「…硬貨あるじゃねぇか!!」
ドン!!という音が横から聞こえた。
その音とミラクの叫びでモモンはビクついた。
……また口調が変わったな。先程から突然口調が変わったりヘドバンしたり挙動がおかしいな、この喪服少女。
ミラクは何とか立ち上がるようにカウンターから這い上がる。
「…あのぉ、通貨って10マーニじゃダメですか?」
「マーニ…?、ですか…。申し訳ありませんがそのような通貨はご使用できません…。」
ミラクは崩れ落ちるようにカウンターに突っ伏す。
マーニ?そんな単位この世界でもユグドラシルでも聞いた事ないが……最初はプレイヤーと疑っていたがもしかして本当に遠くから来た者なのか?
ミラクはムクリと顔を上げる。その顔は満面の笑みでドヤ顔であった。
そしてその手にはキラキラと光る水晶が握られていた。
「これを換金してくれ!」
?!…何だ?見たことの無い鉱石…?!
モモンはミラクが手に持っていた水晶に釘付けになる。
「これは……?!」
何やら受付嬢は水晶を受け取るとまじまじと見つめ、一つ断りを入れてから受付を外して奥へと歩いていった。
そして戻ってくる受付嬢、と如何にも魔法使いのような格好をしている三角帽子に黒ローブを纏った老人。
「ふむ…これが……?。」
老人は水晶を手に取って目を細めて観察しているようだ。そして左手に持っていた杖を水晶に向ける。
「アプレイザル・マジックアイテム…!」
「……?!…な、なんと…?!」
「か、鑑定不可?!…だと?!」
「お主…!!一体何処でこれを…?!」
「えっと……お、私の故郷の近くに出るモンスターの素材でして……。」
ミラクは目を逸らしながら頬をかいて答える。
「そこは何処じゃ…?!」
「えっと……」
そこで受付嬢がミラクたちの間に割り込んだ。
「落ち着いてください…。申し訳ありませんミラク様…。」
受付嬢は老人をドードーとなだめる。
この間もモモンはずっとカウンターに置かれた水晶に釘付けだ。
ユグドラシル…の物でも見たことないな…どれも微妙に見た目が違う。
この世界の物か?しかし受付嬢達の会話を聞くに彼らも知らない物。だとすると……
モモンの頭が回転し今までの情報が頭の中で並べられていく。
ユグドラシルでもこの国周辺でも使われていない通貨の単位、見たことがない装備…そして見たことの無いようなアイテム……これが示すことはつまり…
それらは全てが点と点が繋がっていきある答えを弾き出す。それはミラクにとっての秘密であり隠すべきメタであるもの…それは………………
俺達とは違って本当に遠い場所から来た者、か。
……ではない。……モモンは見た目に騙されやすいが以外とピュアで単純なのだ。そんなモモンがミラクの秘密を暴けるはずも無い。
うーむ。俺の手持ちにも無い鉱石……欲しい…!
そして弾き出した推測はモモンの趣味であるアイテム収集癖によって虚空へと吹っ飛んでいく。
ゆっくりとモモンの手がカウンターへと置かれている水晶へと吸い寄せられていく。
自分の物欲に負けそうになっているとミラクが口を開いてモモンは正気に戻る。
「いえ……その…それで素材の換金は出来ますか…?」
それは換金の確認。
……ん?換金?…えっと何の話だったか…………そうか確か自分が持っていたお金が使えないから換金を頼んでいるのか……しかし換金されてしまうとこの水晶はどうなる?……
まずい…!何とかしなければ……!
モモンの脳はまた加速する。
…そうか、俺がお金を払う代わりにその水晶を譲ってくれ、と言えばいい。
いや、だが遅い。ミラクは既に水晶を換金してくれと言っている!
モモンの考えも虚しく、受付嬢は老人に向き直り、老人に確認する。
老人は首を横に振り受付嬢がミラクに向く。
……?!…これは…まさか……?!
「申し訳ございませんが、私共ではその素材の価値を分かりかねます…。」
ナイスだ!!老人!!これで水晶は貰った!!
受付嬢の言葉を聞いたミラクは床へと沈んでいき燃え尽きている。そして何やらブツブツと呟いていた。
「えへへへ…。資本主義資本主義資本主義……。」
モモンはそんな様子を見てここだ!!と思い先程考えた交渉をミラクに話す。
「あぁ…ミラクよ……。君が了承するのなら、でいいのだが。私にその水晶を譲ってはくれないだろうか?譲ってくれるのならば、私が当分の君が使う資金を、代わりに払おう。どうだろう?」
頼む!!了承しろ!!
「なっ……?!モモンさ!…ん…この様なウジにモモンさ…ん…のご慈悲をお与えにならなくとも…!」
ナーベ!頼むから今はやめろ!!
「ナーベ…今は少し黙っていろ…!」
「も、申し訳ありません…!」
ナーベはモモンのいつもより怒号のこもった声で命令を受けた事により少し驚き後ずさる。
「本当ですか?! モモンさん!!」
そしてミラクは立ち上がりモモンの手を取って顔を近付ける。
うおっ?!び、ビックリした。これは……了承、という事でいいのか?大丈夫なのか?
「あ、あぁ。私はもちろん良いのだが…提案した側が言うのも何だが、どちらかと言うと私の方がメリットを大きく感じるが?」
モモンは少し気圧されながら確認する
「大丈夫です!!」
元気の良い返事。つまりこれは了承の意。
よし!!レアアイテムゲット!!
「なら良いのだが……。」
モモンは内心ガッツポーズで興奮しながらも外面では平静を装う。
後ろで殺気を放っているナーベにも気づかず。
「いつまで、手を握っているの?このプラナリアが…!!」
モモンは満足感により周りなどなんのその。そして受付嬢へと話しかける。
「ではそういう事だ。彼女の分も私が払おう。」
「ありがとうございます。ではこれで冒険者登録は完了となります。これを。」
受付嬢は手に持っていたカッパーのプレートを3人に渡す。
そして3人は無事、冒険者登録を終えた。
書いていて思いますが、モモンガとサンラクって結構似ている部分があるなぁと……