ARMORED CORE VI 外典 ~猟犬の追憶~(凍結)   作:DX鶏がらスープ

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ちなみに、今回の物語はそんなに長くない予定です
具体的には4話位で終わる予定ですね!

…と言いたかったのですが、
間違いなく4話程度では終わりませんね
流石に10話越えるような長い話になるとは作者も思いませんが、既に当初の予定よりは明らかに長くなっております

もう少し計画的に書きたいものですね(白目)
あ、ちなみに少々独自設定が入るので注意




3.

 

ハウンズ部隊のメンバーが全員幼なじみだと言う事はウォルターも当初から知っていた

 

元々自分達でそう言っていたということもあるが、普段の仲の良さといい、任務中の一糸乱れぬ連携といい、ウォルターとしても特にそれを疑う理由もなく、むしろそれがハウンズという部隊の強さを支えるものの一つであったが為に、特段そこを深掘りしようと思うことはなかった。

 

それに、そもそもウォルター自身あまり他人の過去を詮索するタイプでもない

必要ならば別だが、そうでないならわざわざ掘り返す必要はないと考えており、ましてそれが自身の子飼いの強化人間であるなら尚のこと。

 

故に、ウォルターはハウンズに限らず基本的に自身の下にいる強化人間達にわざわざ生い立ちなど聞かない

ウォルターにとって重要なのはその能力のみであり、だからこそ、これまでウォルターは自分から言い出さなければ強化人間達の過去を聞き出そうとはしなかった

 

 

――だが、それでも彼はふと気になってしまった

 

 

ハウンズ部隊

ウォルターの悲願への最後の足掛かりとなるルビコン3への潜入計画を任せるに足る精鋭達

 

今まで使ってきた強化人間達の中でも郡を抜いて優秀な彼女達は、一体これまでどんな人生を送ってきたのだろう

 

何を考え、どんな風に生きてきたのだろう

 

それに何より

 

 

――『はい、あなたの猟犬です』

 

――『それでも、そうさ!

僕らはご主人のもとで死ぬと決めているからね!!』

 

 

何より、どうしてあんなにも彼女達は自分を慕ってくれるのだろうか

信じてくれるのだろうか

 

気が付けば胸の内に生まれていた小さな疑問と好奇心

無視してもまったく問題のなかったそれを、うっかり機体のアセンブルの相談に部屋に来ていた619にこぼしてしまったのはウォルターのミスで、しかし

 

「自分達の故郷っすか?

金星コロニーのスラム街っす!

自分達全員孤児っすから!!」

 

――だからこそ、そんな聞き逃せない爆弾発言をあっさりとぶちまけた619の話を、流石にウォルターも聞かざるを得なくなってしまったのだ

 

 

 

「あれ?言ってなかったっすか?」

「...詳しく」

 

ルビコン3周辺のとある軍事拠点

そこの一室で頭を抱えるウォルターをきょとんとした顔で見つめるのは金髪の少年619

ハウンズ最年少であり、いまだ幼さとあどけなさが残る顔立ちをした彼は、目の前の自身の雇い主を見て「そっか言ってなかったのか~」と呑気に椅子に腰かけた足をぶらぶらと揺らしている

 

だが本人にとってはその程度の認識であっても、聞く側からするとそれは流石に問い詰めざるを得ない程には重い話題だ

だからこそ対峙するウォルターもまた寝耳に水と言わんばかりであり

 

「…全員か?」

「はいっす!

もっとも、最終的には皆離れ離れになってしまったっすけど」

「…ちなみにその理由は?」

「まぁ、概ね内戦っすね

元々治安が悪い星だったっすから」

 

そうして語られるのはウォルターが知らなかった、いやそもそも知ろうとしなかったハウンズの過去だ

 

 

木星戦争の戦火が飛び火し、長く内戦状態が続いていた金星社会の最下層で生まれた事

誰一人として親の顔を知らず、お互いに出会うまでは皆一人で生きてきた事

木星戦争終結後も終息せず、激化する一方だった内戦の戦火を避けながら移動する生活の中で、自然と同様の生活を送る子供達が集まり集団ができていった事

自分と同じような境遇の子供達と互いに協力し合い、時に衝突しながらも、それでも皆で肩を寄せ合って生きてきた事

それでも悪化する内戦の混乱の中で戦闘に巻き込まれてしまいグループは解散、皆とはぐれてしまった事

必死に逃げていたところを人買いに捕まり、とある研究施設に売り飛ばされて強引に手術を受けさせられた事などなど...

 

どれもこれも悲惨で陰鬱な過去で、それでいてウォルターがまったく知らない情報ばかり

それ自体は初めて聞くのだから当然のことなのだがそれにしても...

 

(ここにいる時点でろくな境遇ではないだろうとは想像していたが…)

 

一通りの話を聞き終えたウォルターは大きなため息をつく

語っている619本人はまるで世間話でもするかのように語るが、それを聞いているウォルターからしてみれば、それは断じてそんな軽いノリで口にして良いような話ではない

 

そう、それは目の前の小さな少年が抱えるにはあまりにも重すぎる過去

どう考えても生涯引きずり続けることになる程の凄惨な生い立ちだ

 

故にウォルターはもう一度頭を抱える

話の流れで聞いてしまったハウンズ達の秘められた過去

きっと本来ならもう少し然るべき場所、然るべき時に聞くべきだったはずのあまりにも重いそれを、どういう巡り合わせかさらっと、まるでスナックか何かのような軽い感覚で提供されてしまったウォルターはもう一度深いため息をつく

明日からどういう顔でハウンズの面々と顔を合わせれば良いのか本気で分からなくなった彼は遠い目で天井を見上げる

だが当然そこには何もなく、周囲にはそんなウォルターを不思議そうな顔で見つめる619がいるだけで

 

(俺も緩んでいるのかもな...)

 

そんならしくない自身の言動にウォルターは内心苦笑する

だが思えば、それも無理からぬ事ではあるのだろう

 

なにせ何年もかけて準備してきた計画がもう少しで始められそうなのだ

確かにまだルビコン3に実際に潜入出来た訳ではないが、それでもその目処が立ちひとまず一段落というのは誰もが認めるところ

 

更に自分が年をとってしまった事を加味しても多少張っていた気が緩むのも致し方ないことではあり、最近の自身のらしくない言動もそれに由来するものだろうとウォルターはあたりを付ける

 

(それにしても...)

 

それでも...いや、だからだろうか

 

「…――とまぁ、ここに来るまでの自分達の話はこんな感じっすね

もっとも、バラバラになってからここに来るまでの経緯に関しては皆ちょっとずつ違うみたいっすよ?

例えば自分はすぐに人買いに捕まったっすけど、618なんかは自分達と離れ離れになってからもしばらくは一人で行動してたって言ってたっす。

それから620とかなんかは――…」

「…辛くないのか?」

「へ?」

「………あ」

 

だが619が二の句を継ぐ前にウォルターは立ち上がる

 

「…すまない」

 

今の言葉は忘れてくれ

 

そう言ってウォルターは一人部屋を出ていく

ポカンとした表情で彼を見つめる619

その脇を通って廊下へと歩き出した彼は、そのまま宛もなく歩き続ける

その胸に去来するのは純粋な後悔

自分が思わず口に出してしまったあまりにも愚かで無神経にも程がある質問で

 

 

 

(…辛くないのか………だと?)

 

よくもまぁそんな質問が出来たものだと廊下を歩きながらウォルターは自身を嘲笑う

あまりの自身の傲慢さと恥知らずな行いに反吐が出そうになる

 

何故ならウォルターはハウンズの雇い主

いまだ幼い子供達を使役し、戦わせる立場の人間だ

それは言ってみれば、罪のない少年少女達に銃を持たせて戦場に送り出し、人殺しを強要する立場

過酷な人生を送ってきたハウンズのメンバー達を、更に地獄に叩き落とす立場の人間だ

 

(そんな男の口から出た言葉が、よりにもよって「辛くないのか」だと?)

 

自分から彼らを地獄に叩き落としておいてか?

自身の悲願を叶えるための道具にしておいてか?

 

(厚顔無恥とはまさにこの事だろう)

 

特に目的地も決めずにウォルターは歩き続ける

そんな彼の脳裏で、いつか聞いたことのある嫌らしい悪意の籠った言葉がリピートする

 

 

 

――『...覚えておくが良いウォルター

如何に高尚なお題目を掲げようと、お前は偽善者だ

こうして誰かの未来を使い潰すことでしか自身の正義を成せない無力な人間だ』

 

 

 

(...そんな事はとっくの昔から分かっている)

 

カツカツと愛用の杖をつきながら、ウォルターは歩き続ける

かつて事故で障害を負い、二度とACに乗れなくなった無残な肉体を引きずりながらもウォルターは廊下をひたすら歩く

 

(…覚悟もしていた)

 

脳裏を過るのはこれまで使い捨ててきた沢山の強化人間達の顔

ハウンズに限らず、これまで自身の都合で一方的に使い潰してきた数々の強化人間達

中には成人していない者達も多くいた彼らの記憶が、死に際がウォルターの瞳の裏を離れなくて

 

(今更...今更だ)

 

そう、本当に今更なのだ

既にウォルターの手は血にまみれ過ぎているし、何より既に計画は最終段階にまで入っている

今更それを止めるという選択肢はないし、そもそも止めたところで何になるというのか

 

それは遅すぎた後悔

遅すぎた懺悔

 

今の今まで感じなかった...いや、見ないふりをしていた罪悪感を改めて直視したところで、それは今更どうにもならない

溢れたコップの水が二度と元に戻らないように、それには今やなんの価値も意味もない

 

それでもウォルターの胸を締め付けるのは今まで見ないふりをしてきた罪悪感で

彼の心を痛め付けるのは、自身の悲願の為に他者の命を薪にくべなければならない弱い自身への憎悪と怒りであって

 

「...俺は」

 

一体どうすれば良いんだろうな?

 

そう呟いたウォルターが見上げるのは真っ赤なAC

 

いずれ使うことがあるかもしれない

そう思い、拠点の地下深くで眠らせているその機体は血のような鮮やかな赤に彩られていて

まるでそれがウォルターには自身の罪の形であるかのように見えて...

 

 

 

「――ふむ、カッコいい機体だね、ご主人

それはご主人の機体かい?」

 

 

 





《うちのハウンズメンバー紹介2》

619

ハウンズ部隊の最年少で第三世代強化人間の少年。
部隊のリーダーである617の意向を誰よりも素早く汲み、率先して前に飛び出していく勇敢な切り込み隊長

明るく元気で純粋な少年だが、純粋過ぎるがゆえに騙されやすいところがあり、特にそれは彼が敬愛する617に対して顕著である。
その為彼女のとんちんかんな言動を真に受けて、妙な方向に暴走することがよくある末っ子気質の甘えん坊。
実は単純なIQはハウンズで一番であり、神経衰弱やオセロのようなゲームをさせると誰も勝てない。

強化人間手術中の事故で左手が壊死しており隻腕。
更に手術で脳の記憶野がコーラルに犯された結果、1日しか記憶が持たなくなった。
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