「さて、これで依頼完了ですね!報酬をお渡ししたいので一度、お店まで来ていただけますか?」
「もちろんです。」
ンフィーレアとペテルが会話する。
「モモン殿は組合で魔獣の登録であるな!」
「はぁ……」
ダインはハムスケに乗ったモモンを見て言う。そしてモモンも少し不満そうに相づちを返す。
どうやら報酬を受け取る前にハムスケの登録をする必要があるようだな。先に報酬を受け取ってもいいが、一応漆黒の剣の紐だからな。モモンについて行くか。
「なら私はモモンさんについて行きますね」
サンラクはそう言う。
モモンも了承の意味を込めて頷く。
「……チッ…」
ナーベは相変わらずのようだ。
「えぇ、ナーベちゃんもミラクちゃんもそっち?……じゃ、俺もモモンさんにぃ……」
ルクルットがウキウキでモモン達へとついて行こうとすると、首をガシッと掴まれる。
「お前はこっち……!」
ペテルがルクルットを掴み無理矢理行く手を阻む。
「ちょ……おまッ!」
ダインがルクルットを抱え、ンフィーレアのお店へと歩いていく。
「では後ほど!」
ペテルが手を振って歩いていく。
そして同じくモモン達も見送り、ギルドへ向かうべく歩く。
――――――――――――――――
…501本、502本、503本、504本……はッ!!
一体俺は何を?
そこは冒険者組合の一室。そこでモモンのペット及び魔獣のハムスケが真ん中に座っており、その対面に組合の職員が紙とペンを持って、眉を寄せながら集中してハムスケの似顔絵を描いていた。
……ぁあ、暇だ。
まさか、似顔絵を描く必要があったとは……かれこれ1時間ぐらい椅子に座らされている。暇すぎてハムスケの毛を1本1本数えていたぐらいだ。
そう、モモン達3人は魔獣の登録をしに来たところ、どうやら魔獣の似顔絵を描く必要があると聞かされ、似顔絵が完成するのを椅子に座って待っていた。
もう外も日暮れ時、夕日の赤い光が窓から差し込んでいた。
サンラクはやたらとソワソワし始め、気分を紛らわす。
そんなサンラクを見て気を使ったのか、モモンがサンラクに話しかける。
「……あぁ…ミラク、もし良ければ先にバレアレ氏のお店に行って報酬を受け取ってきてくれないか?」
サンラクの耳がピクッと動いた。
サンラクはスっと椅子から立ち
「行ってきます……!」
モモンにサムズアップして部屋を出た。
――――――――――――――――――
ふぅー、モモンの気遣いかは分からんが、多分気を使ってあの牢獄から出してくれたんだろう。
サンキューだぜモモン!また直接言っておかないとなぁ。
……そうそう。確か依頼の報酬を受け取る必要があるんだよなぁ。
えっとパッツンの店は…………アレだな。
サンラクは目で建物を追っていき、見覚えのある店を見つけ出す。
ここであってるよな?やけに静かな様な……
サンラクは不思議に思いながらも、店のドアを掴んで開ける。
「お邪魔しまーす……?!」
サンラクが店内へと入ると明らかに不穏な光景が目に映る。
「ありゃ?お客さぁん?…なぁんで入ってきてんの?……ドアにはちゃんと 閉店中 って書いてあったでしょぉ?」
口角を釣り上げて喋るのは初対面の女。金髪のボブカットで黒いマントの下にビキニアーマーに似た軽装の鎧を来ている。
女の手に持つスティレットは赤い液体で染まっており、女の笑う姿と相まって異様な雰囲気を感じさせる。
「あなたはどなたでしょうか?」
サンラクは口調を強め、警戒心を強める。
「誰ってぇ……あぁ…もしかしてコイツらと知り合い?」
女はそう言って後ろを指さす。
そこには体中に傷を負った漆黒の剣のメンバーがいた。
「……ッ、ミラクさ…ん……」
そう言ったのは血だらけのペテル。
その言葉を最後にバタンッと意識を失った。
よく見るとペテルの左右横にルクルットとダインが倒れていた。
そして守られるように後ろに居た二ニャ。幸い二ニャはケガはしているもののそこまで重症ではないようだ。
「ミラクさん…!その女は危険です!!逃げてください!!」
二ニャがサンラクの存在に気付き大声を出してサンラクへと叫ぶ。
「アハッ!その感じだと…お仲間って感じ?ミラクちゃん?だっけ?逃げてもいいんだけど……お仲間さん達がどうなっても知らないよぉ?」
女は口が張り裂けんばかりに笑う。
「逃げる?何でだ?…それよりもお前が逃げた方がいいんじゃねぇか?」
女はまたフフッと不気味に笑う。
「よく居るんだよねぇ…自分の実力を過大評価しすぎて、相手の実力も分からず、無駄に死ぬやつら……!アイツらの死ぬ前の顔がいっちばん笑える!!」
「これはこれは、大きいブーメランを投擲するとは……中々に自虐的なヤツだなぁぁ……」
サンラクも笑い煽り返しながら剣を手に構える。
「ブーメラン?なぁんでブーメランの話になってんのか分かんないけど………まぁ、いいや…そのヴェールの下の醜い表情、私に見せてねぇ……!」
女もスティレットを構えてそして
前へと足を踏み切り、一気にサンラクの方向へと走る。
サンラクも防御の姿勢を取るが……
女の走る軌道の到達点はサンラクではなく、サンラクとは数m離れた出口の位置に到達した。
サンラクは少し間の抜けた顔をして固まる。
「ごめんねぇ……本当は殺してあげたいんだけど、今はあんまし時間無いんだよねぇ……じゃ、そゆことでぇ……」
「ッ、ちょ待ちやがれ!!」
サンラクはやっと女が逃げようとしているという事を理解し女を追いかけようとする。
しかしサンラクは後ろに居た二ニャの声で呼び止められる。
「ミラクさん!!ペテル達が……ペテル達が…!!」
……チッ、今はこっちが優先か……!
サンラクは追いかけようとしていた身体を引き戻し、店内に倒れている3人の元へと駆けつける。
「大丈夫ですか?」
「さっきから名前を呼んでも反応が無くて……!」
二ニャが焦った口調で言う。
「回復のポーションはありますか?」
「ポーション……そういえばここは薬師の店です!ポーションならそこに陳列してるはずです!」
そう言って商品が並んだ棚を指さす。
サンラクは直ぐに棚の傍に行き、陳列された商品を確認する。
ん?文字が読めねぇから分かんねぇけど……ニニャの様子だと多分これか…?
そうしてサンラクは青い液体が入った小瓶を手に取る。
青いな……本当にこれであってんのかぁ?
サンラクは持てるだけ手に持って二ニャの元へと戻る。
「めぼしい物を持ってきました……これで大丈夫ですか?」
サンラクは小瓶を二ニャに渡す。
「ありがとうございます!これで……!!」
二ニャは受け取った小瓶の蓋を外しペテル達にかける。
反応は……
「そ、そんな……。…大きい傷が塞がらない…。」
ペテル達は小さい傷が消えたものの、大きい傷はまだ治っていない。
二ニャは顔が曇り、絶望する。
サンラクはそんな二ニャを見ながらも、何かを考えていた。
妙だな……こんな色の回復薬なんて見た事ねぇし……回復量が弱いような……
いや、実際俺達プレイヤーは身体のケガとかじゃなく、HPのバーを見て回復するから回復薬一本でケガがどのくらい治るとか分からんが……
傷だらけ と 俺 VS 貪る大赤衣 のとき、俺は 傷だらけ をカバーするべく回復ポーションで回復しまくっていた。
あの時は後々その行為が逆効果だと気付いたんだが……あぁダメだ。また話が逸れている。
話を戻すと、俺が回復ポーションを使っていたとき 傷だらけ は今のペテル達の傷ぐらいは余裕で治っていた。まぁ、Lvとかステータスとかの兼ね合いもあるんだろうが……
つまり言いたいのはこの青い液体は俺が知っている回復ポーションなのかって話。
ウィンドウも出ないが、見た目も、効果も、俺が知っている回復ポーションじゃない。
……試してみる価値はあるか…NPCは死んだら戻らねぇし…………
そう思ってサンラクはインベトリアから持っていた赤い回復ポーションを取り出す。
「……ミラクさん…それは……?」
二ニャも気付いたらしく、サンラクの手に握られている赤いポーションを見る。
サンラクは蓋を開け、ペテル達に回復ポーションをかけた。
するとペテル達が負っていた怪我はみるみる内に治っていき、先程まで息苦しそうにしていた顔が段々と穏やかなものになり、今はスースーと寝ている様に落ち着いた。
「……?!…治っていく……傷が……ミラクさん、一体何を…?」
「あぁ…えっと…回復ポーションをかけてみただけですが?」
「……今の赤い液体が……?」
「あぁ、はい……。」
あれ?何かやっちゃったか?
サンラクは二ニャの反応に困惑していると
「ありがとうございますッ……!!」
「え?」
二ニャの目には涙が溜まっていた。
「……仲間達を…私の仲間達を助けてくださり……本当に、ありがとうございますッ……!」
二ニャの心からのお礼。そして溜め込んでいたものが一気に爆発したように、二ニャは泣き出した。
ん〜?何か、俺自身は回復ポーションかけただけなんだが……はてこんなに感謝されるものなのか?
何か違和感だな…回復ポーションなんて誰でも持ってるだろうに……さっきの青い液体だって、多分あれMP回復用のポーションだろ?
気が動転してて間違っていたんだと思うが……
まぁ、いいか。結果オーライだ。
あれ?そういえば誰か1人足りないような……
えーと、二ニャにペテル、チャラ男にダイン………………
あ、パッツン……!
24話にしてやっとここ……長かった……