは楽です」
「…ですね」
髪の重さはわかってますよ、私だって生えてますから。