「…………はぁぁぁ………。」
喪服を着た女はエ・ランテルの道のど真ん中で長い長いため息を吐く。
エ・ランテルの共同墓地で起きたアンデッドの大量発生事件。
その主犯であるカジットとクレマンティーヌという輩。実の正体は秘密結社ズーラーノーンという組織の幹部だったらしい。
俺達はあの後、カジットの死体(灰)とクレマンティーヌの死体(生首と胴体)を死体安置所に届け、事件の詳細な内容を冒険者組合にて話した。
ギルド長曰く、街が1日で壊滅させられる程の大事件だったらしく、俺達 漆黒 と 仇討人 はカッパーから一気に昇格してミスリル級冒険者に。
カッパーからミスリルへのスピード出世に加えて、アンデッドの郡勢から街を救ったという事が一気に拡散され、俺達は一躍有名人。
名指しでの依頼が増え、金もガッポガッポ。安定した収入で自立出来るようになり漆黒の紐を辞め、同行することも無くなった。今はアイツらが何処で何してるかも分からない。
漆黒の剣の奴らも今は完治して元気よく冒険者やってる。
事件後は、名指しの依頼を受けてはモンスターをちぎっては投げちぎっては投げ、襲ってきた野党もちぎっては投げちぎっては投げ、スピード出世した俺を気に食わない冒険者共もちぎるのは不味いので殴っては投げ殴っては投げ、そんなこんなで色々あり、晴れて最高ランクのアダマンタイトになった。
最近の目標でもあったアダマンタイトになり、ルーキーのときに悩んでいた金も今では持て余す程持っている。
そんな勝ち組みたいな俺がなんで冒頭からため息をしていたというと……
原因は1つじゃないから一つ一つ説明してやる。
まずひとーつ!!
「ミラクさん!!私と生涯を共にして欲しい!!!」
正装をした男がサンラクへと告白する。
はい、これです。
サンラクは苦笑いで断る。
自分で言うが俺は愛想がいい。いや、俺のロールプレイは愛想がいい。
今更だが俺のロールプレイで参考にしている人物は秋津茜だ。
アイツは今まであった中で間違いなくコミュ力が高い。もはや体がコミュ力で出来ていると言っても過言ではない。
極めつけにあの明るさ……ゲームに登場するキャラクターが現実に具現化したのかもしれない。
俺の周りで一番女の子してるのが秋津茜で、ネカマロールプレイをするとして真っ先に思い浮かんだのがそれだ。
ロールプレイといえどその破壊力は凄まじく、野郎共の心臓を次々と射抜いていた。
サンラクが気付いたときにはもう遅く、ネカマに騙された哀れな男共は叶わぬ恋を心に留め、ある者は思いを胸の内に止め、ある者はその心境を告白する。
まぁ、もちろんぜーんぶお断りしてるんだがな。そりゃそうだろ?そんな趣味は持ち合わせてないしな。
危うく逆ハーレムルートに入るところだ。いや……俺は男だからハーレムルート?いやでも近付いてくんのは男共で俺は女だから逆ハー……?
とにかく、BLTS逆ハーレムルートは何としても阻止せねばならん。
まぁ、でも俺を女だと思って告白してくる輩をスパっと断って、その反応を内心で楽しんでる俺が居ることも、なくなくなくはない。
最近では変な異名が出回り始めている。
「死神」
見た目から考えたら在り来りっちゃ在り来りだよな。犯罪者や野党共は、圧倒的な力を持って命を刈り取る姿からそう呼び、また俺に惚れた男共は魂を奪われたとのたまい男の魂を奪うという意味でそう言う。
おい後者は後付けだろ!勝手に惚れたのはそっちだろぉが!!
まぁ、そんなこんなで男共の告白が耐えねぇ。更には
「ま、待ってください!」
先程告白してきた男がサンラクの肩を掴んでサンラクの動きを静止させる。
こんな風に諦めきれずにしつこく執着してくる奴もいる始末。口で言っても分かんねぇなら拳で語るのが吉。
サンラクはそう思って手に力を入れるがその拳が男に振るわれる事は無かった。
「おいおい兄ちゃぁん!なぁに気安く姉貴に触れてんだぁ?」
突然何処からかチンピラが現れ、男の腕を掴んで男を睨む。
「な、何ですか貴方は?!」
あぁ、丁度良かった。このチンピラは俺の悩みの一つでもある…………
「俺ぁ、ミスリル級冒険者のクラルグラのリーダー、イグヴァルジってんだぁ。これ以上姉貴に付きまとうってんなら俺達が黙ってねぇぜ?」
そしてクラルグラの他のメンバーがぞくぞくとやってくる。
やってきたチンピラ共は男を囲む。
さっき話した俺を気に食わないと変に絡んできた冒険者の奴らがコイツらだ。
今はこんな感じだが前までは俺を見つけるやいなや有りもしない言いがかりを付けたり変な噂を立てたり、挙句の果てに依頼の邪魔をしてきた。
まぁ、もちろん俺も嫌がらせされて黙ってる程お人好しでも無いわけで、全員鉄拳制裁を下した。それはもう泣くほどのコテンパンに。
それで懲りたのかもう俺への嫌がらせをしなくなった。
だがそれで終わらなかった。何を思ったのかこのオッサン。俺の事を姉貴と呼んで変に付きまとう様になりやがった。
そしてこんな風に話に突然割り込んだりと後ろに着いてきたりと前より一層 面倒になった。
「兄ちゃぁん!姉貴はしつけぇ男は嫌いなんだってよォ!悪いこたぁ、言わねぇよ。もう俺達の姉貴に近付くんじゃねぇ!!」
俺達の姉貴って何だこら。いつお前らの物になった?てか、お前らの方が十分しつけぇよ!前言ったよな?もうそういうのいいからって。ほっとけって!!
「あのォ……イグヴァルジさん、もうそういうの辞めてくださいって言いましたよね?」
「大丈夫だ姉貴!ここは俺に任せて離れといてくだせぇ……!」
イグヴァルジはサンラクにサムズアップをして言う。
ピキっという音が何処からかした。
「ミラクさん……!これは男と男の勝負です!口出し無用です!!きっと貴方をこの男から救ってみせます!」
ピキピキっという音が何処からかした。
コイツら何も話を聞いちゃいねぇ……てか、取り合ってんのネカマだからな?心は男だからな?
そんな事は知る由もなく、いつの間にか男共は喧嘩を始めていた。
「……あのぉ!」
サンラクの声は喧嘩をしている2人には届かない。
よし!分かった!つまりはこうだろ?
…………返事が無い、ただの屍のようだ。
サンラクは喧嘩をする2人の手を掴んで…………
「み、ミラクさん……」
「あ、姉貴…………」
2人は腕を掴んできたサンラクの事を……あぁ、喧嘩を止めにきてくれたんだ。何て優しい人なんだ……と思ったようだが……実際は
屍は屍らしく地面に転がっとけオラぁ!!
サンラクは2人の腕をちぎれんばかりに強く握り、そして両手で引っ張り地面へと背負い投げをした。
「「ぐぶッ!!…………」」
2人は意識が飛び、口から泡を出しながら気絶した。
「喧嘩両成敗だ。」
サンラクは手についた埃をパッパッと払い、その場を去る。
一応手加減はしたからな……俺が本気を出したら今ごろ破裂してただろ。
馬鹿はこの世から消すべし、これ鉄則なり。
あぁ、そうそう。話を戻すが……これを見ててくれよ。
そう思ってサンラクは身を隠すように路地裏へと入る。
そして地面に映る自分の影へと視線をやる。
最近あぁいう輩が多くなったからかストーカーも発生するようになった。コイツも中々に厄介で………………
サンラクは後ろに背負っていた別離れなく死を憶ふを手に持ち、そしておもいっきり自分の影にぶっ刺した。
「ぐぎッ!!」
俺の影に潜んでストーカーしてきやがる。
サンラクの影は見る見るうちに形を変え、影から悪魔が出てくる。
そして悪魔は形が崩れ、灰となって消えた。
まぁこのように、定期的に俺の影にはストーカーが潜り込んでやがる。誰の差し金か知らんがプライベートは守ろうや?
はぁ、なんて罪なネカマ何だろうか…………
これで最初にため息を吐いた意味が分かったと思う。
だが原因はまだある。
俺はもう最高ランクのアダマンタイト級冒険者な訳だが、最初の頃はアダマンタイトになれば強いモンスターと戦えると思っていたが……とんだ骨折り損だった。まぁ別に苦労してないけど。
ここでは難度というものが強さの指標となっている。で、アダマンタイトになると難度90以上のモンスターと戦える。
しかし、だ。実際戦ったものの他の雑魚モンスと変わらず一発で終わった。
つまり最高ランクになってもモンスターが弱かった……弱すぎた。
吸血幼女の時みたいなモンスターは居なかった。やっぱあいつレアエネミーだったんだな……。
今の俺のヴォーパル魂はほとんど0に近い。目標を失い、完全に無気力状態。
そんな俺にトドメを刺したのは鍛冶屋のオッサンだった。
耐久値が減った武器を直してもらおうと鍛冶屋によったら……こんなモン、ウチでは直せねぇ!帰ぇりな!!と突っ返された。
ふざけんな……!仕事放棄しやがって!!
だがもう怒る気力も残ってねぇ……もう、こんな街は嫌だ!!
男には好かれるし、ストーカーは居るし、モンスターは弱いし、武器も直せねぇ!!
さっさと出て行ってやる!!ギルド長の奴にもこの街を出ることを止められていたが、もう知ったこっちゃねぇ!!
いざ新天地へ!!
あ、その前に…………
サンラクは人目の無い路地裏へと行き、自分の首へと剣を突き立てる。
女の姿も疲れたからな。一回リスポーンしてしばらくは男として行動しよう……
そしてサンラクは己の首を切った。
しばらくはサンラク(男)の姿で行動するようになります!
いざ、新天地へ!!