色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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ミコトside10 アストロバイオロジー-PM3

 

 あかり君と話した後、すぐに琴葉家で茜と話した。その後はヒメがいるかも知れない場所を巡った。ケーキ屋の前を通りながら中を見ても姿なし、公園にいるのは元気な子供だけ。電車に乗って遠くに行っている、なんてことはないと思う。だから歩いて探しているのだけれど、家出だとしたらもう手に負えないほど遠くにいるのかもしれない。コンビニで買ったおにぎりを手に、公園のベンチに座ってそんな事を考える。すると、私のポケットに入れていた電話が鳴り出した。表示された名前は、紲星あかり。

 

もしもし、あかり君、何かあったのかい?」

ヒメさんが学校に来てたらしいです。料理部の入部届を出しに来たって、顧問の先生が言ってました』

わかった、今は居ないんだね?」

はい、もう学校を出たみたいです』

ありがとう、家出じゃないことがわかっただけでも嬉しいよ。助かった、見つけたら電話を返すよ」

いい報せを楽しみにしてますね』

あぁ、楽しみに待っていてくれ」

 

 楽しみにしてくれ、とは言ったがヒメの場所に心当たりはない。けれど、少し前まで学校にいたんだろう? それなら私は家にいると予想する、闇雲に歩き回るよりは考えを持って歩いたほうが精神的にもいいからね。家に帰ろう。

 

 

 そうして家に帰ってきたのは13時頃、家の鍵は閉まっていた。中に入っても照明は消えていて、ヒメが帰ってきていないことはわかった。もしかしたら隠れているかもしれない、なんて思って部屋を見に行ったがもちろんいない。しっかりと水分補給をして、干しておいた梅を食べて、私は再び家を出る。家出ではないとわかっても、探し続けるさ。電話もかけてみたが繋がらないんだ、嫌われてしまった可能性は大いにある。謝るためにも探さないとね。

 

 家を出て少し経った頃、茜からも電話がかかってきた。少し前まで、琴葉家にヒメが来ていたらしい。楽しくゲームをしていたから特に心配するようなことはないと言われたが、私は探す。ケーキを買いに行ったとも言っていたから、ケーキ屋を巡ろう。

 

 

 家の近くのケーキ屋を巡り終わったのは15時。おやつ時ということで、ショートケーキを5切れ買った。色んなお店のケーキを食べ比べてみようと思ってね、梅を乗せても映えるショートケーキにしたんだ。色味が合う、イチゴと同じ色だからね。手からぶら下げたビニール袋に5つの店のカラフルな箱が入っている状態は、傍から見たら変人だな。知り合いに会わないことを祈りながら歩こう。

 

 ケーキをしまう為に1度家に帰ってくると、ヒメが帰ってきた痕跡があった。鍵は閉まったまま、靴もないため今は家にいないようなんだけれどね。ゴミ箱の一番上に、気になる紙が乗っていたんだ。私がケーキを買った時にももらった、ケーキ屋のクーポン。確かこれは喫茶マキに近いお店だったかな…? 何か買ったんだろうか。

 

 クーポンのことは頭の片隅にしまって、私は買ってきたケーキを冷蔵庫に並べる。箱のままだとかさばるから出して並べてしまうけれど、ヒメが買ってきたであろうケーキは見つからない。もう食べたのかもしれないな。箱は机の上に置いておこう、次にヒメが帰ってきた時に笑ってくれるだろうし、笑い話にもなる。それにしても、2人して同じ日に同じ店にケーキを買いに行くなんて、凄い偶然… ではないか、私はヒメがケーキ屋に行ったことを聞いてから買いに行ったわけだから。

 

 待っていれば(じき)に帰ってくるだろうが、それは探さない理由にはならない。ヒメを見つけられる確率が、天文学的確率なら私だって探さないさ。けれど、この街のどこかで遊んでいるとしたら、見つけられる可能性は大いにある。ヒメから私にメールはまだ返ってきていないのだし、探さなければならない。それが姉の責務ってもんさ、ねぇ?

 

 ただ、闇雲に歩くのはやめだ、作戦を練ろう。ヒメは何かを考えて動いているはず、何も考えずに散歩しているだけなら琴葉家に行くはずもないしケーキを買うわけもない。街の全ての建物を回る必要はない、ヒメがいる場所は絞れるはずだ。考えろ私、人間は考える(あし)なんだ。

 

 ヒメは私を避けて色んな場所を巡っているわけじゃない、避けているなら家に帰ってこないはずだし、私に関係なく好きに動いているような気がする。現に、私の後を追うように学校に行き、琴葉家にも行っている。私を避けているなら、私と同じ場所になんて行かないはず。知らずに行った可能性もあるが、本気で避けようとしてたら私が行く可能性のある場所も避けるはずだ。つまり、ヒメは他に理由があって私からの電話を無視している。

 

 ただ単に嫌われたのかもしれないが、何も言わずに無視というのも変だ。ヒメは思ったことをはっきりと言えるし、私が嫌いならそれこそ家に帰ってこないはず。親に連絡すればホテルの部屋くらい楽に取ってくれるし、家に帰ってくる必要はなくなる。それなのに帰ってきて、またいなくなった。私を嫌っているにしては不自然だと思う。

 

 それならなぜ、ヒメは私の電話を無視するのか。カレンダーをちらりと見たら、今は9月末。祝日でもないし行事もない、梅の開花時期でもないただの休日。私に何かサプライズをする予定があるから電話を取らない、とも考えたが特段サプライズすることがない。迷宮入りだ、もう他にあり得そうな可能性が…

 

 …そう言えば、ヒメはケーキを買いに行ってたんだよね。クーポンはあったけど箱はどうしたんだ? それに、1つ大切なことを忘れていた。ヒメがスマホを使えない、という可能性もあるんだ。厳密に言えば、スマホが何らかの理由で使えなくなっている、という可能性だね。

 

 スマホが手元にあるのに電話もメールも届かない状況、心当たりがある。スマホの機能に、フォーカスモードだか集中モードだか忘れたがそんな機能があったはずだ。ヒメがその機能をオンにしているのなら納得は出来る。ただ、1日中その機能をオンにすることなんてあるのか? 琴葉家に遊びに行っていたと聞いたから、スマホで何か作業をしているとは思えないんだが…

 

 ヒメの行った場所を思い出そう、学校から琴葉家に行き最後にケーキ屋、そしてまた居なくなった… 違う、学校に行く前にもどこかに行っているんだ。私が起きた時にはいなかったし、学校に行ったのは私の後なんだから。

 

 …

 

 …

 

 …

 

 …なんとなく、見えた気がする。ヒメが今、どこで何をしているのか。全ての辻褄が合う、もし私の考えたとおりならば。間違いがないように、幾つかの資料を確認して家を出たのは、16時半だった。

 

 

 

 

 …家を出ながら、朝見たネットニュースをもう一度見る。クリスマスケーキの予約開始、か。まだ9月なんだがね。

 

 

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