歌う林檎亭酒場にて、テーブルに突っ伏し、いびきをしながら気持ち良さそうに寝ている男女が3人。
その横で味の薄いジュースのような飲料の入ったグラスを揺らしながら話している男女3人。
寝ているのはヘッケラン、イミーナ、ロバーデイク。
起きて話しているのはサンラク、サイナ、アルシェの3人であった。
「あのジジイ……本当にアレが帝国最強の魔術師なのかよ?」
蘇るはゾンビのような挙動で足をどうにか舐めようとしてくる変態。
「あんな師匠……今までに見た事無かった…………いつもならもっと温厚で威厳がある…………」
「推測:老化によるインテリジェンスの欠乏」
「……それもあるかもだけど…………弟子だったとき、魔法関連の話になると、やけに口が達者になって話が長かった…………昔から超が付くほどの魔法狂いだったのかもしれない…………」
「んだそりゃ……」
「だって貴方の船……ブリュバスの異常な程の魔力量を見ておかしくなってた……」
「設定:個体名フールーダ・パラダインを
「間違いねぇな……出来ればもう会いたくないね。てかあのまま放置したのは良かったのか?」
「……?…何人かの弟子達が迎えに来てたでしょ?」
実はフールーダが気絶した後、弟子と名乗る男女数人がやって来た。
もちろんボコボコとなったフールーダを見て、こちらに言及してきたが、アルシェの顔パスによりなんとかその場は丸く収まり、フールーダを抱えて帰っていったのだ。
その場面を見てるはずのサンラクが何故そのような質問をしたのか疑問に思うアルシェ。
「いや、息の根を止めて土に埋めとくべきだったかな……と思ってな。」
サンラクは真顔で言う。
「………………」
「警告:
「おいコラ、2回も言うんじゃねぇ!……照れるだろ…………///」
「……この通り」
サイナはサンラクをを指差しながらアルシェに言う。
アルシェはぽかんとした表情をして、そして微笑む。
「…………………やっぱり2人は仲良いね…………これで臨時パーティーは解散だけど……2人はこれからどうするの?」
サンラクは考える素振りをして答える
「……そうだな………あんま決まってないが、しばらく帝国からは離れるだろうな。ここら辺は大体見回ったし」
それを聞いたアルシェは少し俯いて、また顔を上げて感謝の言葉を伝える。
「そう…………少し寂しいけど、今までありがとう……本当に感謝している……」
サンラクは鼻の辺りを指で擦って話す。
「へっ…………まぁ、精々頑張れよ。ウレイリカとクーデリカを泣かせんじゃねぇぞ?」
「言われなくても…………サイナさんもありがとう……」
「
アルシェの頭に浮かぶは緑色のゲルゼリー。
アルシェは苦笑いして
「ま、まぁ……気が向いたら……」
あらかた話す内容が無くなり、3人のテーブルは静かになる。
「…………んじゃ、そろそろ行くわ。」
サンラクが沈黙を破って立ち上がりそう言う。
「ん……あっちの3人には挨拶をしないの?」
アルシェは横のテーブルで寝ている3人を指さす。
「あぁ……別れ際の挨拶とかあんま好きじゃないんでね。3人にはまたお前から言っといてくれ。」
アルシェは少しため息をして、また納得したように頷いて答える。
「…………はぁ……分かった。」
「さんきゅー。じゃ…………」
サンラクは酒場の出入口近くまで歩いていく。その後ろをサイナが付きそう。
「また会おうぜアルシェ。」
「ではまた。」
サンラクは手を軽く振り、サイナは礼儀正しく一礼をする。
アルシェはにこやかに、まるで一緒に公園で遊んだ友達に言う言葉のように
「ばいばい」
と一言。
そしてサンラクとサイナは歌う林檎亭を出た。
――――――――――――――――
カッツェ平野に出発したのは早朝。霧と雲に覆われているカッツェ平野は昼というのに暗く、そのせいで時間感覚がバグるが、実は帰還したのは夜であった。帰還した後はそのまま酒場でアルシェの歓迎会と祝勝会?あとフォーサイト結成祝いとかなんとかをしていた。
大人3人は酒が回ってか疲れてか直ぐに眠ってしまって、後はさっきの通り。
正確な時間は分からないが、外は相変わらず暗く、恐らくもう深夜なのだろう。
道は暗く、一歩先は暗闇といった感じだ。深夜だからか人の気配はほとんどしない。
そしてそんな道を黙々と進んでいくサンラクとサイナ。
……とりあえず街を出る門の方に歩いてはいるが……これからどうするかなぁ……。
確かサイナが言うには、何本指とかいう組織が居るからぶっ潰してきてはどうだ?とか言ってたような……
……そういえば、よくよく考えれば王国はエ・ランテルしか行ってなかったよな……何本指潰すついでに王都も見とくか?
……別れる前にアルシェとかに周辺地理聞いとけば良かったな………。
サンラクはアルシェとの会話を振り返る。
…………どうやら最近 無意識にNPCに感情移入してしまう節がある……。
いや、別にゲームに出てくるキャラクターへの感情移入なんて一度もしてこなかったとか言わねぇが…………なんていうか……思わず人間として接してしまうというか……
今まではそこら辺、自分でロールプレイをしてキャラに合わせてたが、今は気付いたら相手を人間と思って接してた……って感じなんだよなぁ……
長時間、っていうか何日もゲームの中に居るから、そういう俺の意識的な所に影響が出てんのかもなぁ…………まぁ、別に今は問題無いので特に気にはしないが。
サンラクがそう考えていると、後ろから声がかかる。
「……
それはサイナの声。
やけに改まって言うな……
「どうしたんだ?」
サイナは無表情のまま話を続ける。
「少し……休暇を頂いてもよろしいですか?」
…………ん?……休暇……?
サンラクは少し考えた素振りをした後、素っ気なく返す。
「いいぞ?」
サイナはその答えに何を思ったのか、表情が一瞬だけ不機嫌そうな顔に変わり、また無表情になる。
「…………やけに簡単に承諾しますね……詳しい内容はまだ言ってないのですが。」
「じゃあ、詳しく聞こうか?」
「………
契約者も言っていた通り、恐らくここは旧大陸、新大陸とはまた別の場所。
この街周辺で調べられる事は調べてみました。どうやら国、地名、文明、文化、種、歴史それら全てが
あまりに不可思議と言う他ありません。
というのが
…………………………
サンラクはにこやかな表情をして固まったように動かない。
…………は、話が長ぇ………もう前半はおろか8割ぐらい内容覚えてねぇぞ…………
つ、つまりアレだろ?要は伝説の海賊王になりたいとか手からビーム出せるようになりたいとかモンスターマスターになりたいとか、強すぎるので田舎でスローライフをしたいとかそんな感じのアレだろ?おっけー全部理解したぜ。
「まぁ、頑張れよ!!」
サンラクはサイナにサムズアップをする。
「…………。」
サイナはため息混じりでサンラクを哀れんだ目で見る。
「てか、俺と同行する過程でお前の調べ物も済ませれば良くないか?」
サンラクはふと疑問が浮かぶ。
「……回答:先程の契約者の様子の通り、契約者は自身に何が起きたのかなど、微塵も興味が無い様子なので。
つまり、俺をお荷物扱いか……。
興味が無いというのは少し誤解だな。俺はメタ的に物事を見れるから、ゲームの大型アップデート、バグ、サーバー不良、その他諸々が原因で今があると思っている。
そして今それを確認する術など無いからして特に触れる必要も無いと考えているのだ。
フッ、
サンラクは腕を組んで鼻息をフンと吐く。
「契約者も納得したようなので、これからは別行動となります。当機が居ない為、様々な問題に直面するでしょうが……まぁ、なるべく早く戻ってくるので安心してください。」
なんだコイツ……
「…………まぁ、なんかあったらちゃんと連絡しろ。遺言ぐらいは覚えておいてやる。」
「フッ、当機を誰だと思っているんですか?」
「ポンコツロb……」
サイナは満面の笑みでハシビロコウの嘴を掴む。
「……
「……す、スーパーインテリジェンスロボ……」
サイナはスっと手を離す。
サンラクは痛覚などない仮面の嘴を痛そうに擦りながらサイナを睨む。
そんなやり取りをしている内にどうやら街門まで着いたらしい。
「…………んじゃ、用事が終わったらまた会おうぜ。」
「……了解。」
そして2人は違う道を進んだ。
やっと帝国編が終わったぁ!!
ちなみに前にも言っていた通りサイナはもっと後で登場させる予定だったので、サイナさんは一時休暇という事で……
ゲヘナが終われば恐らくすぐに戻ってくる筈ですので許してください!