三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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残念ながら主催者側の不手際で選外となりました またの機会にご応募下さい

モデルは昭和の木造校舎、ただし規模はマンモス校で入り口のゲートは最新鋭と何ともチグハグな印象のお化け屋敷『旧校舎』。此処だけで銀座の一等地を売却した資金全てを注ぎ込んでアニマトロニクスによるベタベタな恐怖体験が得られる目玉アトラクションだと責任者である美神の叔父が強く推す建物の屋上に奇怪な姿の人影があった。

 

 本来ならば赤く着色された水が噴水で噴き出しながら怪人赤マントに扮した役者が貯水タンクのセットから空気圧によるせり上がりで登場するのだが、今タンクの上に立っているのは全くの別物だ。

 

 左右に開閉する蓋部分に耳を当てれば微かに聞こえる呻き声。息苦しさを覚えつつも意識が朦朧として内部の非常用ボタンを押す余力すら無い様子で、タンクに立つ者、その異様な風体から人ではない事は確かだろう。

 

 その身に纏うのは茶色く薄汚れた布を腰回りに巻き付け、耳に小さな金の輪っかがあるばかり。

 

 艶も張りも無い肌の色は新緑樹の葉の様で、風など吹いていないにも関わらず枯れススキの様に雑に伸ばしただけの長髪は背後に向かってたなびいている。肋骨は浮き出て腹回りは下っ腹が腰の布に乗る程に膨らんでいる。

 不揃いの歯は所々抜け落ちている上に黄ばんでおり、濁った瞳は焦点が定まらずにいて正気を疑う有様だ。

 

 

「カッカッカッカッ! 居るのぅ居るのぅ。ぎょーさん居るのぅ」

 

 ギョロリギョロリと目玉を忙しなく動かし首を半回転させながら嗄れ声を楽しそうな声色で発し、時折唇を窄めて黄ばんだ色合いの息を吐き出せば視界の先、遥か遠くの外壁の工事中エリアの作業員の所にまで届く。

 腐敗した生ゴミから滴る汚水に似た悪臭が防塵マスクの上からさえほんの僅かだけ届き、気のせいだったと思う程度の一瞬で消え失せる。

 

 くしゅん! そんなくしゃみの音が工事現場で重なった。

 

 

「だぁいぶ無理な仕事をしとるからのぉ。休ませてやらねば休ませてやらねば。たぁっぷりと、思う存分に……クカカカカカカカカッ!!

 

 小さなくしゃみに続いて少しずつ咳も混じりだし、その感覚は徐々に短くなり音は大きくなって行く。

 

 風を浴びなかった作業員は蹲る者が出始めた事に慌てて現場責任者の元へと駆けて行き、防塵対策などに何らかな問題が生じていたのではないか、もしくは今の時期に珍しく職場間での風邪の流行が起きているのではないかと相談がなされる中、風を吹き出した者が口に出した通りに風邪らしき症状が出始めた者達を現場から遠ざけ、電話で上の役職へと報告がなされる中、それを引き起こした男は腹を抱えての大笑い。

 

 当然、この場所にも防犯カメラは設置されスタッフが異常が無いかを常に監視しているが、誰一人この不審者について騒ぐ者は居ない。

 

 気が付かないのではなく気が付けないだけ。そう、この場所に似つかわしい姿の男は妖魔だ。それも妖怪画に描かれる程の存在。

 

 その名は……。

 

「風の神さん、調子は如何ですか?」

 

 タンクの影から声が響き、周囲から何かが蠢く音と共に底位の妖魔が現れる。体を左右真っ二つにされて手を繋ぎながら片足で飛び跳ねて進む子供や蝙蝠の翼を持つ大腸、車に轢き潰されカラカラに乾いたカエルの様な姿で宙を漂う猿。

 

 声の後で現れたそれらに風の神が視線を向けるのに合わせ、貯水タンクの真下から影が伸びて影女が姿を現した。

 

「……クカッ。これはこれは影女殿。儂に何用かいの?」

 

「太歳星君様より此度の『屍死幽遊』の参加者の様子を見て来て欲しいと命じられまして」

 

 その名前を聞いた途端に愉悦混じりの笑みを浮かべていた風の神が露骨に嫌悪感を露わにし、影女も表情が無いが苦虫を噛み潰したような顔をしているのが分かる。

 

 互いに無言が続き、知恵が無いのか両者の周囲に無遠慮な動きで寄って来た底位の妖魔達は無造作に振り払った手や苛立ちを込めた足踏みで叩き潰され塵となって消えて行った。

 

「なんじゃ、もう決まったのか。儂だって参加したかったのに開催すら知らされとらんぞ?」

 

「忘れてました。リストの端の方の方ですし、疫病神なら既に決まってるのでキャラ被りもあって……」

 

「キャラ被り」

 

 わざとらしい拗ねた演技で大根役者っぷりを見せる風の神ではあったが、ニタニタと口元は笑いっぱなしでも細められた瞳は一切笑ってはいない

 

 刺す様な視線と共に送る殺気は、一体どうなっている? と言外に圧力を掛ける為のものだ。

 

 風の神は本来は雷神とセットにされる風神、中国の風伯を源流とする神の一種、それを妖怪として扱った場合の側面だ。

 

 風に乗って移動し、黄色い息を吹き掛けられた者は病に侵されるという、妖魔のランクとしては風神の爪の先程度、荒れ狂う風の体現者である大元に比べたら屁みたいな存在だが、それでも神と名付けらている。

 

 それが名前を聞くだけで嫌悪感が溢れ出す相手の部下にぞんざいに扱われれば激怒は必須。それを前にしても影女は平然としていたのだが。

 

「それでは此度は貴賓の方々がいらっしゃっている事ですし戯れも程々にお願い致します。全てはど腐れ性悪下衆野ろ……失敬、噛みました。偉大なる御方のご意志のままに」

 

「噛むにしてももうちっと他にあるじゃろうに」

 

「良いんですよ。どうせ嫌われている自覚はあるので、アレ」

 

 それ所か寝首を掻こうと狙っている復讐者もいる程です、と大した事ではないとでも言いたげな口振りで告げるなり影女は貯水タンクの下へと吸い込まれる様に消えて行く。

 

 それを無言で眺めていた風の神は徐に飛び降りるとタンクの下を覗き込んで本当に帰った事を確かめると痰が混じった唾を影の中へと吐き捨てる。

 

 屈辱と怒り、そして野心。醜い顔にそれらを浮かべて更に歪ませ、残っていた底位妖魔の一体を乱暴に掴むなり頭から齧り付く。

 暴れ逃れようとするも片手で容易く抑え込まれ、肉を骨ごと力任せに引き千切っては口の中へとほうりこんでいた。

 

「忌々しい忌々しい忌々しい! 元人間如きが純粋な妖魔である儂を、神の一側面であるこの儂に無礼が過ぎるのぅ。クカ、クカカカカッ! 見ておれ。悪六烈(おむれつ)とやらの枠など奪い取り、儂は風神となる。この国の人間共々嵐で吹き飛ばしてやるからのぅ!」

 

 先ずは可愛い可愛い子供から狙うとするかのぅ、と風の神は園内を見回す。特別に招待された客だけでの正式オープン前という事もあり既に園内にいる者の殆どがスタッフの中、少し苛立ちを募らせた様子の風の神の顔が醜い笑みで大きく歪む。

 

 

 

 

 その背後で誰にも聞こえない程度の小さな音で金属が擦れる様な音がした。

 

 

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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