オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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生きる意思

 

喪服姿の少女が道を歩いていた。

 

ん〜、流石にただ歩いているだけじゃ情報は得られないよなぁ……一度ここの冒険者組合に行って情報を貰うのはありだな……

 

サンラクがそう考えながら歩いていると

 

何だ?やけに人が集まってやがる……

 

正面の方向を見るとざわざわと人混みが出来ていた。

 

これじゃ道が通れねぇな……喧嘩でもしてんのか?

 

サンラクは不思議に思い、人混みに近付く。

 

見えねぇなぁ……

 

サンラクは人混みの隙間から何があったのかを確認しようとするが中々に人が多く見ることが出来ない。

 

サンラクはふと近くにあった建物の屋根を見上げる。

 

道を通るついでに何をしてんのか見てみるか。

 

――――――――――――――

 

サンラクはある建物の屋根の上から、人混みの中心を確認する。

 

「おいゴラッ!!お前のせいで俺の服が汚れちまったじゃねぇかッ!!聞いてんのかッ?!」

 

見れば大人複数人が騒ぎ立て、一人の男の足の下に小さな子供が転がっていた。

 

よくよく観察すれば、男達の動きはフラフラとしており、声からも酒を飲んでいる事が分かる。

 

うわぁ、よく大人複数人であんなガキをリンチ出来んなぁ……

 

サンラクは少し同情する。

 

助けてもいい。なぜなら俺は今、アダマンタイト級冒険者ミラクなのだから。正義という名のもとに鉄槌を下すこともやぶさかでは無い。

 

ただし帝国の一件を考えると、だな。色々と面倒事に巻き込まれる可能性がある。また何ヤーみたいなおもちゃが出てきては最悪ムショ暮らしって場合も…………

 

サンラクが助けるか否か迷っていると、声が聞こえた。

 

その声は酒で酔っ払った男達の声ではなく、かたやリンチされていた子供の声でもない。

 

低く、少し年季を感じさせるようで、されど決して弱い声ではなく強みを感じる声であり、そして何より上品で雄々しい。

 

「随分と酔っていらっしゃる様ですね。」

 

誰か止めに入ったのか?

 

サンラクは声の主を見る。

 

そこを見れば執事服のようなピシッとした服を着た白髪の老人がいた。髪と髭は綺麗に整えられており、その見た目からわかる通り紳士という言葉が一番しっくりくる。

 

「ンだっ(ジジイ)ッ!!」

 

酔った男の一人が老紳士に叫び出す。

 

「何が原因かは分かりませんがそのくらいにされてはどうでしょう?」

 

老紳士は怯む事無く言葉を淡々と喋る。

 

「このガキが俺の服を食いもんで汚しやがったんだぞ?許せるわけねぇだろォ!!」

 

男も怯まずに言う。

 

おっと?何やら喧嘩の予感……しばらくここで傍観しとくか……

 

サンラクは屋根の縁に座り込み、下の様子を見る。

 

老紳士は何かをブツブツと呟き、次にハッキリと言葉を言う。

 

「失せなさい。」

 

「ッ…………テメェ!!」

 

老紳士のその言葉によって男の沸点が限界まで達し、老紳士へと拳を振り上げる。

 

流石に止めに入るか?

 

サンラクがそう思い、そして老紳士へと拳が当たろうというその瞬間。

 

一瞬にして老紳士の拳が男へと放たれた。

 

そこには先程の騒がしさは無く、まるでその場の時間が止まったかのようにシン…と静まり返る。

 

一瞬にして起こった出来事。老紳士は拳を突き出し、既に殴りかかった男は地面へと倒れていた。

 

その事を数秒経って、頭で理解すると先程までではないが、場の静けさは消え、ざわざわとまた聴衆が話し出す。

 

「まだやりますか?」

 

老紳士は姿勢を直し、倒れた男に問いかける。

 

「あ……ああ……お、俺達が悪かった!も、もう関わらねぇ!」

 

男達はたじたじと老紳士に圧倒され、逃げるようにその場を走って離れる。

 

聴衆はそのあまりの光景に圧倒される中、黒いヴェールの中、真顔でその様子を見ていた者が一人。

 

ほぅ?…………ここら辺のマップでは中々強い部類に入るんじゃないか?

 

……拳一発で終わったからな……しかも相手はレベル一桁と言っていいほどの雑魚。実力ははっきりしないな……

 

ま、どうでもいいや……。一応顔は覚えとくか……

 

サンラクはあの老紳士を再び視界に入れる。

 

ん?どこいった?

 

既に先程まで居た場所には老紳士の姿は無い。

 

サンラクは下の人混みに目をやる。

 

見れば綺麗に人混みを掻き分けてその場を去ろうとしていた。

 

……?

 

サンラクは気付く。先程の老紳士の後を追うように人混みの中を付いていく者達が居ることに。

 

一人は白い鎧を着た金髪の青年。

 

もう一人は細マッチョの青髪の男性。

 

そして隠れるように後を追っている暗殺者のような風貌の者達。

 

なんだ?やけに大人気だな……

 

サンラクは少し訝しげに思う。

 

ちょっと気になるな……

 

まぁ、イベントフラグの可能性も無きにしも非ずだな。あからさまに目立って、あからさまに怪しいし。

 

……ん〜、情報収集ついでに付いていくか……。

 

そう思ってサンラクも屋根を経由して老紳士を追う。

 

――――――――――――――――

 

ん……路地裏に入ったか…………。

 

やけに人気の無い場所へと歩いていくな……。

 

サンラクは入っていった路地裏に隣接する屋根上から老紳士の後を追う。

 

「私はクライムというもので……この国の兵士の一人です。」

 

下から聞こえるクライムと名乗った 青年の声。

 

おっと……どうやら先に追いついた青年が老紳士をナンパしているらしい……

 

ん〜、話が長くなりそうだなぁ…………

 

どうやら下の2人は話し込んでいるらしく、サンラクが割って入る隙間など無い。

 

これがMMORPGじゃなかったらどうでもいい会話とかスキップできるんだがなぁ…………まぁ……気長に待ちますか。

 

―――――――――――――――

 

あぁ……ここまでのあの2人の話を要約するとだなぁ……死んでも強くなりたい青年クライム!と、とある女性を助けたいという老紳士!!ちなみに老紳士はセバスというらしい。

 

セバスという老紳士は女性を助けるための情報を求め、そしてクライムはセバスからの稽古をご所望だぁ!

 

はい、とても簡単に言えばこんな感じだ。で、今の会話は…

 

「ではここで稽古を付けましょう」

 

「ここでですか?」

 

クライムが驚いたように言う。

 

お?大分話が進んだようだな……ちょうど良いか。あのセバスとかいう爺の実力も気になってたし……どれどれ……稽古というものを見してもらおうか……

 

サンラクは屋根の縁から顔を覗かせる。

 

「武器を構えて……意識をしっかりと持ってください。」

 

セバスがクライムに指示するとクライムが武器を構える。

 

お手並み拝見だな……。

 

「では、行きます。」

 

セバスのその声で周囲の雰囲気が変わる。

 

!!!……………………この圧迫感は…………

 

サンラクはセバスの放つ殺気に何処か既視感を覚える。

 

そして思い浮かぶのは少し前に戦った吸血幼女。

 

これは…………当たりか?

 

クライムはぶわっと体に鳥肌が立ち、空気が圧縮されたように呼吸がしづらくなる。

 

セバスが居た場所にはもはや先程の老紳士は居ない。クライムの目に映るのは化け物と形容できる人間では無い()()()

 

そのナニカから放たれる殺気。その殺気は凶器と言ってもいい程のものであり、物理的に肌に刺さるような痛みを感じる。

 

クライムは身体が硬直して頭の中が恐怖という二文字で埋め尽くされる。気を抜けば気絶し、倒れそうになる。

 

「この程度ですか?まだ前準備なのですがね」

 

ヒュー……煽るねぇ……。てか、あの金髪……体が震えてるいるな……汗も少々……こりゃぁ、その内気絶するんじゃねぇか?

 

「……ふゥッ!!」

 

クライムは息を強く吐く。

 

お?よく持ち堪えたな

 

セバスはそれを見てどうやら覚悟が決まったようだと判断。

 

拳を振り上げ正拳突きの構えをする。

 

「では……死んでください。」

 

セバスは拳をクライムの頭目掛けて拳を突き出す。

 

……さっきの酔っ払いに打った時よりも遅いが……恐らく言葉的にも当たったら死ぬんだろうな……

 

てか、金髪はまだ動けてないが…………大丈夫か?

 

クライムは理性からかそれとも生物由来の本能からか、具体的な()というイメージが目の前に迫ってきていることが分かった。

 

しかし身体は動かない。

 

ふむ……勝負ありというか、まぁ、ドンマイだな。助けてやる事も出来るが、見ず知らずの奴を助ける程お人好しじゃないもんでな。

 

せめて天国に行けるよう祈ってやろう……アーメン…………。

 

その時だった。クライムの指がピクッと動く。

 

それと同時に目に光が戻る。

 

そして大きく息を吸って、全身に力を入れる。

 

精一杯の力を身体に込め、身体が悲鳴を上げようとも、目の前にいる恐怖から逃げるのではなく、立ち向かい、勇気を振り絞る。

 

そして言葉にもならないような大きな声を叫ぶ。

 

「あぁぁ”ァあ”ッっ!!!!!」

 

その瞬間、クライムはセバスの正拳突きを避けていた。




んー、いつの間にか50話を突破していた……こんなにダラダラ書いていたら200話ぐらい行ってしまうんじゃないか……?
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