「はい、取れた。あげるよ、好きでしょ」
「ありがと、葵。一緒に寝ることにするよ」
ゲームセンターに着いてから1時間、話しながら可愛いぬいぐるみを探して、サメとエビとイルカとチンアナゴを手に入れました。サメは50センチくらいの抱き枕で、残りの3匹は肩に乗るくらいのサイズです。皆バランス悪いので乗らないですけどね。エビはギリギリいけるかな、平仮名の[し]みたいな形なので頭と尻尾で肩を挟む形にすれば… やめとこ、落ちたら嫌だしさ。
「葵は欲しいのないの? 僕ばっかりもらっちゃってるけどさ」
「いいよ、私よりもあかり君が貰ってくれたほうがその子達も幸せだよ。袋、持とうか?」
「これくらい自分で持てるよ。ねえ、葵が好きなぬいぐるみ、探しに行かない?」
「探すって、もう全体見たんじゃない?」
「このお店にいいのがないなら、他のお店を見に行こうよ。ショッピングセンターとかにも、少しはあるじゃんさ」
「いいよ、別に。特に欲しいものもないから」
結局、葵はぬいぐるみを1つも持たずにお店を進んで、
「トイレ行ってくるから、先にゲーム始めちゃってて」
「わかった、面白そうなの見つけとくよ」
さ、クレーンゲームをもう少しだけやっていきましょうか。トイレ? 行きませんよ、正直にクレーンゲームをするっていうわけにはいかないので嘘ついたんです。
葵が好きかはわかりませんけど、プレゼントのために何か取っておきたいんです。キーホルダーとか、手乗りぬいぐるみみたいな小さい物のほうが好きだったりするのかな…? いや、大きい方がいいですよね。悲しませちゃったお詫びと、いつものお礼も兼ねて、とびっきり大きいやつにしましょう。思いが伝わりそうですし。
でも残念なことに、このお店にある中で一番大きいのはサメのぬいぐるみなんですよね… 僕が抱きかかえてるやつです、どうしましょう。次に大きくて可愛いやつにする、のはやめましょうか。もう一つサメを取って渡しましょう、お揃いっていうのもいいですからね。
はい、一発。慣れてきたってわけじゃないですけど、ツキがあるんだと思います。苦労して取ったほうが良いのかもですけど、わざと下手にやるのもおかしいですからね。店員さんから袋貰って、頭までしまって、と。さて、これをバレないように隠しながら筐体の方に… 隠せるわけないですね、家で渡したかったですけど今渡しちゃいますか。
「こっち、いいの見つけたけど… もう一個欲しくなったの?」
「葵にあげる、好きかなって思ってさ」
「…ありがと、貰うよ。2つ持つのは大変でしょ?」
「大丈夫だよ、それより何やるの?」
「ダンスゲーム、やったことないでしょ? 私もないんだけど、こんな日だしやってみようと思って」
「寒いし、暖まっていいかもね」
それから僕達は、足を使ってリズムを刻むダンスゲームをやるました。その後はレースゲームとか、シューティングゲームとか。色々やって、14時頃になったと思います。人がお昼に減って、また増えてきたような時間ですね。
僕達はゲームセンターを出て、駅の近くにある雰囲気か良さそうな
「美味しそうだね、葵は蕎麦にしたの?」
「同じより違うほうが良いかなと思ってね。取り皿もあるし、少し食べる?」
「いいの? なら欲しいな。葵も、饂飩が欲しかったら言ってね」
「それなら少しだけうどんをもらおうかな」
僕達は饂飩と蕎麦を2人で楽しみました。
ちょっとずつ暗くなってくるような時間ですが、まだまだ遊びたりません。葵もしたいことがあるみたいなので、何も言わずについていきます。勿論、手は繋いでるので逃げられることはありませんよ。逃げることなんてないと思いますけど。
「ねぇ、どこに向かってるの?」
「ちょっと商店街の方に行こうかなって」
「何か遊ぶところあったっけ?」
「歩くだけでも楽しいよ、ウィンドウショッピングってわけじゃないけどさ」
駅を越えて普段暮らしてるあたりに戻ってきて、街をふらりと歩きます。夏に茜と食べた鯛焼き屋さんもこの近くのはずですし、また寄っていこうかな。葵は… チョコ味はありそうだし、多分好きだよね。あんこが入った普通の鯛焼きも好きだとは思うけど、チョコの方が好きそうだしさ。
「葵、こっちに行こうよ。鯛焼き食べながら歩かない?」
「いいね、何買う?」
「葵と同じやつにするよ、オススメとか知らない?」
「私がカスタード買うから、あかり君はあんこにしなよ。それでちょっと食べ合おう?」
「確かに、その方がいいね」
葵はカスタードとあんこが好きなのか、チョコだと思ってた。もしかしてチョコミントが好きなんじゃなくてミントが好きなだけだったりするのかな?
それに僕もあんこは好きですし、同じ好みだと嬉しいですよね。ちょっと気が急いちゃいます、早く食べたいなぁって。でも手を引っ張るわけには行きませんし、ゆっくり歩きますけどね。葵に迷惑かけちゃったら悪いですから、あくまで今日の主役は葵ですし。昨日だったら僕の好きに歩いてましたけど。
「…早く食べたいし、歩くの早くしようか」
「だね、そうしよう」
「転ばない程度にね」
「わかってるよ、それに転びそうになったらさ、手、引っ張ってくれるでしょ?」
「そんな怪力じゃないんだから、止めれなくて地面頭ぶつけても知らないよ」
葵に脅されても止まりませんけどね、早く食べたいですから。さ、お店に着いたので注文して… ちょっと待って、出来上がり! いただきまーす!
「ん〜! 美味しいね、葵!」
「カスタードも美味しいよ、ほら。しっぽ取るから食べ「ほんとだ、美味しい!」
「…別にいいけどさ」
僕の方に向けてくれて、食べていいよってことかと思ってかぶりついたんですけど、分けようとしててこっちに鯛の頭が近づいてきただけだったみたい、です。落ち着かなきゃだったな、怒ってないといいけど… 顔赤いし、怒らせちゃったかな…?
「ごめん、葵」
「いいよ、でもさ。指、次は食べないでね?」
「っ! ごめん!」
「いいって、怒ってるわけじゃないから」
怒らせちゃった、怒らせちゃった… 絶対に怒ってるよ、怒ってなかったとしても嫌だなって思われちゃったよ… 僕だって指を噛まれたら嫌な気持ちになるし、葵だってそう、だと思う… 葵は優しいから言わないだけで、絶対怒ってるよ。どうしよう、朝も葵は辛そうにしてたのに、僕のせいでまた…
「…美味しかった?」
「美味しかったよ? さっきも言ったけど、美味しかった」
「そう、ならよかった。 …さ、歩こうよ」
「うん、行こう」
鯛焼きは美味しかったし、今食べてるあんこも美味しいけど、帰ったら茜にも謝らなきゃな… 茜に念を押されてたのに、葵に悪いことをしちゃったしさ。琴葉家を追い出されなきゃいいけど…
「手、出して」
「ん、はい」
「繋ぐってこと。ほら、行くよ」
「うん…」
繋いでくれるなら、そこまで怒ってるわけじゃないのかな… あ、ちょっとベタってしてる。ごめんね、何回でも謝るよ。そうだ、ハンカチ渡さなきゃ。
「葵、ハンカチ」
「持ってるから大丈夫だよ」
「じゃあ、左手…」
「あー、ごめん。そうだった、拭くね」
「…ごめん」
「だから気にしないでって。食い意地張ってるのもあかり君の良さなんだから、悪びれなくていいんだよ」
「でも、噛んじゃったしさ」
「痛くなかったし、嫌とも何とも思ってないから。ほら、信号変わってるし行くよ」
「あ、うん…」
葵は優しいな…