交換条件
「俺に稽古を付けてくれッ!!」
「…………はい?」
サンラクはポカンと口を開ける。
「無理を言っているのは分かっている……だがどうか俺を強くはしてくれないだろうかッ!!」
……おっけー、理解が追い付いてない。
起承転結の結で話が始まっているようだ。どうやらここでは起承転結という話の基本構成を使わないらしい。なんて素晴らしい文化なんだ……!!
「いや、あの……一度落ち着きましょう?……とりあえず話は聞きますので……」
サンラクがブレインを諭す。
「そ、そうですよ……とりあえず立ち上がりましょう?」
クライムがブレインを諭す。
先程から衛兵達の目が痛い。とりあえずここは落ち着かせて場所を移動したい。
――――――――――――――――
「……先程は突然騒ぎ立ててすまなかった…………。」
ブレインが頭を下げて2人に詫びる。
「少しは落ち着きましたか?」
サンラクがそう言う。
「ブレイン様……何故先程は突然あのような事を……それにブレイン様程のお方が教えをこうなど……」
クライムが言う。
おぉい、金髪ぅ。つまりあれか?お前が言いたいのは俺なんかに教えをこうな、と言いたいのか?
「……クライム君………俺は弱いんだ……。
さっきも言った通り……あのセバス様の殺気に怖気ずいて動けなかった………。
それにさっきのミラク殿の太刀筋を見ただろう?ミラク殿は俺なんかより遙かに強い」
「!!!……な、なんと…………」
クライムが驚いたようにサンラクを見る。
「…………ん……?」
サンラクが笑っていない笑顔で圧を送る。
「い、いえ……!……その……なんと言いますか…………私とあまり歳が変わらない筈なのに凄いな……と。」
クライムは弁解する。
「…………はい?年上ですが?」
おい、ガキィ。おめぇと俺がタメな訳がネェだろ?
「……そ、そうですよね…………申し訳ありません……!」
クライムがサンラクの圧に屈する。
まぁ、実の所サンラク(男)とサンラク(女)では身長は変わっており、男では高身長で巨体だが、女では中学生並みの身長となっており見た目もそれなりに若く見えている。
なのでクライムが自身と同い年ぐらいと考えるのも無理は無い。
だがサンラク自身はそんな事知ったこっちゃないといった様子である。
ゴホンッとブレインが咳払いをする。
「話を戻すが…………率直に言う。ミラク殿……俺を鍛えてはくれないだろうか?」
ブレインが改まって言う。
嫌です、と言いたい所だが…………
何かのイベントフラグっぽいし、耳を傾けるぐらいはしとくか……。
俺の気持ち的にはやる気では無いがな
「…とりあえず話は聞きましょう。鍛えるかどうかはそれからです。」
サンラクはブレインに話を促す。
「…………分かった……。」
そしてブレインは話を始める。
――――――――――――――――――――
「……という事があった。これで話は終わりだ。」
……ふむ…。
まさか前にやり合った吸血幼女とコイツが接触してたとはな……。
しかも強すぎてコイツのトラウマになったんだとか……。
まぁ、なるほど。大体話は分かった。
吸血幼女にトラウマを植え付けられメンタルブレイクを起こしていたブレイン。
そして色々あって街を散策中にセバス、クライムと出会い、そして晴天流を使いこなす俺に接触した、と。
俺の見事で華麗な居合切り、もとい晴天流 斬風を見て確信したのだと。
これなら吸血幼女に対抗できる、自身の
うーん、なるほど。話を聞いても……もちろん答えは却下だな。
理由とか特に無いが、俺に得が無い。そして面倒だ。これに限る。
俺も調子に乗って無闇に晴天流を使うんじゃなかった。
刀とか久しぶりに見たし、爺との接触を邪魔された事で煽ってやろうと思って使ったが、裏目に出たか……。
「どうだろうか……?」
ブレインが伺うようにサンラクに尋ねる。
「……却下です。」
「…………やはりか……。」
ブレインが苦笑いする。
どうやら本人も却下されると分かっていたらしい。
サンラクは苦笑いしているブレインを見据えて
「断られると、分かっていた様子ですね。」
ブレインはサンラクの言葉にキョトンとしてまた苦笑いをする。
「あぁ……あまりに唐突で自分よがりな事だとは俺でも分かっていたからね。
強くなりたいという理由もあまりに薄っぺらい。
ちっぽけだと、弱さだと、不要に思って捨てた物は……俺が思っている程にあまりに大きく、大切な物だったんだな…と改めて理解したよ………。」
ブレインはクライムを見て言う。
「……?」
ブレインはサンラクに向き直り背筋を伸ばす。
「ミラク殿……もう俺を鍛えて欲しいとは言わない。
だがどうか俺と一度だけ打ち合ってはくれないだろうか?」
ブレインは頭を下げて改めてお願いする。
あんなにはっきり断ったのにまだ引こうとしないってお前どんなメンタルしてんだ?
吸血幼女にメンタルズタボロにされて逆に吹っ切れたのか?
……しつこいなコイツ。正直断りたいのだが…………
どうするか…………
「先程は何度もブレイン様に命を助けていただきました。ミラク様……どうか私からもお願いします。」
クライムも頭を下げる。
コイツもか……ってかお前はさっきの失言をもう忘れたんか?お前頼める立場なのか?え?!
………………ここまで頼まれて断るというのも何かだなぁ……。
ここで断って今みたいにしつこく粘着されるよりは……もういっそ頼みを聞いた方が良いのかもしれない……。
一度だけの打ち合い。考えたらそんなに時間は取られそうにないし、なんならやる意味も無いというほどに瞬殺出来そうだ。
「はぁ…………分かりました。」
「本当か?!」
ブレインがパッと頭を上げる。
「ただし!です。私の頼みも聞いてください!」
サンラクが言う。
「頼み……?もちろんだ……!俺に出来る事はなんだってしよう!」
「頼み事は2つ。
1つは、もし今度セバスさんに会うような事があれば私に紹介してください!
2つ目は……そうですね……」
サンラクは思考する。
ここに来た目的は爺とのコネクション作り。そしてもう一つは八本指の情報収集 兼 撲滅。
少なくともこの金髪はそこら辺の衛兵に指示を出せるぐらいには地位は高い。
そしてこの娼館で見つけた八本指関連の情報はコイツら公共機関が握っていると。
「この場所で分かった八本指の情報を私にください。」
サンラクは言う。
「…………なるほど…セバス殿か…………申し訳無いのだがさっき話していた通り、俺達自身もあまりセバス殿の所在は知らされて居ないんだ。」
「分かっています。なのでそれはまたその時々、セバスさんにまた会った時に私に知らせてくれれば大丈夫です。」
「そうか……了解した。それで、八本指の方なのだが……俺自身ではどうにも…………どうしたものか……」
ブレインが困った顔で思考している。
そうしているとクライムが喋り出す。
「……あ、あの…………私で良ければお二方のお力になれるかもしれません。」
「……む……しかし…………」
ブレインが歯切れ悪く言うと
「先程も言っていた通り、私はお二方が居なければ今こうして立ってはいないでしょう……どうか恩返しと思ってください。」
「私としては情報が得られればどちらでも大丈夫ですよ」
サンラクははっきり言う。
「…………すまない、クライム君!」
「……いえ…………そして八本指の情報についてなのですが……結論から言いますと、私から情報を渡す事は出来ません」
クライムがサンラクに向き直りキッパリと言う
「…………ん?……は?」
サンラクは思わず言葉が出た。
え?何、コイツ……協力させろみたい事言って渡せないとかいう選択肢があんの?こわ、サイコパスかコイツは……
サンラクはクライムを睨みつける。
サンラクの睨みに気付いたクライムは急いで撤回する。
「……い、いえ、あの……私
……そういえば主が居るとかみたいな話を前に聞いたような…………
「ですので私から主に話を通します。なので後日まで待ってくれないでしょか?」
…………結果的に情報が渡ってくるなら別に良いのだが……その主が渡さないって言ったらどうするんだろうな?
いや、まぁ俺的にはこの交渉を無かった事にするだけか……。
てかまぁまぁ俺に有利な条件な割にすいすい飲んでくれるよな?こいつら……
「……分かりました……。ではまた後日話しましょう。」
恐らく皆さん、忘却していると思いますがサンラクが誘拐した子供は一体誰なのでしょうか……
実はただのモブではなかったり…?