三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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詐欺の手口

 勢いに任せて動くな。それは色々な人から何度も言われて来た言葉だ。いや、分かってるんだよ。感情のままに動いても自分がやりたい事を押し通すには力が足りないってのは。

 

 だが、動かずにはいられなかった。遊園地で起きた異変に加えて最近遭遇したばかりの妖魔から力技を使ってのお誘いだ。

 ドロシーが俺以外を守らないと言っていたが、実際に観覧車が崩されて俺以外が無惨に死んだとしても俺は助けた事に礼を要求する姿が頭に浮かぶ以上は動くしかない。

 

 例え無理で無茶な無謀といった馬鹿な行動だったとしても友達が危ないのに動かないって選択肢は選べないんだ。

 

「遠慮する必要は無い。飲め」

 

 そんな訳で観覧車を無理矢理動かして俺を招いた縛鎖離(ばくさり)はベンチに座らせた俺に竹の水筒に入った飲み物を差し出す。 

 蓋は開いていて、圧力に負けて軽く嗅げば日本茶の匂いが感じられた。

 

 ……は?

 

 自分から誘っておいて顔を合わせるなり小言を言ったと思ったら話がしたいって今の状況になったんだが、何があったんだよ!?

 

 まさか妙な物でも混ぜてるとか?

 

 俺が三流なのは霊力の出力がヘッポコ太郎なだけじゃなくて感知もだ。だから無臭の何かが仕込まれていたとしても霊力関連なら俺には分からない。

 観覧車の方に意識を向けるもドロシーは動く様子無し……か。

 

「茶菓子として煎餅も用意してある。食え。アラレの方が好きか?」 

 

 それはそうとして意図がさっぱりなんだが!?

 

 ……こんな事ならルサ先輩か小姫を誘えば良かったな。

 

 ドロシーへ普段の礼をしたかったのも大きいが、あの二人を連れて来なかったのは俺の友達と友達って訳じゃねぇし、よく知らないメンバーと遊びに行っても互いに気不味いだろうなって誘わなかったんだが、誘えばよかったか? 

 

 でも、今もこうして異界には引き摺り込まれてねえし、一般人が多い場所で戦闘になっても困るからなと連れて来なかったのは正解だったかもとは思う。

 停電を引き起こしたって奴に関しちゃ別だけれども……。

 

 

「座って食べろ。行儀が悪い」

 

「……おう」

 

「だから言葉遣いを……いえ、今は良いでしょう。前言は撤回します」

 

 素の貴様が知りたい、とベンチに座りながら縛鎖離(ばくさり)は告げる。

 

 本当に俺に何の用なのかさっぱり分からねえが、どうも戦う気が無いんなら情報だけでも引き出せたら良いんだがな。

 一丁前な交渉術なんて持っている訳が無いので無駄だろうが、せめて停電を引き起こした奴については知りたい。

 

 警戒は緩めないまま言われるがままに茶を一口含む。少し苦味が強いが口の中に芳醇な香りが広がって上等な茶葉を使っているのが分かった。

 

「煎餅より饅頭か羊羹の方が合いそうだな」

 

「……そっちにすべきだったか」

 

「まあ、この煎餅も悪くないけれどな。海苔煎餅は好きだし」

 

 人から貰った物……人ではないが、それにケチを付けたみたいな発言をしちまった事に少し罪悪感を覚える。

 この前は出会い頭に殺そうとして来ておいて、今日は何で菓子への感想程度で残念そうにしているんだよ、この妖魔。

 

 小姫はどんな妖魔か知ってるみたいだったが、詳しい資料を取り寄せるからって待たずに少しだけでも情報仕入れておくべきだったな。

 

 並んでベンチに座って互いに煎餅を齧り茶を飲むものの会話は無い。正直言って気不味いから何か話題を振って欲しい、寧ろ振れ! テメェが話をしたがったんだろうが!

 

「さて、何を話すべきか。……そうだな。 お前の両親は何をしている?

 

「学者」

 

「兄弟は居ると聞いたが仲良くやっているか?」

 

「誰に聞いたんだよ……仲は良い。世話になってばかりで情け無いがな」

 

「ちゃんと友達はいるか? 貴様は大柄で目付きも悪い。仲間外れにされていないか心配だ」

 

「いや、テメェは俺の身内か何かかよ。居るんだから余計なお世話だ」

 

「……そうか」

 

 どーも調子が狂うが何かの作戦か? 俺よりずっと強い奴がか?

 

 俺に友達が居るって聞いた縛鎖離(ばくさり)は本当に安心した様子を見せて俺を混乱させる。どうも敵と話してるってよりも疎遠になってた親戚とでも話してる感じだぜ。

 

「好いた女は居るか? 一緒に乗り物に居た女なら止めておけ。あの契約している妖魔も尚更だ。人と魔の者との恋路など絶対に苦労するからな」

 

「本当に余計なお世話だな!? ドロシーは友達だっての!」

 

「……少し顔をよく見せろ」

 

 そう言うなり有無を言わさず俺の頬を両手で挟み込んで顔を覗き込む。随分と真剣な瞳で俺を見つめた後、何処か寂しそうに顔を曇らせてから手を離した縛鎖離(ばくさり)は立ち上がって俺に背中を向けた。

 

「火間虫入道……巨大な油虫の姿をした下位、いや、時代の進みと共に中位へと成り上がっているか。弱いが面倒ではある。気を付けなさい。……それと決めた事がある。せめて……いや、絶対に……」

 

 其処で言葉を区切って縛鎖離(ばくさり)は俺の方へと振り返る。その表情からは威圧感が消え失せて、逆に慈しみすら感じ取れそうな錯覚を起こした。

 

 ……罠か?

 

 

 

「お前は私がこの手で殺す。“死屍幽遊(ししゆうゆう)”によって……喋り過ぎたか。好き嫌いと夜更かしは控えて過ごしなさい」

 

「お前は俺の親か何かか!? ……って、消えた」

 

 今度こそ異界開けを行ったのか縛鎖離(ばくさり)は一瞬で俺の前から姿を消して、代わりに一本の短い鎖だけが自然に残されている。

 それは意思を持つかの様に動き、蛇を思わせる動きで地面の上を畝る様に進んでいく。多分着いて来いって事だろう。

 

 一瞬罠かと思い躊躇するが、今こうしている間にも犠牲者が出る可能性もあるんだよな。仕方無い……行ってから考えるか!

 

 

 

 

 

 

 姉に散々とゴリラだのと言っておきながら、大和自身も猪な事が判明した頃、縛鎖離(ばくさり)が異界に入るなり人形神達が足元をウロチョロと走り回り出した。

 

「おいおい、駄目じゃないか、ばーちゃ、わー!?」

 

「その呼び方はするなと言った筈だ、人形神(ひながみ)共」

 

「だって縛鎖離(ばくさり)だからばーちゃんになるもん。それより駄目だよ、未だ教えたら」

 

「もっと進んでからの予定って公安本部にも通達したし、五凶星にだって……あれ? ばーちゃんには知らせたっけ?」

 

「知らなーい。四号は?」

 

「お知らせするの一号のお仕事じゃないっけ?」

 

「そーだった? やっば! ばーちゃんだから別に良いけれど、ばーちゃんみたいなうっかりミスしちゃう所だったよ」

 

「アレでしょ? 子供達とも家族とも言わずに子供って願っちゃった奴」

 

 

 

 

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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