乙女ゲーの悪役令嬢に転生したけど家が笑えない悪だった 作:ぐらさん
麻薬の密売、臓器売買、偽札ロンダリングで得た莫大な資産。
国王や議会に不満を持つ人間への武器横領。
王子様と婚約出来るほどの地位と名誉。
それが俺の憑依転生先の全てであった。ふざけんなやボケが。
自分が何者であったかは分からないものの若くして荼毘に伏してしまった事は覚えている。男だったように思う。今世は女だ。
転生した世界はゲームや小説でよく見かけるファンタジー世界。まあ昨今流行りのファンタジー要素強めの乙女ゲー世界だ。
貴族は魔法を血統として保有し国を支配する。剣を持った男たちは未知を求めて世界中を駆け回る、そんな世界だ。そんな夢のある世界に生まれ直しておきながら…どうして血生臭い身分とシノギに挟まれなきゃいけないんだ…
転生先の女の子の名前はエニア=クレア。作中で色んなヒロインのライバルを務める主要人物の1人である。
鏡の前で卸したての制服を着てワンターン。
「ねえお父さま、私の婚約者はどんな方なのでしょうか?」
憑依先の記憶を読み取って口調を真似する。俺が憑依してるに気づいた時は申し訳なく思うし辛いけどこんなんもう誤差の範囲だろ。コイツに比べたら。そう思う事で罪悪感が薄れるのは不幸中の幸いというかなんというか…
「ハッハッハッ、もう15になるから気になるのは分かるがね。あと2ヶ月待ちなさい。学園で嫌というほど顔を合わせるはずだからね。噂ではとても端正な顔立ちをしていらっしゃるそうだよ。」
俺は知っている…この温和な話し方をする恰幅の良い親父がどれだけ人を無惨に殺せるのかを。
…まあ散々ゲームで悪いことしてるのは仄めかされてたけどここまでする必要はなかったんじゃないですかね。辛いよ。
そう、俺は学校に行かなければならない。それが一番いやなんだ。
末っ子とかならまだ良かった。遊び呆けるように見せかけて他国に逃げる事だって計画出来る。
そんな願い虚しく出来のいい一人娘として育てられた俺は親の期待を一身に背負ってる。要らねえよんなもん。
ただ…死にたくもない。母親は何も知らない世間知らずだし、父親は王子の義理の父となり現国王を始末する事で政権を乗っ取ろうとしている。
その上で俺に自身の業をなすりつけるか、継がせるかそのどちらかだろう。既に裏で支える組織は無視できない大きさにまで育っている。
一族郎党打首で済むならまだ良かったが今の地位とシンパの数を見ると暴動が起きて最悪国が他国にぶち転がされかねない。
安心して眠れる夜が欲しい。それが俺の今の願いだ。
この世界では娯楽文化も倫理観も育ってないせいで少々生きづらい。冬に農村で人が死ぬのは最早常識だ。数少ない最近の楽しみといえば好みドストライクな自分を鏡で見つめること。虚しい…
目覚めたのが去年ということもあり家のことで出来たことはほぼ少ない。
ゲーム自体は学園編と青年編の2パートに分かれている。そこで人脈を作り全面的に親父と戦って勝つ…それしか道は残されていない。
最終目標は親父含めた麻薬組織の粛清、国の反乱分子の壊滅だ。
本ゲームの主人公ちゃんたち含めた恋愛は…気にならないわけじゃないけど取り敢えず保留で…
俺は自由と平和を手に入れてみせる…絶対だ…