色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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ヒメSide3 エキセントリックプラネット-PM5:30

 

 私は、日が昇るよりも早い時間に目を覚ました。予定もない日曜日、時計を見れば短針は4を差す。早すぎたな、もう一度寝ようかな。そんな事を思いながら私は、スマホでネットニュースを見る。テレビのニュースはもう少し後の時間の方が好きだからと、スマホで面白いニュースを探していた。

 

 そして私は見つけた、今日の予定を届けてくれるネットニュースを。厳密に言えばネットニュースじゃなくて、近くのケーキ屋が出してるネット広告の1つなんだけどね。そこに大きく書かれていたのは、クリスマスケーキの予約開始という文字。大事なのはそれじゃなくて、小さくその下に書かれていた文字。[別料金でオリジナルケーキが作成可能!]という惹かれるキャッチコピーに私の心は魅了される。行こう、ケーキを作りに。

 

 私が家を出てケーキ屋に着いたのは朝5時、開店前の時間に来てしまった。中で仕込みをしていた職人さんが私に気付いたようで、扉を開けて話しかけてきた。外は冷えるから店内で営業開始時間まで待っていていい、そんな優しい言葉。私は店内に入り、再び魅力的な一文を見つけた。[オリジナルの特別バースデーケーキの製作依頼は2カ月以上前に!]なんてポスターに書かれていた。

 

バースデーケーキ…」

 

 小さく呟いた私の声に、職人さんが反応した。決して安くはないそうだけど、今は12月生まれ向けの注文を受けているんだとか。12月… 蕾ちゃんの誕生日が、12月と聞いたような気がする。はっきりとは覚えてないから、確認しないとだけどね。職人さんに、知り合いの誕生日を確認してきますと言って店を出た。開店前に入れてもらったのに、開店前に何も買わずに出ていってしまって申し訳ない。

 

 私は学校に向かい、日の出の頃に辿り着いた。職員室で蕾ちゃんのクラスの先生に、彼女の誕生日を教えてもらう。12月22日、やっぱり12月だ。ただ、このままだと朝早くに学校に来て誕生日を聞いて帰るという、ミコト以上の変人的なことをしてしまう。汚名をつけられたくないし、学校に来た理由をつけるために、料理部への入部届を先生の前で書いて渡した。料理部への憧れはないけど、楽しい話はよく聞かされるから、入りたいとは思ってた。私がケーキ屋に戻ってきた時には、短針が6を通り越していた。

 

 開店時間になっていたようで、私は職人さんにバースデーケーキ製作の依頼をする。ここから、長い長い戦いが始まった。ケーキの種類だけでなく、ケーキに使うスポンジの材料、生クリームの原料、厚み、層の数、半径… 職人さんに任せることもできたんだけど、折角だからと私は自分で考えることにした。もちろん職人さんと話しながらの設計にはなるけどね。設計に集中するために、スマホの各種アプリを遮断(しゃだん)して、私は考える。

 

 9時を過ぎた頃、形の概案(がいあん)が出来た。下段と中段が正円で、上段が星形。更に上に星を(かたど)った糸のように細いチョコレートを乗せる。職人さんが何分の1にもした小さなケーキを試しに作ってくれるらしいので、私は待ち時間に蕾ちゃんの家に行った。

 

 蕾ちゃんの家に着いたのは10時前。蕾ちゃんの家、ではなく琴葉姉妹のお家だけどね。チャイムを鳴らすと茜さんが出てきて中に入れてくれた。今は茜さんしかいないらしい。発売されたばかりのゲームのボスに勝てなくて苦戦しているらしくて、集中していたらお腹が空いてきたからお菓子を食べようか悩んでいるんだとか。

 

ヒメさんは好きなお菓子あります?棚に入っとるのなら幾らでも食べてもらってええんですけど」

特別好きなものはないかな。お腹空いてるなら、私が料理つくろっか?」

ええんですか? なら、お願いします」

使っちゃいけないものとかあったら教えて、それ以外の食材で適当に作っちゃうから」

葵が買ってきたんでうちはわかりません。多分、何でも使ってええと思いますよ」

了解、待っててね」

 

 私は冷蔵庫の中身を確認して、調理を始める。梅を使わずに好きに料理できる機会なんて滅多にない、茜さんの好きそうな料理を上手く作ろう。

 

 作り始めて少し経った頃、ゆかりさんがやってきた。腹ペコなお客様が1人増えて、腕が鳴るってもんだね。家でミコトのために作るときよりも何倍も、何倍も気合が入った気がする。水も飲まず、時計も見ず、スマホも見ずに作り続けて、完成させた。2人に振る舞いながら11時、ひたすらに食べる茜さんを見ながら一息ついた。

 

 家だからリラックスしている、と言われたらそうなんだけども、今の茜さんを見ていると自分の料理に自信がわいてくる。私に見られているのに、気にしない、というか気付いていないんじゃないかと思うほどに食べ続ける。それだけ夢中になってもらえたことが、ただ嬉しい。

 

 きれいになったお皿を台所に置いて、皿洗いを始める。白がはっきりと見えるお皿は、気分がいい。楽に洗いを済ませて、私は茜さんからゲームのコントローラーを受け取る。あまり得意ではないんだけど… できる限りの範囲で、頑張ろうと思う。

 

 

 …楽しかった、うん。だけど楽しみすぎた。時計を見たらもう正午を軽く回っていて、私は急いで家を出た。(まる)時に完成するからその時間に来てください、と言われたわけではないけれど、3時間もしたら完成するとは言われていたんだよね。来いとは言われてないけど、その時間に来てほしいって暗に伝えてたんだろうから… ま、まぁ、1時間遅れた程度だから、大丈夫、かな…

 

 ケーキ屋に着いた私は、待ってくれていた職人さんから小さなケーキを受け取る。細かい作り込みはしていないシンプルで小さな3段ケーキだけど、上段だけ星形にする案が良さそうということはわかった。それに糸のようなチョコレートがとてもとても映えるということもわかった。ただ、本番の大きなケーキでも映えるくらい大きなチョコにできるのかはわからないとも言われた。私もそう思う、細いチョコで立体アートを作るんだから線の太さを変えずに大きくしたら、折れるよね、そりゃ。

 

 今は見た目の改良は一旦終わり、職人さんはこの後1時間くらい他のケーキを作らないといけないそう。散らかった案を整理するためにも、私は一度家に帰った。貰い忘れていた予約票を財布にしまい、おまけのクーポンをポケットにねじ込んで、近くで買ったコンビニケーキを手に帰る。家は真っ暗で、ミコトはいないみたい。今日もどこかで遊んでるんだろうね、家で梅を愛でてるか外で人を愛でてるかの2択の人だし。でも茜さんと一緒じゃなかったし、蕾ちゃんをご飯で釣って遊んでるんだろう。

 

 コンビニケーキを食べて、ポケットに入っていたゴミを捨てて私はまた家を出た。腕時計を見たら午後2時を過ぎていた頃。昼寝をする子供もいそうな時間、蕾ちゃんも寝てたりして。蕾ちゃんがおやつで食べるのってなんなんだろう、そういうものをバースデーケーキに乗せるのもいいね。

 

 近くの本屋で誕生石とか誕生花とか、誕生日にまつわるものを特集してた本を買って、公園で読みながら時間を潰す。別にプレゼントでそういうやつを渡すわけじゃないよ、蕾ちゃんは食べ物のほうが嬉しいだろうし。それに、残るものよりも使ったり食べたりして無くなる物の方がいいと思うんだ。家族とか恋人からなら一生の物が貰えると嬉しいと思うけど、私は友達だからね。変に誕生石の嵌ったピンキーリングとか渡したら困惑しちゃうでしょ、間違いなく。

 

 あんまり面白い情報もなかった本を鞄に詰めて、ケーキ屋に戻る。時刻は午後3時過ぎ、おやつ時を過ぎてケーキ屋もピークを越えて落ち着いてくる時間。職人さんも暇になっていたみたいで、私達は見た目の改良を再開する。暇になっていたみたい、というか暇になるだろうって狙ってきてるから暇じゃないと困るんだけどさ。

 

 彩りを考えようということで、フルーツやクリームについても話し合った。結論はまだ遠くにある気がするけど、時間は待ってはくれない。もうすぐ午後5時になるという時間で、お店も静かになり街を歩く人も減りつつある。そんな時、私は驚きの声を聞くことになった。

 

 ミコトとゆかりさん、珍しいコンビがケーキ屋にやってきたのだ。共通点を探しても見つからないコンビが何をしに来たんだろう、そんな事を思いながらも私は2人を計画に誘う。蕾ちゃんへのバースデーケーキ、みんなで考えたほうがいいものになる。間違いない。

 

 私達は、それから長い会議をした。完成にはまだ程遠いけど、少しだけ完成形が見えた気がする。これから毎週職人さんと話し合って完成に近づけないと、もしかしたら蕾ちゃんの誕生日に間に合わないかもしれない。

 

 帰路につきながら、私はそんな事を考える。そういえば、ミコトが私に説教があるって言ってたな。何かしちゃったけなぁ、私。まぁ多分勘違いでしょ、ミコトはよく早とちりしてやらかすし。ゆかりさん、ちょっと前に帰ってたんだけどお礼の言葉伝えたっけな。集中してて言い忘れたかも、まずったか…?

 

 

 

 

 

 

 

 …それから、長い時が過ぎた。12月22日が、やってきたのだ。

 

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