ARMORED CORE VI 外典 ~猟犬の追憶~(凍結) 作:DX鶏がらスープ
明けましておめでとうございます!
いつだったか10話は越えないだろうとか言ったくせに、確実に越えるであろうことが確定した作者です(泣)
仕事とかで忙しいと言うのも間違いなく本音なんですが、それ以前に自分の執筆速度が遅すぎて…
週一とかで書ける人は本当すごいと思います
犯した罪を償う事
それが俺に残された唯一の生きる理由だった
――行くんだ、ウォルター君!
――嫌だ!ナガイさんも一緒に!!
――ダメだ!君だけでも生き残るんだ!!
行けっ!行くんだっ!!
――っ!ナガイさんっ!!
だから走り続けた
血反吐を吐いて泥水を啜り、それでも茨の道を歩み続けた
――っ!
――…またひどくやられたねぇ、ウォルター
――…大丈夫だ、問題ない
――…あんたは私達とは違う
あいつらを止められなかった私達と違ってあんた自身には何の罪もないんだ
だから…
――…気持ちだけはありがたく受け取ろう
だがカーラ、違うんだ
俺自身の罪でないからと見て見ぬふりをする訳には行かない
これは、俺が背負わなければならない十字架なんだ
――ウォルター…
全ては罪を償う為
もう二度とあんな悲劇を起こさない為
だから俺は全てを捧げた
時間も金も、そしてその人生さえも
使えるものは全て使ったし、できることも何でもした
すべてのコーラルを燃やし尽くす
父を狂わせ、ナガイさんを殺したあの狂気の物質をこの世から根絶する
一片たりとも逃しはしない
例え鬼畜外道と罵られることになったとしても、無限地獄に落ちる事になったとしても構わない
すべての悲劇の因果を絶つ
その誓いを忘れた事は無い
例え何度生まれ変わったとしても俺は同じ選択をするだろうし、それを躊躇わない
あの日あの場所で見たものを、そして燃える星を見つめながら誓ったそれを、俺を一度たりとて忘れた事はない
だが
――『えっと...ご主人様は優しい人だなって』
それでも、時々考える事がある
――『僕らは自分達の意思で君に着いていくだけだ』
誰かの命を炉にくべてまで行う大義に正義などあるのか
自身が信じて突き進んできた道はしかし、贖罪などではなくむしろ罪を積み重ねるだけのものではないのか
俺はあの子達を…
――『一人の人間として、ハウンズとしてね』
あの子達を無駄死にさせたいるだけではないのだろうか
ただの自分の自己満足で彼らの未来を擂り潰しているだけなのではないだろうか、と…
ACを用いた戦闘は基本的に3次元戦闘だ
それはACが短時間とはいえデフォルトで飛行する能力を持っているからであり、故にAC乗り達が戦場においてそれを生かした空中戦をする事は別に珍しいことではない
ライフルやマシンガンなどといった既存の歩兵と同じ白兵戦用の兵器から、ミサイルやレーザーキャノンなどのような戦術級兵器まで、多種多様な武装を背負い戦場を飛び回るACの姿は時に星に例えられる
背中のスラスターから発する炎で天を舞い、空に一筋のコントレイルを引きながら戦場を駆け抜けていくその姿はまさに流星そのもの
それが敵を討ち滅ぼす吉星なのか
あるいは味方に仇なす凶星なのか
その答えは個々の戦場において様々だが、ともかくそんな帚星達の舞い踊る戦場は遠くから見るだけなら実に見応えがある
色とりどりの閃光とド派手な爆風の中で巧みに機体を操りながら、互いに距離と場所を入れ換えつつ、まるで円舞曲のように回転しながら行われるそれは、本当に端から見る分には華がある
だが繰り返すがあくまでもそれは端から見ている時に限る事であり、実際にその場で戦っている者達の感想はまったく別のものになることは想像に固くない
何せそこは戦場だ
命と命のやり取りをする場所
端から見れば円舞曲でも、その実態は一つでも間違えばあっという間に死の縁へと真っ逆さまという死の舞踊
故に実際にそれを演じている演者であるところのパイロット達は、文字通り命がけでそれを演じている
己の全てを掛けて真正面からそれに向き合い、迫りくる死神の鎌をギリギリの所で交わし続ける
あるいは、それは演舞などではなくギロチンの刃で行う超高速の連続リンボーダンスと言っても差し支えないのかもしれない
だからこそ、それに失敗した者がどうなるのかなどという事を想像するのはそう難しい事ではない
そう、それは例えば今まさに一瞬のスキを突かれて距離を詰められ、即座に跳ね上がったACの足を真っ正面から喰らってしまったウォルターの機体を見れば分かる事であり
『この程度かウォルター?』
「くっ…」
『ご主人!!』
そのまま肉薄し、手に持ったバズーカを押し付け引き金を引こうとするスッラ
だが即座に援護に入った619の体当たりによってその追撃は中止される
続けて更にダメ押しとばかりに620がレーザーライフルをスッラに放つが、放たれたそれを彼はなんなく回避して後方へと距離を取った
『大丈夫っすか!ご主人!?』
「あぁ、なんとかな…」
そう答えながらウォルターは機体を起こす
スッラの強烈な蹴りを喰らい一時スタッガー状態へと陥ったウォルターだったが、寸でのところで619のフォローが間に合いそれ以上の被害は出ていなかった
それに、幸いまだ機体にも致命的な損傷はない
まだ自分は戦える、そんな意思を証明するように立ち上がった彼に、しかしスッラはニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべながら声をかけた
『ふむ、流石犬の扱いはお手のものだな』
「…」
『おいおい、そう睨む事はないだろう?
ハンドラー等と名乗っているのはお前自身だ
ならこれはその仕事に対する正当な称賛の言葉だ
そうだろう?』
「…何故お前がここにいる、スッラ」
『それはこちらの台詞なのだがな…
逆に聞くがどうしてここが分かった?
痕跡も手掛かりも残した覚えはなかったのだがな』
「…」
『だんまりか?
まぁ良い
こちらから聞いておいてなんだが、実を言うと俺はそんな事には一切興味がない
そんな心底どうでも良い事よりも、今の俺が興味があるのは…――』
――お前だ、ハンドラー・ウォルター
その言葉と共に瞬時にクイックブーストを吹かして突撃してくるスッラ
そんな彼に対して当然ながらウォルターと619、620は迎撃を行う
しかし
『ふむ
この感じ、お前は第三世代だな?』
『なっ!?ぐっ!!』
放たれた無数の銃弾をジャンプで躱したスッラはそのまま空中からウォルター達にパルスガンの弾をばら蒔く
それを機体を旋回させて回避した619だったが、スッラはそんな彼へと突撃し、先程の意趣返しだと言わんばかりに強烈なタックルを繰り出した
『旧世代型の中でも性能が比較的安定している世代だな
その分他の世代に比べて爆発力に欠けるところがあるわけだが…』
スッラが言い終わる前に620が彼へとハンドガンを向ける
しかし619の機体への誤射を恐れてか、その弾幕は常時と比べて比較的薄い
そしてそんな明確な隙を逃すスッラではない
『…っ!』
『成る程、お前も第三世代か
そう考えると、このハウンズとかいう部隊のコンセプトも見えてくる』
攻撃の切れ目をぬい、返礼代わりに放たれたプラズマミサイルを620の機体はまともに喰らってしまう
そうしてハウンズの二人を軽々と一蹴したスッラは敢えて手を出さなかったウォルターに向き直りながら話を続ける
『他の世代に比べて比較的安定した運用が可能な第三世代を中核に据え、それで足りない爆発力を例の小娘で確保する
そんなところだろう?
後は前に出がちな前衛の手綱を握り、全体のサポートをする人材がいれば完璧と言ったところだが…』
そこまで言ってスッラはニヤリと口角をあげた
『…あぁ、そう言えば少し前にお前の飼い犬を一匹殺したんだったな』
最後の一人はあいつだったか、と得心のいったように頷くスッラにウォルターは飛び掛かる
だが
「…スッラ!!」
『ぬるい』
「ぐっ!?」
ウォルターのパルスブレードをあっさりと躱したスッラは、カウンターとして再度彼の機体へと蹴りを繰り出す
それを受け、吹っ飛ぶウォルターの機体を見ながら、スッラは呆れたように言った
『ぬるい、ぬるいなぁハンドラー
そんな蝿が止まったような動きでは俺を捉える事など到底出来んよ』
それにだと、スッラは更に続ける
『そもそもお前は指揮官だろう
わざわざ前線に出てきてどうする
しかもご丁寧に自分の飼い犬共とお揃いのACで出てくるとは…
なんだ、今度は自分も飼い犬の仲間入りでもするつもりか?
ご苦労な事だなハンドラー』
「くっ…」
『だがな、忘れたわけではないだろう?
前に言ったように、お前のその行動の本質は偽善だ
その献身もどきが、実際にはどれだけ空虚で中身のないものなのか、お前自身が一番よく分かっているだろう?』
違う
そう言いかけたウォルターよりも早くスッラは続ける
『コーラル研究の第一人者だったナガイ教授
その筆頭助手だった男の息子であるお前は知っているはずだ
強化人間という存在が何故産み出されたのか
それがどのようにして運用されてきたのか』
「…黙…れ」
『その上でお前は強化人間を未だに使い続けている
しかもお前は自らの強化人間達を一人の人間として扱っている
いかに数字で呼び、突き放そうとしていたとしてもお前は無意識の内にそうしてしまう
所詮は一山いくらの使い捨ての道具に過ぎない存在に、人としての幸福を教え、その上でそいつらを戦場へと追いやっている』
可哀想になぁと大仰にスッラは両手を広げた
『自分が人間であると知らなければ、幸福というものを知らなければ、無駄に苦しまずに死ねたものを
お前の飼い犬達はいつもそうだ
みんな本当に苦しそうに死んでいく
自分が人であると知ったばかりに、暖かいものを知ってしまったばかりに、それとはあまりにもかけ離れた現実との落差で無駄に苦しんで死んでいく』
――618とかいう女もそうだった
その言葉に思わず目を見開くウォルターに、スッラは心底楽しそうに止めの言葉を投げた
『だから何度も言っているだろう、ハンドラー・ウォルター?
お前は自分はいかにも誠実に真っ直ぐに生きているとでも言うような顔をしているが――』
――事実は真逆
お前の本質は、どうしようもない程の偽善者だよ
個人的なイメージとして、スッラは近接戦闘とかゼロ距離射撃とかめっちゃしてくるタイプ
初めて戦った時に滅茶苦茶蹴られまくったので…