オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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鳥と犬は不仲である

ここら辺か……?

 

サンラクは家の屋根から辺りを見渡す。

 

酸の矢(アシッド・アロー)!!」

 

何処からか声が聞こえた。

 

今のは……前髪パッツン?

 

サンラクは声が聞こえた方向を向く。

 

居た……!!!

 

見ればンフィーレアは倒れ、近くに人の数倍はある大きなトロール。

 

どうやら生きてはいるらしいンフィーレア。しかしそんなンフィーレアにトロールはトドメを刺さんと両拳を振り上げる。

 

やっべ!ちんたら見てる場合じゃねぇな!!

 

サンラクは位置を特定すると、臨界速(ブラディオン)を起動。サンラクは加速する足でトロールへと一気に近づき、3歩目から足をバネに跳躍。勢いを利用してトロールへと刃を向ける。

 

間に合えぇぇ……!!

 

だァァ!!

 

サンラクはンフィーレアに拳が振るわれる前にトロールの首を斬った。

 

よっしゃ間に合っt……?!

 

トロールの首を斬り、その拳は止まったかと思いきや、そうでは無かった。

 

首を切ったものの既に脳からの【拳を叩きつける(命令)】が脊椎を通して伝達しており、例え司令塔である脳が無くなったとしても、実行する腕は出された指示を愚直に全うするだけ。

 

故に腕は動き続け、その拳はンフィーレアへと叩きつけられようとしていた。

 

まっずッ!!

 

サンラクは後ろへ戻る事を考えるが、既に臨界速の加速に乗っており、その状態での旋回は不可能と断言できる。

 

拳はンフィーレアへと刻一刻と迫っており、もはや誰にも止めることは出来ない。

 

「ンフィー!!!」

 

それは助けを呼んできたエンリの声。

 

それは悲痛の声。辺りに響き渡る程の大きな叫び。

 

しかし悲しきかな。その声はトロールの巨大な拳が金属を叩きつけたような甲高い音によって消される…………

 

キイィィンッ!!と。

 

………………ん?……金属?

 

「……いやー、体力レッドゲージって感じっすね〜…………大丈夫っスか?」

 

場には似つかわしくない素っ頓狂で軽い声。

 

突然トロールの前に現れた褐色気味の肌、髪の毛は赤毛であり、獣の耳を彷彿とさせるような独特の形の帽子を被っている。

 

「ルプスレギナさん!」

 

そう言ったのはエンリ。

 

恐らくメイド服の女はルプスレギナと言うらしい。

 

サンラクは一体何が起きたのかと、足を1歩1歩踏ん張っていき、速度を落として状況を確認する。

 

どうやら、ルプスレギナという女が自身の身長程ある斧のような先端が円盤状になっている武器を盾にしてトロールの拳を防いだらしい。もちろん守られたンフィーレアは無事だ。

 

大治癒(ヒール)……これで動けるっすね?」

 

ルプスレギナはンフィーレアに手をかざして魔法をかける。

 

……斧を盾にして腕力で防いだ割に治癒を使うのか……ビルド的には闘士と聖職者を伸ばした感じか?

 

治癒によって身体の傷が消え、そして動けるようになったンフィーレアは上体を起こす。

 

……思うんだが、俺ここに必要か?前髪を助けたのはあの褐色女だし…………お前何してたんだ?みたいな雰囲気にはならないだろうか……

 

ルプスレギナはンフィーレアの安否を確認すると後ろへ振り返る。

 

「うんじゃ……こいつは私g…………てありゃ?首がない?」

 

ルプスレギナが振り返ると、そこにあったのは首から上が無くなっていたトロールの姿。

 

トロールの首が無いと思えば、丁度そこから見て奥の方に焦点を合わせると、青い鳥の覆面を被った謎の半裸の男が地面に立ってこっちを見ていた。

 

「あ、ども〜」

 

サンラクもこちらを見ている事に気付き、気まずそうに手を振る。

 

「……………………。」

 

「………………。」

 

お互い沈黙。

 

そして

 

ブォンッ!という音がして辺りに砂埃が舞う。

 

ルプスレギナはサンラクが居た位置へと一瞬で移動して斧を大きく振るう。

 

砂埃が止めば青い鳥の半裸の男がその斧によって真っ二つにされていた。

 

「む?思ったより手応え無いっすねぇ……。」

 

ルプスレギナは肩透かしだ、といった表情で標的を見る。

 

文化によって挨拶というものは異なる。しかし現代はグローバルな社会。異文化を受け入れ合いそして交流する。

 

あの褐色女の挨拶はどうやら()()()()らしい。

 

ならばこちらも同じようにするのが礼儀というものでは無いか?

 

ルプスレギナは気付く。仕留めた相手から血が出ていないという事。

 

ルプスレギナは気付く。仕留めた相手が空気のように軽いという事。

 

ウツロウミカガミはやっぱ使えるよな。是非とも幕末に追加して欲しい。

 

いや……よくよく考えたら、世紀末が世紀末になるだけだな。ランカーとか気配を感じた、とか言って普通に本体斬ってきそうだし…

 

おっと、そろそろ空の旅も終了か。

 

サンラクはルプスレギナが攻撃を仕掛けるあの一瞬で、ウツロウミカガミを発動して、そして空気を蹴って空へと離脱。

 

今は重力に身を任せて下へと落ちていた。そして着地点に狂いは無い。

 

正に天誅だな。じゃ、挨拶を返すとするか。

 

「上ッ……?!!」

 

ルプスレギナは獣の勘によって上から異様な気配を感じ取る。

 

上を見上げれば先程斬った筈の青い鳥の半裸の男が満面の笑みでこちらへと落下していた。

 

思ったより気付くのが早かったなァ!!だがもう避けるには無理があるんじゃねぇかぁ?

 

サンラクは剣を落下方向へと向け、隕石の如くルプスレギナの頭上に接近。

 

いち早くサンラクの位置を特定したものの、それでも気付くのが遅かった。

 

もはやルプスレギナに出来る事は咄嗟に斧を構え、受身を取るのがやっとであった。

 

「こんにちワンッ!!ってなぁァ!!!」

 

サンラクは剣を握りしめ、着地点であるルプスレギナを見据える。

 

「ストォォォップッ!!!」

 

?!……

 

突然の大声。その声の主は対面するルプスレギナのものではなく、もちろんサンラクのものでは無い。

 

その声はエンリであった。

 

サンラクは声に気が取られてそちらを思わず見てしまった。

 

サンラクは落ちている最中、着地点へと向かうべく体を上手く保って空気抵抗を受け流していた。

 

しかし気が取られた結果、体のバランスを崩して、空気抵抗を一身に受ける。そしてサンラクの身体は制御を失い、クルクルと回り始める。段々と早くなっていき空中をスピンしながらそのまま下へと落ちていく。

 

あばばばべばわべばばば

 

回転運動を始めた体の制御はほぼ不可能であり本来、サンラクが頭で描いていた軌道から外れる。

 

ドスンッ!!と辺りに砂埃が立ち込める。

 

どうやらサンラクは身構えるルプスレギナから外れ、その少し横を回転運動をしながら落ちたらしい。

 

「…………」

 

落ちてきたサンラクは無言であり、それなりの高さから落ちてきたからか所々身体があらぬ方向に曲がっていたりする。

 

ルプスレギナはぱちくりと目を瞬かせる。

 

「…………えっと……大丈夫っすかぁ?」

 

ルプスレギナはなんだコイツ……と言った表情で手に持つ斧でサンラクをつつく。

 

しかし返事は返ってこないようだ。

 

ルプスレギナが困惑していると、空から突然、何かが落ちてきてルプスレギナの頭に当たる。

 

「ッて!!」

 

ルプスレギナの頭に当たりそのまま落ちてきた何かは頭を転がるようにまた下へと落ち、カランコロンと綺麗な音を立ててサンラクの近くへと転がっていく。

 

「一体なんなんすかぁ?さっきから……」

 

ルプスレギナは何かが当たった箇所を撫でながら、その何かを目で確認する。

 

それは水晶玉のようで中には見知らぬ文字列がいくつも書かれている。

 

水晶玉は転がり、地面に寝ているサンラクに阻まれ、その動きを止める。

 

ピカッ!!

 

水晶玉が動きを止めると、突然その水晶玉は眩しいほどの光を発し、やがて消えていく。

 

「……ぶハッ!!あ……ぶねぇ……」

 

サンラクは落ちて死ぬことを想定して自分の数m上に再誕の涙珠を投げていたのだ。

 

しかし途中で着地点が変わった事により想定していなかった形で復活したが、まぁ結果オーライという事だ。

 

サンラクは先程までひしゃげていた体が治ってる事を確認して立ち上がり、目の前に居たルプスレギナに気付く。

 

おっと…………

 

「恐怖公の眷属みたいな生命力してるッスねぇ〜!じゃ……そのまま死ねッ!!」

 

ルプスレギナは斧を構える。

 

そこで

 

「ルプスレギナさん待って!!」

 

そう大声を上げてエンリが駆け寄ってくる。

 

「この人は敵じゃないです!前に村の再建を手伝ってくれた人で……」

 

エンリは息切れの中でつらつらと言葉を並べる。

 

「サンラクさんも、この人は前に村を救ってもらった御方の遣いの人みたいなもので…………と、とにかくお互い仲間です!」

 

エンリは拙いながらも結論を述べる。

 

ナカマ?いきなり不意打ちをしてくる奴がナカマ?違うぞエンリさん。それは好敵手というのだ。

 

サンラクはルプスレギナを睨みながら思う。

 

ルプスレギナは少し考えて口を開ける。

 

「…………なんだそうだったんスかぁ……鳥の覆面にほぼ裸だったもんすから、たまにいる強姦魔だと思って斬ちゃったすよぉ!」

 

ルプスレギナは何も悪気が無いように言う。

 

サンラクは少しピキる。

 

「おいおい、俺の攻撃に対応出来て無かった癖に負け犬が吠えてるぜ?」

 

「あ?負け犬?……上からの奇襲を失敗して地面を舐めていたアンタに言われたくないっスねぇ……!あれは笑えたッス!!」

 

ルプスレギナはわざと腹を抱えてブヒャヒャと笑ってみせる。

 

「ほぉ?お前だってキメ顔で【体力レッドゲージって感じっすねぇ】とか言った割にトロールは俺に仕留められるは俺に攻撃は当たんないわで、お前がこの場に出てきて何かしたのか?もしかして自虐ネタなのか?!コメディアンなのか?!」

 

ギャヒャヒャとわざと腹を抱えて笑うサンラク。

 

2人はお互いに声を出し笑い合う。

 

そんな2人に近付く大きな影。

 

それは2人が先程斬った筈のトロール。トロールは斬られた腕と首を修復し、目の前で笑っている2人を殴ろうとする、が

 

もちろんそれに気付かない2人ではなく、笑いながらサンラクはアラドヴァルを取り出し、ルプスレギナは笑いながら魔法を発動する。

 

「誰が強姦魔だってぇ?!!」

「誰が負け犬だってぇ?!!」

 

2人は息が合ったように同時に行動し、同時に叫び出す。

 

トロールは炎の柱に包まれ、火炎の斬撃で粉々となり灰となって消えていく。

 




Q、何だろう……投稿出来ないかも!って言って平然と投稿するの止めてもらっていいですか?

A、何故だろう……投稿出来ない!って言うと何故か執筆がスラスラ進んでしまう。
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