帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか?   作:匿名希望

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最大賭博場

アポロン像の伝えたいメッセージ

 

廊下のアポロン像

『いってらっしゃい』『おかえり』『今日もお疲れ様』

 

各部屋のアポロン像

『私は何時でも君の隣に』『一人の夜でも寂しくないよ』『今夜は相手してやれなくてすまないね』

 

風呂場のアポロン像

『君達の裸は垂涎ものさ、デュフフフ』『ウホ、いいケツ』

 

 

トイレのアポロン像

『君たちのどんな姿も愛そう!』

 

 

隠れアポロン

『君達を何時でも見守っているよ』

 

 

なお、一部の団員には顔を隠されていたらしい

 

 


 

 

「柊さ〜ん! リューがヘスティア様をダンジョンで護衛してくれた恩返ししたくないですか〜?」

 

 と、シルの口車に乗ればあっという間に借り着屋に連れて行かれ、服を見繕われ着替えたあと馬車に押し込まれた。

 そこには驚いた顔のリューが居て、数分してメイド服に着替えメガネを掛けたシルが入ってきた。

 

「おっほん、今から2人はマクシミリアン夫妻。柊さんがアリュード・マクシミリアンで伯爵で、リューがシレーネ・マクシミリアン伯爵夫人です!」

 

 聞けば、リューが助けたい娘がカジノに居るらしい。柊からすれば両親に魔剣でも渡して突っ込ませればいいだろ、程度にしか思わないが。

 

「因みに私はメイドのシエル。シレーネの幼馴染みにして、アリュード様に見染られたシレーネと共にマクシミリアン家入りしてメイドになったメイド見習い! シレーネの事を奥様ではなく呼び捨てにしちゃったりする、まだまだ至らぬ点もある可愛いメイド!」

 

 居るのかその設定。

 

「まあ、要するにリューの救出作戦を手伝えってことか」

「…………………」

「リュー?」

「え? あ、はい! そ、そのとおりです。もうしわけありません柊さん、シルの我儘につきあわせて」

「もう、駄目だよリュー! いいえ、奥様! ちゃんとあなた、って呼ばなきゃ」

「!!?」

 

 シルはリューで遊ぶのを楽しんでいるようだ。

 

「し、しかしこのままでは柊さんの正体がバレるのでは?」

「う〜ん、 有名人だもんねえ」

 

 と、柊が片手を顔に向けると髪の色と目の色が変わる。

 

「おお〜………よーし、あとは任せてください! 髪型は私が整えます!」

 

 と、大賭博場(カジノ)につくまでにシルが柊の髪を整えた。

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

 そして今に至る。

 リューはどうしてこうなった!? と言わんばかりに赤くなり地面を見つめる。

 

「ほらリュー、腕を組むとかして夫婦っぽく見せないと!」

「!!」

 

 シルがコソコソ話しかけるがリューは固まるばかり。柊ははぁ、とため息を吐く。

 シルから視線を感じる。頑張れ、と言うタイプの視線だ。頑張るべきはリューだろうに。

 

「シレーネ、こう人が多いと音も空気も乱れて周りが認識しにくい。手を貸してくれるか?」

「!? そ、それは気付きませんでした」

 

 まあ、嘘だが。

 それでもこう言えば手を取れるだろう。リューと腕を組み、辺りを確認する。

 

「…………………」

 

 【ガネーシャ・ファミリア】に、富豪の連れてきた都市外の恩恵持ちの用心棒。ギルド職員……流石に侵入するには骨が折れそうだ………。

 

「…………知り合いか?」

「ええ………」

 

 一人の女性を見て一瞬固まるリュー。

 その女は【ガネーシャ・ファミリア】団長のシャクティ・ヴァルマ。第一級冒険者だ。

 

「ガネーシャの…………」

 

 大変そうだな、と思いつつ柊は受け付けに招聘状(しょうへいじょう)を見せる。

 

「ようこそおいでくださいましたマクシミリアン様。素敵な夜をお過ごしください」

 

 そしてそのまま向かうのは『エルドラド・リゾート』。娯楽都市のサントリオ・ベガが投資、建設したオラリオ随一の賭博施設。

 破落戸冒険者を雇い、アンナ・クレーズを攫った男が経営する施設。

 

「わあ凄い。奥様は、こういうの慣れてるんでしたっけ?」

「賭博場に紛れ込むことは何度か…………ここまでの規模は初めてですが」

 

 柊は聖女に仲間達ともどもカジノに連れ回された記憶を思い出す。

 カツカツと爪で杖のグリップを叩き周りの音を確認。

 ルーレットの数字は凹凸がある。

 

「まずは金を稼ぐぞ。経営者(オーナー)に会うならまずは目をつけられろ」

 

 そう言うと柊はルーレットに趣き、一点数字(ストレート)賭け。配当36倍。的中。

 

全額賭け(オールイン)

 

 【赤の18】一点数字賭け(ストレート)

 

 的中。

 

全額賭け(オールイン)

 

 【黒の26】一点数字賭け(ストレート)

 

 的中。

 

全額賭け(オールイン)

 

 【赤の34】一点数字賭け(ストレート)

 

 的中

 

全額賭け(オールイン)

 

 【赤の1】一点数字賭け(ストレート)

 

 的中。

 

全額賭け(オールイン)

 

 【黒の2】一点数字賭け(ストレート)

 

 的中。

 

「次行くぞ」

「え? あ、は………はい」

 

 ポカンとしていたリューは柊が移動したので慌ててついていく。

 

「………何をしたのですか?」

「音で見抜いた」

「でも、回すのは賭けてからでしたよ?」

 

 回してから音ならまだ解るが、と言いたげなシル。

 

「呼吸、心音さえ読みとりゃ次にどの程度力を入れるか解る。後は今の位置とルーレットの大きさ、仕切りの高さを認識すりゃ簡単だ」

 

 聖女曰く、仕掛けのあるイカサマをするのは二流。真の一流はその身一つでズルをする、とのことだ。聖女だったよな、彼奴?

 

「僕やっぱり帰りますううう!?」

「ん?」

 

 と、不意に聞き覚えがある声。リューやシルも振り返ると、慌てて走ってくるのはベルだった。着慣れていない正装に身を包み男達から距離を取っている。

 

「まだ新居への引っ越しも終わってないんです! というか、こんなところに居るのを神様やリリにバレたら………」

「おいおい、連れねえ事言うなよ【リトル・ルーキー】!」

「あれは……!」

 

 と、ベルに声をかける男達を見て僅かな敵意を感じさせるリュー。

 

「知り合いか?」

「18階層で、クラネルさんを嵌めたならず者です」

「ああ、彼奴等がヘスティアを攫った…………」

 

 スッと目を細める柊。別に目で見えているわけではないが、視力があった頃のクセは消えない。

 

「あん? なんですかい貴族様、そんなにガンつけてなにか文句で…………げぇ!? 【掟破り(ルールブレ)──!?」

 

 スカカン、とリューのヒールの爪先がならず者達の脛を叩いた。

 

「い、いってえええ!?」

「モ、モルドさん!? だ、大丈夫ですか!? って、あれ………ひい──」

「しー………」

 

 と、シルがベルの口に指を当てる。

 

「駄目ですよベルさん。今の私達は、見ての通り変装してるんです。静かに、です」

 

 顔を赤くしてコクコク頷くベル。普段の服装もメイド服に似ているが、実際のメイド服に身を包んだシルに少し見とれている。

 そう言えば祖父からミニスカメイドの素晴らしさを一晩中語られそうになっていたことがあった。

 

 柊が五月蝿いと壁にめり込ませ黙らせたが。

 

「リューさんまで………どうして………」

「それはこちらの台詞です。クラネルさん、あまりこのようなところには」

「まあまあ、良いじゃないリュー」

 

 聞けばベルはモルド達に誘われこの最大賭博場(グラン・カジノ)に来たらしい。

 痛みから復活したモルド曰く、金持ちしか入れない筈のここに、モルド達はコツコツ賭博場(カジノ)に金を落としゴールドカードを手に入れたらしい。

 

「だからLv.2で燻っているのですか」

「そんな体たらくで良くベルに嫉妬できたな」

 

 リューと柊の呆れた視線にうるせえ、と返すモルド。とは言え、常連ならちょうどいいとリューは貴賓室(ビップルーム)について何か知らないか尋ねる。

 

「何だ、あそこに入りてぇのか? それは無理だぜ」

 

 貴賓室の前に立つ見張りは【ガネーシャ・ファミリア】ではない。貴賓室の中もだ。

 そこから先は、オラリオの者は一切関われない真の治外法権。

 

 酔っ払いの噂を信じるなら高額の賭博(ゲーム)が行われ…………好色のオーナーが囲っている愛人達を見せびらかす場でもあるらしい。

 

 アンナ・クレーズもそこにいると考えて良いだろう。

 

「後一つ忠告だ。あそこに行く新参者は『洗礼』を受ける……ようは食い物にされるってことだ。首を突っ込まないほうが良いぜ」

 

 

 

「だとよ」

 

 と、モルド達から離れた柊がつまらなそうに言う。遠くでルーレットで賭け事をしているベルがよほど大当たりを出したのかモルド達に胴上げされ肩車され駆け回っている。

 

「面倒だ。一度帰って、後で侵入すればいい」

「う〜ん。でも、せっかく正攻法で来たんですし、正攻法で連れて帰らないとアンナさんが誘拐された愛人〜なんて理由で連れて行かれちゃうかも」

 

 それに、そんなのつまらない、と言いたそうだと柊は目を細める。

 

「クレーズさんたちだけじゃなくて、アンナさんが働いてるお花屋さんにも迷惑がかかるかも」

「…………花屋?」

「はい、アンナさんは花屋で働いているようですが………」

「……………………」

 

『英雄の皆様、お花をどうぞ』

 

 その死が柊が街を出て人里離れて暮らす要因になった少女を思い出す。

 怪物を倒し、街に戻り休養を挟む自分達に駆け寄ってきては花を持ってきた襤褸を纏う少女。

 ()()()()()、身寄りがないことを良いことに、見目麗しい少女が嫌われ者に関わったばかりに最期は………。

 

 彼女はただ花を持ってくるだけで、花屋ではなかったが………。聖女だったか魔女だったかが、何時か花屋を開かせてやりたいと言っていた。

 

「あ………」

 

 と、シルが慌てて口を抑える。何か言ってはいけないことを言ってしまったかのように。

 リューは柊の変化に戸惑いシルの変化には気付なかった。

 

「…………まずはゲームだ。敢えて負けても気にしない風を装う。そうすりゃ富者に見える」

「柊さん?」

「その花屋の親に伝えておけ、娘を助けた礼は必ず払わせるってな」

「…………はい。解りました」

 

 と、柊は大賭博場(カジノ)に有利な進行役(ディーラー)との戦闘を避け、客同士の対決の賭博(ゲーム)に挑む。

 

 カードゲームの際は目が殆ど見えないという設定でリューにカードを読ませる。実際は何も見えていないのだが、何枚か読ませればカードの細かい傷を見つけ絵柄を覚える。

 

 シルはこっそりその場から離れ、店の常連の神々を見つけては、噂話を流させる。

 

 『財政難だったフェルナスの領地内で白聖石(セイロス)の山を掘り当て財産を手にして遊びに来た伯爵』という設定。

 

 神々も面白がって『実は政略結婚で連れているメイドが本命』だの『領地には嫁が百人いる』だの『アマゾネスの集団から領民を二重の意味で守っている』など余計な情報を付け足しやがる。

 

「わたくし、あの国にあんな一角のお方が居るなんて知りませんでした」

「ええ、お若いのに堂々として」

「隣りにいる御婦人も可憐で美しい…………エルフを娶るなど、さぞ高潔な精神をお持ちなのでしょうな」

「ふふ。リュー、可憐だって」

「からかわないでください………」

 

 と、困ったような顔をするリュー。柊はまたまた大勝ち。

 

「………来たぞ」

「お客様」

 

 と、大賭博場(カジノ)の職員が話しかけてくる。

 

経営者(オーナー)のセルバンティスが、ぜひお会いしたいと」

 

 かかった、とリューが目を細めた。

 

「私のような若輩者に経営者(オーナー)自らそう言っていただけるとは光栄です。どちらに向かえば?」

「どうぞこちらに」

 

 年老いた職員に案内され向かった先には上客であろう者達と話す恰幅のいいドワーフの男。

 職員に呼ばれ、おお、と振り返る。

 

「貴方がマクシミリアン殿ですか。私はテリー・セルバンティス。この大賭博場(カジノ)経営者(オーナー)を務めている者です。今夜は遠路はるばるお越しくださってありがとうございます」

「こちらこそ、このような場所にお招きいただき感謝します。私はアリュード・マクシミリアン。こちらは妻のシレーネです」

 

 と、リューを妻として紹介する柊。シルに小突かれ慌てて挨拶するリュー。

 

「お、夫共々楽しませていただいております経営者(オーナー)

 

 場馴れしていない態度にニコリと微笑むテリー。その目は、リューの肢体を舐めるように見つめる。

 

「早くから挨拶したかったのですが、今宵も何分招待客(ゲスト)の方々が多かったもので。改めてようこそいらっしゃいました」

 

 そう手を差し伸べてくるテリーに柊は明らかに一瞬だけ不快な表情を浮かべた。

 

「生憎、妻がエルフなので。彼女以外に肌を許すことを戒めている」

「………っ」

 

 シルがおー、と感心する。リューは恥ずかしそうに顔を伏せ、余計に初々しい夫婦のようだ。

 

「愛されていますなぁ、奥様」

「あ、は、はい…………」

 

 リューは赤くなりながらなんとか言葉を返す。

 

「ところで、お聞きしたところマクシミリアン殿は本日相当()()()()()ご様子。そこで提案なのですが、あちらの貴賓室(ビップルーム)に来られませんか?」

貴賓室(ビップルーム)ですか……」

「ああ、どうかそう構えず。要はより高額の賭博(ゲーム)。そして、最高級の奉仕(サービス)もあの部屋でしか出来ない賭博(ゲーム)を楽しもうというわけです」

 

 それに金満家達も集まる。同じ境遇の者でしかわからない話もあるだろうから、お気に召す筈、とのことだ。

 

「ああ、では楽しませてもらおう」

「あ、旦那様。私、先程知り合いの方をお見かけしたので少し話してきていいですか?」

「…………ああ、行って来いシエル」

「ありがとうございます!」

 

 と、シルはベルのもとに走っていく。

 

「……………」

 

 シルを見ながらまた舐め回すような視線を向けるテリーにリューが明らかに怒りを向ける。

 

「しかし、マクシミリアン殿は奥様と随分仲が良いですな。羨ましい限りですな」

「ああ、これは………視力が弱いので支えてもらっているのですよ」

「視力が?」

「昔、妻をモンスターから庇い毒を浴びて……爛れた皮膚は魔法で治ったのですが、視力ばかりは」

「成る程……それは、不躾な質問をしてしまい」

 

 と、シルが戻ってきた。3人は案内されるまま貴賓室(ビップルーム)に入る。

 落ち着いた雰囲気の社交室(サロン)のようだ。

 そのまま1つのテーブルに案内される。

 

「おおオーナー。今夜も楽しませてもらっていますぞ」

「そちらの方は?」

「紹介します。今宵初めて我々共の店にお越しいただいたアリュード・マクシミリアン殿。その夫人シレーネ殿と、メイドのシエル」

「お初にお目にかかります皆様」

 

 職員(スタッフ)に促されるまま席に座る。

 美しいエルフの女が、グラスを置いた。

 

「…………どうも」

 

 目が見えずとも、纏う気配から解る。

 感情のない仮面のような笑みを浮かべていることだろう。

 

 救いを諦めているだけ、助けを待つ姫気取りよりはマシか。

 

「オーナー、先程から見かける麗しい女性は?」

「彼女達は………聞こえは悪いですが、まあ私の愛人です。自分で言うのもなんですが、多情な男であるわたくしめの求愛に応えてくれました。しかしそんな美姫達を独り占めしては美の女神から小言が飛んでくることでしょう」

 

 柊はシルに意識を向ける。ニコニコ微笑んでいる。

 

「そこで僭越ながら皆様の目を潤す一役になってもらえばと、こうして酌に協力してもらっているわけです」

「なるほど、そういうことですか」

「いやあ! 本当に羨ましい、わたしもぜひ1日だけでも相手してもらいたいものです」

 

 発情したオスの臭い。臭いな、こいつ等。

 それも雌の味を知って興奮してる類の臭い。成る程、つまりは共犯(グル)

 

「……………」

 

 リューが美姫達に視線を向ける。テリーが財力に物を言わせあらゆる手段で集めた収集品(コレクション)に同情しているのだろう。

 この光景は、ヘスティアも口をへの字にするに違いない。

 

「そういえば、ここに来る途中オーナーは傾国の美女を手に入れたと耳にしました」

「おお! 私も聞きましたぞ! 何でも遠い異邦から娶ったとか!」

「どうか我々にも見せていただきたい!」

 

 その言葉に明らかに気を良くするテリー。見せつけたくて仕方がないようだ。

 

「皆さんも耳が早い! ええ、仰るとおり新しい愛人として迎えたのです。折角ですので紹介しましょう!」

 

 テリーが手を叩くと職員が奥の扉を開く。現れたのは、ドレスに身を包んだ美女。

 

「初め……まして………アンナと申します」

 

 リューやシルの納得したような雰囲気に、感嘆の吐息を漏らす周りの客達の反応から、音で見るまでなく美しいのだろうと理解する。

 

「これはまた器量の良い………」

「ええ、麗しい……」

「女神が地に賜った美とはまさにこのこと」

「良く見つけてきましたねオーナー」

 

 発情の臭いが濃くなり、柊は酒を飲み臭いを誤魔化す。

 

「実は異国の地で偶然巡り合いましてな! きっと神のお導きだったのでしょう。この愛らしさの美しさに私めもすぐに虜になってしまいました」

 

 アンナは男達の視線に怯えるように視線を彷徨わせ、柊を見つける。好機の視線にさらされるなか、他の者達とは異なる目に不思議そうな顔をするアンナ。

 

「………マクシミリアン殿、 彼女の顔になにかついていますかな?」

「いえ、ただ………彼女と似ている娘を知っていまして」

 

 ああ、本当に面倒だ。

 あの少女とは似ても似つかぬというのに、少ない共通点でここまで関わるのは、ベルのお人好しが移ったか。

 まあ、とは言えこれは()()()()()。求められた手は取らないが、勝手に伸ばして掴むのは、自由だろう。

 

「とある知人の話なのだが、彼は悪漢達の誘いに乗って賭博に手を出し、財産を奪われた挙げ句自慢の一人娘も攫われてしまったそうで………」

 

 アンナとテリーが明らかに身を震わせた。

 

「賭博に応じた娘の父が間違いなく愚かだが、どうにもとある者の差し金だったらしく。とある者は麗しい彼女を手に入れるためならず者達をけしかけ、全てが終わった後は悠々と彼女を囲っているらしい」

 

 流石にここまで言われれば、周りの者たちも柊が誰について話しているのか察したのか困惑する空気が流れる。

 

「私も妻を娶るまで好色だったので、気持ちが解らないとは言いませんが………いえ、やはり解りませんね。女を抱きたいなら娼婦で十分。女を側に囲うのに、金を積み人を雇わねばならないなどまるで理解できない」

 

 シルがうわぁ、と笑う。

 牽制や宣戦布告すら通り越して、挑発。

 

「この世に女を囲うために大金を積む輩が本当に居たら、その女達も男も、可哀想だと思わないか?」

 

 でも面白いから満足です。

 

 

 


 

 

柊の好きな職業(その職業になりたいわけではない)

 

酒屋、飯屋、花屋

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