三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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本当はメンがインなのに昔はメインだと思ってたブラック

「眠らせるのは良いけれど、もう少し考えてくれへん!? 事後処理の事とか!」

 

 キリキリと痛む胃の腑周辺を押さえながら一人の青年が叫ぶ。線が細く美青年と称するには充分顔が整っている彼は、灰色の髪をかき上げると糸の様に細い目をヘナヘナと垂れさせて弱音を吐いていた。

 

 もし、漫画に登場したならば初登場の時から裏切りを予想される、どことなくそんな胡散臭さを持った彼だが鬼の角付きカチューシャにポップコーンと炭酸飲料のセットを頬がパンパンになるまで詰め込み、ポケットにはパンフレットがねじ込まれている。

 

 何処から見ても遊園地を絶賛満喫中ではあるものの顔色の悪さと目の周りにうっすらと現れた隈は溜まりに溜まった疲労を感じさせた。

 

「ええい! 文句を言うとっても何も始まらへんよ、 神崎 真央(かんざき まお)! 守るべき子供にバケモンの相手を任せてんねやから零課として弱音吐く権利なんかあるか、ダボハゼが!」

 

 どうやら彼は公安零課の所属らしく、ポップコーンの残りを飲み物で一気に流し込むと空き容器を放り投げ、地面に落ちる前に慌ててキャッチするとゴミ箱へと分別して入れる。

 

 スマホを取り出すも十分な充電がされていたにも関わらず周囲の停電した建物と同様に画面からは明かりが消え失せており、忌々しそうにポケットへとスマホを突っ込むとメモ用紙に周囲の様子を記録し始めた。

 

 

 遊園地に静かに、しかし全体に広がった歌声……歌い手の自己評価とは控えめに言って月とラバーカップ並みに差がある其れを聞いた者達は静かに蹲り寝始めたので転倒による怪我人こそ居ないものの、展示されている生き物含めて微妙な悪夢を見ている魘され具合。

 

 悪夢を見せる妖魔の仕業に比べれば軽いのだろうか? 夢の内容もタンスの角に小指をぶつけたり、一円足らずに万札を崩した上で行列になったレジの先頭で小銭をぶち撒ける等々と悪夢には変わりないのだが、多分歌声の技量が技量なのが原因だ。

 

 その中の数人のスマホを拝借した真央は自らの物と同様に真っ暗な画面を目にすると静かに舌打ちをした後で持ち主の元へと戻した。

 

「停電っちゅーよりは明かりが奪われたって感じやなー。うん、あの零課の記録の中でも要注意な彼奴の、火……」

 

「おっ! 他に起きてる奴が居たみたいだな。お前さん、何が起きたか心当たりはねぇか?」

 

 想起した妖魔の名前を苦々しい表情で口にする途中で背後から掛けられた言葉に振り替えれば、困り顔の茂の姿。

 

 背中や肩に幼子を背負い、落とさない様にと上着を脱いで自らに結び付ける姿に一瞬訳が分からなかった真央ではあったが、彼が眠っていない事に慌ててドロシーが乗る観覧車へと視線を向けるも反応は無い。

 

「は? いやいやいやっ!? 何で一般人が!? ……いや、わざわざ自分の立場を考えて分別してくれはる子やありはりまへんか、うん」

 

 ドロシーならばどうするかの答えはあっさりと出て、ならば何故眠っていないのか、その答えに行き着くにも時間は差程要さない。

 霊力の量、妖魔が見える為の切っ掛け、保護用フィルムに似た物が剥がれ落ちる出来事の有無は別として素質は持っていたのだろうと判断するも面倒な事態だとも理解して胃を痛める。

 

 つまり他の客や従業員にも眠っていない者が居る可能性を暗示しているからで、異界に閉じ込められるケース以外でスマホが通じない時の為の連絡手段が欲しいと思う真央だが今更だ。

 

「顧問している同好会の連中と来たんだが、教師の俺が一緒じゃ楽しめないだろうし、娘の為に好きそうなアトラクションを見て回ろうと思ったら迷子を見付けてな。迷子センターで親が来るまで一緒に居てやろうと思ったら眠り始めたんだ。俺の娘は別として子供なら限界まではしゃいで体力切れってのも有り得るんだが……」

 

「周囲の大人までって事やね? それで異常事態やから近くで守ってあげてはると。ほんまにおかしい事やし、生徒はん探してきたらどないや? 此処で会ったのも何かの縁や。一緒に探して……いや、アカンな。急用が出来ましたわ」

 

「おう! なら、仕方ねえな。この子達は俺が近くで守るから大丈夫だぜ」

 

 此処は共に行動して一般人である彼を守るべきだと真央が申し出をする最中、視界の端、遥か遠くで動く小さな人影を捉えた。

 そして、少し後に名を浮かべた妖魔が二人が進んだ道を這いずる姿もだ。

 

「ああ、ちょっと言っておくけれど妙な事態では妙な物からは遠ざかるのをお勧めしますわ。好奇心は猫をも何とやらって言いはりますやろ? それと下手に動かんで事態を見守る方がええと思いますで」

 

 襲われるかも知れない相手と襲われているであろう相手。本来ならば双方とも守りたいものの真央にはそれを両方実行する実力は無いとの自覚がある。

 

 ならば自らより強い者の近くに居て貰った方が、その判断を即決した真央はその場から去り、茂は一瞬だけ呆気に取られた様子ながらも頬を数度掻くと近くのベンチに魘されている子供達を寝かせた。

 

 絡み付く鎖が見えていないかの様子で観覧車を見詰め、呑気にカラカラと笑いながら呟く。

 

 あの趣味の悪い観覧車は娘が嫌がるだろうな、と。

 

「特に炎のオブジェが駄目だな。火事を思い出しそうだし、別の遊園地にするか?」

 

 

 

 ナイフや金属ロッドを持ったチンピラなら容易に倒せる程度に柔道剣道の心得はあるものの妖魔相手には殆ど戦力に成り得ない。

 

 但し、例外として……。

 

 

 

 

「……追い付いた。動くな! 火間虫入道(ひまむしにゅうどう)!」

 

『あぁん? おいおい、あのお子様達以外は招いたつもりはねぇんだが?』

 

「異界への入り口が開きっぱなしだっただけや。自分、随分と手早く仕事終わらしたんやなあ」

 

 子供二人の恐怖を掻き立てる為にわざと音を立て時間を掛けて追走していた巨体が名を呼ばれた事で動きを止める。

 楽しい遊びに水を注された事への不快感を滲ませながら振り返り、額の顔が油で糸を引かせながら開けば飛び出すのは気怠るそうな声。

 

 生前怠け者だった死者が死後に転じ、火を消すなどして働き者の邪魔をすると記された妖魔。妖怪画には首の長い男の姿で描かれる者は真央から感じ取れる霊力が微弱な事に嘲りを見せる。

 

 玩具にするには十分だが、今遊んでいた玩具と比べれば幾段か見劣りし、無視しないのは邪魔をされた事への怒りだ。

 

『後でじぃっくり遊んでやるからよぉ。だから……其処で伸びてろ!』

 

 滴り落ち続ける濁った油を周囲に撒き散らしながら火間虫入道が真央へと迫る。巨大なゴキブリという生理的嫌悪感を掻き立てる見た目なのは勿論、危害を加えるべく迫る怪物だ、悍ましく恐ろしい。

 

 耳障りな羽音と共に迫る巨体を前に真央は正面を見据え、懐に入れて一瞬で引き抜いた手に握られていたのはリボルバー式の拳銃。

 それ自体に特別な力は備わっていない。

 

 只一つだけ、装填された一発の弾丸に真央から霊力が注ぎ込まれる。

 

 途端、彼の目と耳で捉えていた火間虫入道の存在が揺らいだ。通信障害により途切れ途切れになった立体映像の様に姿が点滅して見え、声も羽音も無音が混ざる。

 その間隔は急速に広まって存在を認識出来なくなる中、真央の指は迷わず引き金を引いた。

 

 

 響く破裂音に合わせて飛び出す薬莢、そして額を打ち抜いて反対側から飛び出す弾丸。耳障りな羽音を奏でる羽根の動きが止まり、落下した巨体は慣性の法則に従い前方へと地面に擦られながら進んで真央の正面で漸く止まった。

 

「おっ? もしやラッキーパンチ成功? 偶々急所に命中したとか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なーんちゃって

 

 火間虫入道の前脚が真央の足を掴んで真上へと放り投げる。空中で身動き出来ない彼の落下先で火間虫入道が大口を開けて待ち構えていた。

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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