迷宮絶望譚(ダンジョンディストピア)   作:ゴリラズダンジョン

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酔いは冷めない

「白い髪のお兄さん!突然ですが、サポーターを探していませんか?」

 

 リリルカが彼に、ベル・クラネルに接触したのはお人好しそうなカモだったから。

 

 だがそれが酷く浅はかで地雷だったと、直ぐに思い知った。

 

 サポーターとして背後で戦況を見るリリルカには、その戦い方の歪さが目に余った。小人族(パルゥム)の自分よりも臆病な小指を震わせているのに、前へ前へと深紅を閃かせ白い髪を揺らす。

 逃げる為に、戦う。そんな獣のような戦い方を見て小人族(パルゥム)の少女は直ぐにこれ以上関わらない事に決めた。

 

 しかし無言で彼の元を去って直ぐ、自分の落ち度で冒険者から『怪物進呈(パス・パレード)』を仕掛けられて窮地に陥ってしまう。

 

 罰が当たったとのだとそう思った。だがあろうことか、そこに救済に訪れたのが他らない白髪の少年だったのだ。

 

 臆病で、現実から逃げ続けている少年が女の子を助ける。

 

 その理由を問いただすと、彼は、

 

「リリは便利だから」

 

 と返した。ベルにとって、人とは尺度で測れるモノでしかなかったのだ。

 

 その狂気に、しかし今まで誰かに必要とされてこなかったリリルカにとって、その一言は『救済』だった。

 

 リリルカが有能なサポータで居る限り、決して裏切られない。その時から、『打算的な関係』は始まった。

 

 リリルカはベルが望むなら何でもした。

 

 その度に彼は「やっぱり、リリは凄いね」と褒めてくれた。それが甘言だと分かっていながらも、役に立てているという事実がとっても嬉しかった。

 

 それに、ベルは『一線』を守っていた。非合法な事をどれだけやっても、人殺しだけは絶対しなかったのだ。

 

 ただ、その枷はあっさりと外れてしまった。

 

 ある日、リリルカは所属している【ソーマ・ファミリア】のザニス・ルストラに脅迫された結果、やむなく【ソーマ・ファミリア】に戻って、監禁される事になった。

 あの人は直ぐに駆け付けて、ザニスと交渉した。

 

 だがそれは許されない。かといって、リリルカに神ソーマと直談談判出来るほどの胆力はなかった。

 

 だから、ベルはあっさりとザニスを殺した。

 

 初めての殺しにも関わらず、まるで蟻を踏むみたいに平然とやって見せた。

 

「遅れてごめん。でももう大丈夫だから」

 

 恐ろしかった。でもそれ以上に、自分の為には人殺しも厭わない姿が小人族(パルゥム)の少女の小さな心を奪い去ってしまった。

 

「でも少しやり過ぎちゃったかな?」

 

「……後片付けは任せて下さい。リリはベル様のサポーターですから」

 

 口止め、死体・遺品の処理。

 

 意地汚く生きて来たのもあるだろうが、まるで元から才能があったのかと疑う程、隠蔽や工作が酷く手に馴染んだ。

 

 それが間違った道だと分かっている。

 

 それでもヤメラレナイ。彼が止まらない限り、リリルカ・アーデは灰色の少女で在り続けるだろう。

 

 

「ベル様、いいですか?」

 

 夜、眠らない都市が少しの静けさを帯びる時間。

 

 【サタン・ファミリア】本拠地(ホーム)の団長室にリリルカは訪れていた。

 

 団長、とは言ってもそもそもこのファミリアには現在、二人しか所属していない。すなわち、薄暗い部屋で本に読み耽るのは白髪の少年だ。

 

 この時間こそ、少女が最も待ちわびている至福。そしてこうまで、心酔してしまっている原因。

 

 リリルカを見て優しく眦を下げたベル、本を置き、ソファにもたれ掛かった状態で自分の膝上のトンと叩く。

 

「失礼します」

 

 一度断りを入れて、リリルカはその膝の上に寝そべった。所謂、膝枕というやつである。

 

 普通は男女逆な気もするが、ヒューマンと小人族(パルゥム)の身長的にはこっちの方が自然だ。

 

「何時もありがとう。リリのおかげで、凄く助かってる」

 

 白い指が髪を梳いて、優しくリリルカの頭を撫でる。

 これが一週間に一回の『ご褒美』。二人っきりで労われて、それからたわいもない話をする。

 

 今日の夜ご飯がどうだったとか、明日何がしたいとか。

 

 其処に信頼や信用がない事は分かっている。だがこれが必要とされている証であって、更に堕ちていくと分かってもヤメラレナイ。

 

「もし僕が普通だったら、リリとはどういう関係になってたかな」

 

 今日はふと、そんな話題をベルは振って来た。

 

 もしもベル・クラネルが、見た目通りの愚直で願望に向かってひた走る冒険者だった場合。

 

「きっとリリは直ぐに捨てられていたと思います。小人族(パルゥム)には限界がありますから」

 

 【勇者(ブレイバー)】や【炎金の四戦士(ブリンガル)】などの例外を除いて、非力なのがその種族の宿命だ。

 だがベルはゆるゆると首を振った。

 

「リリは強いから。きっと、()()の役に立ってくれたと思う」

 

「僕達……?」

 

 偶に、ベルは良く分からない事を言う。まるで彼が以外にも別のベル・クラネルが居るみたいに。

 

「可笑しいな、ここには二人しかいないのに。遠い昔……いやもっと未来?もっと沢山、仲間がいた気がする」

 

「サタン様のような事、言わないで下さい」

 

「あはは……僕もあの人に中てられてしまったのかも」

 

 時がゆっくり過ぎていく。

 

 『終わり』への秒針も着実に進んでいるが、今だけは見て見ぬふりをしよう。

 

 だってリリは今、形容しがたいほど幸せに包まれているのだから。




 感想で同様の質問が多いので、ここで解答させて頂きます!

Q1.ミノタウロスを逃がしてしまった【ロキ・ファミリア】に非がないのか。

 A.異常事態が付き物のダンジョンで起こった事ですから、基本的にないと思っています。ただ【ロキ・ファミリア】という最大派閥としては体裁的に評価を落とし兼ねない出来事なので、腕を失ったベルに対して謝罪はあったと思います。

Q2.ランクアップしないの?

 A.ランクアップの条件としては、一つ『偉業』を成し遂げる事が挙げられます。ただそれが何か明確に定められている訳ではなく、個々人で異なると解釈しています。ベルの中の英雄は困難に立ち向かって勝利する典型的な勇者の姿で、ならば『逃げる』という選択の果てに得た勝利はベルにとって『偉業』じゃないと思ってます。

Q3.ダンジョンに居た一か月、食事と睡眠はどうしてたのか。

 A.食事に関しては携帯している非常食が主です。最悪の状況にも備えて、特に駆け出しの冒険者は食料を多く常備していると思っています。ただ流石に狭い部屋で一か月もミノタウロスから逃げ続けるのを想定している訳ではなく、20日を過ぎた所で底を突きました。

 そこで、目を付けたのは牛肉です。モンスターも生物なのですから、当然疲弊します。その隙を突いて、肩肉をかぷりです。そもそもモンスターって食べれるの?って話ですが、ザルドは食ってたし大丈夫でしょう。そう言う事にしておいてください。

 睡眠に関しては……精神力と言う事で勘弁を。

 二次創作なので解釈違いはあると思うのでご容赦を!それでもいいなら是非質問しちゃってください!
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