帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか?   作:匿名希望

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ヘスティア・ファミリアの団長

 ベルにとって、ヘスティアは恩神(おんじん)だ。

 どのファミリアにも門前払いされ、受け入れてくれそうなファミリアはなんか身の危険を感じた。

 路銀も尽きかけ路頭に迷うところだったベルを受け入れてくれたのはヘスティアだ。

 何より、ヘスティアは柊を利用しない。

 

 誰よりも強いのに、なんだって出来るのに、他人の願いを無償で叶えるのを嫌がる柊に、主神という立場を利用して命令しない。

 

 きっと、ヘスティア以外のファミリアだったら柊はオラリオから、ベルの前から去っていただろう。

 

 だからヘスティアはベルにとって冒険者にしてくれた恩神(おんじん)であり、柊をここに繋ぎ止めてくれた恩神(おんじん)でもある。

 

 だから、ヘスティアから離れたくない。

 恩を返しきれていない。恩なんてなくても、ずっと一緒にいたい家族なんだ!!

 

 

 

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 炎雷が突き進み冒険者に着弾する。

 Lv.2の魔法だ。詠唱のない低威力の魔法であろうと、Lv.1には十分な威力。

 倒れる仲間に速度が落ちた後続に接近し、蹴り飛ばす。

 

「ぐあ!?」

「こ、この………!」

 

 捉えようとするが、捉えられない。速すぎる。

 

不正新人(インチキルーキー)じゃなかったのかよ!? ぶへぇ!」

「………あ」

 

 アイズ達を相手する感覚で、避けられる前提で放った蹴りが男の鼻を潰しやっちゃった、と言うような顔をするベル。

 修行に付き合ってくれたのはアイズとティオナだったのだが、Lv.6を基準に動いてしまった。

 

「くそ、逃がすな! 囲め!!」

 

 数では圧倒しているのだ。このまま数による力押しで………!

 ベルは周りに集まった冒険者を見ながら、タワーシールドを持って突っ込んでくる前衛を見て駆け出す。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 盾で弾かれるが、勢いが落ちた。盾を駆け上り、男の肩を踏み跳躍。兎の如く跳ねて逃れる。代わりに降りてくる、極東の少女。

 

「【神武闘征】!!」

 

 既に詠唱を終えていたのか、膨大な魔力が解放される。ベルに視線を向けていた冒険者達が慌てて武器を投擲するが、遅い。

 

「【フツノミタマ】!!」

 

 命の直上に一振りの光剣が出現し地面に突き刺さる。瞬間、投擲された武器が地面に叩きつけられ冒険者達が地に伏せる。

 

「て、てめぇ………正気か!?」

 

 冒険者の一人が()()()()()()()を見て叫ぶ。自分もろとも行う重力の拘束。術者を倒そうにも近付けず、矢を放とうとも叩き伏せられるだけ。

 故に命は自分もろとも重力の結界に閉じ込めた。同格を含め、纏めて拘束するために。

 

「暫く自分と付き合っていただきます!」

 

 命が体を張り冒険者達を拘束しているのを確認したベルは、走り出す。

 玉座の場所は不明。だが、当たりは付いている。

 砦の3階から伸びる空中(わたり)廊下からでないと入れぬ塔だろう。あそこなら、玉座を守りやすい。

 そこにヒュアキントスも………

 

「………!?」

 

 と、不意に差した人影にベルが反応する。剣と剣がぶつかり合い、火花を散らしベルが力負けして吹き飛ばされる。

 

「…………ヒュアキントスさん」

「やってくれたな、【リトル・ルーキー】…………」

「………………」

「何だその顔は、よもや私が出てくるとは思わなかったか?」

 

 と、不敵に笑うヒュアキントス。

 ヒュアキントスは、恐らく『王』だ。アポロンに勝利を捧げるゲームにおいて、自分を端役にするはずがないとリリが言っていた。

 

「『王』の座はくれてやった。私は騎士でいい………あの方に勝利を届ける騎士でな!」

「僕だって、負けられない!!」

 

 波打つ大剣………フランベルジュを持ったヒュアキントスとベルがぶつかり合う。今度は、打ち合う。

 

「!?」

 

 手数は二刀のベルが上とは言え、この速度についてくる。この重さに耐える。

 

「………誰だ?」

 

 ヒュアキントスは数日前、2度に渡りベルと戦っている。一度目は酒場で………これは不意打ちだった。

 二度目はアポロンの命で襲撃した際。こちらは正面から、しかし一方的だった。

 

「誰だ!?」

 

 典型的なランク上がりたて。オラリオで半数がLv.1、上級冒険者の半数がLv.2であることを加味しても、上澄みには届かない十把一絡げの冒険者だったはず。

 それが、Lv.3の自分と渡り合う!?

 

「誰だ、お前は!!」

 

 赤い瞳と目が合う。瞬間、閃く赤い稲妻。切って捨てるも弾け視界を覆われた瞬間に接近され叩き込まれる連撃(ラッシュ)

 

「づ、あああ!!」

 

 力任せにフランベルジュを振るい距離を取らせる。いくつか、貰った。

 

「…………僕は……【ヘスティア・ファミリア】()()………ベル・クラネル!!」

「……………そうか」

 

 ヒュアキントスは改めて名前を取る。

 

「行くぞ、()()()()()()()!!」

「っ! じょ、上等です!」

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

「一度見下した者を認め、互いに認め合うか………眩しいものだな?」

「ギャウ?」

「いや別に視力は戻ってねえ、言葉の綾だ」

 

 柊の呟きに色が綺麗だった木の実を持ってこようとするクルルを止める柊。

 

「クルル………」

「見えなくても音とか空気の流れで変な踊りしてんのは解るからな? はあ、お前も暇なのか」

 

 と、新しい酒瓶を取り出し神酒(ソーマ)を飲む柊。デメテルから貰ったキッシュを2つに分け片方をクルルに食わせてやる。

 

「ギャン」

「美味いか。そりゃ何よりだ」

「キュ〜ン」

 

 スリスリと額を擦り付けてくるクルルの頭を撫でてやる柊。

 周りには気絶した【アポロン・ファミリア】の冒険者達が転がっていた。

 

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

 

 《牛若丸二式》。

 ベルが倒したミノタウロスのドロップアイテム『ミノタウロスの角』から作られた剣の二代目。

 ベルのランクアップの要因となった宿敵から作られた剣がヒュアキントスの得物を両断する。

 

「!? ちぃ!」

 

 両断された剣先を蹴りつけベルに向かって飛ばす。

 回避したベルに折れたフランベルジュを振るう。折れていようと剣は剣。

 

 体勢を整えられず吹き飛ばされるベル。ヒュアキントスは、詠唱を唱える。

 

「【我が名は愛、光の寵児】!!」

「──!!」

 

 ヒュアキントスの詠唱に、ベルはリィンと(ベル)の音を響かせ白い光を纏う。

 

「【我が太陽にこの身を捧ぐ】!」

 

 駆け出すベル。素直に打ち合ってやるつもりは、ない!

 

「【我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ】!!」

 

 と、無数の魔法や矢がベルに向かって跳んでくる。喉を押さえベルを睨むダフネが連れてきた魔導士に弓使い!

 

「やっで、くれるじゃ…………げほっ!」

 

 まだ煙の効果が消えないのか大声を出せないダフネは。それでも身振りで部下に命じる。

 

「【放つ火輪の一投!来たれ、西方の風】 !!」

 

 ベルは、ダフネ達に背を向けヒュアキントスに向き直る。

 

「【燃え尽きろ、外法の業】【ウィル・オ・ウィスプ】!!」

 

 と、ベルの背を狙っていた魔導士達が爆発する。現れたのは、ヴェルフ。

 

「行け! ベル!」

 

 ヴェルフの言葉に、ベルの意識から【アポロン・ファミリア】の冒険者達が消える。今映るのは、ヒュアキントスただ一人!

 

「【アロ・ゼフュロス】!!」

「【ファイアボルト】!!」

 

 2つの炎がぶつかり合い、相殺。激しく燃える炎となってあたりを朱色に染め上げる。

 その業火を突き破り現れたヒュアキントス。

 

「!?」

 

 その蛮行に、誰もが反応が遅れた。

 

「がああああ!!」

 

 折れたフランベルジュがベルへと振り落とされた。

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

「………女に助けられたな」

 

 頬杖を突き、情けないというように呟く柊。まあ、周りに恵まれるのも英雄の素質なのだろう。

 

「喜べよ【太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)】、お前の勝ちだ………だが、残念。お前の負けだ」

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

 バキンと何かが砕けるような音にハッと我に返るベル。傷は、無い。当たったと思ったのに。

 だが、今は………

 

「ああああああ!!」

「!?」

 

 勝利を確信していたヒュアキントスは、ベルの反撃に反応できない。

 頬に一撃、視界が歪む。立て直そうとする前に、再び拳。

 兎の連撃(ヴォーパル・ラッシュ)。ダンジョンの奥に潜む殺人兎を幻視するベルの剣幕。無数の拳が叩き込まれ、とどめの一撃が顎を穿つ。

 

 吹き飛ばされ床を滑るヒュアキントス。意識はある、体は………動かない。

 ベルは肩で息をしながら塔へと進んでいく。

 

「…………1つ答えろ、ベル・クラネル」

「………………」

「お前は、お前の女神が誰かを欲しがった時………どうする?」

「神様は、そんな人じゃありません………でも、もしそうなったら………それが、間違いだと思ったら……止めます。きっと、傷つくのはその人だけじゃないから」

「…………………そうか。だから、私が負けるのか」

 

 ふっ、と自嘲するように鼻で笑うヒュアキントス。

 力に任せれば力に訴えられる。そんな当たり前のことすら忘れ、主神にただ従い続けた………その結果、逆に牙を突き立てられた。

 これは、それだけの話だ。

 

 

 

 玉座の間につくと、怯えた様子のカサンドラ。

 

「わ、私だって戦えるんです! ぼ、ボロボロの皆さんなら………!」

「っ!」

 

 と、玉座の最後の守護者である『王』を押し付けられたカサンドラが叫ぶ。震えている女の子というだけでもやり難いのに、確かに今のベル達は疲労が蓄積している。

 

「!?」

 

 と、何かが窓ガラスを突き破りカサンドラの髪の毛を数本切り落とし、壁に突き刺さる。

 一本の剣だ。

 

「すいませんごめんなさい降参します」

 

 顔を青くしたカサンドラは速攻で折れた。

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