オーバー×フロンティア   作:牡羊様

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魔王は英雄に憧れる

時は遡りエ・ランテルでの路地裏の道。そこを歩く2人組。

 

1人は2つの大剣を背負った全身フルプレートの大男。

 

かたや1人は街の男も女も思わず2度見する程の顔が整った黒髪のポニーテールの女。

 

2人は冒険者ギルドへ向かうべく歩いていた。

 

「……しかし、私でよろしかったのでしょうか? 供とするのであればアルベド様が適任かと思うのですが?」

 

「……アルベドか…」

 

タブラさんに本当に申し訳ない事をしてしまったな……正直あんな綺麗な女性に言い寄られて嬉しくないことは無いけれど……いや、思考が変な方向に行ってるな。

 

彼女に言い寄られる度、罪悪感と何とも言えない感情の板挟みにあう。それに好きだ好きだと言われても、彼女の思いに応える事はできない。

 

何より今はこの姿で、かつてはあった大事な物が俺には無いのだから……何か悲しくなってきたな。

 

「……アイ……モモンさ…ん?」

 

「…あぁ、すまないナーベ。」

 

何やら考え込んでいたモモンはナーベの質問に答える。

 

「…アルベド程信頼出来る者は他に居ない。だからこそ、私が外出中でも安心して彼女にナザリックを任せられる。」

 

本当はカルネ村のときに現地人と交流した際、おもむろに人間を見下していた節があったからな。正直供に付けるのは不安だ。

 

「やはりそうでしたか!」

 

モモンはナーベの顔を見る。

 

最初この街に入った時も近付く人間を鋭い目付きで睨んでたけど、大丈夫かな?

 

「……時に質問だが………人間の事を下等生物と思うか?」

 

「まさにその通りです。ゴミに群がるゴミ虫同然かと!」

 

やっぱお前もか……だからNPCは人間の街へとやれない……そもそも内のギルドは異形種オンリーだったし、人間との接点が無いっていうのも問題か……。

 

「……ナーベよ。ここは人間の街であるし人間の中にも強者がいるかもしれん。挑発的行動はなるべく慎め。」

 

「はっ!」

 

ナーベはお辞儀と共に気持ちのいい返事をモモンに返す。

 

やっぱ冒険者となるのなら従者というよりは仲間という設定の方がいいよな。

 

そう思い、モモンはナーベの頭を優しく触り頭を上げさせる。

 

「そのお辞儀もよせ。そしてもう一つ、私の許可なしに本気を出すな。」

 

「かしこまりました。モモンさ……ん。」

 

ナーベは頭を下げようとするが咄嗟にピタッと止まりギギギと条件反射に逆らうように頭をあげる。

 

本当に大丈夫だろうか……。不安だ……。

 

――――――――――――――

 

ここが冒険者ギルドか……。想像はしてたが、まるでゴロツキの集まりだな。

 

モモンはナーベを連れて冒険者ギルドに入り中を確認する。

 

そして2人の前に立つ人物に気付いた。

 

……喪服?……それに何だ…? 墓石……のような大剣。

 

そこには明らかに周囲と違う服装をした少女。

 

来ている服は見事な装飾が入っている黒い喪服。そして背中には持ち主の身長以上の大きさのまるで墓石のような十字架の装飾が入った大剣。顔は薄暗いヴェールがかかっている為はっきりとは見えない。

 

もしやプレイヤーか…?しかしユグドラシルであのような格好が果たしてあっただろうか?いや、そもそも自由度が高いゲームだから装備のカスタマイズなんて当たり前。ならプレイヤーの線も捨てきれない、か……。

 

モモンはそう考えていると何やら喪服の少女が男に絡まれているのを目撃する。

 

見た目通り野蛮な男のようだ。さてどうしたものか……。

 

無視をしてもいい。というか無視をするのが普通だ。しかしどうしてか、俺は迷っている。

 

頭に浮かぶのはかつて救ってくれた白騎士の仲間。

 

モモンは気付けば男の手を掴んでいた。

 

……そうですね。きっと貴方ならばこうするでしょう。

 

貴方みたいな真っ当な善人には俺にはなれない。だけどこのモモンの姿の時だけは、偽善者としてあなたの正義を貫きましょう。

 

「幼気な少女にも手を出そうとするとは…この国の冒険者は随分と腐っているのだな。」

 

「て、テメェ!手ぇ離しやがれ!!」

 

男が手に力を込める。しかしその手はビクともせず逆にモモンは手に力を込める。

 

「ッ!痛だただだたっ!!ちょ、離せ!!離してくれ!!」

 

「…このような真似を二度としないと誓え。」

 

「ち、誓いますっ!!だから、早く離してくれ!」

 

まぁ、これぐらいでいいだろう。

 

そう思ってモモンは男の手を放す。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

黒い喪服の少女からモモンに向けての感謝の言葉。

 

「フンッ…。」

 

き、決まったぁ〜。

 

モモンは内心ガッツポーズをする。

 

モモンは何もこれが正義だからという理由だけで動いたのではない。それは理由の1つでありきっかけにすぎない。ならば他の理由はというと、冒険者モモンの印象操作だ。

 

どうせ冒険者になるのなら最高ランクを目指してまさしく物語の英雄と言えるべく人物にしたい、と思っていた。

 

だからこそ本来の名前を偽り、英雄モモンとしての人物像を作っている。

 

モモンは未来での英雄としての姿を妄想しつつカウンターへと堂々と歩いていく。

 

しかし次の瞬間、後ろに付き添っていた女の声で現実に戻る。

 

「チッ、ガガンボが。」

 

……おい、ナーベ。さっき説明したよな?しかもわざわざ俺が助けた人間相手に……。

 

モモンは急ぎ戻ってきてナーベの頭にチョップを入れる。

 

「プギュッ………」

 

「ナーベ!」

 

「申し訳ありません…モモンさ……ん。」

 

本当に大丈夫なのか……。

 




何だこの骸骨……感情の起伏が激しいな!
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