ARMORED CORE VI 外典 ~猟犬の追憶~(凍結)   作:DX鶏がらスープ

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初めての方ははじめまして!
知ってる方はウマ娘じゃなくてごめんなさい!!

AC6のお話が書きたくなったので投稿します
オリキャラ独自設定モリモリの完全な自己満足ですが、良ければどうぞ!




1.

 

 

――思えば、あいつは最初からおかしな奴だった

 

 

 

《620右腕部破損

続けて左腕部破損

 

...620反応ロスト》

 

「くそっ!」

 

ダンッ!

とその報告に思わず右の握り拳を振り下ろす。

だが当然の事ながら金属製のテーブルはビクともしない。

視界の端には撒き散らされた資料がヒラヒラと舞い、叩きつけられた手からはじんわりと鈍い痛みが広がっていく。

 

しかし、そんなものがなんだと言うのだ。

今しがた聞こえてきたその知らせは、そんな陳腐な痛みを遥かに上回る程の絶望と喪失感をこの胸の内に刻み付けるもので

 

(620...)

 

ポツリと声にならずに漏れたその言葉は、故に誰にも届かない

脳裏を過る何時いかなる時も冷静でもの静かだった男の顔

既に過去形でしか語ることの出来なくなった男の死は、当初の自身の想像以上の重みを持って迫って来る

 

それは普通の人間としては至極まっとうな反応

思えば、もう何十年ぶりに感じる類いの感情で

 

(...まったく、俺は何時からこんなにも自身の手駒に入れ込むようになったんだ?)

 

自分以外誰もいない部屋

戦場から遠く離れた司令室の真ん中で胸の痛みに耐えつつ、ふとそんな己の様子に気付き苦笑する

 

まるで普通の人間のように他者の死に心を痛める自身の弱さに

冷酷非道で人の心など捨てた悪鬼であったはずの自身の変わりように、知らず知らずの内に口の端が上がる

 

――「君は運が良い!」

 

そして己がそうなってしまった原因を思い浮かべるのもまた、至極簡単なことで

 

(...俺も年だな)

 

戦闘はまだ終わっていない

故にその情報はいまだ移り変わり続ける

しかし絶え間なく現地から送られてくるそれを無意識に聞き流してまっていたのは、らしくもない感傷に浸ってしまったからで

束の間、今がルビコン3潜入への最終フェイズの真っ最中であることを忘れて呆けてしまう

 

だが

 

 

 

『…まだだぁっ!!』

 

 

 

「!」

 

聞こえてきた声にハッと顔を上げる。

慌てて持ち上げた視線の先、地獄の戦場の様子をモニターしている画面には、たった一騎残った最後のACが敵性機体へと突撃する様子がありありと写し出されていて

 

――「何故なら君は今日から僕ら4人、宇宙最強のAC乗り達のご主人様になるのだからね!」

 

咄嗟に瞳の裏側を駆け抜けていったのはとある女性の笑顔

常に謎の自信に満ち溢れ、笑顔を絶やすことの無かった茶髪のショートカットのAC乗りの澄んだ翡翠の瞳

 

それは今まさに命がけの特攻を仕掛けんとボロボロのACで敵へと突っ込む最後のハウンズの構成員にしてリーダーのもので

 

――「…決めたんだろう、ご主人?」

 

血塗れで、傷だらけで、今にも死にそうな体で

それでも

 

――「なら…貫かなきゃ!」

 

それでも最後まで真っ直ぐな笑顔をしていた一人のAC乗りのもので

 

 

 

「…っ!

行けぇっっ!617っっ!!」

 

 

 

故に叫ぶ

届けと

らしくもなく万感の想いを込めて叫ぶ

 

『うおおおおおおおぉぉぉおおおおっっ!!』

 

そしてそれに呼応するかのように、617もまた咆哮する

ボロボロの機体はしかし、その負傷を一切感じさせない凄まじい技巧を持ってして剣林弾雨をかいくぐり、猛烈な勢いで敵性機体へと肉薄する

その様はまるで流星

成層圏に突入し、燃え尽きる前に最後の輝きを放つ小さな星のようで

 

ドォォォォオオンッ!!

 

接触、激突

鉄の塊と鉄の塊との衝突は、その運動エネルギーに比例した衝撃と爆音を伴い、だがそれでも617によってその機体を受け止められた敵性機体の動きが一瞬だけ止まる

その一瞬の拮抗に敵性機体の顔面に捩じ込んだガトリングの引き金を、617は雄叫びと共に力の限り引き絞った

 

『はぁぁぁあああぁぁぁっっ!!』

 

それは魂の叫び

文字通り命を削りながら叩き込まれる銃弾の豪雨は、617がしかと掴んだ敵性機体を少しずつ、少しずつ、しかし確実に崩壊へといざなっていく

 

そして

 

『「!!」』

 

刹那の瞬間

胸の奥から溢れてくるのはこれまで彼女達と過ごした日々

ハンドラー・ウォルターの指揮の下、ハウンズと呼ばれ恐れられたAC乗り達、そしてそのリーダーである後に617と呼ばれることになる女性との始まりの日で...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そうか、それは光栄だな」

 

励めよ

 

それが、初対面で何故か超絶上から目線で自画自賛を始めた強化人間、617に対するウォルターの第一声だった

 

「おや?信じていないのかな?」

 

「別段どうでも良い。その大言壮語が真実であるなら好ましいことだし、例え嘘でも無能には無能に相応しい運用の仕方があるというものだ」

 

私としてはどちらでも構わない

 

そう冷たく締めるウォルターに、しかし617は特に気を悪くした様子もなく、まぁ期待したまえと一人でウンウンと頷くと、一緒に解凍処理を施された3人の強化人間達を見回した

 

「結果は必ず出す。そこは安心してもらって良いよ。

そうだろ?えっと今は...618、619、620?」

「は、はい!頑張ります!!」

「うっす!了解っす!!」

 

「...」

 

617の言葉に頷く618、619、620に、それを見て満足そうな顔をする617。

旧世代の強化人間の割には随分と感情豊かな面子のやり取りを見ながらウォルターはため息をついた。

 

(本当にこいつら使えるんだろうな...)

 

解凍処理をした時は知らなかったのだが、元々この4人は幼なじみだったのだという

それが何の因果かそれぞれ別の場所、別の理由で強化人間手術を受けることになり、さらにこれまた因果なことに偶然同じ雇用主ウォルターの元で目を覚まし今に至る

偶然にしては出来すぎであり、客観的に見て悲惨で血生臭い運命に囚われたにしては、まるで久しぶりの同窓会のようにゆるい雰囲気で騒ぐ4人の姿にウォルターは目眩がしてくる

 

(運用時の連携については問題なさそうだが...)

 

果たしてこの連中は役に立つのだろうか?

...クーリングオフとか効かないだろうか?

 

チラリと、もう一度今回雇うことになった4人を半ば呆れた様子で見つめるウォルター

そしてそんな彼の心労を知ってか知らずか能天気に笑う617と、そんな彼女のもとで昔話に花を咲かせる以下618、619、620。

 

早くも胃が痛くなってきたウォルターだったが、意外にも四人の働きは悪くなかった。

むしろ想定よりもずっと優秀だった彼女達のおかげで、彼の計画はトントン拍子に進むことになり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《敵機撃墜

作戦領域内の敵性機体の完全排除を確認》

 

その言葉と共に残心をとき、念のためざっと一通り周囲の確認をした617のACは、構えていたアサルトライフルを静かに下ろす。

そして618達に帰投準備を始めるように指示をした617は、それはもうこれ以上無いほどのドヤ顔でウォルターに通信を入れた

 

『ふふっ、今日もまた完全な勝利だったね』

「...そのようだな」

『まぁ、僕らにかかればこの程度は朝飯前だね!』

 

あぁ、自分の才能が恐ろしい!!

といつも通りなんかトリップしている617の態度にも流石に慣れたウォルターは、これまたいつものごとく冷静に彼女に帰投を促した

 

「...任務が終わったのなら無駄口を叩いていないで早々に帰ってこい

この任務は終わったとはいえ、片付けなくてはならない仕事は山程あるのだから」

『やれやれ…我らがご主人様はせっかちであらせられる

もう少し心に余裕を持ってはいかがかな?』

(こいつ...)

 

その時618が割って入った

 

『ま、まぁまぁ617!ご主人様の言い分も最もです!

万全の準備あってこその結果。

であれば早く帰って休むのも我々の勤めかと!』

『ふむ...確かにそれもそうだね。

…いやすまないご主人!

君の言うことにも確かに一理ある。早々に帰還しよう!!』

 

そう言うなり素直に帰投準備を進める617

あの妙にキザで生意気な気質さえなければ...と嘆息するウォルターのもとに、618からの通信が入る

 

『あはは...毎度毎度うちの617がすいません、ご主人様』

「…いや、気にするな。もう慣れた」

 

まぁ、さっきのは少しばかり再冷凍して倉庫に叩き返してやろうかとも思ったが

そう少々冗談交じりに続けながらもウォルターは先の彼女達の仕事振りを振り返る

 

今回のミッションは惑星封鎖機構のとある衛星基地の襲撃。

ルビコン3周辺宙域の惑星封鎖機構の監視と勢力を削ぐ為の一連の作戦郡の一つであり、それを彼女達は見事成し遂げた。

比較的小規模とはいえ正規の軍事拠点を、今回617達ハウンズ部隊はたったの4機のACで落としたのだ

その連携の取れた鮮やかな手際はウォルターも内心感心する程であり、そしてその中でも617の働きはずば抜けていた。

 

そう、617

 

同時期にウォルターの傘下に入った618、619、620の3人を率いるハウンズ部隊のリーダーである彼女は、幼なじみを纏めるだけのリーダーシップだけでなく、類いまれな戦闘センスも持ち合わせていた。

 

大胆に、それでいて繊細に

 

盾を片手に、さながら破城搥のように敵の防御を強引に突破するその戦闘スタイルは端から見る分にはシンプル極まりないものだが、それを可能にしているのは617の瞬時に相手の弱点を見抜く分析力と、そこに確実に鉛玉をぶちこみ黙らせられるだけの正確無比な射撃能力

被弾を最低限に抑えるための卓越した盾の取り回しと、高度な空間認識能力を生かした華麗な立ち振舞いがあってこそ初めて成り立つもの

 

見敵必殺を地で行くその力強い戦い方、ともすれば脳筋の極みのようなそれは、しかし周囲から見える以上に遥かに堅牢で強固な技術の上に成り立っていることをウォルターは見抜いていて

 

(本当に腕は確かなのだがな...)

 

先程までの戦場での617の立ち振舞いを思い返してウォルターが少々憂鬱な気分になっていると、そんな彼と通信をしていた618が通信越しに笑っている事に彼は気が付いた

 

『...ふふっ』

「...何がおかしい?618」

『はっ!す、すいませんご主人様。

別に私はご主人様を笑った訳ではないのです!!』

 

誤解なんです!

 

とあたふたと慌てて言い訳をする618に、ウォルターはそれなら何故笑っていたのかと聞いた

 

『え、え~とそれはそのぅ...』

「...俺に言えない理由なのか?」

『ち、違います!決してそんなことは!!』

「それなら話せ」

『うぅ~…』

 

反応を渋る618を更に問い詰めると、少し気まずそうに618はウォルターに言った

 

『えっと...ご主人様は優しい人だなって』

「…優しい?俺が?」

 

予想外の回答に暫し唖然とするウォルターに、618はその言葉を肯定する

 

『ですです』

「...分からないな」

 

618の言葉にウォルターはますます混乱する

 

「…知っての通り、俺は君達を自身の手駒として運用している」

 

文字通り、自身の悲願を果たすための道具として彼らを運用しており、その扱いはお世辞にも良いとは言えない

 

無論道具と言えど壊れてしまっては元も子もないので、メンテナンスはしっかりと行っているし、休息もしっかりと取らせている。

しかしその代わり他と比べて非常に困難な任務や、いつ命を落としてもおかしくないような危険な任務ばかりを回している

それは今までだってそうだったし、これからも同じ。

むしろそうして今までたくさんの命を磨り潰してきた延長線上に彼女達はいる。

 

だから必ずその日は来る

例え今日でなくても、それでもいつか必ず彼女達の命をモノのように使い潰す時が来る

故にこそ、優しい等とそんな惨状と正反対の評価を受けるとは流石に想像していなかったウォルターは瞠目する

 

だが618は、そんな戸惑うウォルターに続ける

 

『だってご主人は私達を人間として扱ってくれるじゃないですか!』

「...人の話を聞いていたか?」

 

いぶかしむウォルター

そんな彼に構わず618は更に続けた

 

『...そりゃ私達だって自分達が道具として運用されていること位知っていますよ』

 

そもそもこんな体ですからね。

まともな人間扱いされない事くらいは覚悟していますよ

そう苦笑する618は、だけどと付け加える

 

『それでもご主人様は私達に対して一人の人間として接してくれます。

上下関係はあっても、それでも戦場でゴミのように散っていくだけの私達をれっきとして一人の人間として見てくれます』

「...買いかぶり、もしくは幻想だな。

俺はお前達の事なんてなんとも――」

『ご主人様?

人は道具に冗談なんて言いませんよ?』

「...」

 

先のやり取りを思いだし、思わず閉口するウォルター

 

『それに本当にただの道具だと思っているのなら、こうして私の話になんて耳を傾けるはずもないですしね』

 

そう言って618は暫し口をつぐむ

ウォルターもまた何も言わない

 

沈黙

 

617、619、620の会話が盛り上がるオープンチャンネルとは対照的に、618とウォルターとの間に接続されたプライベートチャンネルは静かなものだ

二人の通信機から流れるのは他の三人が談笑する声だけ

 

『...ご主人様』

「...なんだ618」

『私達はハウンズ...猟犬です』

「...あぁ、そうだな」

 

『はい、あなたの・・・・猟犬です』

 

それだけは、忘れないでくださいね

 

その言葉と共に618はウォルターとのプライベートチャンネルを切り、617達の談笑へと加わる

そしてウォルターは618が加わり更に賑やかになったハウンズ達のオープンチャンネルの通信を静かに聞く

 

「…」

 

617がとんちんかんな事を言い、619がそれを全肯定する。

618がそんな二人の手綱を握り、620は一連のやり取りを静かに、しかし楽しそうに見つめている

 

元々幼なじみだというだけあってハウンズ部隊のメンバー達の仲は良好で、そのやり取りは端から見ている分にはとても微笑ましい

 

「……」

 

だからこそ、いつかそんなハウンズ達を使い潰すことになること考えると、楽しそうに会話する彼女達を悲願達成の為の生け贄とする未来を考えると、ウォルターの胸には針で刺すような微かな痛みが走るような気がして

 

――それだけは、忘れないでくださいね

 

「………」

 

 

 

 

 

――618が死んだのは、その僅か3日後の事だった

 

 

 

 





《うちのハウンズメンバー紹介1》

618

ハウンズ部隊の最年長で第二世代強化人間の少女。
色物揃いのハウンズ部隊の中でも比較的常識人であり、放っておくと明後日の方向に暴走する彼女達を常に影ながら支えている縁の下の力持ち。

真面目で人当たりの良い女性で、滅多な事で怒ることがない優しい性格。
またかわいいものが大好きで、一応最年長という立場上他のメンバーには内緒にしているが、密かに集めた秘蔵のコレクションがある(ただし隠せていると思っているのは本人だけである)。


強化人間手術の後遺症で失明しており、同じく後遺症が小脳に残っていている影響で自力での歩行が出来ず、普段は車椅子で生活している

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