帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか?   作:匿名希望

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月夜の出会い+おまけ(アストレア・レコード)

「モンスターと精霊の融合?」

「ああ、恐らくは………俺はこちらの精霊については知らんが神の分身なら、気配は似るんだろ?」

「…………ウラノス」

「方角は?」

「あっちの、かなり遠く………属性は夜……いや、月だな」

 

 その言葉にフェルズが考え込み、ウラノスは目を伏せた。

 

「これも下界の可能性か…………確かに、あちらでは月の精霊によりモンスターが封じられている」

「モンスターと融合しているというのは、確かなのか?」

「そこは確信を持っている。レヴィスが持ってた宝玉から進化したやつに気配が似てるな。あっちは分身じゃねえが」

「…………そうか、ダンジョンにも居るのか」

 

 だから【剣姫】に反応したのか、と呟くフェルズ。

 世界を救うために遣わされた精霊が逆に下界を滅ぼしかねない災厄となっていることに、神たるウラノスは何を思ったのか目を伏せる。

 

「………封印された怪物の名はアンタレス。海を穢し、森を枯らした秘境の蠍。もとより命を喰らうという特性が、自らを封印した精霊の命を少しずつ喰らっていったのだろう」

「【アルテミス・ファミリア】に調査に向かわせていたのだが………」

「アルテミス? 勝てるのか、そいつ等?」

「不可能だ」

 

 ただ封印されていただけのアンタレスなら、弱体化も有り封印に力を割き弱っているであろう精霊とアルテミスの眷属達が手を組めば勝てただろう。だからこそ送りだした。

 しかし自らを封印した精霊達を喰らいその奇跡を身に宿したとなれば、その脅威は計り知れない。

 【ゼウス】や【ヘラ】ならともかく【ロキ】ではまず無理、【フレイヤ】でも怪しい。

 

「精霊の力に酔い油断しているならロキとフレイヤ達ならば可能性はあるが、例え油断していようとも、【アルテミス・ファミリア】では無理だ」

 

 大精霊が封印するしか無かった怪物というのは、それだけ強大なのだ。

 

「ヘスティアはアルテミスが下界に居ることを知っているのか?」

「恐らくは………二柱(ふたり)は天界にいた頃から仲が良い」

 

 なら、何時か眷属を会わせるのを楽しみにしているかも知れない。というかヘスティアの性格ならベルと柊を自慢しながらアルテミスの眷属を紹介してもらうのだろう。

 まだ封印されてはいる。

 

「俺がそのアンタレスを潰す。外出許可をくれ」

「お前が………?」

「問題あるか?」

「いや、お前ならば問題ないだろうが………」

「ウラノス、この問題はデメテルの要望にも違反しないだろう」

「デメテル?」

 

 と、フェルズが唐突に出す名に首を傾げる柊。そう言えばあの時、助けられた側だと言うのに随分心配していた。

 大方、悪意に触れるのを心配していたのだろう。ヘスティアといいシルといい……余計なお世話という奴だ。

 

「明日早朝、足を用意しよう」

 

 

 

 翌日、ヘスティアにアルテミスの事を話せば会いたいけど我慢するから、元気にしてるか見てきてくれと送り出された。

 まだ日が昇る前のオラリオの市壁。

 

「…………来たか」

「フーハッハッハッ! とう!」

 

 ガネーシャの気配に顔を上げると、ドラゴンに乗ったガネーシャが飛び降りてきた。

 予定より高い場所で飛び降りてしまったのか、着地して数秒固まり呻く。

 

「…………っ! ハ、ハハハ! 俺が、ガネーシャだ!!」

「こいつに乗って行けば良いのか?」

「クルル………」

 

 スンスンと鼻を鳴らし舌を伸ばしてくる。鼻先を押さえて舐められるのを拒否した。

 

「この竜は孵化した時から調教(テイム)を施してある! 誰の言う事でも聞くぞ!」

「地上産か…………」

 

 古代地上に進出したモンスターの子孫。魔石を分け与えられ弱体化したモンスター。それでも最強種の竜種だけ有り、オークよりは強いだろう。

 

「ただし! 魔石を食わせるなどして力を与えると万能感に酔い破壊本能に飲まれる可能性があるから要注意だ! そして、俺が──」

「行くぞクルル」

「クルゥ!」

 

 柊はクルルと名付けた飛竜の背に乗り飛びたった。

 

「俺が、無視されたガネーシャだ!!」

「うるせえぞガネーシャ様! 今何時だと思ってんだ〜!!」

「景色を存分に楽しめ! それもまた、ガネーシャ!!」

「ほんとうっさい! でもおかげで今日のデートのおめかしに時間かけられる、ありがとーガネーシャ様ー!」

 

 

 

 

「…………何だ彼奴」

 

 住民には人気らしいが………しかし、景色?

 

「…………ほお」

 

 日が昇り、地平線が輝く。

 照らされていく世界。まだ夜の黒と星が残る空、境の紫紺………。

 

「…………何時以来だろうな」

 

 こうしてゆっくり景色を眺めるのは………いや、最近リューに見せられたか。

 だが、ここまで壮大となると………昔は見ていたんだが。

 旅のさなか、仲間達がきれいな景色があると聞けば見に行こうと腕を引いた。今思えば、世界に何の義理もない柊が世界を救った後少しでも戦ってよかったと思える記憶を増やしておきたかったのだろう。

 

 国内の景色は全部壊してしまったが。

 

「…………クル、キュウ」

「? どうした、何で速度落とす」

「クウウ…………」

「…………解ったよ」

 

 今更こんな景色を見ても意味がないかと視線を前に戻せばクルルが飛行速度を落とす。どうしたかと聞けば何処か怒ったように唸り、察した柊は日が完全に姿を現し空が青く染まるまでその景色を眺める。

 

 綺麗だ………本当に。

 皆と山を登り、崖を越え、これに似た景色を見た。師である老騎士が山に住むハーピィの女王に攫われて婚約させられそうになったり絡んでくる男が決着をつけようとか言い出して派手な大技使って崖崩したり、面倒事にも巻き込まれたが。

 

「…………破壊本能ねぇ」

「クル?」

「お前にもあるのかねぇ、そんなの」

 

 身を乗り出し首の後ろの鬣を撫でてやる。クルルは気持ちよさそうに喉を鳴らした。

 

 

 

 

 日が降りてきて、近くの森に降り魚を捕る。

 クルルは干し草。ムシャムシャ食べてる。雑食らしい。

 

「クククク………」

「…………ほれ」

 

 魚を食う柊にスンスンと鼻を寄せて来たので、焼いていた魚から枝を取り投げる。器用にパクリと受け止めた。

 

 クルルは嬉しそうに額をこすりつけてきた。

 

 そう言えばベルの祖父が唐突に「山籠りするゾイ!」とか言い出して山に連れて行かれ、伝説の山ガールなるものを探しに柊とベルを置いていった日の夜も、川で魚を取って食わせてやったか。

 

 因みに爺は熊連れて戻ってきたので地面にめり込ませて、ベルを熊の背に乗せ爺を熊に引き摺らせ村に戻った。

 

 あの時のベルもただの魚をご馳走のように嬉しそうにしていたっけ。

 

「今頃中層に向かったのかね、あのパーティで」

 

 柊はリリが嫌いだが、それでも冷静に判断するならあのパーティで評価が高いのはリリだ。複数のパーティに所属した回数は、オラリオの中でも上位だろう。

 もちろん中層の経験もなく、助言を飛ばす立場というのも初だろうが………。

 

 そして、実を言うとベルとヴェルフは互いに落第点。

 他所のファミリアとパーティを組み、ランクアップに付き合わせるくせに本気で背中を守る気のないヴェルフは言わずもがな、ベルはダンジョンという環境でも自分の命の価値が低い。

 中層という上層以上に危険な環境であろうと、自分の命より見知らぬ誰かを優先するだろう。ミノタウロスの前で動けない、というトラウマも払拭された今、リリでも止められまい。

 

「あいつその内見知らぬ他人どころか自分を嫌う相手のために階層主に挑みそうだからなぁ」

 

 アホらしい。

 自分達の命より他人を優先しても、その誰かが感謝してくれるとは限らないのに。

 そんな事繰り返していれば直ぐにでも英雄と祭り上げられ勝手に期待を押し付けられ失望される。

 

 そうなったら田舎に引っ込ませるか。

 

 爺は英雄が必要だの下界を滅ぼす災厄が残っているだの言っていたが、ベルが英雄目指すのを辞めるなら、英雄が必要な厄災を、代わりに全部消し去ってしまえば良い。

 

「………………っ…………チッ」

 

 そこまで考え、無意識にベルの失脚を望んだ自分に嫌気が差す。柊が不機嫌になったのを感じたクルルがベロベロ舐めてくる。

 

 

 

 そろそろアンタレスが封じられているエルソスの遺跡とやらにつく。気配も大分大きくなってきた。

 封印は、明日にでも解け…………

 

「……………!?」

 

 夜空の月が輝く。

 

神の盾を模倣(アギルス)──!!」

 

 即座に防護魔法を張ろうとするが、クルルがその場でくるりと回転する。そのまま光に羽を貫かれクルルと柊は地面に落ちた。

 

「クルル!」

「クウゥ……」

「…………この馬鹿が、俺を庇ったつもりか?」

 

 傷口にポーションをかけてやる。傷口に纏わりつく力の残滓のせいで薬の効果が発揮しきれない。

 

「…………追撃が来ない?」

 

 というか、一瞬間違いなく神クラスに膨れ上がった力が弱まっている。再封印に成功したのか?

 いや、眠っている?

 

「クルル、ここで待て。すぐにクソ野郎の魔石を取ってきてやる」

 

 以前出会った黒い骨のようなモンスター。あれは過剰な魔力を燃やし再生能力を生み出していた。

 古代、精霊が封印するしかなかった蠍とやらの魔石を食わせ進化させれば、或いはこの傷も癒せるかしれない。

 

「キュウゥ………」

 

 と、其の場から気配の主のもとに向かおうとする柊の服の裾を咥えるクルル。ジッと見つめてくる。

 

「…………朝までだ。今は眠ってるが、数日後には起きそうなんでな」

 

 腕を振り裾から口を放し、クルルの横腹に背を預ける。クルルは尻尾を絡め、舐めようとしてきたので顎下を手で押さえやめさせた。

 

「……………!! グルルル」

 

 と、不意にクルルが顔を上げ唸り声を上げる。

 柊を翼で隠し、口内に炎をため………額めがけて矢が飛んでくる。柊がそれを受け止めた。

 

調教(テイム)されてるモンスターだ。賊じゃねえなら、姿を現せ」

 

 現さなければ殺す、と警戒心と敵意を向けてくる森の奥に潜んだ者達に敵意を向ける柊。観念したのか、傷だらけの女達が現れる。

 

「……すまない、彼女達を許してやってくれ。気が立っていたんだ」

「? 精霊………いや、何だその搾り滓」

 

 謝罪してきたのは蒼い髪の女。対面すれば神の気配を纏っているが、逆に言えば対面しなければ柊も神であることを見逃してしまうほど、神としての存在が希薄になっている。

 

「搾り滓か………違いない。私はアルテミスの残滓………調教(テイム)ということは、ガネーシャの関係者か? もしそうなら、頼みがある。槍の使い手を探す手伝いをして欲しい」

 

 

 


 

 

アルテミスファミリアが生き残っていた理由。

神の力でウハウハして痛めつけてうちから響くアルテミスの悲鳴を笑ってたらなんかやばいのが近づいてくるのに気付いてそっちに集中した結果、アルテミスに隙をつかれて眠らされたため。

 

 

 

 

柊の転移先が暗黒期のオラリオだったら?

 

 

雨の中、酒瓶片手に路上で寝る柊をアストレアが見つけて拾う

 

 

食事、宿代の代わりにアリーゼ達を手伝う

 

 

アーディが説得しようとしている少女をヴァレッタに向かってシューーート!

 

 

ヴァレッタは消し飛ぶ

 

 

死の7日間が始まる

 

 

子供が石を投げて来る

 

 

蹴り返して血反吐吐かせる

 

以下その世界線の会話

 

 

「な、なんてことしやがる!」

「ひ、ひどい!」

「ちょ、ちょっと柊!?」

 

 民衆が騒ぎ出し、素知らぬ顔の柊をアリーゼが慌てて止めようとする。

 

「何してるのよ!?」

「俺は別に、正義を掲げたつもりはねえし………」

「この!!」

 

 と、石を投げようとする民衆達。アリーゼが止めるより早く、柊がその腕を斬り飛ばす。

 

「貴様! 血迷ったか!?」

「黙れよ輝夜、血迷ったのはこの馬鹿どもだ。誰が何処で死のうと誰が何処で暴れようと、冒険者様が、正義の派閥が守ってくれると任せきって何もしねぇで今日もありがとうと宣うくせに、いざ自分達が傷を負う番になるとちゃんとしろだの…………苛つくんだよ」

 

 と、娘を返せと叫んだ女を蹴り飛ばす。

 

「ここはオラリオ、神々が住まう冒険者の街。望めば人を超えた力を神から与えられるのに、お前等は何してた? 震えて泣いて、祈ってすがって、都合のいい英雄様が現れるのを待って、それっぽいのを崇めるだけ崇めて期待に添えなきゃ嘘つき、お前等のせい、あの人を返せ………」

 

 なんで助けてくれなかったと言った男の頬を殴る。

 

「なぁ、おい? お前等何してた? 子供守るために戦ったか? 恋人守るために身を挺したか? 家族を救おうと剣を取ったか? 何もしてねえくせに何かをしろだ? 何様のつもりだよお前等。何で俺が無関係のお前等のために走り回らにゃならん」

 

 責任をとれと言った男の首を掴み、壁に投げ飛ばす。

 

「!! や、やめろ!!」

 

 ようやく正気に戻ったリューが慌てて止めようとするも、柊は民衆が向けてくる身勝手な怒りや憎悪の視線に、それ以上の嫌悪の視線を向けていた。

 

「こんな事、間違っている! このようなことが、正義のはずが………!」

「そもそも俺は正義を掲げたつもりはねえよ………それに、今この街で正義の行いつったら闇派閥(イヴィルス)を殺し尽くすことだろうが………別に石程度じゃ大した傷にならねえが、それを理解しないうえで闇派閥と戦う戦力を傷つけようとするこいつ等…………」

 

 

「いっそ皆殺しにしちまえば正義もなしやすくなるだろ」

 

 

 

 本気で言っている。それがわからないほど、その言葉に込められた感情に気づけぬほど鈍いものは此処にはいない。

 柊は今にでも、冒険者に騒ぎ立て………言い方は悪いが邪魔になる民衆を皆殺しにしかねない。それを止めようとするものも、それに文句を言うものも………。

 

「そんな、そんな行いは正義ではない!」

「なら何が正義だ? お前、あの神に無償の善行だの悪を斬るだの言ってたが、守られるだけの分際で、人の苦労も知らず完璧に守れよなんて宣って石投げるこいつ等は、十分悪どいカスだと思うがね。冒険者が守ってくれなかった妹ぉ? お前は守ってもらえたんだから、生かしてくれてありがとうぐらいは言えよ」

 

 リューの言葉にそう吐き捨てる柊。

 輝夜以上の毒舌。

 

「ふ、ふざけんな! 守ってくれなかったくせに、役に立たなかったくせに、逆ギレしてんじゃねえよ!」

「俺は別にてめぇ等の役に立つつもりはねえし、此奴等が役立たずならお前等なんで生きてんだよ。冒険者が闇派閥に必死に抵抗したからだろうが…………いっそ、お前等の言葉を実行してやろうか? ああ、そうだな。それが良い………お前も、お前の家族も友人も、纏めて殺せば冒険者がどれだけ有り難かったかその腐りきった脳みそでも理解出来るか」

 

 まずはお前から、と剣を向ける柊の前にアリーゼ達が立ちふさがる。

 

「おいおい、冗談言うな馬鹿!」

「そのようなことをさせるか阿呆!」

「それは……その所業は見過ごせない!」

「…………柊。お願い、やめて」

「……………………良かったなぁ、お前。役立たずどもがいてくれて。ああ、お前が生き残ってようと、役に立ってねえんだから、死んでも同じか。ちゃんと守ってほしい、けれど正義の味方の邪魔もしたいなら首でもくくって正義に貢献してろゴミども。余計な数が居なけりゃ救いやすくなるってもんだ」

 

 

 

Q.『正義とは?』

A.回答者柊『感謝。助けてくれてありがとう、戦ってくれてありがとうって言ってもらえたなら、俺はああはならなかったろうよ』

 

 

ええ!? 実はお礼を言ってもらえるなら無償で人助けしても良いと思ってた少年を国滅ぼさせるほど追い詰めて、どうせ感謝もされないんだから助けの言葉に応じず自分で決めて助ける青年に成長させた国があるんですか!?

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