オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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白くて速くて謎の奴

「おめでとうございます。」

 

セバスは先程の様子が嘘のようににこやかにクライムへと微笑みかける。

 

クライムは余りの事で地面へ膝を付き、先程の余韻か何かかクライムの身体はまだ震えていた。

 

おぉ?まじか?避けたのか?

 

サンラクは驚く。

 

……明らかなレベル差ががあると思ったんだが……………いや、金髪もそうだが……あの白髪爺もだな……

 

サンラクはセバスを見据える。

 

あの異様な殺気…………さては実力を隠してやがるな?あの殺気は吸血幼女にも(ブラザー)にも似た所を感じた。

 

サンラクはセバスの実力について興味を持ち始める。

 

どうにかして実力を確かめたい所だな……もし好敵手(親友)になれる程の実力ならば是非お近づきになりたい。

 

いっそ殴りかかって化けの皮を剥がしてやるのも有りだな 

 

なぜなら生物、皆死ねば土に帰るだけなのだから!!そこに魔物か人間かの優劣など無いのだよ。

 

サンラクが言いたいこと、それつまりは殴れば大体エネミー()である。

 

だが、まぁ……変に殴り掛かるとカルマ値に影響しかねない…………悪よりならば問題は無いのだが、もし善よりならばジョブ剥奪プラス、賞金首に俺の名が乗る。

 

いずれにせよ免罪符が居るな。吸血幼女のときみたいに相手方から襲ってくれれば上乗。もしくは任意の上での決闘とかでも…………

 

……もしくは他の方法でどうにかして実力を測れないものか……

 

サンラクがそう考えているとクライムとセバスの他に別の声が聞こえた。

 

「ま、待ってくれ!聞きたい事があるんだ!」

 

突然出てきたのは青髪で細マッチョの男性。

 

あ、さっきの奴。

 

どうやら青髪の男性もサンラクと同じように先程のセバスとクライムの一部始終を見ていたらしい。

 

細マッチョはセバスとクライムに自己紹介をしているらしい。

 

どうやらブレイン・アングラウスという名前のようだ。

 

俺も出来ることならば下に行って顔合わせしたいもんなんだがなぁ……

 

こう見えて初対面の奴と話すのには中々に勇気を振り絞って話す方なんだぜ?俺は……

 

だからどうやって話に行けばいいのか……最初にあのクライムとかいう金髪、で次にブレインとかいうやつに先越されたし……

 

流石に3人でストーカーしてたとか言えないよなぁ……

 

いや、そもそもチャンスは今だけじゃないんだ。今日の所はあの爺の強さだけ確かめるっていう事で許してやらんことも無い。

 

サンラクがそんな事を考えていると下からセバスのある言葉が聞こえた。

 

「どうやらお客様がいらっしゃったようなのでその方々の相手をしようかと……」

 

ん?お客様?

 

サンラクは再び屋根の縁から下を見る。

 

あ、さっきの暗殺者みたいな奴ら……………

 

ん?待てよ…………良い事考えたかも……。

 

――――――――――――――

 

人気の無い路地裏にて、セバス、ブレイン、クライムの3人は突然現れた暗殺者らしき者達に襲われていた。

 

しかし、結果的には3人誰も傷つかずに襲ってきた暗殺者達を無力化した。

 

「お見事です。」

 

クライムが暗殺者に勝つとセバスがクライムの肩を叩き、にこやかに賞賛する。

 

ブレインも声には出てないものの、よくやったと手を振って示す。

 

「ありがとうございます!」

 

クライムは嬉しさで少し声が大きくなる。

 

それに自分で気付き、少し恥づかしくなり、話の話題を変える。

 

「…………セバス様、一体この者達は何者なのでしょうか?……」

 

「……恐らく私が思っている者達で間違いは無いかと思いますが…………あくまで推測ですので、これから尋問を始めようと思います」

 

「尋問……ですか?」

 

クライムが眉間に皺を寄せて聞く。

 

「えぇ……ですが想像されてるような事ではないと思いますよ。」

 

セバスは近くで倒れていた暗殺者の前に立ち、その者の額に手をかざす。

 

傀儡掌(くぐつしょう)という特殊技術(スキル)です。では、尋問を始めます。

 ……貴方々は一体何者ですか?」

 

セバスはそのまま気絶した相手に質問する。

 

「…………私達は八本指の警備部門に雇われている暗殺者です。」

 

気絶していた筈の暗殺者が、口だけ開き、セバスの問いに答える。

 

「驚いた……そんなことも出来るのか…………。確か八本指って犯罪組織だったよな?」

 

「そうですね……中でも六腕と呼ばれる者達はアダマンタイト級冒険者に匹敵するとか……」

 

ブレインとクライムが話す中、暗殺者が続く言葉を喋る。

 

「六腕のお一人、幻魔 サキュロント様より、執事セバス・チャンの殺害の命令を受けました。セバス・チャン殺害後、その屋敷の女主人を攫う計画でした。」

 

セバスはそれを聞き殺気立つ。

 

「……どうかなさいましたか?」

 

クライムが不思議に思い聞く。

 

「決意が固まりました。とりあえず問題源となっている場所を潰します。あの娼館に…………」

 

セバスが立ち上がり、後ろを振り返るとセバスの言葉が途中で切れる。

 

どうしたのかとクライムとブレインも疑問に思い、後ろを振り返る。

 

「!!…………敵……か…?」

 

クライムとブレインが動揺する。

 

3人が振り返り、後ろを見るとそこには、白い肌を持った丸みを帯びた生物……。

 

いや違う。よく見ると白い肌は有機的でなく無機的であり、その生物の下を見ると白い肌から突き出すように人間の足が生えていた。

 

よく見れば白い肌と形容していたものは布であり、見えている足から推測するに人間が白い布を被っているということが分かる。

 

「…貴方は敵ですか?そうであれば……容赦はしません。」

 

セバスが落ち着いたように言う。

 

「…………敵って言ったらどうなる?」

 

白い布を被った人物がそう答えた瞬間、ビュンという音を置いてセバスの拳が放たれ、謎の人物に当たるという所で止まる。

 

「容赦なく潰します。」

 

セバスは冷静に冷ややかに答える。

 

白布の人物はセバスの拳を眼前に動かない。

 

「後ろ、ガラ空きだぞ?」

 

セバスの後ろから聞こえる声。

 

その声は先程聞いた謎の人物と同一の声。しかしその謎の人物は前にいるはず……?

 

セバスは気付く。目の前の白布の人物がゆらゆらと、まるで気体のように、まるで幽霊のように半透明となっている事に。

 

それが分かった後のセバスの行動は早く、セバスは振り返らぬまま後ろへと回し蹴りをする。

 

その蹴りは早く、そして空気を切るように鋭い。

 

しかしそれは文字通り空を切る。

 

回し蹴りをした勢いに乗り、セバスは白布の人物を見据える。

 

見れば身体を仰け反り、セバスの攻撃を避けていた。

 

セバスは攻撃が当たっていないと判断すると蹴りをした足を地面へと落とす。

 

そのまま白布の人物に当たると思われたが、次の攻撃が来るのを読んでいたのか、横へとステップを踏み、これも避けられる。

 

バギッという地面の割れる音がしてセバスの足が完全に下に着くとその足を軸にして体重を移動し、正拳突きを放つ。

 

しかしやはりこれも意図も容易く避けられ、行き場を失った拳はそのまま真っ直ぐ進み、建物の壁を破壊する。

 

次はこっちの番だと言わんばかりに白布の人物が避けた勢いでセバスの方向へと直進。

 

セバスは攻撃が来ると考え、残った左手でなんとか防御の体勢をとる。

 

……………………しかし攻撃は来なかった。

 

気付けば目の前から向かってきていた白布の人物はセバスの視界には居なかった。

 

「こいつは貰っていくぜ?」

 

声の方向を向くとそこに白布の人物は立っていた。

 

白布の人物はあの一瞬でどうやってか、先程倒した暗殺者の一人を抱え、建物の屋根の上に立っていた。

 

「あ、ちなみによぉ……ここで追われても面倒だから、さっきの質問の答えを言っとくが……今は敵でも味方でもない。じゃな。」

 

そう言って白布の人物は姿を消した。

 

「……ま、待てッ!!」

 

先程の異次元の戦いを見て終始ポカンとしていたクライムだが、白布の人物の発言によって正気を取り戻しその後を追おうとする。

 

「クライム君、お待ちなさい。」

 

「……!!」

 

クライムがセバスの言葉で足を止まる。

 

「あれは放っておいた方がいいでしょう。」

 

「ですが……!」

 

セバスは言葉を続ける。

 

「私とした事が……失態でしたね。己の力を過信し、相手の力量を見誤りました。

 恐らく、相手がその気になれば私はここに立っていないでしょう」

 

「……セバス様が…?………それ程……でしたか……。」

 

ブレインが言う。

 

「えぇ……彼、あるいは彼女の目的は分かりませんが……なるべく関わらない方が身の為です。」

 

「六腕……ですかね……。」

 

クライムが言う。

 

「分かりませんが……そうでない事を祈ります。」

 

セバスが答える。

 

攻撃を仕掛けた事があの人物の琴線に触れなかった事にセバスは安堵し、そして同時に反省する。

 

そしてセバスは思う。

 

あの人物は私達を敵でも味方でもないと答えた。しかし、それなら何故わざわざ私達の目の前に現れ、煽るような発言をしたのか……あの動きならば最初から暗殺者を持って逃げる事はできたはず…… 

 

いずれにせよ……願わくば、敵とはなりなくない。

 

セバスは先程の動きを思い出しながら思う。

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