帰還に失敗した堕ちた英雄がオラリオに行くのは間違っているだろうか?   作:匿名希望

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神の宴

 神の宴。

 文字通り神が集まり催す宴。ただただ楽しむ者、金に困りこれ幸いと飯を食いに来た者、暗躍ごっこをして特に何もする気がない者、事実暗躍に来た者、情報交換をしに来た者など様々だ。

 後ついでにフィリア祭が3日後に迫り各【ファミリア】に協力を要請するためにガネーシャが主催した。

 

「さっ、ささ! さ!」

 

 そんな中、ヘスティアといえばこれ幸いと飯をタッパーに詰めていた。彼女にも勿論目的があり、それは決して食事を得ようとしたわけではないが、貧乏生活を続けていた結果うまいもんを食える時に食おうという、後日持ちしそうなのは持ち帰ろうという思考に陥っていた。

 

「何してるのよ貴方……」

 

 と、そんなヘスティアに呆れた視線を向けるのは眼帯をした赤い神の女神。

 

「ヘファイストス!」

「久し振りねヘスティア。新しくドレスを買う余裕があるくせに、随分みみっちいことしてるじゃない?」

「ふふーん! これは柊君が僕に作ってくれたドレスさ! お金はかかってないんだ!」

「そう…………器用な子ね。新しい眷属?」

「あ、いや…………まあ……」

「? 何よ、歯切れの悪い…………」

 

 言葉に詰まるヘスティアに、ヘファイストスが訝しむように視線を向ける。ヘスティアはまずい、と震えた。

 ヘファイストスは信用できる。だが、今この場には他の神々もいるのだ、柊の秘密を知られるわけにはいかない。

 

「あ〜、その………柊君は恩恵を刻んだって報告をしてダンジョンに潜りたいだけで、厳密には僕のファミリアではないというか……」

「呆れた。貴方ね、そんな奴面倒見る余裕あるの?」

「ひ、柊君は良い子だぞ! ちょっとお酒とご飯と女の子にお金を使うけど、余った分は僕やベル君にくれるんだ!!」

「お酒やご飯はともかく………女の子? 良く処女神(貴方)が見逃してるわね………」

「いや…………だって、僕じゃあの子を一時的にでも守ってあげられないし………」

 

 怒ったと思ったら今度は落ち込むヘスティア。どうにもかなり複雑な相手らしい。

 

「何があったか、全部は知らないよ。でも、辛い事があったのは解る………ただ死ねないから死なないだけのあの子が、それで少しは苦しくないなら………嫌だけど、と〜〜〜〜っても嫌だけど我慢するさ!」

「ヘスティア………」

 

 相当に複雑な関係らしい。

 多分、自分が何を言おうとその人間を見放さないのだろう。昔からこうなったヘスティアは強情なのだ。

 

「ふうん? なら、私が慰めに行ってあげようかしら?」

「ん? げぇ、フレイヤ!? い、何時からそこに!?」

「最初から居たわ。ヘファイストスに夢中で気付かなかったのね。ふふ、少し妬けてしまうわ」

 

 クスクスと笑う仕草すら美しいその女神は、『美の女神』。美という概念を司る()()()()()美貌もつ女神フレイヤだ。

 

「僕、君苦手なんだよなあ………」

「私は貴方のそういうところ、好きよ? それで、どうする?」

「どうするって…………あっ! だ、駄目だ駄目だ! 君なんかに柊君を任せたら骨の髄まで食べられちゃう!」

「あら、そんなに可愛い子なの?」

「ふっふ〜ん! そうさ、ベル君に負けず劣らず良い子で可愛い子だ! 君の毒牙に触れさせないぞ!」

 

 シャー! と子猫を守る親猫のように威嚇するヘスティア。フレイヤはそんな様子をクスクスと微笑む。

 

「残念。じゃあ、もう一人のベルって子は?」

「どっちも駄目に決まってるだろ〜!」

 

 

 

 

◆◇○◇◆◇○◇◆◇○◇◆

 

 

「ヒクシ!」

「風邪ですか?」

 

 と、窓辺で煙を吸っていた柊がくしゃみをして、エルフの娼婦が寝台から身を起こし心配そうに見つめてくる。

 

「ここ数年風邪なんて引いたことねえけど」

「恩恵を得た者は強靭になりますからね。ですが、油断は命取りになります」

「そうか、気を付けよう」

「…………風邪は、移せば治ると聞きます」

「迷信だろ?」

 

 白い腕を絡め淫靡に頬を染めるエルフに柊は嗤う。腰に手を回し、逃げられぬように捕まえる。

 

「半月前は初いものだったくせに、今じゃ随分好き者だ」

「貴男にだけ、です………貴方が、私を変えた………」

「へぇ? なら、責任を持って抱いてやるよ」

 

 

 

 

 

 両親が死に、少年が何故生き残ったのか?

 少年が弱く、両親が彼を守ったからだ。

 

 仲間達が死に、青年が何故生き残ったのか?

 青年が誰よりも強く、不死の怪物共を殺せるのが彼しかいないからだ。

 

 弱いから守られ、強いから庇われ………託され、怪物達を討ち滅ぼした。

 仲間の屍を踏み台に、怪物を屍に変えた。

 ようやく全部殺し終えたと思えば、古の時代に龍との争いに破れ、弱体化したところを封じられた魔族の王が復活したと預言者がいい、世界中の森が牙を向いた。

 

 その世界における魔族とは草木の怪物。魔物とは魔族の残滓を宿した魔樹に様々な形で接触し変質した獣の通称。

 

 草花、樹木、海藻………この世に存在する植物の原点。肉持つ者の支配者として生み出された姉と異なり、肉持つ者達に食われ、代価に死後その死体を喰らう最底辺にして最高位の王。

 

 それこそが魔族の王。知恵をつけ欲望のままに姉を貶め、知恵をつけ思い上がり世界の在り方を決めつけ母達から神格を奪った人間共を殺し尽くすと決めた人間により定められた星の運行を司る天空の神とも異なる、あの世界唯一残された真なる神性。

 

 それが最後の敵。

 嘗ての怪物共に劣るもののそれでもなお凶悪な『質』を、嘗ての怪物の眷属共とは『数』で圧倒する物量で人類を滅ぼそうとした魔王。

 

 

 

「どうしてこの世界のために闘うのです? 無理やり呼び寄せ、子を庇い死した者に役立たずなどと罵る者達ばかりなのに…………」

 

 でも、そうじゃない奴等もいた。彼等が自分と戦ってくれた。彼等にも守りたいものがあると、力を貸してくれと、力にならせてくれと、共に並んでくれた。

 

「でも同時に思ったはずでしょう? 自分はこの世界に守りたいものなんてないのに、なんで………と」

 

 否定はしない。出来るはずもない。自分の事を知る人間など、彼女以外に居ないのだから。

 

「泣いて、怒って………素直になれば良いんです。貴方ってば人前で泣きませんからね? 私の前でなら、泣いていいですよ。私が慰めてあげます。だから、世界なんて救わず私と永遠に過ごしましょう」

 

 泣いて、怒って………ああ、それが出来たら楽だったのだろう。

 戦士が大蛇に飲まれた時に、恩師が巨人に踏み潰された時に、魔法使いが波に捕まり崖際に打ち付けられた時に、仲間ではないが認め合った男が爪に引き裂かれた時に、聖女が龍の炎に焼かれた時に、泣いて蹲り、怒りに任せて周りに当たればきっと楽だったのだろう。

 

「泣くことを忘れた泣き虫な貴方、どうか剣を捨ててください。お願いだから、泣いてください………貴方は、英雄なんかになるべきじゃなかった………」

 

 英雄……ああ、英雄になりたかった。

 もう誰も失わない英雄に、誰もを守れる英雄になりたかった。結局、進んだ先で仲間を失った……それでも

 

「それでも、泣かない。それでも、笑うよ……だってそうしなきゃ、ここまで歩んできた全てが無駄になる」

「…………私との今より、仲間達との過去を選ぶのですか?」

 

 そう、なるのだろうな。この応えは………

 

「………裏切り者め」

 

 悲しそうな笑顔で、嬉しそうな泣き顔で、彼女は非難してくる。これが、恋人として最後の会話になるのだろう。後は、ただ敵同士として……………

 

 

 

 

「っう! あ、はぁ…………!! ひゅ──!!」

 

 飛び起きる。寝台から転げ落ち、サイドテーブルを倒し花瓶が割れ水が飛散る。

 

「かひゅ、ひゅー、は………つぁ!!」

 

 それを無視してサイドテーブルに乗せていた煙管を手に取る。魔力を通すと火種無く火が燃え、葉がないのに煙が上がる。それを味わいもせず無理矢理肺の中に流し込む。

 

「げほ! おえ、ごほごほ! はぁ! ふぅ………! はっ、はぁ…………はああぁぁ……………」

 

 ようやく落ち着きを取り戻し、立ち上がった柊はベッドで今の騒ぎに気づかず眠るエルフの娼婦を見る。

 少なくとも、今夜はもう動けまい。他でもない柊が潰した。

 

「くそ………!」

 

 嫌な夢を見た。薬が切れると、いつも嫌な夢を見る。

 今回は過去の仲間のために、現在の最愛を殺した時の夢。結局、あの後………つまり夢で見た時間の自分にとって未来でその仲間達が守ろうとしたものを自分で壊したのだから、笑えもしない。

 

 月を眺め煙を吸い込む。

 

「…………はぁ」

 

 服を着直し、店の外に出る。

 男と女の欲望に渦巻く町並み。男を誘う娼婦の声。下品に笑う神々の笑い声。

 アマゾネスの女が男を捕らえる。

 獣人の少女が投げキスを投げかける。

 色に落ちたエルフが微笑みだけで男を誘う。

 

「わ、かっこいいお兄さん!」

 

 娼婦達が思い思いの相手を選び、男達がついていく中柊にも声をかける娼婦が現れる。他にも狙っていたのか、先を越されたと嘆く娼婦や男達。

 

「ね、ね、私を買わない?」

 

 幼く、無邪気に微笑む小人族の娼婦。小柄故に男女両性を併せ持つ幼い子供を思わせる体躯でありながら、くねらせる腰や動かす肩に媚態を混ぜる。

 男を捕らえる、女の魔性。

 

 少し離れた場所で「ふ、ロキよりあるな」とか「触っちゃいかんよ、押し倒す!」とか「やべぇ、俺ロリコンだった?」「もとからだろ」などと神々が騒ぎ立てる。

 

「おにーさん?」

「…………ああ、俺か。買うか、だったな? 今ちょっと気が立っている。加減は出来ねぇかもしれねえが、それでも買われるか?」

「え〜? 私壊されちゃうの〜? えへへ、お兄さんみたいにかっこいい人だったら良いよ! その代わりぃ、お金はサービスしてね?」

「ああ、金ならあるからな………」 

 

 


 

 

この後ニセガキ(20代)は目茶苦茶解らせられた

 

 

異世界の人類

神々が己の神性を分け与え知恵を授けた存在。新たな時代を生きる者達。

人々が彼等を信仰し続ける限り神々は神性や知性を失わず人々を見守り続けることだろう

 

 

 

天空の神

元々は朝と夜の地を時間で入れ替えるために神々が新たに生み出した精霊。人間の信仰により神格を得た。信仰に応え神殺しの聖剣を生み出した。

 

 

神殺しの聖剣

神を殺せるだけ。包丁で人を殺せるからって、子供が武装した軍人には勝てない道理と同じでなんの意味もなく人々が王を選ぶ剣だの手にしたものを王に導く剣だの後付して奪い合い血を吸わせ人々に宿る神性を死の恐怖や怒り、憎しみなどという形で取り込みすっかり歪んだ。

今は錆び付き柊が外界と遮断する布で覆い持っている。

 

 

魔族

ダンジョンで例えるなら植物型モンスター。ん? 植物型?

 

 

魔族の王

最底辺にして最高位の王。神性を持つが、あくまで王。

ヘスティアが見抜いたように命の繁栄を司ると同時に、実は『死』を司る一面も持つ神。肉持つ者達に食われ、その肉持つ者達も肉を喰らう肉持つ者に食われることから食物連鎖において最底辺。しかし肉持つ者達の死後その肉体を喰らう食物連鎖の最高位でもある。

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