噂は風邪を運ぶらしい
現在はもう朝だというのにあまりに出てくる時間を間違ったという感じの喪服少女が平原に立っていた。
はいどうもぉ〜、魔法少女サンラ子ことミラクでぇす。
黒い喪服に身を包んでいるミラクことサンラクは何故か何も無い虚空の方を向いてピースをしながら挨拶をしていた。
ルプスレギナとの喧嘩の後、サンラクは日も登らない内にカルネ村を出ていた。
え?何でもっと滞在しなかったのかって?
だってよぉ……
サンラクは昨日、もとい今日の深夜の事をを思い出す。
あの褐色女はいつの間にか姿を消して、エンリさんと前髪パッツンは何やら良い感じの雰囲気を2人で過ごしていた。
もちろん少しは話をしたが、来たタイミングが悪かったのか、俺は気を使ってなるべく空気に徹していた。
話を聞いた感じ、どうやら前髪はエンリさんへの告白が成功したらしい。それは心から前髪におめでとうと言ってやりたい。
しかしいきなり村に入ってきた見知らぬ半裸のハシビロコウが おめでとう!! とか言うのも中々におかしいと思う。折角の良い感じの雰囲気に、ゲテモノが混ざっては台無しだ。
一言で言えば気まずかった。これに限る。
そうして俺は速やかに元村長の所へ行って王都リ・エスティーゼへと向かったのだ。あ、ちなみにエンリさんは村長になったらしい。
まぁ、ざっと近況はこんな感じだ。何か質問あるか?
え?なになに……何故またサンラ子になってるのかって?
何言ってるんだ?服を着る為に決まっているだろう?お前達は外に出るときに上裸に短パンで鳥の覆面を被るのか?ソレヲセケンデハヘンタイトヨブンダゾ!!
まぁ、真面目に答えるとすれば都合が良いからとでも言っておこう。
サンラク(男)の姿だとまた帝国みたいな厄介に絡まれる可能性がある。
それにサンラク(男)の姿だと冒険者とは名乗れない。
ここら辺ではどうやら冒険者プレートがある意味での身分証みたくなってるらしく、街での色々な施設で使う事が出来る。もちろん公的機関にも効力を発し、検問所は大抵このプレートを見せれば俺の姿が多少怪しくとも通してもらえる。
さらにこのプレートを見れば冒険者ランクが分かるわけで、俺がこのアダマンタイトのプレートを見せれば下々の者達は大抵ひれ伏す。その気分はさながら水戸黄門よ。
ちなみにそれでもサンラクの外見を見て舐めてかかった者はいつぞやの何ヤーのようなオブジェになったとかなってないとか……
今回の目的は何本指の指を全て引きちぎる事だからな……ある程度の地位があれば情報収集もしやすいという訳だ。
まぁ、説明も終わった事だ。そろそろ王都が見えてくる頃だ。
……あれか?
サンラクは遠くを見て目を細める。
ん〜、思ったより…パッとしないな。王都だから何か特徴的な建物や壁とかがあるのかと思ったが……まだエ・ランテルの方が迫力がある。
まぁ、いいや。別に観光しに来たわけじゃない。
さっさと中に入って何本指の情報を探すかぁ。
ここからはロールプレイだからなぁ。しばらくストレスが溜まりそうだ……
サンラクはミラクという秋津茜の出来損ないみたいな人物像を頭に浮かべ、道を歩いていく。
――――――――――――――――
そこは冒険者組合の施設内。施設内にら複数のテーブルと椅子が設置されており、ベテラン冒険者、ルーキー、様々な冒険者がその場所を活用している。
そして壁の変わりに仕切りによって空間を区切られ、周りから少し隔絶された場所に席がある。
そこに座るのは計3人。
一人は怪しげな赤いマントと仮面を被った小柄な少女。名はイビルアイ。
一人は巨石を思わせる様な大柄な体躯を持つ大男……いや実は女らしい。名はガガーラン。
最後の一人はこのメンツの中ではあまりに個性が薄い青年。名はクライム。
3人は椅子に座り、話し合っていた。
そしてイビルアイがこう喋った。
「知っているか?エ・ランテルで新しいアダマンタイト級冒険者チームが生まれたらしいぞ。それも2つ。」
少女の声はまるでボイスチェンジャーで出力した音のように違和感のあるものだ。
「2つもか……?!……そりゃあ、驚いたぜ……アダマンタイト級なんて俺達のチーム合わせてでも、まだ5本の指で数えられるぐらいの筈なんだが……それが同時期に2つ生まれるとはな……」
ガガーランが言う。
「なんでもややこしい事にどちらも
「はぁ?それだったら色を変えるか同じチームにしとけよな。」
「さぁな、そこら辺の事情は知らん。黒は六大神信仰に使われる色だ。被っても不思議じゃないさ。次は白辺りが来るかもな。」
「げっ……白っていったらスレイン法国じゃねぇか。」
「お前はあそこが嫌いか?……たが私は………………」
イビルアイとガガーランは会話を続ける。そしてその会話は先程話していた新たな黒色の冒険者とはまた違う話へと逸れていく。
そんな中、クライムは気まずそうな表情をして2人の会話に入れないままそれを見守る。
ある程度2人の話が進み、そろそろ話が落ち着きそうだという所でクライムが話を戻すように促す。
「……お話中、申し訳ありませんイビルアイ様。アダマンタイト級の冒険者が生まれたという事でしたが……その方々の名前は何とおっしゃるのですか?」
「ん?あぁそうだったな……」
イビルアイはそういえばそういう話だったな……と呟きクライムの質問に答える。
「モモン……漆黒の英雄と呼ばれている戦士がリーダーで、チーム名は漆黒。美姫と呼ばれるナーベ、魔力系
イビルアイは聞いた事を思い出すように答える。
「2人だけ?それはかなりの隠し玉持ちだな…………。しっかし、2つ名が美姫とか……恥ずかしくねぇのか?」
ガガーランは少し小馬鹿にするように言う。
「ナーベというのはかなり美しいらしいぞ?情報によると、
ガガーランはそれを聞くと、ニヤニヤして隣に座っているクライムを茶化す。
「だとよ?」
クライムは動じず答える。
「美醜というのは人それぞれ。そして私にとってラナー様よりは美しい方はいません。」
「けっ……そうかよ…………で?もう一つのチームはどうなんだ?」
ガガーランはつまらなさそうに言う。
「もう一つはミラクという女がリーダーでチーム名は仇討人。聞いた話によればソロでやっているらしいぞ。」
「ソロだぁ?……1人だけって、そりゃまた珍しいというか、そんなんでよくアダマンタイトになれたな?」
ガガーランは少し驚いたように喋る。
「ミラクという女の2つ名は
「こちらも随分と仰々しいじゃねぇか。何をしでかしたらそんな名前になるんだよ?」
「詳しくは知らんがまず見た目……女は昼間だろうと黒い喪服を着ていて顔すらも黒いヴェールで覆っているらしいな。そして背中には墓のような大剣を背負ってるとか。
後は街で流れている変な噂だな。一つは男がヴェールに隠れたその顔を見たらあまりの美しさに魂を奪われるだとか。もう一つはその女の標的となったものは必ず首筋を一斬り、で終わるらしい。」
「そりゃあつまり生首ポンッてことか?」
「あぁ。依頼での野党襲撃でも、魔獣討伐でも必ず頭と胴が綺麗に一刀両断という事らしいな。その魔獣の中にはギガントバジリスクも居たらしいぞ。」
「マジか?!」
ガガーランが驚く。
「まぁ、ギガントバジリスクは漆黒の方も討伐しているみたいだな。」
「…………とんだ大型新人が入ってきたもんだな……。」
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「ぶあっくしょッ!!…………ふぅ。」
もしかして誰か俺の噂をしてやがるな?
サンラクは鼻を擦りながら言う。
検問所は予定通り難なく突破できたが、油断して男みたいなくしゃみをしてしまった。
もっと女らしく振る舞わなければ……
やっぱり王都だからって特に目立った建物も無いな。歩道も建物も特に綺麗って訳じゃないし、てかどちらかというとエ・ランテルの方がまだ新しさがあった気もする。
人の活気も帝国と比べると、あんましだしな。
まぁいい。
さっさと何本指かの情報収集していきますか……