ARMORED CORE VI 外典 ~猟犬の追憶~(凍結) 作:DX鶏がらスープ
遅くなってしまってごめんなさい!
最近忙しくて時間がなくて…
正直今回は説明が主で、次回からもう少し物語が動くはずなんですが、それもいつかになるか…
でもよっぽどの事がない限りは完結させるつもりなので、気長にお待ちください!!
それから例によって今回も独自設定モリモリです
一応ちゃんと調べた上で考察してるのですが、
明記されてないことが多すぎて殆ど自分の妄想の垂れ流しみたいになっちゃう
これが、フロム脳…
すべての人間の生は絶叫から始まる
人種に性別、境遇に才能
何一つとして同じ物を共有できない人間だがしかしただ一つ、生まれてくる時の仕草だけは示し会わせたかのように一致している
痛い
苦しい
眩しい
辛い
暑い
寒い
etc…
天国のように穏やかな母親の胎内から、ある日突然苦界へと産み落とされた赤子に、出来る事など何もない
だからこそ彼らは泣き叫ぶ
投げ出された混沌と混乱の中で、持てる限りのすべての力を振り絞って産声を上げる
それがこの世に生まれるということであり、この世の摂理
故に今一度言おう
すべての人間の生は絶叫から始まると
だからこそ…
『や、やめて…』
照明に照らされた白い手術台
その上で無遠慮に無機質な人工の光を向けられた少女は、掠れた声で静止をうながす
数秒後の自身に降りかかる運命を察した彼女は、どうか止めてくれと必死で周囲に懇願する
だが…
『お願い…やめて…』
ガチャリと、彼女の腕に取り付けられた鎖が音をたてる
あたりに響く金属音を、しかし気にする者など誰もいない
少女の縛り付けられた手術台の周りを行き交う白衣の人間達は皆、誰一人として少女の事を一瞥することすらなく動き回っている
それは一重に誰もが彼女に興味がないから
正確に言えば、実験台の上に横たわるモルモットの人格になど、価値や意味など見出だしていないからで
『…あ…あぁ…』
それを悟った少女の顔から徐々に血の気が引いていく
見開かれた目の端には涙が滲み、耐え難い恐怖からかその体がガタガタと震え出す
しかし当然それで何かが変わる事はない
刻一刻と迫る破滅を前にして、少女はただ震えながらその時を待つことしか出来なくて
…そして無情にもその時は遂にやって来る
『い…いや………』
白衣の人間達が少女を無言で取り囲む
それまで彼女に視線すら向けなかった彼らの一人が、今度はじっと少女を見つめながらその右腕をゆっくりと振り上げる
その手に握られているメスがキラリと光るのを、その刃先がゆっくり、ゆっくりと自身の体に迫るのを、少女はただ見ている事しか出来なくて
『…いやぁぁああああああああああぁぁぁっっ!!』
…だからそれが始まり
耐え難い痛みと苦しみ
底無しの恐怖と絶望
ありとあらゆる負の感情がぐちゃぐちゃに入り乱れた混沌の極地
そこで上がった悲鳴こそが僕の始まり…僕の本当の始まりで…
「――っ!?」
覚醒の瞬間にまず気が付いたのは、それが夢だということ
ついさっきまで自分が見ていたものは、それでいて結局ただの夢でしかなかったという事であり
(…)
無言で右手で顔を覆う
いくら夢だったとはいえ、あまりにも鮮明かつ強烈な夢の残り香はそう簡単には消えない
完全に覚醒し、先ほどまでの光景がすべて現実ではなかったと頭では理解していても、先ほど見た少女の慟哭は耳の奥にこびりついて離れない
そしてそれだけではない
少女の感じた痛みも、悲しみも、絶望も、そのすべてがいまだ自身の内で、まるで自身の体感したもののように渦巻いていて
(…)
僕は静かに左手を自身の胸にあてる
起きてから動悸を打ちっぱなしの心臓の鼓動は、ここが確かに現実の世界であるという事を告げている
僕が今、確かに生きているという事を告げている
だけどそれが逆に僕を複雑な気持ちにさせる
さっきまでの夢と合わせて、その事実こそが僕を苛む
なぜなら
「…」
なぜなら…
『目を覚ましましたようですね、強化人間617』
その声に振り向くと、そこには『A』、『L』、『M』の3つのアルファベットを組み合わせたエンブレムが映し出されたモニターがあって
『改めて聞きましょう、617
考えは変わりませんか?』
ベッドとトイレという最低限の家具しかない鉄格子の檻の中にあって、唯一のまともな家具であるそれから聞こえる女性の声は、ここ最近で聞きなれてしまった声
すべての傭兵を支援すると謳いながら、ここ一週間程はアリーナへの登録すらしていない僕の元へと通い詰める随分と暇な人工知能のもので
『我々に協力してはくれませんか?
強化人間617…いえ』
――現存する唯一の第六世代強化人間
C6―617
…ところで、約半世紀前に発明された強化人間手術の手法にはいくつかの種類がある
現在までに10の手法が考案されているそれらの内、6つはコーラルを用いるものであり、残りの4つはコーラルとよく似た性質の代替品を用いるもの
一般に前者は旧世代型手術、後者は新世代型手術と呼ばれる事が多いのだが、現在では新世代型手術の方が主流であり、新たに旧世代型手術が行われる事は殆ど無い
その理由は、一重に新世代型の方が旧世代型のものより手術の成功確率が高いというのが主な理由だが、一方で被験者の方も余程の理由がなければ旧世代型の手術を受けたがらないというのも大きな理由となっている
そしてその理由を作ったのが旧世代における第五世代と第六世代
旧世代における最後の世代であり、文字通り旧世代を終わらせた世代である
『只でさえ成功確率の低い強化人間手術の中でも更に群を抜いて成功確率が低く、またその数少ない成功例達もほとんどが発狂し、僅かな生き残り達も皆自殺か衰弱死したことで全滅したという絶望の第五世代に、
その第五世代の数少ないデータを元に考案されたものの、そのあまりの成功確率の低さから遂にただ1人の成功事例も出ず、その直後に新世代型手術が考案され、歴史の闇に消えたという虚無の第六世代…』
その二つの旧世代型手術の話は今だに旧世代型手術最悪の事故として語り継がれ、故にコーラルを用いた強化人間手術の研究は現在そのすべてが打ち切られている
1人の生き残りも出さなかった第五世代と、1人の成功事例も出さなかった第六世代
文字通り屍の山を積み上げたその二つをもって、人類へのコーラルを用いた強化改造計画はその理論的限界を迎え、それ故にそれ以降その技術の拡張が試みられる事もなかった
故に旧世代
根本的な人類の生物としての限界に突き当たったこの手術は既に行くところまで行き着いてしまった技術であり、人類が人類である限りはこれ以上の進展は望めない
だからこそ今ではそこに積極的に手を出そうとするものは殆どいない
だが…
『…えぇ、そうです
そもそも何故この二つの世代の手術はここまで凄惨な結果に至ったのでしょうか?』
「…」
『そのヒントは、思えば強化人間手術の手法自体の中にありました』
そう言って彼女が画面に映し出したのは旧世代手術の概略図
特にコーラルを脳髄に移植する場面を描いたイラストだ
『そもそも考えるべきだったんです
どうして成功事例達の殆どが狂死したのか
生き延びた僅な者達が自殺したのか
衰弱死したのか』
そう第五世代の成功事例は全滅している
そしてその死因は狂死か自殺か衰弱死
それはつまり、身体的な問題は彼らには何も無かったという事に他ならない
『であれば必然的に、残る原因は精神的要因ということになりますが…
あなたならご存知ですよね?617
特定の条件を満たしたコーラルには意志が生まれる事
俗に言うC型変異波形という精神生命体が誕生するという事
そして偶然にも――』
――第五世代、第六世代強化人間の脳内のコーラルが、手術によってその条件を満たしてしまったという事
そう語る彼女へと僕は視線を向ける
だけどそこには無機質なエンブレムが映り込んだディスプレイがあるだけで
『だからこそ、あなたにも資格があります
秘匿されていた唯一の第六世代強化人間手術の成功事例
あなたこそが我々が求めていた人材…いえ、それ以上の人材です617
いえ…』
――この世で唯一、コーラルと人間との融合を果たした最初にして最後の新人類、アリア=コールレイン
ディスプレイを見つめる視線の先には自身の顔が…いや、緑色に不気味に輝く瞳でこちらを覗き込む、かつてアリアと言われていた少女と同じ顔をしたナニカの顔が映り込んでいた
…わー、一体どこのナニマインドなんだろうなー(棒)