帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか?   作:匿名希望

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24階層の攻防

 【ヘルメス・ファミリア】と18階層で合流したアイズ。しかし24階層にて食料庫(パントリー)に向かう途中現れた緑肉に阻まれ、その向こうは天井も床も壁も緑肉に包まれ本来の違いとも大きく変わった未知の領域が広がっていた。

 そしてそこで食人花の群れに襲われ、分断された。

 現れたのはアイズをアリアと呼んだ赤髪の調教師(テイマー)

 ランクアップを果たしたアイズが僅かに上回り、食料庫(パントリー)まで押し込む。

 

 そこには何故か【ヘルメス・ファミリア】以外にもレフィーヤとベート、見知らぬ黒髪のエルフもいた。

 そして、敵であろう白髪の男。何処かで見たような?

 そして………食料庫(パントリー)石英(クオーツ)に巻き付いた3匹の巨大な植物型モンスターに………宝玉の胎児。

 

「……………」

 

 あの時、混戦だった………すぐに消えた。だから、まだ確信を持てていない。確信はないが、あの時感じた気配は………

 

「ふん、情けないなレヴィス………」

 

 と、白髪の男が赤髪の調教師(テイマー)を見下すように嘲笑う。

 

「【剣姫】が『アリア』など認められぬが……良いだろう! 『彼女』が望むのなら!」

「待て!」

「止めるなよレヴィス、貴様の失態を拭ってやるというのだ! やれ、巨大花(ヴィスクム)! 持ち帰るのは死体でも構わん!」

 

 と、巨大なモンスターがアイズに迫る。大きさだけなら階層主を優に超える規格外の超大型級の突進。

 ただそれだけで上級冒険者を葬れる一撃前に、アイズはその詠唱を唱える。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 そして、一閃。剣に付与(エンチャント)された風が斬撃となって吹き荒ぶ。

 モンスターの体はあっさり斬り飛ばされた。

 圧倒的な力に、誰もが声を失う。超短文詠唱の付与魔法(エンチャント)……それで、この威力。

 

「ば、馬鹿なぁ!? え、ええい! まだだ、まだ! 食人花(ヴィオラス)! 【剣姫】を足止めしろ! 巨大花(ヴィスクム)! 残りを踏み潰せえ!」

 

 アイズに斬り飛ばされたモンスターと同種の超大型級が動き出す。同時に、食人花の群がアイズに殺到する。

 

「ちぃ!」

 

 食人花と同じく打撃に耐性があるのか、第一級(ベート)の一撃を喰らっても表皮が僅かに削れるのみ。

 

「どけ、狼人(ウェアウルフ)!!」

 

 その傷に黒髪のエルフが杖を指し、魔法の雷鎚で焼く。あの動き………Lv.3の魔法剣士?

 

「な、あ………!?」

 

 悪あがきも意味を持たず、追い詰められる白髪の男。捕えて、色々聞き出そうとアイズが剣を向け………。

 

「……………」

「レ、レヴィス!!」

 

 赤髪の調教師(テイマー)………レヴィスが前に立つ。

 

「ふ、ふは………はは! そうだ、私とお前が揃えば、こんな奴等………時間を稼げレヴィス! 回復した私とお前で」

「五月蠅い」

「なに?」

 

 レヴィスの言葉に白髪の男が困惑しズブリと胸を貫かれる。

 

「あ、が………レ、レヴィス!? な、何を………」

「くだらん茶番に付き合わせるな」

「!? ま、まさか私を……! 馬鹿な、やめろ! 私とお前は、たった2人の同胞! 私がいなければ彼女を守ることは………!」

「笑わせるな。お前など居なくても、あれは私一人で守ってきた」

 

 胸から手を引き抜かれる。その手にあるのは、心臓ではなく極彩色を宿した魔石。白髪の男の身体がモンスターのように灰となり崩れ落ちる。

 レヴィスはそのまま魔石を口に含み噛み砕き、飲み込む。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

 人の胸から何故魔石が、とか………何故その魔石を人が食ったのか………疑問はあれど、魔石を喰らう存在を前に直感的に、あるいは反射的に動くアイズ。

 レヴィスは、静かに唱えた。

 

「──【焼き尽くせ(アルガ)】」

「【アガリス・アルヴェシンス】」

「────!!」

 

 紅、轟音。

 激しく燃え上がった炎がアイズの(エアリアル)を焼き飛ばす。

 炎の付与魔法(エンチャント)。両手、両足、剣を覆う炎は、紅の花を連想させる。

 

「……………え?」

 

 ポツリと声を漏らしたのは、【ヘルメス・ファミリア】団長アスフィ・アンドロメダ。

 

「嘘、だろ………」

「な、なんだよ!? どうしたんだ!」

 

 副団長のファルガーもまた同様に、ファミリアメンバーが慌てて肩を揺する。

 

「【アガリス・アルヴェシンス】…………炎の付与魔法(エンチャント)………まさか、でも………ありえない!」

 

 5年前よりオラリオにいた者は、知っている。全員ではないが、彼女は有名だった。そして、アスフィ達は良く世話になった。

 

「【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】………アリーゼ・ローヴェル………?」

「スカーレット………え、それって………【アストレア・ファミリア】の?」

「はぁ!? アストレアって、だって…………正義の派閥の………」

 

 【アストレア・ファミリア】……5年前まで存在した、正義を掲げるファミリア。正義の女神に仕えた美しき女冒険者達……。

 ただし5年前にたった一人を除き全滅し………その最後の一人も復讐に取り憑かれギルドの要注意人物(ブラックリスト)に載り行方を晦ませ、女神もオラリオから去り実質壊滅したファミリア。

 

 そのリーダーの名は、アリーゼ・ローヴェル。()()()に緑の目をした冒険者。

 

「……………………」

 

 面影は、ある。でも、気付なかった。

 彼女はあんな冷たい目をしていない。彼女は、こんな事に加担するような人物ではない。たが、あの魔法は………!?

 

「何が、どうなってんだ!? 闇派閥(イヴィルス)の次は正義の派閥のリーダーが魔石埋め込んでモンスターごっこかよ!?」

 

 混乱し叫ぶルルネにレヴィスは鬱陶しいとでも言うような視線を向け、すぐにアイズに向き直る。

 

「俺達を無視してんじゃねえぞ!」

巨大花(ヴィスクム)…………()()()()()()()()()()

 

 その態度にベートが激昂するが、レヴィスの言葉で新たに食人花が産み落とされる。1匹、2匹ではない。

 ドシャドシャと雨のように降り注ぐ食人花の群。

 怪物の宴(モンスターパーティー)を思わせる…………あるいはそれすら凌ぐ大群。

 

「く、来るぞ!?」

「無理無理!? 無理だって!!」

「離れるな! 潰されるぞ!!」

 

 波濤のごとく押し寄せる食人花の群。冒険者達を飲み込まんと襲いかかる。

 

 

 

 

「っ!!」

「余所見している暇あるのか?」

 

 モンスターの大群に飲まれ姿を確認できなくなった仲間達に意識を向けた瞬間、足の裏で火を爆発させ加速するレヴィス。

 煌々と輝く炎の熱が、風で防いでいる筈なのにジリジリと肌を焼く。

 

「どうして、魔法を使わなかったの………!?」

「忘れていた………いや、()()()()()()、か。()()()()()()()あの黒い骨を見てからだ。まだ不安があった」

「…………?」

「体は覚えていると言うが…………中々、使い勝手が良い」

 

 炎爆を利用した高速移動。炎の熱が加わった剣。四肢を隠す炎の揺らぎ。

 当然だが、魔法を使う前より強い。ただでさえ、ステイタスで圧倒されているのに。

 

「ルゥアアアアアア!!」

「!!」

 

 高速で接近したベートの蹴りを防ぐレヴィス。炎が銀靴に吸い込まれる。

 

「吹き飛べ!」

「!!」

 

 炎が爆ぜレヴィスを吹き飛ばす。防いだ腕が焼けただれ、炭化した細胞が治癒を阻害する。

 

「………エイン! さっさとエニュオに持って行け!」

 

 チラリと胎児を見て叫ぶレヴィス。何処から現れたのか、黒装束の仮面の人物が現れ宝玉の胎児を手に取り走る。

 この乱戦の中、誰も追えない。

 

「ベートさん………今の動き」

「アイズ、風をよこせ」

「…………はい」

 

 炎を使い切ったベートはアイズの(エアリアル)を銀靴に纏う。瞬間、疾走。

 【ロキ・ファミリア】にて最速ではあるが、瞬間的な加速力なら(エアリアル)を使うアイズに劣り、ランクもアイズに先をいかれたはず。

 だが、その速度はアイズの(エアリアル)を借りたとしても、異様。

 

「アリアの風!?」

「吹き飛びやがれええええ!!」

 

 弱者を嫌い、弱者を罵る凶悪な獣、ベート・ローガ。彼もまたアイズ同様力を求め、力に焦がれる。

 彼にとって弱者とは、許せぬ存在。

 ()()()()()()()()()、許せぬ存在。

 戦場とは生き残れる強者のみが踏み入れていい地獄。強さだけが、その地獄での指針。

 

 そんな彼が、敗れた。酔っていたから、そんな言い訳が通じぬほど。その強さは戦ったベートが良く解っている。

 いや、全く解らない。背中が見えるフィン達や、高みにいると認識できるオッタルとも違う。

 その背すら見えない圧倒的強者。それを前に、ベートが取る行動は唯一つ。強くなること………それ以外に、あの男の言葉を否定する方法がどこにある? なんと言おうと弱者の戯言。

 否定するには、超えねばならぬ。ならば()()()()()()()()に躓いてどうする!!

 

「ラアアアアアア!!」

 

 【孤狼疾駆(フェンリスヴォルフ)

 走行速度を強化するスキル。

 【双狼追駆(ソルマーニ)

 加速時に『力』と『敏捷』のアビリティが強化されるスキル。

 そしてL()v().()6()()()()

 強化された『敏捷』が更に加速させ、再び『力』と『敏捷』が強化される。

 

「っ!!」

 

 止まらない。止められない。

 破壊の嵐そのものとなったベートがレヴィスを削る。

 

「【炎華(アルヴェリア)】!!」

 

 炎が爆ぜる。狙いは地面。衝撃波と熱波が放射状に広がりベートが動きを止める。即座に迫るレヴィス。だが………

 

「!?」

 

 アイズが斬りかかる。速度だけならレヴィスを圧倒する二人の猛攻。レヴィスは食人花の何匹かを呼び寄せようとして……紅蓮の輝きが食料庫(パントリー)を包む。

 

 レフィーヤが召喚魔法(サモン・バースト)により呼び出したエルフの女王の魔法だ。

 食人花の群を焼き払う。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】──!!」

「が!!」

 

 一瞬の動揺が命取り。アイズの刃が胸を切り裂く。

 

「………ここまでか」

 

 傷口を押さえ、これ以上の戦闘は不可能と断じるレヴィス。背後にあった石英(クオーツ)に拳を叩きつける。

 食料庫(パントリー)が激しく揺れ、崩壊を始める。

 

「アリア、59階層にいけ。あの時は彼奴に邪魔されたが、あれが何なのか今度こそ解るだろう」

「それは、どういう………」

「無駄話をしている暇はあるのか?」

「……!」

 

 このままでは、仲間が死ぬ。アイズは怪我人の保護を優先した。

 

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

「…………派手に壊れたもんだなぁ」

 

 ダンジョンの修復機能で直るとは言え、瓦礫だらけでかなり派手に破壊されている。なにか残っていないかと瓦礫をあさり見つけた幾つかの死体。

 

「冒険者!? 此処で何をしている!!」

「クソ、殺せ!!」

 

 瓦礫の中から証拠となるものでも回収しに来たのか、白装束の集団が現れる。剣を片手に走ってきたので片手サイズの瓦礫を投げ頭蓋を砕く。

 

「ひっ! あ、あの……ま、まって! 殺さないで!」

「……………」

「お父さん……待ってて、お母さんといっじょぎゅ!?」

 

 10歳ほどの少女が剣を捨て、震えながら近付いてくる。ので、蹴り飛ばした。

 

「え………?」

 

 片手に糸を持った少女が自分が蹴り飛ばされたことに、その痛みに気付くまもなく炎に飲まれた。爆薬か何かを持っていたのだろう。同じく爆弾を持っていたらしき白装束の集団が誘爆していく。

 

「ひ、ひい!?」

「こ、この………! よくも……私は、あの子と一緒にあの人に………!!」

 

 糸を抜こうとした両腕を切り落とし、女の頭を掴む。

 

「一緒…………自殺? ああ、死後の再会でも約束したか」

「っ! そ、そうだ! 恐れるな、同胞達よ!」

「我等が神は、殉教の果に約束を……!!」

「はぁ………」

 

 くだらねぇ、とため息を吐く柊は、そのまま女の頭を握り潰す。

 

「死者に会いたい? 死後の再会? アホ抜かせ、誰も望んじゃくれねえよ」

 

 女の死体から爆弾と思わしき鉱物を手に取り、向かってくる白装束を見据える。

 

「会いたいなら、大切な思い出抱えて一人で死ね。てめぇ等には、それが出来るだろ」

 

 

 

 

「………なにか残ってねえかな………? また死体か」

 

 瓦礫を探り、見つけたのは白装束の切れ端、死体、極彩色の魔石に……冒険者の死体。殆どが原型を留めていない。

 途中襲ってきた奴等の死体でも持って帰れば恩恵ぐらいは解るか。

 

「ん?」

 

 と、瓦礫の下から何かが這い出してくる。

 

「…………お前は」

「レヴィスか」

 

 


 

ベートのランクアップ方法

ひたすら戦い深層に向かう途中、下層で怪物の宴(モンスターパーティ)にあい死にかけながらも諦めずに全滅させた。

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