オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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成長

成長

「レアエネミー……出ないもんかねぇ……」

 

サンラクは目の前にいるアンデッドをつまらなそうな表情をして切る。

 

どいつもこいつも一撃一撃。しかも柔らかすぎて切ってる感覚が全くしねぇ……。

 

「サイナ、そっちはどうだ?」

 

サンラクはやる気の無い声で言う。

 

「報告:こちらも低レベルのモンスターしか発見出来ていません。残念ながら契約者が望むような相手は今の所目視していません。」

 

サイナもまた同様、向かってくるアンデッドに対して化粧箱の双剣モードでちぎっては投げちぎっては投げ。

 

そうか…………。アンデッドの多発地域であるカッツェ平野……。年中アンデッドが現れ続ける謎の場所。ヘッケランによるとここら辺は危険な場所らしいが特にそんな様子もないな……。

 

サンラクは向かってくるアンデッドを蹴散らしながらため息をつく。

 

――――――――――――――――

 

「ふへ〜……アイツら本当に何者なんだ?向かってくるアンデッドが一撃で倒されるは倒されるは……」

 

ヘッケランはそんなサンラク達の様子を見て関心している。 

 

「関心してる場合?!」

 

イミーナは気の抜けた声で関心しているヘッケランに対して怒鳴る。

 

ヘッケラン、イミーナ、ロバーデイク、アルシェの4人は陣形を組み、お互いがお互いをカバー出来る位置取りで目の前にいるアンデッド達を警戒している。

 

ヘッケランが前線に出てヘイトを稼ぎ、イミーナが弓矢で射撃。ロバーは2人のカバーが出来る位置に立ち、魔法で援護しながら2人に近付くアンデッドを駆逐。そしてアルシェは後方からの魔法攻撃で前線から漏れるアンデッドを倒し、ヘッケランとロバーが苦しくなればカバーを入れて余裕を作る。

 

魔法の矢(マジック・アロー)!」

 

アルシェが呪文を唱え、4本の矢がヘッケランに肉薄するアンデッドへと突き進む。

 

「ナイスカバーアルシェ!!」

 

ヘッケランは怯んだ隙に相手の胴体を切りつける。

 

次にロバーが抑えていたアンデッドへと近付き後ろから十時に斬る。

 

「…………しかし…!…1度に4本の矢を出せるとは…驚きました……!」

 

ロバーが次のアンデッドを引き付けながらそう言う。

 

「なぁ、それってさぁ……!……実際、どれだけ凄いんだ?」

 

ヘッケランも寄ってきたアンデッドと対峙しながら言う。

 

「凄いも何も……!…魔法の矢というものは術者の使える最高位階魔法に合わせて……!…………その本数も増えます……!!…………ですのでアルシェさんはあの歳で第4位階まで使えるという事です!」

 

ロバーはアンデッドの攻撃を受け流しながら隙を見て攻撃を加えていく。

 

「あの歳で第4位階が使える魔法詠唱者など稀です!……一言で表すなら天才という言葉が一番しっくりきますよ……!!」

 

「なるほどな……!…俺達はとんだ金の卵を拾ったらしい……!!」

 

「間違いないですね……!」

 

2人はアンデッドを倒しながらもアルシェについて話す。

 

イミーナも味方に当たらないように見事な射撃をアンデッドに放つ。そしてそんな2人の様子を見て

 

「アルシェちゃんの話はここを切り抜けてから……!改めて歓迎会なんか開いてしてちょうだい!!……今はこのアンデッドの郡勢に集中してよね!!」

 

イミーナは2人を叱責する。

 

「……アイツもちゃっかり歓迎会を開こうとしてんのな……!」

 

「イミーナさんも素直じゃないですね……!!」

 

そんな3人の会話がカッツェ平野に響く。もちろん3人、お互いがお互いに聞こえる声で話しているため、後ろで魔法を撃っていたアルシェにも当然聞こえてる。

 

アルシェは3人の会話を聞いて、少し誇らしいようで恥ずかしいようで……照れていた。

 

そんな自分を戦闘中だ!と集中するように切り替えようとするアルシェ。

 

そして全体へと視野を広げ、イミーナへと近付くアンデッドがいる事に気付く。

 

また魔法を放つ為に杖を構えそのアンデッドの方へと杖を向けたとき

 

「…………?…何か…………暗い……?」

 

アルシェはある事に気付いた。イミーナの周囲が明らかに影が濃くなっていることを。

 

カッツェ平野は霧に覆われ薄暗い。しかしそれでも他の場所と比べれば明らかと言える程、イミーナの周囲は暗くなっていた。

 

「まるで何かの影みたいな………………?!!」

 

何気無く呟いた言葉……しかしその言葉によってアルシェはその影の正体に気付く事が出来た。

 

「不味い……!イミーナさん!!上!!!」

 

アルシェは今まで出した事の無いような声でイミーナへと叫ぶ。

 

イミーナは直ぐにそれに気付き言われた通りに上を見上げ確認する。

 

そこには白い肌を持った……いや、肌というにはあまりに固くそして無機質。

 

細かい人骨が身体を形成しており、それはまるでドラゴンを形作っていた。

 

そう、それはかつてモモンとナーベが相対したドラゴンの紛い物。スケリトル・ドラゴン。

 

イミーナはその巨大な骨のドラゴンに見入ってしまい、上を見上げたまま立ち竦む。

 

スケリトル・ドラゴンは明らかにイミーナを目視しており、そのまま下に居る虫を踏み潰そうとしていた。

 

アルシェはその様子を見て素早く頭で整理する。

 

イミーナさんは…………動けない。ヘッケランとロバーさんは……アンデッドを抑えていてとても直ぐに動けた様子では無い……!

 

ならば!とアルシェは自分に魔法を掛ける。

 

飛行(フライ)!!」

 

アルシェは魔法詠唱と共に身体が宙へと浮き、イミーナの方へとすぐさま飛び去る。

 

間に、合え……!!

 

アルシェは自分が出せる精一杯の速度でスケリトル・ドラゴンの真下へと辿り着く。

 

そしてイミーナの腕を掴み

 

ダンッ!!

 

地響きが鳴り辺りに砂埃が舞う。

 

「ゲホゲホッ…………イミーナ!!大丈夫か!!」

 

地響きのお陰で相対していたアンデッドが衝撃で吹き飛ぶ。

 

そしてヘッケランは砂埃により視界を奪われながらも、命の危機に瀕していたイミーナの生存を確認する。

 

「ヘッケラン!私は無事!!」

 

響き渡るイミーナの声。

 

「よ、良かった……」

 

ヘッケランは安堵の息を吐く。

 

「ありがとうアルシェ……助かった……。」

 

イミーナは命を助けてくれたアルシェへと感謝の言葉を言う。

 

「いや…………それより今はあのモンスターに。」

 

見据えるのは自分の何倍もある巨体を持つ骨のドラゴン。

 

「ロバー!居るか?!」

 

「ゲホッ……ここに居ます!!」

 

「よし…………全員一回集まれ!」

 

ヘッケランはそう言って一度全員を収集。

 

「どうするの?一度撤退する?」

 

イミーナが言う。

 

「どうだろうな…………せっかく4人のパーティーが作れたんだ……正直俺はやってみたいって気持ちはあるぜ?」

 

ヘッケランが調子の良いように言う。

 

「……スケリトル・ドラゴン…………難しい相手ですね。」

 

とロバーが言う。

 

「アルシェは?」

 

ヘッケランはアルシェの意見を聞こうと問いかける。

 

「……私の魔法攻撃は使いものにならない。正直不利だと思う。だけどその反面、何処までできるのかを試したい私がいる。」

 

アルシェは無表情で返す。

 

「思ったより好戦的だねぇ。お前らはどうだ?」

 

「アンタに任せるよ。」

 

「私もリーダーに任せます。」

 

イミーナとロバーはそう軽々しく返す。

 

「へっ!これがもしかしたら地獄への片道切符だったりしてな!!」

 

ヘッケランは眼前の強者に感化されてか緊張してか、そんな冗談を言う。

 

「じゃ…………やるか……!!」

 

その合図で4人は散らばる。

 

――――――――――――――――

 

おぉー……おっぱじめたか……。

 

サンラクは遠目から見える骨のドラゴンの様子とそれに相対するヘッケラン達を見る。

 

正直獲物を横取りしたいって気持ちはあるが…………まぁ、俺は常識人なのでな。そこまで頭がバーサーカーにはなっていない。

 

アルシェが空を飛んで滞空でのヘイトを稼いでる……と。

 

「やけに好戦的だな?さっきまでは安全圏から攻撃していたのに……」

 

「補足:種族名スケリトル・ドラゴン。推定難度48。魔法攻撃の一切のダメージが入らない凶悪なアンデッド。」

 

うおっ!?…………なんだコイツ……いきなり。アニメでよく見る、いつも主人公の横にいる解説キャラみたいになってるぞ?

 

てか詳しいな。そんな情報いつ手に入れたのやら。

 

「何ですかその目は…………当機はスーパーインテリジェンスハイテクロボですよ?情報収集をしていないとでも?」

 

スーパーインテリジェンスは余計だな。無駄にハイテクってのは否定しないぜ?無駄に、だが。

 

てか、魔法攻撃が効かない……ね。

 

アルシェは攻撃面では貢献できない分、避けタンクとしてパーティに貢献しようって訳だ。

 

「サイナ、お前から見てアイツら勝てそうか?」

 

「回答:恐らく勝つ、でしょうね。スケリトル・ドラゴンは魔法職には厄介ですが、パーティで挑む分にはあまり強敵にはなり得ないでしょう。」

 

「そうか……」

 

それを聞く限りじゃ、特に強いって訳でもないか…………だったら俺が出る幕も無いわな。

 

どっかにレアエネミーは居ないものか…………。

 

サンラクはそう思って空を見上げる。

 

ん〜、スケルトンのコツコツというような音。ゾンビの低い唸り声…………。

 

中々に心地良く聞こえてきたな。

 

脳裏に浮かぶは不自然な形となったゾンビの断末魔。

 

ゾンビを倒してそのゾンビをクラフトしてパズルにして組み立てるという、どういう頭してたらこんなものを思い付くんだというゲーム。所謂クソゲー

 

あれは中々に癖になる。レアなゾンビ程、形が難しくなり造形が細かくなる。さらにクラフトする事でゾンビが進化して、新たなゾンビを作りパズルで組み立てる…………。

 

今じゃこんな神ゲー(と世間から言われているもの)をプレイしているが、昔はクソゲーばっかやりまくってたからな……俺の青春だな………………。

 

そんな遠い目で空を見上げていた。

 

そんな場にそぐわないチルタイムを過ごしていると

 

「報告:契約者、どうやら面白い物がこちらへと向かってきているようですよ?」

 

サイナがサンラクへと声を掛けた。

 

ん?物?

 

サンラクがサイナを見ると何やら親指で方向を指し示していた。

 

サンラクはその方向を見て唖然とする。

 

「…………船?」




第4位階魔法……本当は使わせるつもりでしたが、まだ後になりそうです
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