俺は大人しく薬草を採取している。何処で言葉を間違ったのか何ださっきの嫌な雰囲気。
そう思いながらも薬草を探しているとガサガサと横の草から音がした。
そこから出てくるのは茶色の毛並みに鋭く長い爪を持ったでっかい熊。口からはサーベルタイガーのような犬歯が飛び出していた。
熊はサンラクを見るやいなや咆哮し、襲いかからんとす。
しかしスタートが1歩遅れてもやはり
熊にとっては見えない速度で大剣が上から振り下ろされ真っ二つに。
もうこの血しぶきも慣れたんもんだな。せめて返り血が俺に掛からないようしてくれればいいんだが。
そこでサンラクは後ろから迫るもう一つの気配に気付く。
サンラクは警戒をして剣を構える。
そこから現れたのは…
「大丈夫ですか?……ッ?!これは…ミラクさんが?」
ンフィーレアだった。
――――――――――――――――――
「凄いですね……まさかトブ・ベアを一刀両断とは…」
「いえ、そんな事は…」
初めて見るモンスターだからつい力が入って真っ二つにしちゃったんだよなぁ……
「お騒がせをしてすいません…薬草採取を再開しましょう!」
パッツンは俺の様子を見て首を傾げる。
「……素材は剥ぎ取らないんですか?」
「あぁ……」
正直最近面倒くさくなってきている。取れる素材は精々レア度が低いもの…それに加えアプデかで余計リアルに近付き、剥ぎ取らなければ素材を採取出来なくなった。それに剥ぎ取りにはまぁまぁ技術が必要らしく、魚を捌くみたいに難しい。
「素材…いりますか?」
「……い、いいんですか?結構お高い物ですよ?」
「大丈夫です!どうせ捨てようと思っていたので、貰ってくれるのなら!」
「そう…ですか。ではお言葉に甘えて……て、剥ぎ取るナイフが無いや…」
「あぁ、ならこれ、あげます!」
俺はそう言って
まだ低レベルの時、レア度が高い武器ならと集めまくっていたはいいものの…結局使い続けているのは2本だけであり、今では強化しまくって勇魚兎月となっている。
そして残った致命の包丁達の使い所は投擲物にするにしろ今のレベル帯じゃほとんどダメージが通らねぇし、インベントリアの肥やしとなっていた訳だ。
「こ、こんな高価そうな物を頂いていいんですか?」
「遠慮なく、どうせ私は使わない物なので…精々役に立ててください!」
「そ、そういう事ならば…… 」
俺は立派に旅立っていった致命の包丁を眺め、解体ショーが始まった。
「この魔獣の一刀両断もそうですが…さっきは凄かったですね……あんな恐ろしい魔物を可愛いだなんて……」
パッツンは包丁片手にモンスターを解体しながら話しかけてきた。
……どうやらNPCの目にはあのハムスターは恐ろしく見えていたらしい。
「皮肉ですか?……」
俺はジト目でパッツンを睨む
「い、いえまさかそんな……」
「……冗談です!」
まぁ、ここで揉めても面倒なだけだ。俺は寛大だから忘れてやるよ。
そう思って笑って返す。
「だとしても、女性にあの態度は失礼ですよ」
「いやぁ…すいません。あんな恐ろしい魔獣を可愛いと思えるミラクさんは凄いなと思って……」
何かまたもや皮肉にも聞こえなくは無いが…多分相手はそう思ってるつもりは無いだろうな。
丁度いい。ここでネムに頼まれた事を解消しておくか。
「私だったから良かったものの…そんな事をエンリさんに言ったら嫌われますよ?」
「……?!…」
うわぁ、分かりやすい反応…ネムが気付くのも納得だな。
「エンリさんが好きなんですね?」
「なっ!……」
俺はイタズラっぽく問いかける。
「違いましたか?」
「ッ!……違わないですけど……どうして……」
「見てたら分かりますよ…多分、私以外だって気付いてる人も多いと思います」
まぁ、本当はネムから聞いたんだが
「ま、まさかエンリも……!」
ンフィーレアはそう言って顔が赤くなる。
「いや、エンリさんは…多分知らないと思いますけど……」
「よ、良かった……」
ンフィーレアは息を吐いて安堵する。
さてどうしたもんか……もちろん俺に現実での恋愛経験は皆無。あるとすれば精々役に立たないクソゲーの恋愛ノウハウ。ピザに攻略対象をNTRされないように頑張るなんて、明らかにクソゲーの域を超えてもはやバカゲーだろあれ。
まさかピザに気を付けろ何てアドバイスを与えれる訳もなく……まぁ、アレだな。どんな学校にも俺みたいな非リアは当然居るのだが、もちろん非リアという言葉が生まれるのならリア充という言葉も必然的に生まれるので……
非常に不本意で今すぐアーミレット・ガルガンチュラを投げてやりたいのだが……ネムの頼みだ。リア充の言葉を借りよう。
「…ンフィーレアさん、私は分かる通り女です。ですのでエンリさんの気持ちを少なからず分かります。」
ちっとも分かんねぇよ
「…は、はぁ……」
「………長い時間を掛けて、思いを伝えることは正直悪手です」
「…………?!…な、何故ですか…!」
パッツンが目を見開いて俺の次の言葉を待つ。
「結論から言うと……エンリさんがンフィーレアさんを異性として見なくなります。」
「?!…それは…本当ですか……?」
「はい。……思いを伝えずに長い時間そばに居ると、その人を異性ではなく友達として見る様になります。その結果いきなり思いを伝えられても今更異性として見られない、という事になります。」
「……そ、そんな…」
「ですので早めに思いを伝えた方がいいかと思います」
俺は内心眼鏡をクイクイさせながら言う。
「…………終わった……」
ん?パッツンの様子がおかしいぞ。
ンフィーレアは四つん這いになって地に伏せ、肩をガックリと落としている。
サンラクは不思議に思って問いかける
「……あのぉ…どうかしましたか?」
「…………実はエンリとは小さい頃からの仲で…一緒によく遊んだりしていました……」
…………盲点だったぜ……
いや、まぁ俺に出来ることをやったまでだ。頑張った、俺頑張ったぞ!!
「……えっとぉ…あ、そうです!私が言いたいのはアタックするなら早めにした方がいいですよ!という意味で………さっきの話は比喩表現です!(?)」
「ほ、本当ですか?」
涙目で言うパッツン
「本当です本当です!女である私が保証します!!」
何の保証にもなんねぇなぁおい。