オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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老骨に鞭打つ

 

「分析:生体反応確認。有機的生命体であると推定します。」

 

サイナが言う。

 

「やっぱレアエネミーだよな?だったら直ぐにはたき落として素材にしてやらねぇとレアエネミーが可哀想だ。早く素材にしなければ存在意義が薄れてしまう。」

 

至って真面目な顔で言うサンラク。

 

「ちょっと待ってサンラク…………」

 

サンラクが手に持つ剣を白い物体に対して投げようとしているのをアルシェが止める。

 

「なんだよアルシェ?俺には分かる。アイツが素材にして欲しいと言っていることが……」

 

「…………とりあえず確かめたい事があるから待ってて…飛行(フライ)

 

アルシェはそう言って魔法を唱え、船体の側面にくっついている物へと近付いていく。

 

「なんだぁあいつ?」

 

あぁ、可哀想に……早く俺が装備に変えてあげなければ…………

 

「…………フールーダ様でしょうか……?」

 

アルシェが頭に浮かべるはかつて魔法学校にて自分の師であった老人。

 

アルシェが白い物体に声を掛けると、白い物体は一瞬ビクッと動き、アルシェへと顔を向ける。

 

「……ほぉ……お主は確か…………」

 

「アルシェ・イーブ・リイル・フルトです。かつて貴方の元で魔法を学びました。」

 

アルシェは丁寧な返事で返す。

 

「……もちろん覚えているとも。儂と同じタレントを持ち、魔法の才覚も十分であった……故に、惜しいものと思うのう…………」

 

アルシェは複雑な表情をして、とりあえず下へ降りることを促す。

 

そしてアルシェは謎の白い物体であった者と一緒に下へと降りてきた。

 

暗い霧で姿がよく見えなかったが、下へと降りてきた事でその姿の詳細も分かった。

 

見た目は身長の半分程の長さを持つ白い髭を蓄えた老人。よく見る物語で出てくる魔法が如何にも使えそうといった老人である。何処ぞの最強の魔法使いや白の魔法使いなどなどを想像してもらえると分かりやすい。

 

白い髭もそうだが、服も白色を中心に着こなしているのようだ。

 

「えっと……フールーダ様…………この人達は今の私の仲間達です。」

 

フールーダと呼ばれた老人は自信の髭を手でならしながら者を選別するように5人を見つめる。

 

さっきのアルシェとこのジジイの会話を聞く限り、度々話に出ていた帝国最強の魔法使いという人物はコイツらしい。

 

サンラクもフールーダを観察するように睨んでいると

 

「お主とお主…………面白い色をしているのぉ……それに魔力量も常人よりは多い様子。」

 

フールーダは何か面白いものを発見したと言わんばかりにサンラクとサイナを指差して笑う。

 

色……?……あぁ、タレントが云々とか言ってたな……コイツのタレントはアルシェと同じものとかさっき言ってたから、アルシェと同じように魔力量云々が見えるのか?

 

しかしレアエネミーじゃなかったていうのは残念だ。最強の魔法使いか…………

 

「一発殴ってみるのもアリか?」

 

サンラクがぽつりと小さな声で呟く。

 

断定(無しです)

 

サイナがサンラクにだけに聞こえる声で言う。

 

サンラクはジト目でサイナを見るがサイナはなんのそのといった表情である。

 

しばらく睨み合いが続く中、気まずさに耐えられなくなったアルシェが言葉を発する。

 

「…………あの、ところでフールーダ様……先程はあちらで何を……?」

 

「む……?……ムムムム……!!……そうであったそうであった……!……あの船を一刻も早く調べなければならんのであった……!!!」

 

フールーダは今までの老いを感じさせるような雰囲気は何処へやら。若返ったように声に覇気が戻り背筋が伸びる。

 

船…………?……あぁ、そういえば俺も船をインベントリアにしまおうとしてたんだったな……。

 

サンラクはブリュバスへと近づいていき、ブリュバスに手をかざす。するとブリュバスは光の粒子となってその場から消える。

 

「「「……え?…」」」

 

一同はまたサンラクの奇行が始まったと思いきや、先程まで確かにそこにあったブリュバスが消えたことに困惑と驚きが入り交じった顔で無言になっていた。

 

フールーダは目が零れるのではないかという程に目を見開いて唖然とする。

 

「な、な、な、な、なななナ!!??き、貴様!!何をしたァァ?!!!」

 

フールーダが鬼の形相と言った表情でサンラクへと迫る。

 

うおっ?!!……何だこのジジイ?一体どうしたんだ?

 

「貴様ァ!!!?何をしたのか分かっておるのか……?!!あの船は…………あの船はァ!!」

 

「うおっうぉっうおっ?!」

 

フールーダはサンラクの肩を掴んで前後へ激しく揺らす。

 

フールーダが今にもサンラクを殺さんとしている事を察してアルシェが止めに入る。

 

「ふ、フールーダ様!落ち着いて……」

 

アルシェはフールーダをサンラクから遠ざける。

 

「落ち着いていられるか?!!この醜く汚らわしい鳥頭は!!伝説級、いやそれ以上の代物であるあの美しい船を!!事もあろうか消してしまったのじゃぞ?!!えぇい殺してやる……!!殺してやるわァ!!!!!」

 

「あ?誰が生きてるだけで人を不愉快にさせる悲しいモンスターだって?!モンスターにだって感情はあるんだぜ?!シザーハンズに謝れ!!」

 

だが全てのモンスターに感情があるとは限らない。時に冷徹にならなければこの発展したグローバル社会は生き抜けないのだ!

 

ん?感情がないモンスターは誰だって?…………もちろんペンシルゴンに決まっておろう?逆に他に誰が居る……?

 

いや、待て…………そういえば居るな………………人間というのは本当に嫌な記憶は頭の奥底に封印するものらしい……

 

フェアカスめ…………ここではまともだからといって今まで犯してきた大罪が決して消える事は無いぞ!!そしてディプスロ!!!お前も絶対に許さんからな?いつか家で飼ってる虫の餌にしてくれるわ……。

 

どうやら俺の中の三大モンスターが決まったらしい。

 

で?何の話だったか……。

 

「この鳥頭が!!よくも……よくも儂の魔道を妨げおってッ!!!許さんッ!殺してやる!!殺してやるッ!!」

 

あらぁ……どうしたのおじいちゃん?明らかに目が連続殺人鬼のイッちゃってる目なんだが……まぁ、殺し合いになるというのならば乗ってやらん事も無い。

 

「おっ?やんのかこの死に損ないジジイ!テメェのその骨密度が少ない骨で装飾品でも作ってやろうか?お?」

 

作った装飾品はさっきのモンスター3人に送ってやる。実はジジイの遺骨を使ったものだとは思うまい……

 

「ちょ、ちょっとサンラク……あんまり刺激しないで……!」

 

アルシェが言う。

 

ジジイとハシビロコウが睨み合い、今にも殺し合いが始まりそうといった状況。しかしそれはサイナの言葉によって沈まる。

 

「訂正:貴方が鳥頭(醜怪)と呼んでいる当機の契約者は先程、魔導推進征海船ブリュバスを()()()、と形容していましたが、それは間違いです。」

 

フールーダは先程の目つきのままサイナを睨むがしかし、その耳はサイナの言葉に反応する。

 

「消したのではありません。空間拡張術式携帯アクセス装置を用いる事で格納空間内に収納した、といえば理解しやすいですか?」

 

フールーダはその顔つきのまま白く長い髭を指でなぞりながら思考しているようだ。

 

「……ふむ………………なるほどな……」

 

少し落ち着いたかのようにフールーダの力が抜け、穏やかに目を閉じる。

 

「と、言うとでも思うたかッ?!」

 

いきなりカッと目を開眼し、再び先程の形相へと変わる。

 

「老人と思って舐め腐りおってッ!!この儂が騙されると思うたか、たわけ!!何処にあのような巨大な船をしまえるアイテムボックスが存在する?ドワーフ製でさえあれ程の物は入る訳がなかろうにッ!!」

 

なぁんか……面倒くさいジジイだな……やっぱ殺してしまう方が早いんじゃないだろうか?国のお偉いさんだとして、敵対して国が敵になってくれるならば国相手にドンパチやれる訳で、中々にこのクソッタレな日常に花が咲くというもの。

 

しかし、その願望はサンラク自信、色々不利益が被る事も分かっている。

 

仇討人のジョブ剥奪、プレイヤーが現れての大戦争、NPCの好感度変動などなど…………

 

サンラクは仕方ないといった感じで手を掲げる。

 

そしてその動作と同時に光り輝いて出てくるはずっと話に出ていたブリュバス。

 

「なっ……?!…………」

 

フールーダは目を見開き、その輝きに見とれる。

 

はい、おしまい。

 

サンラクは再び、ブリュバスをインベントリアにしまう。

 

「……………………そ、そんな事が…………いや、今はそんな事どうでもいいッ!」

 

フールーダは突然サンラクへと急接近してくる。

 

お?やっとやる気に……

 

サンラクがそう思って剣を構えようとするが、相手の思いがけない行動によってそれは体が停止する。

 

「た、頼む……!!いや、お願いしますッ!!もう一度、もう一度あの美しい船をッ!船を見せてくだされッ!」

 

フールーダはサンラクへと急接近した勢いのまま、なんと顔を地面へと擦り付け、スライディング土下座を披露する。

 

「…………は?」

 

そんな素っ頓狂な声がサンラクからもれる。

 

「お願いしますッ!!もう一度……もう一度あの船を……ッ!!何でもしますッ!足でも何でも舐めますッ!だからどうか……」

 

フールーダはサンラクの足を掴み、舐めようとする。

 

うわッ、キモッ!!

 

サンラクは条件反射によりフールーダを足から振りほどく。

 

「ぶふゅッ!!!」

 

「あ……すまん。」

 

振りほどいたら際、どうやらフールーダの顔面を思いっきり蹴ったらしく、そのまま宙へ舞い、硬い地面へとズさぁと転がる。

 

しかしこのフールーダ、こんな事では諦めない。蹴られた事により位置が変わり、フールーダは近くに居たサイナへとロックオン。

 

「ど、どうかァッ!!この儂の願いをぉッ!!」

 

その姿は目の前の肉を本能のままに追い求めるゾンビ、いやただの変態である。

 

おぉ、サイナへとヘイトが向いたか……中々に面白い図だな。

 

変態はサイナへと駆け寄ってその足を舐めようとする。

 

がしかし流石と言った所。サイナへと熱狂的な好意を持ったプレイヤーをあらゆる手段で幾度も回避、もとい焼却、排除、抹消してきた征服人形(大人気アイドル)なだけはある。

 

軽やかな身のこなしで変態の猛攻を掻い潜る。

 

「申請:契約者、この害虫を駆除する許可を当機にください。」

 

サイナがサンラクの方を見るとサムズアップしたサンラクがこっちを見ていた。そしてそれは了承の意だとサイナは思ったが、しかしその親指は下へと向けられる。

 

サンラクにとってそれはサイナに向けられたものか……それとも変態ジジイに向けられたものか……しかしそれを決めるは受け取ったサイナの方だ。

 

サイナは変態ジジイの腕を掴み、そして遠心力を利用してサンラクの方向へとぶん投げる。

 

「ぐおッ?!!」

 

投げられた変態は宙へと巻い、サンラクの方向へと突き進む。

 

しかしそんな物サンラクにとってなんのその。

 

サンラクは体勢を眺めて変態を避ける。

 

避けられたフールーダはまたもやズささぁ、と音を立てて地面へと転がる。

 

失敗(チッ):外しましたか……」

 

「へぇいへぇい!ノォコンピッチャー!!」

 

サイナが呟き、サンラクが煽る。

 

「………………た、た……頼む……もう一度…………」

 

ボロボロになった姿で地面を這いずる老人。

 

げっ、どんだけ執念深いんだよコイツ……

 

しかし、もはや虫の息だったようでその言葉を最後にピクリとも動かなくなる。

 

「死んだか?」

 

「否定:気絶しているだけです。」

 

ふぅ、なんとか帝国敵対ルートは阻止出来たな!!多分!!

 

やっと落ち着いた様子を見て、ヘッケラン達がやってくる。

 

「な、なぁ、これ大丈夫なのか?」

 

「いや、結構不味いでしょ!こんな変態だって帝国の主席宮廷魔法使いなんでしょっ?!」

 

「……まさか、こんな変態だとは思いませんでしたが……これでも主席宮廷魔法使いですしね……」

 

来ては散々な言われようである。

 

「流石に不味かったかぁ……」

 

サンラクはそう呟く。そして当たり前だろ!と3人からツッコミを入れられる。

 

「てか、アルシェは?」

 

一人言葉が無いアルシェに気付くサンラク。

 

全員は周りを見渡し、そして姿が無いことを知る。

 

「あれ?どこ行ったんだ?」

 

一同がキョロキョロと探し回る中、サンラクはジト目で地面を見つめていた。

 

そんな様子を一同は訝しげに思い、サンラクの視線を追うと

 

目を抑え、無言でゴロンゴロンと地面をのたうち回るアルシェ。

 

「あ、アルシェ?!大丈夫かっ?!」

 

3人がアルシェの元へと駆け寄る。

 

「目がァ……目がァ…………」

 

………………………………さいですか……。




ここら辺は大分頭パッパラパーで書いていた気がす……
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