モモンはナーベを連れてカウンターへと足を運び
「「冒険者登録をしたい」」
ん?……ハモった?
モモンはそう思って声が聞こえた方向を向く。
そこには喪服少女がこちらを向いて立っていた。
あぁ、さっきの……この少女も冒険者登録しに来たのか……。
「………あぁ…先程はウチのナーベがすまなかった。」
あまり気にしてくれてないと良いのだが……
「あ、いえ。こちらこそ先程は助けていただきありがとうございます。」
普通に礼儀正しいな……おい、ナーベ。殺気が隠しきれてないぞ。
「当然の事をしたまでだ。」
ちゃっかり英雄ロールは忘れない、と。
モモンと喪服少女がそう会話していると受付嬢が話しかけてきた。
「あのぉ…お二方とも冒険者登録をしたい、という事でよろしいでしょうか?」
2人は受付嬢へと向き直り頷く。
「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「私はモモン。こっちは仲間のナーベだ。」
「……。」
ナーベは相変わらず、か……。人間への接し方はこれから変わっていってくれれば良いのだが……。
そして喪服の少女の方へと向いて無言で少女の言葉を待つ。
「サ……」
「ミラクです!」
どうやら喪服少女の名前はミラクと言うらしい。
「モモン様にナーベ様。そしてミラク様ですね。」
「では冒険者登録の前に、冒険者ランク、依頼の受け方、報酬、その他 諸注意などの説明をさせていただきます。」
――――――――――――――――――――――
「……以上で説明は終わりです。何かご質問はありますか?」
どうやら冒険者ランクは鉱石の名前が使われているらしい。希少なもの程上のランクへ。逆に希少ではない手に入りやすい鉱石ほど下のランクへ。
しかし、だ。それはこの世界での価値基準であり、ユグドラシルの世界では一番上のアダマンタイトですら話にならない。
俺が持っている45レベル程度の金属の方が遥かに硬い。
そうモモンが考えていると受付嬢が話しかけてきた。
「では、こちらの紙に、お名前とチーム名をお書きください。」
…………さてどうしたものか…。
モモンは受付嬢から紙を受け取って眺める。
文字、分からない…!
そう、モモンはこの世界の文字が読めないし書けないのであった。それもそのはず。この世界に来て色々とバタバタとしていた為か語学を学ぶ暇も無かった。
どうしよう……。いや、手段はある!分からないならば分かるやつに書いてもらえばいいのだ。
しかしどうやってそれを言うかが思いつかない!
書いて欲しい、と素直に言うか?いやでも理想の英雄が文字も読めず書けないというのは正直無い!絶対に無い!
ならばどうする?
そうモモンが焦っていると横からドンッ!!という音が聞こえた。
その音を聞いてモモンは内心ビクッとするがそこで感情抑制が入った。
「うッ!読めねぇし書けねぇ!!」
どうやら音の正体はミラクであった。
カウンターに頭を突っ伏し何やら先程とは違う口調になって叫んでいた。
……?…口調が変わった?いや、そんな事はどうでもいい。今、何といった?
ミラクは焦ったように顔を上げ周りに語りかけるように声を出す。
「うふふ……私、文字の読み書きが苦手でして…少しはしたない所を見してしまいましたわね。ごめんあそばせ☆」
何やらまた口調を変えて話すミラクの言葉を聞いて確信する。
喪服少女…!お前も読み書きが出来ないのか!!
そう、つまりこれは好機!
「……ミラク、といったか?読み書きが出来ないのならば読み書きができる者に書いてもらえばいいのでは無いか?」
モモンはミラクに提案する。
「なるほど……!…では、そうさせてもらいます。」
そしてミラクは受付嬢に向き直る。
「えっとぉ、お願いできますか?」
持っていた紙とペンを渡す。
「はい、大丈夫ですよ。」
そしてモモンはここだ!!と言わんばかりに受付嬢に言う。
「私も ついでに!! お願いする。この鎧のせいで細かい作業は苦手でな。」
「分かりました。」
受付嬢がモモンから紙とペンを受け取る。
ふぅ……結構さり気なく出来たんじゃないか?ナイスだ喪服少女。流石に俺が文字が分からないとは悟られてないよな?
モモンが内心でミラクにサムズアップしていると受付嬢がミラクの方を向いて口を開いた。
「では、ミラク様。チーム名をお願いします。」
ん?チーム名?
声を掛けられたミラクは数秒の間考えるような仕草をして答える。
「仇討人 で」
「了解しました。仇討人 ですね。」
仇討人……か。結構良い感じの名前だな。いや素直になるとかっこいいと思える。俺が使いたいぐらいにはかっこいい。
しかし喪服で仇討人…か。もしかして訳ありなのか?
まぁいい。喪服少女にチーム名を聞いたという事は当然俺にも聞いてくると思うのだが……どうしたものか。
チーム名チーム名……
「では、モモン様。チーム名をお願いします。」
そう考えている内に受付嬢から言葉をかけられる。
ん〜、どうせなら喪服少女のような良い感じの名前を思いつきたい。
しかしユグドラシル時代で俺が名前を付けると何故か分からないがギルメンに笑われた。結構傷ついたがどうやら俺のネーミングセンスは絶望的らしい。俺はそう思わないが…。
名前名前……チーム名、桃太郎 とかはどうだろう。なかなかユーモアに溢れて良い名前だ。後は モモン・ザ・ダークウォリアー とか。これはチーム名というかソロ用だな。中々かっこいい名前だが却下。そうだな……
「…………モモンと愉快な仲間たち 」
モモンのその言葉でギルド内が静寂に包まれる。
…………………………………………あ、これダメなやつだ。
そう思ってからのモモンの頭の回転は脊髄反射の如く速く、そしてその場を取り繕おうと言葉が口から出る。
「ではなぁく!!………ゴホン…すまない。そのだな…そう!ナーベがそう提案してくれたのだが私的にはもっと良い感じの名前がいいと思うのだがな。うむ。」
話の途中で感情抑制が入り更に頭の回転が加速する。
そしてモモンへと集まっていた落胆にも似た視線は横に立っていたナーベへと流れ弾となって飛んでいった。
すまん…ナーベ!!許してくれ!
モモンはナーベの顔が見れずミラクの方を向く。
「……そうだ。ミラク。先程のような良い感じの名前を考えてくれないか?すまないが私も未だ思いつかないのでな。」
ミラクは少し驚いた顔をしてナーベとモモンを観察するように見てから答える。
「漆黒 っていうのはどうでしょうか?」
「漆黒 か…ふむ…なるほど、気に入った。ならばそれで頼む。」
漆黒……か。ほう、思ったより、いや結構かっこいいじゃないか。
「分かりました。チーム名 漆黒 と 仇討人 ですね。」
「では、登録の為の10銅貨をお願いします。」
……冒険者登録にもお金を払うのか。村で硬貨を貰っていて良かった。
モモンは10銅貨を袋から取り出してカウンターへと置いた。
相変わらずの感情の起伏……!
原作通りとはいけませんでした許してください……