三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
ガチガチ
ガチガチ
ガチガチ
ガチガチ
「あぁああああああああっ!?」
肩の肉を骨ごと食い千切られた伯父様が絶叫する中、傷口を押さえる指の隙間から血が停めどなく流れ落ちている。
喋る巨大なゴキブリや絵から身を乗り出して食い付いて来るモナリザ、恐怖を覚えるには十分過ぎる体験だったけれど今度は違う、別格だ。
膝を付いて蹲る伯父様の頭に向かって花子さんの手がゆっくりと伸ばされて頭を撫でるかの様に置かれて、一気に体重を掛けられた。
「ぐじゅっ!」
床がひび割れる勢いで伯父様の顔面が叩き付けられて、そのまま最近薄くなって来た髪を掴んで持ち上げられて悲惨な事になった顔が晒されて悲鳴が喉の奥まで込み上げる。
潰れた鼻に折れた前歯、流れ出した血で真っ赤に染まった顔は普段の整った顔立ちが微塵も感じ取れない。
それは僕達も捕まれば顔面をグチャグチャにして遊ばれるって事だ。
……家を傾けたとか散々助けられて尚も父様を見下している事とか、身内であっても伯父様とは相容れないけれど、あんな姿を見て見捨てる気なんか起きなかった。。
でも、同時に無理だと警鐘が鳴り響く。どうにかしたい、そんな気持ちだけじゃ抑えきれない恐怖が僕の心を蝕んでいたんだ。
叫ぶな、僕が怖がれば恵麻にまで恐怖が伝播する。どうにか逃げる時間を……。
「あはは」
恐怖を押し殺し隙を伺い、恵麻を守り切る為の方法を探る中、伯父様の口が開いた。
「お、おい! 私はお前達の味方だぞ! 何せ私を選んで欲する物全てを……」
「五月蝿いなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
伯父様の顔面が床や壁に叩き付けられて行く。長い手を振り回して力任せに伯父様を叩き付け、最後には飽きたとばかりに窓に向かって放り投げれば、音を立ててガラスが割れて伯父様は外へと落ちていった。
破片は僕達の方にも飛び散り、咄嗟に恵麻を抱き締めて庇えば肌をガラス片が傷付ける。流れる血と走る痛み。
でも、そのお陰か? すくんで動かなかった体を動かせたのは。
「恵麻、難しいと思うが頑張って逃げろ。……僕が時間を稼ぐ」
このまま恵麻を抱えたまま逃げるだなんて絶対に無理だ。だから僕を置いて逃げさせる。そっと床に下ろすと返事も聞かないまま少し大きいガラス片を掴んだ。
少し切れたけれど別に良い。あんな化け物に挑むんだ。この程度気にするんじゃない。
「神示君……」
「行け。さっさと行けぇえええええええっ!!」
誰かに向かって叫ぶだなんて恥ずかしい真似、多分これが初めてだ。そしてそうまでして守りたいのは初恋の相手。
うん、僕が頑張るには十分な理由だな。
「遊んで……くれるのぉ?」
「ああ、じっくりたっぷり遊んでやるよ」
花子さんから視線を外さず音で恵麻の様子を伺えば、痛めた足も少しはマシになったのか走り去って行く音が聞こえて安心だ。
じゃあ、後は精々時間を稼いで、そして神様にでも恵麻の無事を願うとするか。
化け物が居るんだし、神様だって居る筈だよな? 寧ろ居てくれ、じゃないと世界が残酷過ぎる。恐ろしい奴だけで頼れる存在が居ないなんてあんまりだ。
息が荒くなる中、花子さんの動きが妙にゆっくりに見えた。僕を弄ぶ為になのか、それとも最期の寸前に感覚が鋭敏かしているのかは不明だが、此れが恵麻の安全に少しでも繋がるのなら……。
「ふ、伏せて!」
はっ!?
耳が捉えた声に思わず従ったその時、噴射音と共に何かが頭上を通り過ぎて僕の体にも白い粉が降り掛かる。これは……消火器?
手の平の痛みも忘れて振り返れば未だ噴出中の消火器を恵麻が必死の様子で構えている。足が痛いだろうにふんばって、大型で重そうなのにフラつきながらも消火器を抱えていた。
「この消火器凄いわね。勢いも内容量も市販品とは大違いだわ」
「確かその辺はこだわって特注品を注文したとか何とか……」
て言うか、逃げろって言ったのに何で……いや、そうか。
簡単な話だ。これで逃げずに僕を守ろうとしてくれる奴だから惹かれたんだ。天上家の次期当主としての僕に寄って来る連中は利益目的で、家が傾いたら簡単に離れていった。
そんな連中、同じ事態になったら絶対に逃げ出していただろうな。でも、僕を助けに戻ってくれた彼女は、僕が隣に居て欲しい恵麻は助ける為に戻って来た。
それだけで嬉しい。この時、この瞬間、次期当主としての重圧と憂鬱だらけの僕の人生で一番嬉しい瞬間だったんだ。
そして一つの言葉を身をもって理解する事になる。
禍福はあざなえる縄の如く ……如しだったっけかな?
濛々と立ち込める消火剤によって視界が真っ白に染まる中、それを意にも介さずに青白く細長い腕が伸びて来て僕の肩を掴む。
「無ぅ駄、無駄ぁああああ。あははははははぁ!!」
立ち込める消火剤なんて存在しないかの様に死体じみた肌は青白いままで、なのに悪くなった視界を利用はする。
此奴、絶対性格悪いだろ!
老人みたいに分厚く変色した爪が服の上から肩の肉に食い込んで、徐々に増して行く力に一歩も動けそうにない。
本当なら直ぐに僕を押し倒せるだろうに、ギリギリ抵抗可能な力から始めて徐々に力を入れてやがる。
「このっ!」
だったら僕だって抵抗をしてやると握ったままのガラスを突き立て様と腕を振り抜けば避けられも防がれもせず、ただ効かなかった。
硬くもないし幽霊だからすり抜けもしない(向こうは触ってるのに有り得そうなのが嫌だ)が、伝わって来た感触は見た目通りの骨と皮だけなのに一ミリたりとも食い込んじゃくれない。
この! このっ!
踏ん張りながら力を入れて、突くだけじゃなく切り裂こうと振るうも同じだ。花子さんの肌には擦り傷どころか僅かに凹ませる事さえも出来ない。
向こうは爪を立てて上から押し潰そうとしているのに何でだっ!?
「ねぇ、おててつなごうよぉ」
「は? おい、まさか……」
肩を押さえ付けていない方の手が僕の手に添えられる。当然の様にガラスを持っている手で、悪臭を放つ液体による湿り気を帯びた指が長虫みたいに絡み付き、ガラスを僕の手へと食い込ませるみたいにジワジワとだ。
指の表面が切れて隙間から血が滴り落ちるのを鋭い痛みと共に感じる中、花子さんの顔が間近に迫った。
手入れが行き届いていない公園のトイレみたいな刺激の強い悪臭。その頃には既に立っているのも辛く膝は曲がっている程で、背後で恵麻が周囲の物を手当たり次第に投げるけれど意味が無い。ガラス同様に力が伝わっていないんだ。
ああ、もう終わりなのか? こんな所で? 漸く明るい未来を夢見る事が出来たのに?
僕が諦め掛けたその時、背後から飛来した何かが花子さんの腕に穴を空け、そのまま直線上にあった部分を貫通して廊下の先まで飛んで行く。
「これだからお化け屋敷は嫌いなんだ。偽物を楽しむ場所に本物がゴキブリみたいに住み着くんだからよ」
現れたのはチャラい印象を与える金髪の青年……いや、違うな。多分若く見えるだけで三十路近いって僕の勘が告げている。
手甲付きの籠手を装備した彼は首に手を当てて数度怠そうに鳴らしながら僕達や割れた窓、そして、花子さんと天井の通気孔に視線を向けた。
「面倒臭ぇのが三体……いや、二体で良いか。あの少年の手助けは糞邪神の決めたルールに反しないだろうし、さっさと終わらすか」
「お、おい。お前は一体……」
多分助けてくれた……とは思う。お化けがいるんだし、ゴーストをバスターするのが居ても不思議じゃないとも。ただ、初対面の相手を信用出来ないから警戒は向ける僕に彼は胡散臭い軽薄な笑みを向けた。
「俺か? 俺は
いや、お兄さんって年齢じゃないだろ、お前。
銭ゲバ主人公でのダンまちが浮かぶ
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし