オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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晴れときどき拳

俺達3人は冒険者登録を済ませ、宿をとる為に大通りを歩いていた。

 

「……ふむ…」

 

金を代わりに支払ってくれたモモンだが、ギルドを出てからずっと。その交換条件として出してきた水晶を手に持ち、街の街灯に当てて眺めたりと鑑賞を楽しんでいるようだ。

 

見た目からは想像出来なかったが…モモンはあぁいうキラキラした物が好きなのか?意外と可愛い物好きとか…?ヤダ…これがギャップ萌え…?!

 

まぁ、そんな事はどうでもいいんだが、俺の財布が寂しくならない程度に稼げるまで俺は実質この2人のヒモ状態、という事だ。

 

響きは悪いが…そこは止むを得ない。今はコイツらの世話になるしかない。

 

それで、だ。暫くは行動を共にする以上、ある程度好感度を上げておく必要があると考えている。特にポニテ。

 

よく分からんが、恐らく、俺への印象は最悪だと言えよう。人を虫呼ばわりしてくるぐらいには嫌いらしいな。

 

よく分からんが。

 

まずはコイツの攻略からか?

 

「あのぉ…ナーベさん?」

 

サンラクはナーベの方を向いて話しかける。

 

「チッ……何か?」

 

おう、いきなり舌打ち。俺じゃなきゃメンタルブレイクされてるね。

 

「お2人は何処からいらっしゃったんですか?」

 

サンラクは適当に話を振る。

 

「……何故下等生物であるお前に、私が話さなければならないの?」

 

どうやら話しかける事すらダメだったらしい。

 

「…私は ファステイア という場所から来ました!」

 

「……。」

 

無反応ですか。コイツらがプレイヤー説とも考えたがネームタグが出てねぇしで色々迷った結果、揺さぶりをかけてはみたもののどっちだ?

 

「あのぉ……」

 

「……。」

 

徹底的に無視を通す気か?ならこっちだって考えがあるぜ!

 

「あのぉ…!」

 

「……。」

 

「あのぉ!! 聞いてますか!」

 

サンラクはナーベの耳まで口を近づけて大声で話す。

 

執拗いぐらいに粘着してやるよ。

 

好感度を上げるのには逆効果だが、もともとマイナス値ブッチの俺がもっとマイナスになろうと何も変わんねぇ。

 

むしろ好感度がずっとマイナス値で変動しなくなるのはまずい。

 

好感度なんてこれから上げればいいんだよぉ!そしてこれがその1歩だ!

 

「……。」

 

サンラクへの答えは口からでは無く拳から放たれた。

 

「うおっ?!」

 

サンラクに迫るナーベの拳。

 

しかしその拳がサンラクに当たる事は無く、空を切った。

 

「えっとぉ…ナーベさん?」

 

「……よく動くヤブカね…!」

 

また拳がサンラクへと迫る。

 

そして身構えていたサンラクは避ける。

 

暴力反対!!人間が他生物より優れている点はインテリジェンスの筈だろ?なら拳じゃなく(インテリジェンス)で語り合おうぜ?

 

そんな心の願いはナーベに伝わるわけも無く、

 

次の拳、次の拳…とサンラクを打たんとべく無数に放たれる拳の連打。

 

それを華麗に避けるサンラク。

 

打たれる連打は放たれれば放たれるだけ速くなる。

 

おい、これ普通に人殺せるレベルだろ?何か、お前は俺を殺したいぐらい憎いのか?

 

「ちょッ!…一旦落ち着きませんか?!」

 

サンラクがそう言うものの、一向に拳の雨は止む気配がない。

 

そしてサンラクはモモンが2人のやり取り(喧嘩)を興味深そうに見ている事に気付く。

 

「モモンさん?!…見てないで止めてください!!」

 

「……?!…あ、あぁ、すまない。ナーベ止まれ。」

 

ピタリと止まった拳の連打。

 

殴ろうとしてきた本人は涼しい顔で何も無かったように佇んでいる。

 

ふぅ、やっと止まった。どうやらポニテは俺の事を虫以下としか思ってないらしい。

 

「度々すまないなミラク。」

 

「いえいえ」

 

さっき観戦してたけど実質お前も同罪みたいなところあるからな?

 

ポニテに話しかけても帰ってくるのは拳だけだろう。ならモモンに話す他ないか。

 

「あの、お2人は何処からいらしたんでしょうか?」

 

「それは出身地…という事か?……ユグドラシル という所を知っているか?」

 

「ユグドラシル……。」

 

言葉自体はファンタジーでよく使われる定番の名前だな。

 

「いえ、そのような場所は聞いたことが無いですね。」

 

何かラスボスが居そうな場所だな。機会があれば行ってみたいね。

 

「そうか…。とても遠い場所なのだが、私達はそこから来た。使う通貨が違った様だったが君も遠くから来たのか?」

 

「はい、ファステイア という場所から来ました。」

 

「ふむ…聞いた事がないな…。」

 

どうやら知らないらしい。つまりはプレイヤーでは無いのか。

 

「この水晶もそこから持ってきたのか?」

 

モモンはクリスタル・スコーピオンの水晶をミラクに持って見せる。

 

「あ、いえ。それはファステイア の近くにある水晶巣崖 という所から取ってきたものです。」 

 

「いつか行ってみたいものだな…。」

 

俺とモモンは同じ様に考えていたらしい。

 

ま、正直NPCがあそこへ行くのはあんまオススメしないけどな。あれは自分を中心にして高速道路にいるトラック達が一斉に走ってくるみたいなもんだし。

 

そしてモモンがいきなり立ち止まる。

 

「着いたようだ。」

 

どうやら宿に着いたらしく、3人は宿の扉へと入っていった。

 

――――――――――――――――

 

宿といっても食事や飲み物を1階で提供しているらしく、そこで冒険者達が酒を飲むなどと、ガヤガヤ賑わっていた。

 

そしてサンラク達が入るとやはり目立つらしい3人を見てよからぬ事を考える者は少なくもない。

 

そんな視線を無視して3人はカウンターへと足を運ぶ。

 

「……銅のプレートか。3人部屋で10銅貨だ。」

 

「いや、2人部屋と1人部屋を頼みたい。」

 

「……2人部屋で7銅貨。1人部屋で5銅貨だ。」

 

「それで頼む。」

 

モモンは硬貨を取り出しカウンターに置いて部屋へ向かおうとする。

 

しかしテーブルで飲んでいたであろう冒険者がモモンの肩を掴む。

 

冒険者ってのは人にちょっかいを出さねぇと息出来ねぇのか?

 

「いい女を連れてるじゃねぇか……俺らに一晩貸してくれよ」

 

ちょっかいを出した男は仲間を連れて下卑た笑いを浮かべている。

 

キメ〜、言葉選びが終わってんな。

 

サンラクがジト目で男を見てるとモモンがその男の胸ぐらを掴み投げた。

 

おぉ、良く飛んだな。球技大会のボール役としては満点かもな。

 

投げられた男はテーブルに落ちて放心状態だ。

 

「…次はどうする?一斉にかかってきてもいいぞ。」

 

モモンがそう言うと悲鳴にも似た叫びが聞こえてきた。

 

「おっきゃああああ!!」

 

うおっ?!何だ?

 

「ちょっとちょっとちょっと!!何すんのよあんたっ!!」

 

恐らく悲鳴の主であろう赤髪の女冒険者が近づいてきた。

 

「何とは?」

 

「何ってあんた自分がした事が分かってないの?!」

 

どうやらモモンが投げた場所が悪かったらしく、女冒険者が頑張って買ったと言うポーションが置いてあるテーブルに見事クリーンヒット。

 

赤毛の女冒険者はそれについてガミガミとモモンに詰め寄っている。

 

乱数の女神に愛されなかったらしいな赤毛。分かるぜその気持ち。だがそろそろ止めた方がいいかもな。

 

なんでってポニテが今にも襲いかからんばかりに殺気を出してるからな。

 

モモンもその事に気付いたらしく自分が持っていたポーションを渡してどうにか場が納まったらしい。

 

「災難でしたね」

 

「まったくだ…… 」

 

俺達は部屋で休むべく2階へと上がっていた。

 

「明日はどうしますか?」

 

「…私達は早速依頼を受けようと思うが君はどうする?」

 

「そうですね…私も受けようと思ってます。」

 

「なら明日の朝にまた合流しよう。」

 

「分かりました。」

 

おいポニテ。そんなあからさまに嫌そうな顔をするな。

 

「では私はこれで、今日はありがとうございました。」

 

「あぁ……。」

 

モモンはそう言い残し、ナーベを連れて部屋へと入っていった。

 

――――――――――――――――――

 

何か今日はやけに疲れたなぁ。

 

冒険者ギルドや宿にいた奴らも、プレイヤーらしき人物は居なかったし、一番可能性のあったモモン達もプレイヤーじゃなかった、か。

 

流石に現実世界で俺が起きてない事はもう分かってると思うが…未だにログアウトは出来ないと…。

 

ま、何かと楽しいし俺は別に良いんだが、現実に帰ったら母さんに何されるか分からんな。ゲームを売り飛ばされそうになったらどう言い訳するか…。

 

不安ではないというと嘘になる。このまま現実に戻れないとかになると色々怖い。

 

ま、否定的になってもしゃーない。

 

今日ははよ寝よ。

 

そしてサンラクは眠った。




次の話からは今までのエピソードのモモン視点になります。話が進まないのでなるべく早く終わらせます
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