帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか? 作:匿名希望
「こんにちは!」
「あ、君は………」
ギルドに訪れ、ファミリアに所属出来たことを報告する。ベルは知り合ったらしいギルド職員のハーフエルフの少女に駆け寄り嬉しそうに冒険者に慣れたことを報告する。
そんなベルに集まる視線は、無関心………。あれはどうせ死ぬからと関わりたがらない目だ。
柊はベルと話が盛り上がっているハーフエルフの代わりに小柄な人間の少女に話しかける。
「登録を頼む」
「はいは〜い………共通語はかけますか?」
「ああ……」
その辺りはしっかり教わった。実はこっちの世界に来たばかりは言葉も通じなかったがとある老人に色々教わった。
「柊さん………えっと、極東の方ですね。所属は……無所属?」
「恩恵は貰っている。なにか不都合が?」
「あ、いえ。今時珍しいな〜って……恩恵は神ヘスティア……なにか証明するものはありますか?」
「ああ………」
「はい、問題ありません。登録完了しました………担当アドバイザーはおつけになりますか?」
「お前で……」
「そうですか………じゃあ、私はミィシャと言います。まだまだ若輩者ですが、よろしくお願いします!」
元気な娘だ。冒険者の担当なんて、担当になる人間が死ぬのを何度もみることになるだろうに…………。
冒険者にのみ閲覧の許される情報など学び、柊はダンジョンに向かった。
ダンジョンは生きている。
そう言われている。魔石を持つモンスターを
下に行くほど広くなっていき、穴だらけの迷宮を支える壁や天井は地上にはない特殊な金属により形を保つ。
産み落とされるモンスターの体にはその金属が混ざり、核となる魔石を失うと灰になるはずのモンスターが時折落とす角、爪、牙は武器の材料となる。
堕ちた怪物………神性を失った創造主共の死体から武器を作った自分に近いものがあるな、など思いながらコボルトの頭を蹴り飛ばす。
天井から襲ってきたダンジョンリザードの顎下から指を突っ込み脊髄を握るとゴブリンに向かい投げつける。
ゴキュンと脊髄が抜き取られ肉の塊がゴブリンを押し潰す。
肉の塊から魔石を抜き取り、灰に返すと奥へと向かう。
12階層。
中層と呼ばれる上級冒険者になってから挑むべき階層の一歩手前。冒険者にはレベルの概念があり、半数がLv.1。その中でもベテランと呼ばれる程度には差があり、そのベテランパーティーすら遭遇すれば全滅させる可能性のある
その竜種の首を素手でねじ切り、竜の牙と魔石を回収する。
もとより希少モンスター。上層でも金にはなるだろう。妖精からもらった袋を改造したマントに投げるとマントの影に吸い込まれていく。
そのまま中層に向かう。魔石は放置すると強化種とやらを産むらしいので、徹底的に砕いていくか持ち帰るのが常識らしいが柊はマントのおかげで一々砕く必要性がない。
普通の冒険者ならまずありえない、ダンジョン内での喫煙を行いながら下へ下へと向かっていく。
別に柊はダンジョン攻略も目指していないので、モンスターの
「これ明らかに中層の…………え、Lv.1だよね?」
素なのか敬語を忘れるミィシャ。どう考えても駆け出しの冒険者が持ってくるアイテムじゃない。
「あー………ほら、あれだ。身体能力一般人の神だって武神や狩猟神は上級冒険者より強いだろ?」
文字通り、神域の武技を持つ故に。
まあ人類の中にもそういった存在が居なくはない。神の恩恵がない時代に名を残した英傑達がまさにそれだ。
現代ではまずお目にかかれないが…………それでも恩恵を得たばかりでも中層クラスのモンスターに挑める者は僅かながらに存在する。最も、あくまでモンスターであり今のオラリオではLv.1のころ単独で中層の環境に挑める者など一人も居ないが………。
もしかして、レベル詐称?
「レベルが気になるならガネーシャ辺りに調べさせてもいいぞ」
ギルド職員は駄目だ。ただし、情報を集める限りガネーシャ辺りなら信用できる。というか、余計な騒動の原因を隠してくれるだろうという確信だが。
何せ神は大概暇つぶしに来ているだけ。面白そうなことをするためなら子供達にどれだけ迷惑がかかろうと気にしない。
恩恵を持たず怪物を殺し、しかも異世界から来たなど神の良い玩具になるだろう。手にするために何が起こるか、なども考えれば少なくとも秩序を守るガネーシャならば公表しない………いや、出来ないだろう。
「う、う〜ん………一応、上に報告しておく……あ、ます。これは流石に、無視できませんので」
「好きにしろ。ただし、俺は神を信じていない。ステータスを見せるのはウラノスかガネーシャだ。後は………ヘファイストスとゴブニュなら良いか」
「それも伝えておきますね」
冒険者になって早数日。神を指定したから手続きに時間がかかっているのか、未だギルドからの呼び出しはない。
そもそもファミリアがランクに応じてギルドに払う必要のある金を、新規の【ヘスティア・ファミリア】はまだ払っていない。
あえて時期を遅らせて罰金も上乗せしたいのかもしれない。
「欲深いギルドの豚、ねえ………豚か………」
かつて仲間達と旅の道中何度も売り買いをした『金食い豚』の異名を持つ商人を思い出す。
あれも見てくれだけは美しく他種族を見下す人類種の中で最も醜いと揶揄される美しき種族、エルフだった。エルフの誇りの一つである美しい容姿を脂肪で歪め太り過ぎて立てないから馬車で移動し仮面で顔を隠した奴隷達に仕事をさせていた。
あれよりは太ってはないらしいが、多くの同胞からは蔑まれているらしい。
「ギルドの豚………ロイマンですか……」
その娼婦のエルフも不快気に顔を歪め、自分が娼婦という立場なのを思い出したのか暗い顔をする。
「どうして、急に………」
「昔の友人を思い出した。思えば、最後まで死ななかった友人も彼奴だけか………」
仲間は全員死んだが………それでも友人と呼べる相手は一人だけ生き残っていた。まあ前線近くに来るだけで戦士ではないのだから生き残る確率は高いのは当然だが。
「………でも、貴方はまだ冒険者です。私とは、違う」
その娼婦が借金漬けになった理由は、ダンジョン探索の失敗で大量の薬が必要になったから。
仲間の何人かに死なれ、今までのように稼げなくなり、傷ついた他の仲間のためにも薬を買おうとして結局返せず売られ、冒険者を続ける事ができなくなった。
彼のように一人でも迷宮に挑めたら、そんな嫉妬や不甲斐なさからますます暗くなる娼婦に、柊は煙を窓から掃き捨てる。
「俺の方が不幸だ、とは言わないが………俺だって自分を幸せだなんて思ってねえよ」
「す、すいません! そんな、つもりじゃ……」
「はっ、生真面目だねぇ………」
自分はお前より不幸だ、そう思うのは勝手の筈だ。柊だって、それを動機に国一つ滅ぼしたのだから。
「あっ………」
柊が窓辺から戻り頬に触れるとエルフの娼婦はビクリと震える。他者に触れられることへの、種族故の嫌悪感に身を縮こまらせながらも散々淫れた夜のことを思い出しその瞳には何処か期待に満ちていた……。
「貴様がフリュネを痛めつけてくれた男か………」
朝になり帰ろうとすると、褐色の女神が立っていた。
「ああ、別に金を払えなどと言うつもりはない。彼奴の行動はこっちも問題視していたし、ギルドに訴えたところで今回ばかりは勝てまい。ただ、提案……いや、命令だな。私のものになれ、その力を私のために使うが良い」
無視して帰った。
「あ?」
そして翌日。今日はこの辺りで少し稼ぐかと上層で死にかけのキラーアントを踏みつけフェロモンを出させていると牛のような咆哮が聞こえてきた。
「ブオオオオオ!!」
現れたのは牛頭人身の怪物ミノタウロス。中層の怪物が何故か上層で、酷く興奮した状態で走ってきた。
「ガアアアアアア!!」
「……………」
拳を振るってくるミノタウロスに対して、キラーアントの頭を蹴り飛ばす。牙が首に突き刺さりふらつくミノタウロス。それでも最後の力を振り絞り人類に仇をなそうとして…………炎が弾けた。
「うわ、もしかして間一髪!? だ、大丈夫ですか…………?」
魔道士の少女が恐る恐る訪ねてくる。柊は床に這いつくばり立ち上がることも出来ないミノタウロスの頭を踏み潰す。
「ドロップアイテムと魔石は俺のだ」
「あ、はい………」
魔法に耐えただけあり、特に発達していたのは毛皮のようだ。少し焦げているが、角よりもレア。まあ売れるだろう。
オラリオこそこそ噂話
柊には「貴方を守る」という花言葉があるよ。こんなに似合わない花言葉もあるんだね!
え、人の心が何だって?
金食い豚
その内面からどれだけ美しくても『見てくれだけの世界一醜い種族』と呼ばれるエルフの中で容姿も醜いエルフ。ただしエルフと違い他種族を見下さず、森に引きこもるだけで何もしない同族を見下しているフシがある。
柊達は性癖と見た目と笑い方以外は完璧と評している。
薬で調教された馬型のモンスターに馬車をひかせ危険な場所にも訪れ商売をする。取引は誠実で、危険な領域に運んだことを加味したうえで高額で売ってくるが手に入れた素材次第で交渉してくれる。
後にモンスター除けとなる堕ちた怪物の死骸の一部で馬車を補強し最終決戦の場まで赴いてくれた。
柊が国民を皆殺しにし始めた時点で国に見切りをつけ商会を別の国に移した。
奴隷の少女達
従業員兼護衛。金を払えば一晩買えるよ。
豚がロリコンなので小人族や鼠人族や幼い少女。