楽しい1日は瞬く間に過ぎていきました。今の僕の気持ちを表せる言葉は、楽しかった、それだけです。ただただ楽しくて、他に言葉はいりません。ヒメさんとミコトさんはどこかに行ってしまいましたが、葵と茜が最高の料理を作ってくれたのでいただきます。きっとこの料理たちも、冷めないうちに食べてほしいって思ってますから。
「すき焼きだよ、好きでしょ? こういうの」
「うん!」
「エビフライもあるし、白菜と大根のサラダもあるでー」
「豪華ですね、それに多くないですか?」
「余ったら明日の朝も食べればいいし、蕾ちゃんが食べきっちゃうでしょ?」
「た、多分、食べ切れ… ます!」
あまり嬉しくない信頼をされてますね… 沢山作っても全部僕が食べるから問題ない、みたいに思われてますよ。まぁ間違ってないですしその通りなので言い返せないですけど…
「…美味しい! 葵、すごい美味しい!」
「いつもと特に変えてないんだけどね。喜んでもらえてよかった」
「愛の味ですよ、美味しいです」
「喜んでもらえてよかったなぁ葵」
「…まぁ、うん」
葵は少し照れくさそうに笑いながら、お米を口に運んでいきました。茜も、ゆかり
幸せでした。いつも幸せですけど、いつも以上に幸せでした。他に言うことも望むこともないくらいです。
「戻ったよ。茜と葵さん、少し手伝ってほしい」
「今行くでー」「行ってくるね」
「…あぁ、あれか」
「何か知ってるんですか?」
「ヒメさんからのサプライズですよ、蕾ちゃん」
「おぉ! 楽しみに待たないとですね!」
「ですね」
僕にサプライズ、か… 誕生日プレゼントかな? 夏に初めて会ったから、まだ半年も一緒にいたわけじゃないんだけど、ヒメさんにはよく可愛がってもらった気がする。面倒を見てもらった、って言ったほうがいいのかな。ミコトさんにも色んなことを教えてもらったし助けてもらったなぁ。
そうだ、ゆかり
…プレゼント貰っても困っちゃうかもしれないな。あかり宛と蕾宛の2つを用意されてたらどうしよう。倍もらうことになっちゃうし、そうはならないといいけど。
そんな事を考えていたら、大きな白い箱が滑車に乗ってやってきた。なんだろう… 幅は30センチくらいかな、はっきりとはわかんないけど。高さは20センチくらい? となると、ぬいぐるみとかかな?
「蕾ちゃん、開けていいよ!」
「はい、開けます…」
立ち上がって近づいてみたんですけど、やっぱり大きい。多分、幅30センチじゃないね。40センチくらいかな?
「開けます!」
「…おぉ、凄い」
「すごい…」
「12号、9号、6号の3段ケーキだよ!
「…食べ切れます? 6人分のサイズには見えないんですけど」
「12号ってウェディングケーキに使うようなサイズだからね、普通なら食べ切れない。それとゆかりさん、別でゆかりさんのためのバースデーケーキも用意しようと思ってたんだが…」
「わかってます、このケーキの他には要らないですよ」
「そう思って、取りやめさせてもらった。ゆかりさんカラーの
「ですね、カラフルすぎて紫は弱いですけど」
すごーい、すごーい…
言葉を失っちゃいました、だってでっかいケーキが入ってたんですよ! こんなケーキ食べたことないですよ、それにサイズだけじゃなくて綺麗で豪華なんです! 紫色の濃くて大きいぶどうに、赤いイチゴとブルーなベリー、更に白い… 桃かな、が本当に沢山置いてあるんです。ホイップの上にも周りにも沢山ですし、中にも入ってたりするのかな…
それに、1番上に星形の飾りが乗ってるんです! ホワイトチョコだと思うんですけど、すっごく細いペンで描いた星って感じで、なんで切れないのか不思議なくらいほっそいんです。でもなんで星なんでしょう、誕生日っぽさはないですよね… 星、星… 今は夜ですけど、関係ないでしょうし…
「星、ほし、ほし? ほしぃ…」
「凄いでしょ、これぞプロの技って感じだよね」
「…星が何かわかってない、とか言わないよね?」
「…すみません、わかってないです」
「自分の名前忘れたんかいな、キズナ」
急に苗字で呼ばれると距離を感じ… あ、紲星の星か。スッキリした~、下の名前でしか呼ばれないから忘れてたよ、紲星って星だったね。謎が解けて満足です、何の疑問もなくケーキを楽しめます。何も気にすることがなければこのサイズのケーキだって、食べ切れ… るかなぁ…
「さ、ケーキも来たんだししっかりとお祝いをしよう。皆、プレゼントは持ってきているんだろう? 蕾ちゃんとゆかりさんに渡すなら今じゃないと。お腹が苦しい状態で渡したくないでしょ?」
「そうだね。私からのプレゼントはケーキだから、他にはなんにも持ってきてないけど…」
「じゃ、私からいいかな? 梅の木の苗だよ」
「えぇ…」
梅の木、かぁ… 琴葉家の庭で育てられるかな? 育てられたとしても、僕の家ってわけじゃないし… 僕の家で育てるのは無理、だね。植木鉢で育てられるのかな? それなら、いけるかもだけど。
「うそうそ、本当はマフラーだよ。これでも編み物は自信があるんだ。手先が器用じゃないと梅は育てられないからね」
「ありがとうございます、安心しました」
「ありがとうございます!」
ミコトさんがくれたマフラー、暖かそうです。黄色と紫の2色のマフラー、黄色は僕をイメージしてくれたのかな? 紫はゆかり
「じゃあ次はうちやな、うちのプレゼントはこれや! じゃーん!」
「…クッキーですか、焼いたんですか?」
「せやで、美味しそうやろ」
「はい、美味しそうです。ありがとうございます」
「おう! 蕾も、今度食べてーな。今はだめやで、他に食べないかんもんが多いんやから」
「うん、ありがとう」
茜がくれたクッキーは星形と月形の、多分バニラ味のクッキーです。それを一袋貰いました、20個くらい入ってるのかな? 美味しそうです、食べるのが楽しみです。
「次は私か。ゆかりちゃんにはこれ、ヘッドセット。蕾には、ルームウェア」
「おぉ! これ気になってたんですよ! ありがとうございます!」
「ルームウェア! これ、着替えてきていいですか?」
「…いいよ、着替えてきな。この後お風呂入るんだから、着てた服は洗濯籠に入れといてね」
「はいっ!」
葵がくれたのは黒色のルームウェアでした。リボンも付いてて凄い可愛らしい感じです。これは性転換が治るまでの間した着れませんし、今のうちに沢山着ちゃいましょう。それに、体が大きくなっても着れなくなっちゃいますからね。ちょっと余裕があるサイズですけど、多分一番いいサイズです。ぴったりだと気になっちゃいますし、ちょっとダボってしてたほうが楽ですからね。
「どうです? 可愛いですか?」
「うん、可愛いよ。とっても可愛い」
「えへへ… ありがとう、葵」
「…こほん、それじゃあ私から蕾ちゃんにプレゼントを渡していいですかね? この街を出てた時に知り合った変な人に頼んで作ってもらったお守りなんですけど、どうぞ」
「変な人に作ってもらったお守り…? 巫女さんとか、そういう人に作ってもらったわけじゃないんですか?」
「占い師と言えばいいのか、霊媒師と言えばいいのか、そんな人ですね。いい夢が見れるお守りらしいですよ。あかりの分もあるので、蕾ちゃんに渡しておきますね」
「あっ… はい、貰っておきます」
やっぱり、2つ貰っちゃった… ゆかり
「…あ、私からのお返しのプレゼントです。どうぞ」
「これは… チョコレートですかね? ありがとうございます」
「市販のになっちゃいますけど、私が今までに食べて美味しかったチョコで、ゆかりさんが好きそうなチョコを集めてきました」
「ありがとうございます、私のために選んでくれた気持ちだけで嬉しいです」
「さ、プレゼントは終わり。すき焼きにケーキにエビフライに、皆で好きなの食べるよ」
「…満足するまですき焼きを食べてからケーキにしたほうがいいかもね、口が甘くなる」
「でも、すき焼き食べてたらケーキ食べきれなくなりますよ?」
「なるようになる! それに、夜更かしして遊び明かすんやから今食い切らなくてもええんや!」
「泊まっていいの?」
「…リビングに布団を敷く形になっちゃいますけど、それでもいいなら泊まれますよ」
「じゃあ泊まる! ミコトも泊まるでしょ?」
「もちろん。眠れない夜だね」
「1枚写真を撮っていいですか? あかりに送ろうと思って」
「いいね、ケーキの前に並ぼっか」
「じゃ、笑ってー! …っし、撮れたで! 皆に送るな」
「そうだ、お母さん達にも送ろっと」
長く楽しい1日が終わった