帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか? 作:匿名希望
柊の煙管
雁首と吸口の部分が魔道具。葉の補充がいらない。
元々は柊の知り合いの娼婦が持っていたもので、後に柊がやばいの吸うから効能を下げ吸口部分で強化する。
また、堕ちた怪物の死体なども素材にしているためか神殺しの柊の吐息と混ざると効果減少。他の人間が吸って吐いたら? 劇物そのものの煙が撒き散らされる。
柊が誰かに吹き掛ける分には気持ちよくなって頭がボーッとする程度。
金食い豚「私が頑張りました。ぶひゅひゅひゅ」(親指立てながら)
怪物祭。
ギルドが考案し【ガネーシャ・ファミリア】が受け持った催し。
管理機関の唐突な提案。民衆を守るガネーシャの、モンスター地上輸送の助力。
まあ確実になにかがあるのだろう。
「まあどうでもいいが…………」
祭りで羽目を外して女に絡む酔っ払い、逸れた親を探して泣く子供、喧嘩する冒険者………その対応は【ガネーシャ・ファミリア】か彼等に雇われた【ファミリア】の眷属達。
柊はそれらを無視してお祭り価格の飯を購入し味わう。高めだが、こういうのは雰囲気を楽しめれば良いのだ。金ならあるし。
「あー!」
「あん?」
「ベートをボコボコにした…………えっと、名前なんだっけ?」
「……………誰だお前等?」
祭りの目玉であるモンスターの
振り返ると髪の短いアマゾネスがこちらを指さしていた。その後ろには髪の長いアマゾネスと、エルフの少女。何処かで見たことがあるような気もしなくもないが、興味ないから忘れたのだろう。
「え!? 覚えてないの!?」
「そう言えば名乗ってなかったわね」
「そ、そういう問題ですか? 私はともかく、ティオナさん達は第一級冒険者ですよ?」
第一級冒険者………その情報は集めていたはず。その記憶を探る。
「…………双子のアマゾネス……ヒリュテ姉妹か」
「うん。前にもあったけどね」
「で? 俺に何の…………ああ、そうか。思い出した、酒場で俺がお前等のところの団員殺しかけたんだったか」
「そうだよ良くもー!」
「先に喧嘩売ってきたのはてめぇのところの犬っころだろ…………あれが【
「あ、あれが誰かも解ってなかったんですね…………」
と、エルフの少女が戦慄する。第一級冒険者など一国の軍にも匹敵しうる力を持っているのだ。それを名前や特徴だけ調べ、後はまるで興味を持ってない。
喧嘩を売らないように、と普通の冒険者や商人なら調べる。それだけ強さに自信があるのだろう………少なくともベートを圧倒する程度には。
「まて、じゃあてめぇ団長が誰か解らずあんなこと言ったのか?」
「…………団長?」
「てめぇが謝られても謝意がねぇとかほざきやがった相手だよ! てめぇにあの人の何が解るってんだ!!」
「…………フィン・ディムナ。合理主義者……6年前、同業者の救出より邪神討伐の栄誉を選んだ男だろ?」
何を当たり前のことを聞いている、というように首を傾げる柊。胸ぐらを掴む手にそっと触れただけで、あっさり剥がす。
「まあ報告聞いてからなら間に合わねえが………そもそも罠と解ってたのは対応の早さから解るわな。オラリオの連中からすりゃ暗黒期に邪神退治してくれるユーシャ様は素敵だし、後から来た奴等もまず憧れてあら捜しなんてしねぇ………俺はこの通り捻くれた小物だからなぁ」
ふう、と煙を吹きかけ、アマゾネスがガクリと膝をつく。
「そこまできつい毒じゃね〜ヨ。第一級ならほっときゃ治る」
「ティオネになにした!」
「身を守った。第一級に胸ぐら掴まれたんだ、怖くてな。さっきも言ったように、耐異常持ってりゃ効き目は数分だ」
全然怖がってない。でも先に手を出そうとしたのはティオネなのでそれ以上文句を言えない。
「うぐぐ〜………が、勝てない。くぅ、アタシがフィンみたいに頭が良ければ!」
なんとか弁論を探し、無理と諦め項垂れるアマゾネスの少女は仕方ない、と気持ちを切り替えた。敵意はまだあるようだが、つっかかってくる気はもうないようだ。
「ごめんなさい」
「え、ティオナさん………?」
「あの後、アイズから聞いた…………ミノタウロスに殺されかかった子が、彼処にいたって………いや彼処にいなかったら良いわけじゃないけどさ」
あれ、ええっと………と、頭を抱えるティオナというらしいアマゾネス。ならあっちはティオネだろう。特徴も一致してる。
「ええっと、ん〜………とにかく、ごめんなさい! 貴方の仲間に怖い思いさせて、貴方達に嫌な思いさせて」
しばし、無言。柊は煙をすぅ、と吸いティオナが思わず身構えるも、空に向かって吐き捨てる。
「別に俺はベルが馬鹿にされようがどうでも良い」
「あれぇ!?」
「が、まあ………やはりエルフは駄目だな」
「ど、どうしてそこでエルフが馬鹿にされるんですか!?」
と、思わず叫ぶエルフの少女に柊はそんなこともわからんのかと言うような視線を向けた。
「だってお前、謝ってねえだろ。エルフは誇り高いだの他種族は卑しいだの吠えるエルフ様は、エルフが特に蔑む野蛮なアマゾネスよりも道理を弁えてないと来た」
「っ!!」
未だ柊を睨む長髪のアマゾネスならともかく、話を黙って聞いていたエルフはティオナの謝罪を聞いても困惑するばかりで何の行動にも移さなかった。
「まあエルフなんざそんなもんだな。話を止めてたあの年増はまぁまだマシだが………まあ、『世界一醜い種族』に期待するだけ無駄だな」
「レフィーヤは可愛いよ!」
「見た目じゃねえの、中身の問題だ。俺のいた場所じゃあエルフと結婚したがる奴はいねぇ。ハーフエルフなんざまず哀れな性犯罪の被害者の子だぞ」
「!! ど、同胞まで馬鹿にしてぇぇ!」
あまりの物言いにレフィーヤが吠える。よりにもよってエルフが性犯罪を起こすなど………周りの様子をうかがっていたエルフ達も柊を睨みティオナが慌てて止めようとした時だった……………
「あん?」
唐突に柊が上を見上げる。ティオナが釣られて上を見る。
「グルルルル!!」
巨大な竜種。おそらくは、今回の祭りの締めに使われたであろう中層域のモンスター。それだけではない。
「モ、モンスターだあ!?」
オークが、ソードスタッグが、ミノタウロスが、トロールが、バグベアーが街に向かい走っていくのが見えた。
「ええ〜!? モ、モンスターが脱走!?」
「っ! いくわよ、ティオナ、レフィーヤ!」
「うん!」
「は、はい!」
「頑張れよ〜」
と、柊は闘技場に向き直る。歓声からして、パニックを避け闘技場内部には伝えていないのだろう。なら、闘技場内の民衆の目を引くために
「って、来ないの!?」
「何で俺がモンスターと戦わなきゃならねえんだ?」
心底面倒臭そうに言う柊に、ティオナは無理そうだと走り出す。レフィーヤとティオネも後に続く。と……
「ふん、所詮は卑しいヒューマンか」
「んん?」
「我等を醜いなどと、真に醜いのは貴様等だろうに」「卑しい種族の嫉妬が隠せていないな」「浅ましい。これだからヒューマンは」「醜く卑賤な他種族の中でも、貴様は最底辺だろうよ」「モンスターが余程怖いと見える」「冒険者の風上にも置けぬ小物め」
「ん〜?」
と、嘲るエルフ達に柊は何いってんだコイツラ、と羽もないのに飛ぼうとしている蟇でも見ているかのような目を向ける。
「俺が小物なんてのはさっきも言っただろうか。揚げ足取る暇あるなら誇り高い行動でもしてみろよ、エルフサマ? ああ、何もしねえ小物を見て同じく動かず揚げ足取るのがエルフ流の誇りの高さか。参ったね、俺はエルフに負けず劣らず誇り高い生き物だったらしい………… いや、便所コオロギに例えられる方がマシだなぁ。」「取り消せ、その侮辱」
ヘラヘラとエルフの嘲笑を数倍の切れ味で返す柊。少なくとも、エルフ達からすれば途轍もなく誇りを踏み躙られた。と、一人のエルフが杖を構え………他のエルフも続く。
「…………馬鹿が」
チンタラ詠唱を唱えるエルフに柊が顔を歪め………ふと足元を見る。詠唱の完成したエルフが隙ありと魔法を放とうとした瞬間、地面から飛び出した緑色の巨大な蛇にふっ飛ばされた。
「………お〜」
空中でボン、と魔力の色の爆発を起こすエルフ。突然の事態に混乱したエルフ達が蛇の突撃にまとめて吹き飛ばされ、手綱を離れた魔力が暴発する。
「はは、た〜まや〜………で、何だこの蛇?」
違和感。ダンジョンのモンスターと、徹底的に何かが違う。
標的を柊に変え襲ってくる攻撃を躱し後ろにあった売店が砕けマッスルポーズを取った「ガネーシャ君」キーホルダーが飛び散る。
「……………あ?」
能力値は下層級と当たりをつけた柊は頭部が
パァンと頭部が弾け肉片が飛び散る。頭部に魔石があったのか、体は灰へと崩れた。
「す、すげぇ………一撃かよ」
誰かが感心する中、魔法ではなく弓を構えていたエルフが吹き飛ばされたエルフを抱きかかえながら叫んだ。
「き、貴様! 一体何をしていた! それだけの強さがありながら、なぜもっと早く動か────ヒッ!!」
女エルフは柊に睨まれ泡を吹いて気絶した。直接向けられたわけでもない周りの冒険者達は、一般人より殺気に敏感なのが災いして息が詰まる。
「………………魔族………じゃ、ねえか」
それらに興味を向けず灰を見る柊。間違いなくこの世界のモンスター……だが、既視感。
これは、魔族に似ている。
モンスターはダンジョンが地上を奪うために作り出した存在。対して、今のは少なくとも
打撃に強く、あの大きさでは斬るにも相応の強さを必要とするだろう。そのうえで魔力に反応する後衛殺し………それ以上に感じる、ダンジョンのモンスターに何かを混ぜた気配。
魔族を思い出す。
人類を滅ぼすために生み出された彼女の尖兵。その中の強力な個体には言うに及ばず、雑魚魔族の足元にも迫れるかも、程度の強さ。ただ、苛つく………嫌なことを思い出す。
そして、それと同じ気配がもう4つ………。
「かったあ〜!?」
地面を砕き現れた緑の蛇。ティオナとティオネの……Lv.5の第一級冒険者の拳を食らっても表面が少し凹むだけの未知のモンスター。
決定打のない2人を援護しようとレフィーヤが魔法を放とうとした瞬間、モンスターがレフィーヤに向き直り────
「っ!?」
「わわ!? なになに!?」
突如空から飛来した何かがモンスターに襲いかかる。土煙が晴れると、蜘蛛の巣のように広がる亀裂と首が千切られたモンスター。
少し遅れて腹が潰れたドラゴンの死体が落ちてくる。
「……イラつきやがる」
Lv.5の攻撃に耐えたモンスターの首を踏み潰し首を千切ったのは、柊だ。煙を吸い眉間にシワを寄せる。
どうやってあの打撃に強いモンスターを打撃で殺したか? 簡単だ、耐性をぶち抜く強さで踏めば良い。
「数が多いところまで似てると来た」
地面を突き破り現れる3体の緑の蛇、いや…………
「蛇じゃなくて………花!?」
頭が開いたその姿は、どう見ても花。柊に襲いかかるモンスターに対して、柊が何処からともなく取り出したのは巨大な戦鎚。
枯れた木や、木乃伊を思わせる乾いた茶色の巨大な戦鎚。
それを地面に叩きつけ………地面が泥に変わる。変幻自在の泥は巨大な杭となり………尖端が明らかに泥とは異なる輝きを得て花型のモンスターを纏めて貫く。
パキパキと水が凍るような音と共に泥の塔が結晶へと姿を変えていく。
「おいお前ら、これに見覚えは?」
「な、ないけど………」
「そうか」
モンスターの死体の上に乗り、首から上を蹴り飛ばしてきた柊にティオナが答える。見たことは、無い。こんな目に痛い毒々しい極彩色など見たら忘れない。強いて言うなら深層で見つけた新種のイモムシ型を思い出す。
「ちょっと、何処行くのよ?」
舌打ちしてモンスターの死体から飛び降りた柊にティオネが慌てて話しかける。
「………ダンジョン」
彼女と殺し合った時の事を思い出し苛立ちのままにダンジョンに潜りモンスターに当たり散らす。
出会したモンスターは不幸だったというほかあるまい。そして、進み…………気付けば30階層。
「………落ち着いてみると似てねぇなあ」
モンスターが多い場所に向かってると緑の肉に阻まれた通路を見つけ、その頃には大分落ち着いた柊が特にデカいのをぶっ殺した。
「………ん?」
ふと、胎児のような何かが入った宝玉を見つけた。
ここはモンスターの餌場のようだが……これを育てるために独占していたのか?
まあ良いか。興味ない………
「で、お前等はなんなわけ?」
先にこの緑肉の迷宮にいた者達に声をかける。普通の冒険者なら、まずなんの問いかけもせず剣を抜いていただろう。何故なら、それは冒険者の武器を持った………その瞳に理知を宿したモンスターだったのだから。
感想待ってます
後何度か誤字報告があったけど侮辱を取り消せと言ってるのは柊です。便所コオロギの方がマシだからお前等流の誇り高いを取り消せと言ってます
お前等の価値観だと俺は誇り高い→いや普通に最悪だ、取り消せという流れ