三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
「私はどうなっても良いから時間を下さい。せめて七歳になるまで子供の成長を見守りたいのです」
病床に伏せ、腹の中の子供達を手に掛け様とする夫達を近付けさせぬ為に籠った結界内部。必死に命を繋ぎ止める私の前に奴が現れた。
凶ツ神・太歳星君。その姿を目にするだけで一族郎党呪われ狂い死ぬとされる存在。退治するでも封印するでもなく不干渉こそ最善だと語り継がれる存在は使いの者を平然と結界内部に送り込んで問い掛ける。
ねがいはなぁに? かなえてあげる
あの日に両親を亡くしてから家族が恋しくて恋しくて堪らなかった。親の知人が保護してくれたけれど、それは家族とは違っていて寂しくて泣くのは悪い気がして必死で堪えて気丈に振る舞い、失った家族が戻らないのなら、せめて私の様な者を減らそうと、何処かで自分の幸せは諦めて、痛いのも怖いのも辛いのも耐えて耐えて耐えて耐えて戦って……私にも新しい家族が出来ました。
心から私を愛してくれる夫。実の娘同然に優しく厳しく接してくれる義両親。そして愛する子供達。
最初は女の子。次は男の子。息子は甘えん坊だったのが急に兄として張り切り出しちゃって、私が妊娠したらお腹の中の子供も守るんだって退魔士の修行に必死になっていた。
幸せな日々だった。尊い時間だった。一瞬一瞬が愛おしくて、両親がそうしてくれたのと同じく私も子供達を絶対に守って、そしてずっと成長を見守って、孫に看取られて生涯を終えるのを夢見ていた……筈なのに。
あの日、あの時に私は間違えた。選択を誤った。少しでも違ったらずっと子供達と一緒の筈だったのに。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。守ってあげられなくて、お母様が弱くて、最後まで一人で頑張れなくて、私のせいで私のせいで私のせいで、私が私が私が私が私が……子供達を死なせてしまった」
もう私は親ではない。親と名乗る資格は無い。両親の娘でも夫の妻ではなくなった。唯一残った宝さえ目に入れる事すら許されない。
だから、最後は踠き苦しんだ末の犬死であろうとも奴は、太歳星君だけは私のこの手で……。
そう誓って屈辱にさえ耐えて衝動を押し殺して殺意を抑え込んで、それだけの為に存在していた……のに。
それを見透かした様に、揺さぶる様に、嘲笑う様に、太歳星君はとある事を私に教えた。
あの子のその子の更にその先が何処に続くか教えてあげる
その歌声は正に至高の領域、ハデスを感涙で脱水に追い遣り、弁財天が頭を地面に擦り付けて教えを請うに違いないのだぞ!
「むっふっふっふっ。流石は余の美声。こうして録音した物を聴くだけでも夢見心地よ」
そう! 遊園地に響いた奇跡の歌声の持ち主は余である。正に天に昇る夢見心地、大怨霊でさえも浄化し氏神へと昇華するであろう歌声を前に人の子は母体回帰を成し遂げたかの如く安らかな眠りを求める。
まあ、ある程度の霊力の持ち主には効かぬ程度であるが、大和以外の人の子を守る為に本気を出すまでもない、それだけだ。
折角の遊園地デート、摘み食い程度に美少女を愛つつ楽しもうと思ったが無粋な真似をする者が出るとは不愉快である。
これは後で手助け料をたぁっぷりと請求するべきであるが、少しばかり役得があっても良かろう?
観覧車、余からすれば高さが足らぬし風も感じられぬが目の前にはタイプの違う美少女二人、共通点は鴉の濡れ羽色の髪のみ。
二人並んで座っていたから間に割って入り込み、服の上から脇腹や首筋、太股を撫でる。
スベスベだな! 余の方がスベスベのツヤツヤであるが、こうして触れるのは実に楽しい事よ!
「うむうむ! 美少女とは左右に侍らせてこそ。このまま二人揃って純潔を献上させても面白いが……大和めが喧しいであろうから自分の意思で捧げるまで待つか」
メインは奴だと決めている。勿論ながら食事とはメイン以外も楽しむ物だし、余は様々なタイプの美少年と美少女を楽しみたい!
このまま服の下に指を這わせたいが、我慢我慢。封印より復活してから最初に食うのは大和と決めておるのだ。
それも余から誘惑しても手を出すのは奴からでなくては詰まらぬ。
手を出したら即座に押し倒して搾り取る事を思い浮かべながら左右の二人の首筋に舌を這わせ、観覧車を無理矢理動かしている道化へと視線を向ける。
「まあ、ギリギリまで放置で良かろう。周りが幾人か死んで本人も危機に陥った時の方が助けた対価が大きくなるからな」
余は見栄麗しければ何でも良い。それはそうと生死も安否もどうでも良い。欲しい物と手に入れたい物は別であるからな。
まあ、手は出すが手に入らないなら構わないのだ。
さてと、様子見はするが今はこの二人の柔肌を楽しませて貰おうか。むふふ~!
無粋な視線が鎖が伸びる先から突き刺さり、乗っている物諸共に余を貫こうと絡み合い凝縮した鎖の槍が迫る。
軽く鼻を鳴らして飛ばしたのは一枚の羽根。風に吹かれて飛んで行く程に軽く、この世で最も美しい羽根は窓を押しやり僅かに開いた隙間から飛び出して鎖の前に立ち塞がって、鎖を容易に塞いで弾き返した。
飛び散る鎖の破片、響いた破砕音。殺意だけの道化の顔に驚きが混じるものの、余は左右の二人の腰に手を回しながら笑みのみを向けて言外に告げるのみである。
ああ、面白くない。余は人形遊びをする趣味は無いのだぞ、道化。
「……アレは何だ? 異国から訪れた妖魔らしいが」
人としての名を捨てて得た “縛鎖離”の名も退魔士であった頃からとんと聞き及ばない名であったが、契約であの少年と結ばれた女に放ったのは間違い無く抹殺せしめる筈の一撃。
少なくとも金鬼の金剛の如き肉体を砕いた時よりも力を込めたのにも関わらずだ。
あの歌と羽根から思い浮かぶ名はあるものの正解であるならば本来此処迄の力は持ち得ぬ筈。
気にはなるが深く介入する気は無い様子なれば今は無視で良いのでしょう。
「……まあ、今は良いでしょう。些事なれば存在せぬのと同じ事。今は……お前と言の葉を交わす時だ」
「お話がしたいってか? 何を考えてやがる」
私の前には観覧車をこじ開けて無謀にも前のやって来た少年、此度の神の戯れに選ばれた哀れな玩具。
それにしても……。
「言葉使いを正しなさい。力量差を前に媚び諂えとは言いませんが、強き言葉を使おうと貴方を強いと誤認し怯え逃げたりはしませんよ」
深く溜め息を吐き出し、頭痛を堪える様に額に手を当てる。勇敢と無謀を履き違えるのは蛮勇ですらない。
我が身を守る鎖さえも広く展開して互いに顔を合わせ視線を重ねる。期待していた物は存在しない事に当然と感じながらも残念だと思う自分に笑ってしまう。
その様に都合の良い奇跡など有りはしないのに。
「五分だけ時間を渡しなさい。対価として此度の出来事を引き起こした虫ケラについて教えてやる」
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし