三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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努力は主人公の特権ではない by何度も戦うボス

「あの子の事、あまり悪く思わないで下さいね?」

 

「おう。側から見て構い過ぎだって……それだけじゃねえみてぇだな」

 

 ジェットコースターに居る巨大ゴキブリ、多分今回の停電を引き起こした原因だろうと推察する中、珍しく真面目な面持ちの美神の言葉に思わず本音が出ちまったが、ちょいと茶化すべき場面じゃねえみたいだな。

 

 普段の此奴なら構い過ぎで鬱陶しいと思われてると姉を持つ弟の立場から言ってやっても堪えない姿が容易に浮かぶが、その時は理解出来ないって反応だっただろう。きっとブラコン発言でも織り交ぜるんじゃねえかと勝手に呆れていたんだが、今の美神は俺の言葉に苦笑しつつ憂いを見せる。

 

 構い過ぎは自覚の上で、それでも態度を貫く理由があるって事か? 詳しくは本人が話たくなけりゃ聞くべきじゃねえ家庭の話なんだろうが……。

 

「あの子、将来的に叔父様の養子になりますのよ。お父様がアメリカ人という事でお母様の実家に顔出しさせられる度に家族揃って嫌味を言われるのに都合良く扱うのかって反抗してまして」

 

 そう言いながら美神は髪を指先で弄る。本来の銀髪じゃなくて学校同様に黒く染めた髪を友人との遊びに行った先まで強いられるのは自己の否定をされているみたいなもんだろうな。

 

 聞いた話じゃ随分と父親が金銭援助しているらしいじゃねえか。それを口にすれば呆れ顔でのクソデカ溜め息。

 

 え? 土地や株券を売ってやっているって態度? そりゃ酷え。

 

 そういったドロドロした家には妖魔だって発生しやすいらしいんだが見えてる奴が居たら地獄になりそうだ。

 底位でさえ気持ち悪い虫やらグロい見た目をしてるんだからな。

 

「だからでしょうね。家に残る事になるであろう私に反発してしまうのは。もっと仲良くしたいと思うのですが空回りしてしまって困った話ですわ」

 

 だからって構い過ぎな気もするんだが不器用な奴だ。そもそも母親の実家との関係が今みたいじゃなけりゃ普通に姉弟仲良く過ごせていただろうし、わざわざ髪の色を変えなくても良かった。

 

 ウチもウチで面倒な事がそれなりにある家だけれど、美神に比べりゃ軽いもんだ。

 

 少し空気が重くなる車内。まあ、吐き出せる時に吐き出せば良いし、聞く程度なら幾らでも聞いてやるが、だからって家族関係についてあーだこーだ言うのは一線を越えるってなるしな。

 

「勿体無いよな。お前って素の状態が一番綺麗だってのに」

 

「オーッホッホッホッ! もっと褒めてもよろしくてよ? 友から向けられる媚びでもその場凌ぎでもない賛辞は心地良いですわね」

 

 俺が口出しして良いのはこの辺だろう。前々から思っているし、銀髪の姿を初めて見た時に似た感じの事を言ったが、友人として言えるのはこの程度だ。

 

 いや、マジで銀髪の時が一番だと思うし、それを隠した上で俺に言い寄れって言われてるのは大変だと思うよ。

 

 好きな相手が見付かった時とか大変だぞ、こりゃ。

 

 父親も父親でアメリカ本社会長の伯父さんとの繋がり強化目当てに女を利用しようとしているが、本家との軋轢が無けりゃ其処迄じゃなかっただろうにな。

 

 それはそうと本人がアホだから行動の方向性が色々と間違ってるんだがな!?

 

「俺には話を聞くだけしか出来ねえが、吐き出したい物は吐き出して……どうした?」

 

 え? 何で口を押さえて顔を青ざめさせてるんだ? 

 

「……普段使わない香水を使ったら匂いで気持ち悪くなりましたの。は、吐きそう。うっぷ! 出掛けにコンビニで買ったニンニク増し背脂入り豚骨醤油ラーメンの豚角煮乗せが胃から飛び出しそうで……」

 

 吐き出せってそういう意味じゃねえんだけれど!? 

 

 此処は観覧車の中、一番上で停止中。窓は僅かに開くが顔を出すには心許無く、顔出して吐いたら確実に地上の人に降り掛かるぞ、ゲロが。

 

「目を瞑って絶対に私を見ず、耳を塞いで何も聞かず、足を椅子の上に上げておいて下さいませ。そうそう、見ないといえば神示が私に反抗し始める前、其処に居ない何かを見ない様にする仕草が増え、オロロロロロロロロッ!

 

「……何か気になる話だな」

 

 それはそうとして耳と目は塞いでおかないと最後の尊厳を失わせちまう。あのゴキブリは気になるが場所が場所だし、流石にドア蹴り破って飛び降りる訳にもいかねえし……。

 

 取り敢えず取り巻き二人には美神がマーライオンになったって知らせるとして、来ているらしいあの人にも連絡しておくか、とスマホの緊急事態の連絡用アプリをタッチする。

 

 此れで良し! 所でフォローはどうしよう!?

 

 

 

 

 

「しっかし困りましたわね。此処まで来ると嫁の貰い手が……いや? 私、婿を貰って家を継ぐ予定だから何一つ問題無いのでは?」

 

「開き直ってんなあ、お前。どうするんだよ、この惨状」

 

 観覧車は未だに動かず停電が解決する兆しは無し。俺はどうにか出来なくても他にどうにか出来る奴が一台下の中に居るんだが、多分無理だろうな。

 

 スマホで軽く解決を頼むも『知らん。美少女二人との逢瀬に水を差すな』と即座に返答が。しょうがねえ、他の人に頼むか。

 

「プレオープンでこんな事態になりましたし、今更観覧車の一つがゲロ臭くなっても問題有りませんことよ? そしてこの天上美神、精神のタフさもパーペキですの! オーッホッホッホッホッ!」

 

 口元に手を当てて高笑いしてる所悪いんだが、床にはお前がぶちまけたゲロの海が広がって豚骨スープとニンニクが合わさって胃酸を足した悪臭が充満しての俺達が居る台だからな?

 

 指摘したら悪いからしないが、こんな惨状で高笑いするとか神経図太いのはマジで尊敬するわ。

 

 痛みに耐えるのは稽古で散々慣れて吐瀉物の掃除だってして来たがキツい物はキツい。窓を開けて少しでも空気の入れ替えをしようと足掻くも通気性は最悪で、これじゃあ事故が起きなくても乗りたくねえと遊園地の事業失敗を美神が悟った様子だったのは正しかったと思った時、観覧車全体が揺れた。

 

「きゃっ!?」

 

 椅子の上で体育座りをしていたが美神は高笑いの姿勢だった為かバランスを崩して前傾、そのまま吐瀉物にダイブするかと思ったんだが、倒れ込む瞬間に椅子を蹴って前に跳んだ。

 

「何のこれきし!」

 

 これしき、じゃね?

 

 掛け声こそ間違っていたが空手同好会の一員として鍛えているからか美神の運動神経は良い。狭い内部で壁や天上にぶつかる事無く俺へと飛び移ったからだ。

 

 但し俺の腹に見事な飛び膝蹴りが炸裂するというハプニングはあったが、咄嗟に腹筋に力を入れたからダメージは無い。

 但し此処は観覧車の中、非常に狭い場所で足元の床にはラーメン臭いゲロの海が存在するから足を座席から下ろせず胡座をかいた状態で正面から美神を受け止めたんだ。

 

 抱き止めた時に尻を触ってしまったのは事故だよな? 事故にしてくれ!

 

「……悪い」

 

「いえいえ、お気になさらずに。着物ですのでノーパンですが直接触った訳でも有りませんし、この美神、この程度で叫び散らす度量の狭さは持ち合わせていませんでしてよ。それよりも観覧車が動いてません?」

 

 美神の反応に安心したのも束の間、確かに観覧車は動いているが停電は続いている。

 いや、動いているんじゃなくて無理矢理動かされているって方が正しいだろう。

 

 

 観覧車に隣接する昭和の駄菓子屋風のオープンカフェの上から伸びた鎖が観覧車に絡み付いて無理矢理動かしていたんだから。

 

 

 

 おいおい、縛鎖離じゃねえか。俺だけだとヤバイな……。

 

 一度戦い見逃して来た相手が成長を待ってくれるなんてのは余ほどの思惑があってかだろう。そして、今この時に現れたという事は……。

 

 

 

 焦りが募る中、静かで綺麗な歌声が聞こえて来た。

 

 




次募集キャラ出す予定

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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