俺達3人は冒険者登録を済ませ、宿をとる為に大通りを歩いていた。
「……ふむ…」
モモンは交換条件として貰った水晶を観察すように眺めている。
やはりユグドラシルでも見た事がないな。硬さも申し分無いな。光に当てると光が集まるように光を吸収して輝いている。
装備の素材として使ってみたいな……いやしかしこの水晶は現状一つしか持っていない。
やはりここはコレクションとして残しておくべきか?
……ミラクの口振りからして余り貴重に思っていなさそうだったが…もっと持っているのか?
欲しいと頼んでみるか?いやこれ一つでも俺へのメリットが高すぎたのに、もっと欲しい と言ってしまうのは強欲すぎるな。
そう思っていると何やら横でブンッブンッという音が聞こえる。
何だ?
横を見るとナーベがミラクに対し殴りかかっていた。
?!…ちょ、何してんの?
モモンは驚き止めようとするが既にナーベの拳はミラクへと飛んでいた。
やばい……!
しかしその拳がミラクに当たる事は無く、空を切った。
……避けた、のか?
「……よく動くヤブカね…!」
そしてまた拳がミラクへと迫る。
そして身構えていたミラクはそれを避ける。
……?…どういう事だ?ナーベ…いやナーベラルは63Lv。魔力系魔法詠唱者といえどステータスだけなら現地人と圧倒的な差になる。更に確かファイターの職業も取っていた筈……。
モモンは様子を見るべく隣で起きている喧嘩を観察する。
そして横では次の拳、次の拳…とミラクを打たんとべく無数に放たれる拳の連打。
それを華麗に避けるミラク。
打たれる連打は放たれれば放たれるだけ速くなる。
ナーベも本気を出し始めたか?しかしミラクに当たる気配が無いな。
「ちょッ!…一旦落ち着きませんか?!」
ミラクがそう言うものの、一向に拳の雨は止む気配がない。
そしてミラクはモモンが2人のやり取り(喧嘩)を興味深そうに見ている事に気付いたらしく
「モモンさん?!…見てないで止めてください!!」
「……?!…あ、あぁ、すまない。ナーベ止まれ。」
2人の動きをまじまじと見ているとミラクからモモンへ言葉が掛けられ、そしてモモンはナーベを制止する。
ピタリと止まった拳の連打。
殴っていた本人は涼しい顔で何も無かったように佇んでいる。
結局当たらなかったな……この喪服少女……一体何者だ?魔法職とはいえナーベの本気の連打をかすりもせず避けるとは……
そう思いながらもモモンはミラクへと謝る。
「度々すまないなミラク。」
「いえいえ」
ミラクは涼しい顔で答える。
本当に余裕そうだな……現地人にLvの概念があるかどうかは分からんが、50付近、いやそれ以上の可能性があるな……。少し警戒しておくか……。
「あの、お2人は何処からいらしたんでしょうか?」
モモンが思考に没入しているとミラクから声がかかる。
「それは出身地…という事か?……ユグドラシル という所を知っているか?」
現地人じゃない可能性も考えられるから確認してみるか。
「ユグドラシル……。」
ミラクは考えるようにして腕を組んでいる。
「いえ、そのような場所は聞いたことが無いですね。」
様子からして知らないようだ。やはり遠出の現地人なのか?
「そうか…。とても遠い場所なのだが、私達はそこから来た。使う通貨が違った様だったが君も遠くから来たのか?」
「はい、ファステイア という場所から来ました。」
ファステイア……知らないな。
「ふむ…聞いた事がないな…。」
やはり現地人か……なら聞きたい事がある。
「この水晶もそこから持ってきたのか?」
モモンは手に持っていた水晶をミラクに見せる。
「あ、いえ。それはファステイア の近くにある水晶巣崖 という所から取ってきたものです。」
水晶巣崖……名前からそのままならばこの水晶が沢山あるのだろうか。
「いつか行ってみたいものだな…。」
ミラクの方を見ていると何やら苦笑いをしていた。
モモンはそれを疑問に思いながらも立ち止まる。
「着いたようだ。」
どうやら宿に着いたらしく、3人は宿の扉へと入っていった。
――――――――――――――――
宿といっても食事や飲み物を1階で提供しているらしく、そこで冒険者達が酒を飲むなどと、ガヤガヤ賑わっていた。
そしてモモン達が入るとやはり目立つらしい3人を見てよからぬ事を考える者は少なくもない。
そんな視線を無視して3人はカウンターへと足を運ぶ。
「……銅のプレートか。3人部屋で10銅貨だ。」
流石に3人同じ部屋ってのはダメだよな?ナーベと俺はいいがミラクは女で会っても間もないし。
「いや、2人部屋と1人部屋を頼みたい。」
「……2人部屋で7銅貨。1人部屋で5銅貨だ。」
「それで頼む。」
モモンは硬貨を取り出しカウンターに置いて部屋へ向かおうとする。
しかしテーブルで飲んでいたであろう冒険者がモモンの肩を掴む。
……はぁ。またか…一度分からせてやった方が速いかもしれないな。
「いい女を連れてるじゃねぇか……俺らに一晩貸してくれよ」
ちょっかいを出した男は仲間を連れて下卑た笑いを浮かべている。
少し乱暴をするか……。
モモンは男の胸ぐらを掴み投げる。
投げられた男はテーブルに落ちて放心状態。
「…次はどうする?一斉にかかってきてもいいぞ。」
モモンがそう言うと悲鳴にも似た叫びが聞こえてきた。
「おっきゃああああ!!」
うおっ?!何だ?
「ちょっとちょっとちょっと!!何すんのよあんたっ!!」
恐らく悲鳴の主であろう赤髪の女冒険者が近づいてきた。
「何とは?」
「何ってあんた自分がした事が分かってないの?!」
どうやらモモンが投げた場所が悪かったらしく、女冒険者が頑張って買ったと言うポーションが置いてあるテーブルに見事クリーンヒット。
赤毛の女冒険者はそれについてガミガミとモモンに詰め寄っている。
さてどうしたものか。と考えているとモモンは後ろで殺気を放っているナーベに気付いた。
?!やばい……何とかせねば……
モモンは自分が持っていたポーションを渡してどうにか場が納まった。
「災難でしたね」
「まったくだ…… 」
もう少しナーベには人間と接することに慣れて欲しいものだ。
モモン達は部屋で休むべく2階へと上がっていた。
「明日はどうしますか?」
「…私達は早速依頼を受けようと思うが君はどうする?」
「そうですね…私も受けようと思ってます。」
「なら明日の朝にまた合流しよう。」
「分かりました。」
「では私はこれで、今日はありがとうございました。」
「あぁ……。」
モモンはミラクが部屋に入っていくのを確認する。
「私達も行くぞ」
「はっ!」
そして2人も部屋へと入っていった。
――――――――――――――――
とある宿の一室。そこは薄汚く埃が舞っていた。
そんな場所のベッドに腰掛ける骸骨。そしてその骸骨が主であると言わんばかりに跪く黒髪ポニテ。
「……とりあえずこれからの行動方針を語っておこう。」
先程まで黒騎士モモンの姿であった骸骨、その姿はナザリック大墳墓の主であるアインズ・ウール・ゴウン。
そしてアインズはナーベにこれからの行動方針を伝える。
「私達はこの街で著名な冒険者としてのアンダーカバーを造る。
その理由の一つとしてこの世界の強者の情報を集める為だ。……そうだな…ナーベ、ミラクと少しじゃれていた様だったがだがどうだった?」
「じゃれていた訳では……!…いえ、申し訳ありません。」
「いや、いい。それよりもあの時お前は本気で殴りかかっていたようだな。それを彼女は容易く避けていた。そうか?」
「……私の実力不足です…」
あれ?変に誤解されてない?別にナーベの実力云々で言ったわけでは無いんだけど
「あぁ…ナーベよ。私が言いたいのは彼女…ミラクはこの世界の強者である可能性がある という事だ。」
「あんな羽虫如き…私が魔法を使えば一瞬で……」
うん、やっぱ話が噛み合ってないな。ま、いいか。
「魔法職のLv60のステータスを上回る身体能力。未知のアイテム……」
あ、そういえばあの水晶…鑑定してみるか。
そう思ってアインズは水晶を取り出し魔法をかける。
「オール・アプレイザル・マジックアイテム ……?!」
「どうかなさいましたか、モモンさ…ん…!」
アインズは鑑定の結果に少し動揺する。
その結果は鑑定不可であった。
「上位鑑定でも無理なのか……本当に未知のアイテムだな。」
「……?」
ナーベは頭に疑問符を浮かべながらアインズを見ていた。
「……やはり気になるな。」
アインズはボソッと言う。
「ナーベよ。しばらくミラクと同行する際、なるべくミラクを探ってみてくれ。何でもいい、彼女の情報を出してくれ。」
「……?…御意。」
アインズはナーベの答えに満足して再びモモンの姿へと着替える。
「では私は周辺の地理を確認してくる。定時報告を頼む。」
「お、お供を…!」
「いらん。」
そしてモモンは部屋から出ていく。
ナーベはその姿を見送りながら一息ついて
ナーベの頭に兎の耳が生え、ナーベは周辺に怪しい存在が居ないことを確認する。
そして
「
『ナーベラル・ガンマ…どうかしたの?』
『定時報告です。アインズ様はアルベド様を「あれほど信頼出来る者は他に居ない」とおっしゃっていました。』
脳内に直接響く相手の声にもならない叫び。
『よーしよーし良い娘よ!ナーベラル!その調子で私をアピールするのよ!』
相手はとても満足そうにナーベに話す。
『それともう一つ……道中の出来事何ですが報告として…アインズ様が「気になる人物ができた」と。』
その言葉によって相手は一気に声色を変える。
『気になる?それはどういう意味かしら?』
『その……冒険者登録の時に色々とありまして、人間の女が旅に同行することになりました……その人物がアインズ様は気になっているらしく……』
ナーベには遠距離だから伝わらないものの、連絡相手は普通の人間が気絶する程の殺気を放っていた。
『……ナーベ。本当にアインズ様はそうおっしゃったのね?』
『……?…はい。』
『そう、それは……そうなのね…でも大丈夫。たかが人間……コロス…!…人間如きが……!よくも尊き御方であるアインズ様に近付いたわね……!!……コロスコロスコロスコロス……』
そこで通信が途切れた。
そしてナーベは思うのであった。
やらかしてしまった……!!と。
Q, この小説、ナーベラルの扱いが酷くないですか?
A, ……………………人には黙秘権という物があります!!!