相対するのはまともの対義語
「リリアだ。」
「それで、リリア。とりあえず話は聞いてやる……協力するかどうかはそれを聞いてから決める。」
サンラクは端的に言う。
それに対し、リリアはこくりと頷く。
「……私は八本指から抜け出して、安全に家に帰りたい。アンタにはそれの手伝いをしてもらいたい。」
「……抜け出したいって言うが、お前一人で逃げればよくないか?
実際、お前をここに連れてきても追っては来ていない訳で、今なら簡単に逃げれんじゃね?」
サンラクは疑問に思った箇所を追求する。
「時間の問題だろうな。私の顔は組織に割れているし。
それに娼館の場所の情報はアンタにゲロったからな……もう裏切ったも同然。
捕まった奴らと死体の数を見れば、
組織は裏切りを許さない。直ぐに刺客が送られ排除される。それは私の仕事でもあったから私が一番知っている。」
「だがバレなきゃいいんじゃねぇの?顔を隠すとか、身を隠すとか、遠くに行くとか。」
「不可能とは言わないが、難しいな。八本指はそこら辺の犯罪組織とは違う。規模が大きいんだ。
もはや王国の貴族のほとんどが八本指と関わりを持っている。やろうと思えば私を犯罪者と指名手配にし、市民も衛兵も、国を使った調査をする事ができるだろう。
王国だけじゃない。他国にも八本指の手は届く。何処へ逃げようといつかは必ず組織にバレる。
それに何より……村が心配だ。私を探すとして八本指が真っ先にあたるのが私の生まれの村だろう。あそこには兄さんがいる。もしかしたら危険が及ぶかもしれない。そんなリスクは背負いたくない。」
…………やけに全否定じゃねぇか…………てかそれだったら…………
「………だったら俺が協力しようが何も変わらないのでは?」
サンラクの質問に対しリリアが目を瞑って頷く。
「……そうだ。」
ん?……つまり何が言いてぇんだコイツ。
「………今から言う事は正直……私でも正気を疑うレベルにぶっ飛んでいると思う。
……だけど…………もう組織には戻れない。もう後戻りは出来ない……。」
リリアは深呼吸をして息を整える。
「…………アダマンタイト級冒険者であるアンタに無理を承知で頼みたい……!!頼むッ!!
一緒に八本指を壊滅させてくれッ!!!」
リリアは深々と頭を下げる。
そしてサンラクは数秒考える仕草をした後、
「………………いいぞ。」
そうあっさりと答えた。
「……そうか…そうだよな…………断るのも無理は…………ん?…………今、なんて?」
「だから協力してやるって。」
リリアはしばらく間抜けな顔をして
「は?!……アンタ正気なのかッ?!八本指だぞ?王国の裏社会を牛耳っているあの八本指だぞ?!」
「うるせぇなぁ……分かってるって。別に何か勘違いしてるとかじゃねぇから……八本指だろ?八本指を潰すんだろ?」
「…………何ともないように言っているが……そんな簡単なものでは無いんだぞ……?!
特に警備部門のトップに立つ六人…六腕は一人一人がアダマンタイト級冒険者に匹敵すると聞く!」
サンラクは六腕と聞くと何かを思い出すように目を瞑る。
「……ん?…あぁ………確か、さっき六腕の1人を斬ってきた所だぞ?」
またもやリリアはぽかんという表情をする。
「………………は?!………それは本当か?!」
「……あぁ……名前は……と…げん……げ…………何だっけか…………あぁ!!そうか ”玄米のサーキュレーター”!!」
「…………何を言っているんだ?そんな奴は六腕には居ないぞ?」
リリアが眉をひそめて言う。
「……あり?金髪は六腕とか言ってたんだけどなぁ……」
サンラクが困惑しているとリリアが気を取り直すように手をパンと叩く。
「とにかく……!八本指の壊滅はそう簡単なものじゃない。はっきり言って無謀だと断言出来る……失敗すれば 死 だ……いや、それならまだいい方かもしれない……
私はアンタにとって今日会ったばかりの他人……いや、元は敵だ。私が今提案している事も、何もかも演技で、それが八本指の罠かもしれない…………
正直、協力する報酬として私が出せるものは少ない……それに対して私が要求するものはあまりにデカすぎる…………
これを聞いた上でもう一度聞こう……!!……一緒に、八本指の壊滅を協力してくれッ!!」
「おっけーおっけー、協力する協力する」
サンラクが耳をほじりながら何ともないように言う。
「いやだからぁッ!」
それに対してリリアがまた噛み付こうとするがそれをサンラクが遮る。
「俺がこの王都に来た目的は八本指を潰す為だ。はなからお前が協力しようがしまいが、八本指を潰すことには変わらん。」
リリアがスンと静かになり、重い表情で
「…………アンタも……八本指に因縁が……?」
しばらく沈黙が続き、何やら重い雰囲気に部屋が包まれている。
そしてサンラクがリリアの方を見て
「いや、暇つぶしだ。」
「…………………………」
先程の重たい雰囲気など何処へやら。
リリアは間抜けな顔をして目の前のサンラクを見据えていた。
「……う…え?……暇つぶし?…」
「おう……そうだ!……さ、話は終わったなッ!これからの事について話そうぜッ!」
「……?……?…?」
――――――――――――――――
「あの娼館であった事はこれぐらいだな……」
「国の奴らが動いているのか……そういえば、蒼の薔薇が麻薬部門にちょっかいをかけていると聞いたが?」
蒼の薔薇?麻薬部門?……何だ新しい麻薬かなんかか?
「蒼の薔薇ってなんだ?」
サンラクがリリアに聞く。
「アンタ知らないのか?同じアダマンタイト級冒険者だろ?」
リリアが目を細めて言う。
同じアダマンタイト級冒険者ね……言ってもエ・ランテルでしか活動してないしどれぐらいアダマンタイトがいるのかも知らん。
まぁ、ギルド長からアダマンタイト級冒険者は指で数える程しか居ないとは聞いている。
「強いのか?」
「そこなのか……?………………まさか…下手に喧嘩を売ったりはしないよな?」
リリアはサンラクから八歩指を潰す理由を詳しく聞き、そのあまりの薄っぺらさに マジかコイツ と思うぐらいには引いていた。
そしてこの喪服女はただの愚者なのか、それともただの変人なのか、という2択でリリアを不安にしていた。
「殺しはしないさ、ただ
ただ、答えは狂人である。蛮族とも言う。
「今は味方なんだからな?共通の敵は八本指だからな?」
「おう分かってるぜ?両方潰せばいいだけだろ?」
「………………」
リリアは頭を抱え、頼む相手を間違えたか?と頭が痛くなる。
「話を戻すが………私はどうしたらいい?国の奴らとも協力するんだろ?情報を開示しろ言われれば知っている事なら何でも喋ってやる。
ただ、アンタ以外の連中は私の事情を知らない。元八本指とバレれば恐らく捕まる。それは御免だ。」
「そうだな……正直、あっちには情報を渡さなくても良い気がするぞ?そもそも協力というよりは俺が情報を貰うっていう話だからな……。」
サンラクはリリアを見る。
今になっては情報を貰う必要も無さそうだが……まぁ、約束した手前、貰うもん貰ってやることやってさっさとお暇するって感じだな。
「お前は顔を隠して服装を変えろ。」
サンラクは指を指して言う。
「顔を隠すのは良いが、服を変えろたってこれ以外の服は無いぞ?」
「…………服は買わないとだな…」
サンラクがボソッと呟く。
「いや、すまないが私は一文無しだ。」
………………
「おいコラ、さっきお前金でも何でもやるみたいな事言ってたよな?」
リリアは目を逸らし頬をかく。
「あの時はその場の勢いというか……だが安心しろ!今すぐは難しいが必ず金は稼ぐさ!!」
なぁんか信用ならねぇ……
「まぁいいや。金は要らん」
「本当か?!」
「特に金が無いという訳じゃないからな。正直金よりも情報の方が価値がある。
服は適当に俺が見繕ってやる。
とりあえずお前は風呂に入ってこい!さっきから思ってたが臭うぞ?」
サンラクは鼻を抑えながら言う。
「ん?風呂……?風呂があるのか?!」
突然リリアが目を光らせてサンラクに顔を近付ける。
「ッ…………近付くんじゃねぇ……!」
サンラクはリリアを手で抑え込む。
「風呂に入っていいのか?!」
「あぁ……だからはよ行ってこい!!」
サンラクはシッシッと手を振ってあしらう。
そしてリリアは目を輝かせてバスルームへと入っていった。
……なんか立場的に紐みたいになってるな………………そうだ、服だな……。
別にアイツを信用仕切っている訳では無い、のでなるべく弱い装備…………
何でもいいか……RIP用の生贄装備から簡単に選ぶか……後は顔だな…………
顔と言えば…………アレしかないよな?
サンラクは何やらインベントリアをまさぐりかえす。
コイツら仲良いな……