オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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格の違い

目の前にあるのはブリュバスの武装衝角によって真っ二つに割れた幽霊船だったもの。

 

サンラクは幽霊船の機能が停止した事を確認してサイナに指示を出す。

 

「サイナ!もう降りてきていいぞ!」

 

上に飛んでいたサイナが甲板へと下りてきて、同時に船も地面へ着地する。

 

サンラクは降りてきたサイナから装備を受け取りインベントリアヘ入れる。そして大破した幽霊船を眺める。

 

「しっかし、綺麗に真っ二つとは……船も見た目通りに耐久もスペックもゴミだったのか……」

 

サンラクが呟く。

 

「……普通の船は多分あんな感じでぶっ壊れると思うが……」

 

そう言うのはヘッケラン。

 

「それどころか都市一つならば簡単に滅ぼせそうですよ。」

 

とロバー。

 

「ねぇ、アルシェ……サンラクに何とか言ってあのバリスタ貰えないかしら……?」

 

アルシェの耳元で言うのはイミーナ。

 

「…………あんな威力の魔道具……価値で言えば国宝級だと思う。国に一つあるかどうかも怪しいレベル……」

 

イミーナにそう返すアルシェ。

 

どうやらイミーナはあのバリスタをお気に召したらしい。だからと言って、はいどうぞとあげる訳もないが。

 

てかアレをあげたとしても何に使うんだ?重たいしデカいしでほぼ持ち運びなんて出来ねぇぞ?

 

サンラクがそう心の中で突っ込んでいると

 

「推奨:契約者、剥ぎ取りはしなくていいのですか?」

 

サイナが提案。

 

ん?……あぁ、ドロップアイテムな。

 

「……よぉし!そうと決まれば……!……ってあれ?4人はどこ行った?」

 

サンラクが振り返ると4人の姿は消えていた。

 

ん?

 

サイナがちょんちょんとサンラクの肩を叩き、船の下を指さす。

 

既に4人は船を下り、大破した幽霊船の中へと足を踏み入れていた。

 

早っ!!

 

「おい!サイナ!俺達もさっさとドロップアイテム手に入れるぞ!!」

 

「了解」

 

――――――――――――――――

 

「…………思ったよりも……金目の物はねぇな……」

 

そう呟くのはヘッケラン。

 

どうやら幽霊船の中は外の見た目同様にボロボロで、床が所々崩れていたり、木材も腐って脆いものになっているようだ。

 

幽霊船というのならば宝箱の一つや二つ、あってもいいものだとは思うが、見つかったのは数枚のメダル。

 

恐らく金で出来た物でありメダルの表と裏には女性の顔を模したものと、無数に枝分かれした大樹を模したものが描かれていた。

 

「売ればまぁまぁな値になると思うが……分配をどうするかだな……」

 

ブリュバスが無ければこの幽霊船を撃破することは出来なかった。つまりブリュバスの所有者であるサンラクのおかげで幽霊船を撃破したと言っても過言では無い。

 

そのため必然的にサンラクへの分配が多くなる訳だ。

 

そしてヘッケランは自分達への利益の分配を少しでも多く出来るように交渉しようとサンラクを見ると

 

「…………ヘッケラン、その硬貨。少しだけ見してくれ」

 

サンラクが言う。

 

ヘッケランは了承し、硬貨を一枚、サンラクへと投げる。

 

そしてサンラクはそれを吟味するように見る。

 

…………重さ的には純金っぽいか?いや実際の金がどんな重さかは知らんが……

 

綺麗な彫刻が彫ってあるな……新マップ、つまりここら辺の硬貨は通貨として使えるものの、彫刻の掘りが結構ぶっ格好だったりする。

 

それに対してこちらは絵に書いたような本当に綺麗に掘られている。

 

「サイナ、どう思う?」

 

サンラクはサイナに硬貨を渡す。

 

「解析:……ごく普通の硬貨のようですね。特に魔力的エネルギーが内蔵されているわけでも、機械のような複雑な構造をしている訳でも無いようです。」

 

「そうか……返すぜヘッケラン。」

 

サンラクはヘッケランに硬貨を投げる。

 

ヘッケランがそれを慌てたようにキャッチし、サンラクは続けて言葉を続ける。

 

「そのコインで発生する俺への報酬の分配はゼロでいいぜ?」

 

「……いいのか?」

 

ヘッケランは少し訝しげに思いながら再度確認をとる。

 

サンラクは頷く。

 

金には困ってないし……

 

あの硬貨に金銭的価値しかないなら欲しいとは思わないな。欲しいとすればもっと実用性がある魔道具的なやつ。何かの装置でも可。

 

おっと、船内は大体調べ尽くしたようだな。見る限り探索する部屋も無い。

 

だとするとあとは甲板か?

 

――――――――――――――

 

歩くと床が抜けそうなぐらいボロボロだな……よくこんなんで船を乗り回していたよな?

 

俺のブリュバスを見習えよ。一度はぶっ壊れたものの、金だけ置いて丸投げしたらいつの間にか元の姿に戻ってたぜ?何ともビックリなイリュージョンだ。

 

所々に生き残ってるアンデッドが居たが、今更そんなものは敵ではない。拳で殴ればカランコロンと何とも心地よいハーモニーが奏られる。たまにグチャという音も聞こえるが……

 

特に目立った物は無いか……後は船長室らしき場所…………

 

サンラクは甲板の後方にあった一室へと近付く

 

…………ん?

 

何か…………船長室っていうか……牢屋みたいな?

 

中から外へと繋がる窓的な場所は鉄格子で作られ、ドアも鉄の扉で作られている。

 

「この船は元々は拾ったものだ……」

 

サンラクが訝しげに観察していると後方からかすれた声が聞こえる。

 

「私が大昔にこの土地で偶然見つけた……」

 

その声の主はこの幽霊船の持ち主である先程のエルダーリッチ。

 

エルダーリッチは床へ倒れた状態でボソボソと、しかしサンラクには聞こえる程度の声で喋る。

 

「下位のアンデッドを従え、そしてこの船を運営していた。しかし私がこの船を見つけた当時から、その部屋は開かずの扉であった。

 鍵を差し込むような穴は無く、破壊を試みようともビクともしなかった。

 時を重ねていく事に分かった事がある。その部屋には何かがいるということ。たまに鉄格子の隙間から見える赤く光る目。そして外からでもヒシヒシと伝わる緊張感と恐怖。

 次第に私はその部屋がなぜ開かないのかを理解した。その部屋には何かがいる。この世の恐怖を詰め込んだような強大な力を持つ何か。それをこの船は閉じ込めているのだと。封じているのだと。

 そして今日、この時、この船の機能は停止した。つまり……!!……その開かずの扉は解き放たれた!!パンドラの箱は今宵解き放たれたのだ!!!あははひは!!もう終わりだ……!!全員皆殺しだ!!!」

 

…………………………

 

広がる沈黙。それは恐怖……という訳ではなく

 

サンラク達は突然喋り出したと思ったらいきなり大声で笑い出したエルダーリッチにドン引きしていた。

 

だってそうだろう?床に這いつくばったいい歳した(?)アンデッドが突然1人で語り出してはイタい言葉を大声で吐き捨てたのだから常人ならば共感性羞恥で鳥肌物だろう。

 

まぁ、そんな事はさておきサンラクは牢屋を蹴りで開ける。

 

「な……!!貴様……話を聞いていたのか?!」

 

後ろから聞こえる驚愕した声。

 

どうせ弱いモンスターなんだろ?

 

サンラクはそう思う。

 

俺は決めた。過度に期待しないということ。変に強いと期待して失望するのは疲れたのだ。

 

まぁ、これを言うことによりフラグが立ち、強いモンスターが出てくる確率を上げる目的もある。俺って天才か?!

 

そんな事で俺は過度な期待は辞めようと心に誓ったのだよ。

 

で?パンドラの箱の中身である恐怖の塊サマのご尊顔を伺おうか?

 

サンラクが蹴った扉、その闇の中から出てくるは黒い巨体。

 

鎧を纏いフランベルジェとタワーシールドを両手に構えている。

 

兜から見える顔は恐らく人間のそれでは無いであろうものであり、痩せこけ腐り果て眼球が見えない。

 

……アンデッドの騎士?中々に見た目は良いデザインだ。これなら中ボスぐらいに居てもおかしくないな。

 

さて……強さは…………どうだろうか…………

 

サンラクがそう思って身構えると

 

「………あれは…………!!?」

 

アルシェがアンデッドの騎士を見た瞬間、驚愕する。

 

「どうしたのアルシェ?」

 

イミーナが訝しげに思いアルシェに問う。

 

しかしアルシェはイミーナの問いを無視してサンラクへと大声で叫ぶ。

 

「……逃げて!!そいつはデスナイト!伝説級のモンスター!!人の身じゃ絶対勝てない!!!」

 

伝説級……?だったらなおさら逃げる理由にはなんねぇな?

 

サンラクはアルシェの言葉を無視する。

 

そしてデスナイトと呼ばれるモンスターはアルシェの声に反応するように大きく咆哮。空気が振動するように空間が揺れるようなおぞましい声が辺りに響く。

 

とりあえず動きを見て様子見か?

 

デスナイトは近くにいるサンラクを目視。目前にいる敵を打たんと一気に接近し、横に一閃。

 

しかしそれは空を斬る。

 

サンラクは足を曲げて体勢を屈めてデスナイトの一撃を避け、曲げた足をバネに上へと勢いをつけ、デスナイトの顎へと一発アッパーを入れる。

 

デスナイトは顎に強烈な衝撃が加わり、仰け反った体勢に。そしてそのまま抑えきれない衝撃によって後ろへと倒れる…………

 

うおッ!!?

 

後ろへと倒れると思われたが、どうやら既の所で片足を後ろへと出し、体を支え、そしてサンラクへと反撃の突きを入れる。

 

サンラクも不意であったためか一瞬焦るが、しかしそれでも最大最速の称号は伊達では無い。

 

サンラクはデスナイトが突き出したフランベルジェの軌道を左手で右の方向へと受け流し、右足を軸に身体を回転。

 

デスナイトの右頬に左足で蹴った回し蹴りが炸裂。

 

デスナイトは先程とは変わって今回は呆気なく床へと倒れ、細かい灰となって消えていった。




ここら辺から「あれ……?話が終わんないぞ……?」と焦り始めて半ば急ぎ足になっています!

焦らす自分「早く話を進めろこのヤロォ!!」

焦る自分「ひぃ!」

金曜日が近づくと大体こんな感じになる。
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