帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか?   作:匿名希望

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異端児

柊はエルフアンチではありません。普通にエルフ娼婦抱いてるよ。

言うことだけが立派な奴が嫌いなのです。ちなみに自分も大嫌いです。だって何も救えてないからね此奴。

妓夫太郎のムシケラぼんくらのろまの腑抜け役立たずらっぷに一切否定しません。だって彼は妹を守ってるからね、全部失った此奴と違って。

え、人の心? あるよ?

 


 

 その武装したモンスター達は、とある存在から受けた命によりその階層に訪れていた。

 彼等は種族問わぬ群。本来ならありえぬ群。

 モンスターが武装するだけならまだありえなくはない。天然武器(ネイチャーウェポン)を扱ってる時点で、モンスターには武器を使うという概念が存在する。質のいい冒険者の武器を拾い扱うこともあるだろう。

 

 そんなある程度の知恵がある事は間違いない彼等は、しかし違う種が群れることはまず無い。

 冒険者という共通の獲物に同時に襲いかかることはあれど、戦い方も歩幅も違うモンスターが混成された群などまず存在しない。それなら同族の群れを作る。

 だというのに、少なくともその群に同族は居ない。

 

 何故か? それは、彼等が知性を得ているからだ。その知性を、仲間として認識する要因としているからだ。

 歩みが遅い者に合わせ、歩みの速い者が斥候を行う。熟練の冒険者のように役割をわけ助け合う、理知を持つ怪物。

 

 故にこそ彼等は言葉の通じる隣人として扱われ、志を同じくする同胞として助け合う。その助け合いの一つが、ダンジョンで異変が起きた際の調査。今回は、30階層……モンスターの大量発生の調査と解決。

 

 まあ、厳密には大量発生ではなく大移動だったのだが………。

 食料庫(パントリー)と呼ばれる、モンスターの栄養源となる液体を染み出す石英(クオーツ)があるのだが、その一つまでの道を遮るように緑の肉壁が現れた。

 モンスター達は仕方なく別の食料庫(パントリー)へと移動したのが今回の発端。

 

 理知のある怪物…………異端児(ゼノス)と呼ばれる彼等はその緑肉を突き破り中に入り襲ってくる見たこともないモンスターを相手しながら奥へと進む途中で、それは現れた。

 

 圧倒的な膂力で大型級のモンスターを切り裂き、殴り殺し、吹き飛ばす。

 風の如き速度は、その場の誰も捕らえきれず、余波で緑肉の壁もその向こうのダンジョンの壁も破壊しまくりダンジョンを()()()、現れた破壊者を瞬殺し、食料庫(パントリー)にいた超巨大なモンスターを殺していた。

 

 それは人間だった。黒い髪で、目元に化粧を施した人間………。

 甘い煙の匂いを漂わせ、彼等を見詰める。

 

「お、俺っち達は………」

「リド! 会話ナド無意味ダ! 見ツカッタ以上、我等ガスベキハ一ツダケ!!」

 

 と、叫ぶグロス。ラーニェも得物を構えるが、それだけだ。どちらも敵意を行動に移せない。向かったところで、ただ死ぬだけだから。

 

「ま、待てよ2人とも! 彼奴、俺っち達がなにか聞いたんだぞ? それって、こっちに興味を持ってくれたってことじゃ…………な、い…………っておい!」

 

 二人をなんとか説得しようとするリドの横をスタスタと歩いていく人間に、思わず叫ぶ。

 

「俺っち達に興味があったんじゃねえのかよ!?」

「別にねえよ?」

 

 あっさりその場から去ろうとする人間に思わず叫ぶリド。人間は煙を吸いながらいや、と答える。

 

「珍しいと思っただけだ………よくよく考えてみりゃ、お前等がここに居る理由も喋る理由も後ろの石蝙蝠と蜘蛛女が睨んでくるのも…………心底ど〜でもいい」

 

 モンスターに対する敵意も、人の言葉を話す怪物への忌避感も、言葉が通じる相手への親しみも、何一つない瞳。

 

「どうでも、いいだと…………」

「ん?」

「なら何故、我等をそっとしてくれない! 私達の同胞を攫い、傷つける!!」

「…………おい蜥蜴、この蜘蛛何いってんだ?」

 

 と、リドに問いかけてくる。

 

「と、蜥蜴………ええっとだな、グロスやラーニェは………人間が、嫌いなんだよ………」

「嫌イ等トイウ言葉デ片付ケルナ! 貴様等人間ハ、何度我等ヲ裏切ッタ!」

「お、おいグロス! やめろって!」

「なんだ、脳味噌まで灰色なのか。石だもんな、そりゃそうか」

 

 慌ててグロスを止めるリド。男はヘラヘラと笑いながら煙を吸う。

 

「お前、何で自分は人間って一括りで俺を見るくせに自分達だけ喋るモンスターだよ、仲良くしてなんて特別扱いしてもらえると思ってんだ?」

「何ダト!?」

「何で人間一括りで嫌悪するモンスターを、()()()()()()()()()()()で一括りせず仲良くしてやらにゃあならねえんだ。疑うなとは言わねえが、そこの蜥蜴と鳥女を見習ってから言えよ」

 

 ま、俺が言っても説得力はないがな、と自嘲する柊。戦利品を持ってマントにしまうと歩き出す。 

 

「ま、待ってくれ!」

「………まだ何か?」

 

 リドが慌てて回り込み止める。武器を放り捨てたのを見て、人間も取り敢えず話を聞いてくれるらしい。

 

「その………何で俺達を怖がらねえんだ?」

「何時でも殺し尽くせるからな」

「お、おう…………」

「それに………俺はお前達より醜い人間を知っている」

「容姿で差別するのは良くねえと思うんだけどなぁ………」

「見た目の話じゃなく中身の話だ」

 

 リドの言葉に呆れる柊。

 

「例えば、お前等の目の前にいる人間とかな」

 

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

 妙な出会いだった。

 モンスターの魂がダンジョンに回収されていたのは知っていたが、積み重ねとうとう理知を得るとは。

 

「まあ、だから何だって話だが…………」

 

 人は彼等を受け入れないし、人に拒絶され続けられればあの蜥蜴や鳥女、兎の魂も濁り人を騙し、貶め、嘲笑う………敵意を向けられ続ければやがて敵意を返す。あれが綺麗なのは、まだ経験の薄い子供だから。

 

「この世界にゃ怪物をかばう英雄なんざ居ねぇからな」

 

 ユニコーンなどはエルフに飼い慣らされる事もあるらしいが、他は無理だろう。傷を癒やす角とか汚れのないものに近寄るとか自分をお綺麗に見せてくれるからユニコーンは潔癖症に気に入られるのだ。

 モンスターは敵。それは古代から変わらない不文律。それでも手を差し伸べられるものがいるとしたら………それはきっと、自分みたいな紛い物ではない本物の英雄なのだろう。それもだいぶ異端な……

 

 柊は気付かない。

 彼等に手を差し伸べる存在を無意識に英雄と呼ぶ意味を……大切な記憶を薄れさせないために目を伏せた柊は、彼等の手を取る存在が英雄であることの意味に、気付けない

 

「おい………」

「あん?」

「お前、私を買わないか?」

「いいぞ、いくらだ?」

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