帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか? 作:匿名希望
ただし別世界故に罪がカウントされないのを知らないものとする。知ってたら? 見向きもしないんじゃないかなぁ
ベル、ヴェルフ、リリの3人パーティは中層にて【タケミカヅチ・ファミリア】達から
アイテムを駄目にし、怪我を負い、帰還ルートも不明。故に確実に
そしてそれを見て来たのが【タケミカヅチ・ファミリア】。
主神のタケミカヅチ曰く、自分達のせいだから力になりたいと立候補したらしい。
「ね? 良い子だろう!?」
「マッチポンプってのは神々の間にもある言葉だろ」
自分達で危険な目に合わせておいて、助けたからハイ終わり、など通じるものか。マイナスが0に近づいただけで未だマイナス。
「原因の分際で恩着せがましく助けたからチャラなんてのを素直に受け入れてんなら、どうせまた同じことをする」
なにせ、人に押し付ければ助かると知ってしまったから。
一度その選択を取った者の脳裏には、楽に切り抜ける方法が常に浮かぶ。本人は二度としないと決めようと、いざその時になれば同じ手段を取る。
「ベル君も、僕も許したんだ………」
「そうか、だがヘスティアに迷惑をかけたなら世話になってる俺も文句の一つ言う権利はあるだろう。ここか………」
「あ、待って! 僕聞いたことがある、極東ではこういう時こう言うんだ! たのもー!!」
【タケミカヅチ・ファミリア】のホームに着くと、ヘスティアの元気に挨拶する。ドタドタと何やら騒がしい。
「俺が相手になって…………ヘスティア様!?」
真っ先に出てきたのは大男。その後ろには凛とした少女に目が隠れるほど髪を伸ばした少女。
男が団長、凛としたほうがそれにつぐ実力者で、目隠れの方は男が好きで心配といったところだろう。
「やあ桜花君、どうしたんだい物騒だな」
「ど、道場破りでは?」
「どーじょーやぶり?」
「まあ簡単に言えば、喧嘩売りに来たと思われた」
「ええ!?」
柊の言葉に何故、と驚くヘスティア。どうやら勘違いのようだとわかり、【タケミカヅチ・ファミリア】の面々は敵意を消す。
「ところで、貴方はもしやベル殿達がおっしゃっていた柊殿では?」
「ああ、そうだな」
「申し訳ありませんでしたー!!」
女は速攻で土下座した。それはもう、見事な土下座であった。
「この度の貴方のご同輩であるベル殿を危険に晒したのは、一重に我々の落ち度! 如何様な罰でも受けます!」
「ご、ごめんなさい!!」
と、目隠れの方も土下座した。ヘスティアは「ほら良い子だったろ!? 早く帰ろう!」と何やら慌てている。
柊は突っ立ったままの男を見る。
「お前は何か言うことがねぇのか?」
「あの判断を下したのは俺だ。俺はあの判断が間違っていたとも思わない、同じ状況になれば、同じことをするかもしれない」
「…………ほう?」
「恨むならうら──」
パァンと柊の拳が空気の壁を砕き、桜花の体が吹き飛ぶ。引き戸をぶち抜き壁を破壊し、畳をひっくり返しながら漸くとまった。
「お、桜花!?」
「桜花殿!?」
「ちょっ、柊君!?」
柊はヘスティアを下ろすと家の中に吹き飛んだ桜花に向かおうとし、目隠れが前に立ちはだかる。
「お、桜花に酷いことしないで!!」
「邪魔だどけ」
「ど、どきません!」
「そうか」
頬を殴り横に飛ばす。と、室内の桜花がフラフラと立ち上がる。手加減したとは言え、どうやら見た目通り耐久や力が高いようだ。
もう少しだけ強く叩くか。
「っ! お前、よくも千草を!!」
「吠えるなよガキが。少しはあのお人好しと行動して、反省したかと思えばこれだ。恨むなら恨め? てめぇ、自分がバケモン押し付けられて、仲間が危険な目に遭わされて同じこと言えんのかよ」
自分に怒りを集めるために敢えて自分だけ謝らなかったのかもしれない。だが、被害者がじゃあお前だけ恨みますねなんて言うと思ってるのか?
ふざけるなと激昂され攻撃されることも、それを庇う仲間に被害が及ばないとでも?
「てめぇの中でどれだけ自分の価値がたけぇんだよ。てめぇ一人で被害者の怒りが背負えるとでも?」
「ストーップ!」
と、ヘスティアが柊の前に立ちはだかった。
「ヘスティアどけ。こいつはダメだ、ダンジョンに送ってモンスターに追われてベルを見つけたら、どうせまた許してもらえると同じ事をする」
そしてベルは絶対に許す。謝れば許す。なんなら助けに来なくても、仲間の為だったと言えば許す。
数年間共に過ごした柊の言葉で、間違いない。ベルは恐らく、最終的に皆生きてるなら毎日リンチされたって許す。
「だからここで手足落として冒険者辞めさせる。元々実力不足で他人に迷惑かけたんだ、冒険者に向いてない何よりの証拠だろうが」
「でも、えっと………
「んなもんどうせ相手が上位派閥の時の話だろうが。実際に理解を示すものがどれだけ居るってんだ」
確実に報復はある。それが冒険者同士の殴り合いになるか、ファミリア同士での殺し合いになるか………そこまで大きく問題としてあげられないのは、死人に口なし。唯生きて戻って来れなかっただけだ。
「べ、ベル君も同じ状況になったらするかもって…………」
「すると思うか?」
「……………………」
しないだろう。あれはモンスターに追われる中眼の前に見知らぬ誰かが現れたら仲間の保護を頼んだとか言う名目で自分だけ殿になる。
「彼奴がそれで死のうが知ったことじゃねえが、彼奴のあり方を悪意持って利用する奴がいたらヘスティアに迷惑だ………」
柊が桜花を蹴り飛ばし、手足を斬っても暴れぬよう気絶させた。
ようやく正気を取り戻した少女が動くが、間に合わない。柊がマントの中から取り出した剣を振ろうとして………
「……………あ?」
一瞬の出来事だった。肩を掴まれ振り払おうとしたら、その力の向きが変わり気がつけば浮いていた。
「…………………お前が武神か」
「大した奴だ。あの状況でこちらに攻撃するか」
と、関節の外れた腕を垂らす男神。腕の骨を捻り折るつもりだったが…………身体能力という枠組みでは確かに鍛えた人間程度の冒険者以下なのに、武術の術理が並外れなんて言葉では言い表せない。
成る程武神………『武』を『司る神』か。
「師よりも優れた武人を見たのは初めてだ」
「武
と、武神タケミカヅチは柊を真っ直ぐ見つめ………
「すまん! この通りだ!!」
惚れ惚れする所作で土下座した。ヘスティアは「これが、本物!」と戦慄してる。
これに比べればヘファイストスにしたヘスティアの土下座などただ座っているだけだ。
「
ヘスティアといい、神の間で流行っているのかジャガ丸くんバイト。
「重ね重ねお詫びします!」
と、少女が再び土下座する。騒ぎを聞きつけてやってきた他の眷属達は土下座する己の主神と仲間に困惑している。
「お前達も謝れ、俺達が迷惑をかけたファミリアの主神と関係者だ」
ベル達のことは報告されていたのか、その言葉に慌てて頭を下げる【タケミカヅチ・ファミリア】達。
「…………興が冷めた。神殺しの罪を犯してまで精算する程のことでもねぇ」
と、柊が闘気を霧散させる。身体能力、頑丈さに差があるとは言え不意をついての投技が押し入れに入った布団に向かってのもの。そこまで気遣われた以上、誠意を返す。
「帰るぞヘスティア」
「う、うん。ごめんね、タケ…………」
「いや、もとより俺の眷属がつけた火だ………」
◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆
「おや、ヘスティアじゃないか!」
と、ヘスティアと昼飯でも食っていこうとした柊達に話しかけてくる声。一人の男神が立っていた。
横にはつかれた顔の女。二日酔いでもしているのか顔が青いが、柊には酒臭い元気のない女にしか見えない。
「もしや彼が噂に聞く柊君かい!? いやぁ、はじめまして! 俺はヘルメス、君の話はかねがね」
「ヘルメス…………じゃあそっちが【
「…………へ?」
と、ヘスティアが固まり女を見る。
「おいおい、まさか俺達を疑っているのかい?」
「はいかいいえで答えろ。【
「………………はい」
「そうか、目的は?」
「…………見極める為」
ヘルメスは観念したように肩をすくめた。
「世界に必要な英雄足り得るか、見極めるため。そして、俺はあの白い輝きにかけると決めた」
「そうか──」
「こんにゃろー!!」
と、ヘスティアがヘルメスの股間を蹴り上げた。近くにいた男達が思わず股間を抑える。
「かふぉ………へ、ヘスティア……? そ、それはまずい………」
「知るかこんにゃろう! 良くもベル君を! 何が目的だ、言え! 言わないともっと蹴る!」
「もう蹴ってるよヘスティアぁぁぁ!? ち、違うんだ聞いてくれ! ぜ、全部ベル君の、ひいては下界を救うために必要な…………!! 来る
ゲシゲシ蹴りつけるヘスティア。柊は仕方なく女………アスフィに詳細を聞く。
元々何かをしようとしていた連中に姿を隠すアイテムを渡したらしい。しかし主犯はベルがほぼほぼ返り討ちにし、それでも数で押そうとして来たところをヘスティアが止めたらしい。
ベルの事だから、どうせ許しているのだろう。
「ヘルメス様が本当に申し訳ありません!!」
「その冒険者共は別にいいが………」
悪意を顕に近付くなら、対応すべきはベルだ。柊ではない。ただし味方のフリをしてヘスティアに迷惑をかけるヘルメスは…………。
「悪意がないのが性質が悪い。これだから神ってやつは…………」
「悪かった! 悪かったって、何でもするから許してくれ!!」
「じゃあ視覚が戻る魔道具造れ!」
「ああわかった! 任せたぜアスフィ!」
「え、私!?」
「
「今日と言う今日こそブッコロシテヤルー!!」
「ぎゃあああああああ!!」
やはりこいつ天界に返したほうが良いのでは、柊は訝しんだが………下界を救うという言葉に込められた思いは本物だった。
「………ベルが、救世の英雄ねぇ」
ようはベルの夢をサポートする、と。
動機はベルなら出来ると信じたから。
見限ったら消滅させよう。