三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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忘れモノ ⑧

「ねぇ。おにいちゃんはどこに行ったの?」

 

 ボクにはね、おにいちゃんがいるんだ。今より小さいとき、おじいちゃんとおばあちゃんの家にあそびに行ったあと、べつの所にりょこうに行ったきりかえって来ないんだけど、あそんでくれる優しいおにいちゃんだったよ。

 

「・・・・・・遠くに行ったの。ずっと遠くにね」

 

 おにいちゃんがはやくかえって来て欲しいからおかあさんに聞いたけど、かなしそうな顔をするだけでおしえてくれないんだ。

 

 前はカゼをひいちゃってボクは行けなかったけど、おじいちゃんたちの家に行ったらおしえてくれるかな?

 もしかしたらおにいちゃんの所にボクもいけるかも。

 

 だって、おにいちゃんがいなくなったのは二年まえで、おにいちゃんはボクより二さいおにいちゃんだったし、同じとしならボクだって行っていいもんね。

 

 

「それじゃあ十数えるから隠れてね」

 

「うん!」

 

 きょ年はおばあちゃんがカゼであそびに行けなかったから二年ぶりに二人に会ったけど、おにいちゃんがどこに行ったのかちゃんとおしえてくれなかったんだ。

 

 でも、おじいちゃんとおばあちゃんの家にすんでるイトコのおねえちゃんがあそんでくれるからってダイスキなカクレンボをしたんだけど、かくれるばしょをさがして、ボクははなれの押し入れに入ろうとしてオモチャを見つけたんだ。

 

 

 

「これってチョーダサイノーだ!」

 

 おにいちゃんがダイスキだったオワコン戦隊ダサインジャーのロボットで、おにいちゃんはボクにこのオモチャをさわらせてくれなかった。

 すこしきたないし、長いこと押し入れに入ってたみたいだけど、シールがはって・・・・・・あっ!

 

 

「これっておにいちゃんのだ!」

 

 この家にあそびに行く時にもって行ったけど、”ケンタ”ってかいてるし、おにいちゃんのだと思う。

 

 もうボクは商売戦隊モウケルンジャーのゼニゲバオーのオモチャをもってるけど、おにいちゃんがりょこうに行ってるならもってかえってもおこらないよね?

 

 

 さわらせてもらえなかったし、今からあそぼうと思ったとき、ボクのゆびをチョーダサイノーの手がつかんだ。

 

 

 

 

 

 

『君、ケンタの弟だね? 名前はえっと・・・・・・ケンジだったか』

 

 わあ! オモチャがしゃべった! テレビではしゃべらなかったけど、こんな声だったんだね。

 

 チョーダサイノーの声はおじいちゃんみたいで、ムネの色がハゲているところに口があったんだ。

 え? ボク、テレビのほうそう中はにゅーいんしてたからほとんど見れなかったけど、こんなのになるんだね。

 

 

 

 

 

『ケンタは何処? 私を忘れて帰ったみたいなんだ』

 

「おにいちゃんならかえって来ないよ? とおくに行ったんだって。会いたいのに」

 

『……そうか。じゃあ、探しに行こうか。一緒にね』

 

 そっか! さがしに行けばよかったんだ!

 

 

「うん!」

 

 チョーダサイノーとおはなしできるだなんて、おにいちゃんがよろこびそう。おにいちゃんのオモチャなら知ってるのかな?

 

 

 

『じゃあ、行こう』

 

 チョーダサイノーはボクのふくをつかんでとびあがった。

 すごいや、さすがせいぎのロボットだね。

 

 

 

 さわられたところがプラスチックのアレルギーのせいでいたいけど、ロボットとお空を飛べるんだもん、平気だよ。

 

 

 

『ほら、ジュースとパンだ』

 

 チョーダサイノーとのボウケンはたのしいし、おにいちゃんと会いたいからボクはがんばったよ。

 おなかがへったらチョーダサイノーがパンとジュースをもって来てくれたし、さむいとモウフだって。

 

 そうしてボクがチョーダサイノーといっしょに来たのはオバケが出そうな山の中のボロボロのたてもの。

 

『新しい子が来たのね。でも、ご主人様じゃないわ』

 

 中にはチョーダサイノーみたいにおメメや口があるオモチャやカサといっしょに子どもがたくさんいて、クラゲさんみたいなカサの下にはグッタリした子がねころんでいる。

 

『じゃあ、次はその子にするから連れて来て』

 

 子どもみたいな声のカサはボクにむかって体のいちぶをのばすけど、先はすごくとがっていた

 

 なんかこわい、そう思った時、ボクにちかよって来たカサの前にチョーダサイノーがとび出したんだ。

 

 

『気が変わった。この子は家に帰す。ケンタの弟は私が守るんだ!』

 

 ボクにむかって来たトゲがチョーダサイノーのみぎうでをつらぬいて、そのままたたきつけた。

 大きなおとがしてチョーダサイノーの手がおれてゆかにころがる。

 オモチャなのに、ロボットなのにあかいものが出ていて……。

 

 

『逃げるぞ』

 

『逆らう不良品は……いらない』

 

 チョーダサイノーはボクを持って飛んで、カサのトゲはチョーダサイノーのコシにささって、バキバキって音がして足がとれちゃって。

 

 

 それからおいかけてくる他のオバケからボクたちはにげつづけて、チョーダサイノーはドンドンこわれていく。

 ボクはケガなんかしない、だってチョーダサイノーがまもってくれたから。

 

 

『大丈夫。私は正義のロボットだ。悪の攻撃じゃ倒せない』

 

 にげるとちゅう、チョーダサイノーはボクにそんなことをいうけれど、すこしずつ声が小さくなって……。

 

 しってるよ、チョーダサイノーはわるものに負けて、あたらしいロボットが出てくるって。

 しってるよ、ボクをまもってくれているのはオモチャのオバケだって。

 

 

 

『ごめん、ごめんよ。遠くから彼奴が言って来たんだ。忘れられた私を持っていく誰かを連れて行ったらケンタに会えるって。もう一度、もう一度だけでも会いたくて……』

 

 

 他のオバケはもういないけど、チョーダサイノーは小さくなったこえで、なきそうなこえで……。

 

 

 

 

 

『でも、それでもケンタを裏切るのは嫌だ。私を正義の味方として信じてくれた君達を裏切れない。あの家から感じるのは……。このままよりは希望が……』

 

 あめがふる中、ボクたちはゆっくりと大きな家のまえにおりて行って、もうチョーダサイノーはしゃべらなくなった。

 

 ボクが見たチョーダサイノーはみぎの手とアタマいがいは、ほとんどのこっていなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

「疲労にアレルギー反応、ついでに風邪が重なったって所だな。俺の力を使うまでもねぇが、適当に治療してやったから親も安心だろ」

 

 大和の家の前に行方不明のケンジが倒れていた、そんな連絡が来たのは少し古い病院だ。

 名は『八百万病院』。昔から近所の人が利用していたが、最近になって大病院が近くに建ってからは少し閑古鳥が鳴きそうな有り様。

 

 

「ご協力有り難う御座います、我妻さん。後は我々の方で山中での発見だと隠蔽しておきますね」

 

 行方不明の子供が民家の門前で見つかった場合、その家主である大和にも警察から何かしらの接触があるだろう。

 それを防ぐ為の手続きは既に行われているのだ。

 

 但し、倉持の顔に浮かぶ疲労の色が待ち受ける仕事の山を表していたが、少年少女に戦わせる事に罪悪感を抱く彼からすれば耐えられるのだろう。

 

 だから大丈夫! 睡眠時間の減少と過労が待っているだけだ。

 

「おうおう、公安部の不正の瞬間が生で見れるとはな。刑事ドラマだけの話じゃなかったか」

 

 ゲラゲラ笑う少女の様な声と共に小さな手が彼の眼前にかざされると、僅かだがその顔から疲労の色が薄れる。

 腹を抱えて足をバタバタ動かす……その様な動作が似合いそうな程に小さい身長に見合った体型、但し童顔ながら少々凶暴さが垣間見えていた。

 

 

 

 

「まあ、俺の力でも限界がある。あんまり無茶すんなや」

 

「善処します……」

 

 人手不足が解消されない限りは絶対に無理、そんな言葉を倉持は飲み込んだ。

 だって、そんな事を聞かれれば殴られるのだ、目の前のヤンキーロリに。

 

「んじゃ、俺は患者見て回るから茶を飲んだら帰れ」

 

 そう言って彼女は椅子から飛び降りると部屋から出るべく歩き出す。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あれで回復系統の術が使えるんだからなあ。……いや、看護師だから似合ってるのか?」

 

 そう、彼女はナース服を着ていて、勿論コスプレではない。本物のナースであり、零課の協力者である退魔士。

 

 

 名を我妻(あがつま)たんぽぽ。希少な霊力持ちの中でも珍しい回復系統の術の使い手なのだ。

 

 

 

 

「あれでって、なんだぁ? あれでってのは?」

 

「ひぃ! 聞こえてたっ!?」

 

 尚、元ヤンキーであり、言葉遣いや形相は昔のままだ。人間、そう簡単に変われない物である。

 

 

 

 

 

 

「霊力に限度があっから治療可能なレベルまでボコって治すのループは勘弁してやんよ」

 

「……ふぅ」

 

「今はな、後日ボコる。……んで、どうせ大和の奴にでも任せるんだろ? 余計な疲労が溜まっているだろうから、治すついでに少し貰おうと思ったんだがよ」

 

「彼なら……いえ、彼等なら今回の事件を引き起こした妖魔を退治しに行きまし、だっ!?」 

 

 彼、と口にした所で曇った顔は、彼等、と言い直した時に更に曇りを見せる。

 そんな倉持の太ももに割りと本気のローキック、乾いた音が夜の病院に響き渡る。

 

「ふぅん、俺からすればあの小僧に仲間が、お前からすりゃ危険を押し付ける道連れが出来たって所か?」

 

 蹴られた部分を擦りながら抗議の視線を送る倉持だが、鋭い視線が何も言わせはしない。それどころか爪先で小突きながら呆れた視線を送るばかりだ。

 

 

「確かに死線を何度か越えようがガキはガキ、護ってやるのが大人の仕事だがよ……それが出来ないでグダグダ悩むなら、出来る範囲で支える事を考えてやれよ」

 

 夜中に人助けして補導されたり学校に影響があったら洒落にならねえぞ、最後に深刻そうに呟きながらたんぽぽは今度こそ仕事に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、子供を保護して病院にまで連絡してくれるだなんて、君が契約した妖魔は随分と知性と理性を持っているんだね。どうやって契約したんだい?」

 

「どう、って言われてもな……」

 

 お玉から連絡を受けて家にまで戻ってみれば、行方不明だった子供は既に八百万病院に運ばれた後で、残されていたのは妖魔……だったものの残骸だ。

 普通は死ねば消滅する妖魔だが、九十九神みてぇに核となる物に妖魔の元になる負の念が宿っているタイプは見ての通り、僅かに霊力がこびり付いた玩具の残骸が残っている。

 

 確かオワコン戦隊、だったか? 番宣でチラッと見た記憶があるが、その残骸には小姫の指に絡み付いた糸の先が巻き付き僅かずつ霊力が流れている。

 

「どの様な関係が良いかって訊かれたから友達が良いって言っただけだ」

 

「へぇ。じゃあ、霊給者(れいきゅうしゃ)を利用しようとした結果、子供の無邪気さゆえに目論見が外れたって訳か。まあ、理性の高さからして最低でも上位、契約で縛り付けこそ出来ても使役なんて到底……完了だ」

 

 巻き付いた糸が残骸から自動的に外れ、その先が針の穴に自動で通って結び付くと同時に宙に浮いた。

 針は方位磁石の針が狂った時みたいにクルクル回転してピタッと止まる。

 

「伊弉諾流裁針技法・妖魔方針(さいしんぎほう・ようまほうしん)。私の家に伝わる探知の為の術さ。これでこの玩具を妖魔に変えた雨宿りの霊力を探れる。凄いだろう? 私」

 

「術か……」

 

 

 

 まあ、俺が聞いた範囲じゃ霊力を使った魔法みたいな物、だったよな? 才能有る退魔士や

一定以上の妖魔が大体使えるって奴。

 たんぽぽさんが素で使えるけど、お玉もドロシーも教えられるのが無いからって教わってないんだよな。

 

「君も何か使えるかい? 大和先輩」

 

「伏柄流古武術なら使えるんだがな。……うん? そういやさっき妙な呼び方をしてなかったか? 霊給……」

 

「さ、さあ! マゴマゴしていたら犠牲者が増えるだけだよ。私でも大体の場所は分かるし、急ごうじゃないか」

 

 こりゃ何かあるな。

 

 妙に慌てた様子の小姫は俺の腕に抱き付く様にすると話を変えて引っ張って行く。

 柔らかい胸に挟まれる感触は嬉しいんだが、どうやら親しく接してきた理由はこれっぽいな。

 

 ……ちょっと気になるが、聞き出せそうにもないか。

 

 惚れた相手の接触が思惑ありきなのが確定したのは少しショックだが、犠牲者を減らすのが最優先だと言われりゃ反論は無理だ。

 

 

 まあ、それに理由はどうであれ惚れた相手と一緒に居られるなら多少の理由なんてどうでも良い位に幸せだよ、俺は。

 

 

 

『信号機の操作や白バイ誘導の為の情報撒きはこのククルルにお任せだぜ、ボーイ&ガール。なんたってボクちゃんは……』

 

 小姫の誘導で雨宿りの居場所まで向かう零課の車内、通信機の向こうから聞こえる少し躁状態の声。

 運転手は無言でスイッチを切った。

 

 

 

「有能なんですよ。ええ、凄く有能なんですよ、彼女」

 

「私は何も聞いていないさ。さて、到着まで少し休ませて貰うよ。霊力を少しでも……」

 

 小姫は言葉の途中で目を閉じると俺にもたれかかる。

 車の走る音に混じって聞こえる寝息、少し疲れた様子で小姫は眠ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

「寝顔も素敵なんだがな。まあ、惚れた相手だから素敵な相手が更に素敵に見えるんだろうが……」

 

 一瞬だけ小姫の肩が動いた気がするが、じっと見ていても起きる様子はない。

 そのまま俺達が乗る車が山の中に入って行き、暫く進んだ時、反対側からけたたましい音を立てながらバイクがやって来る。

 

 

「止めて下さい!」

 

 俺が叫ぶが、殆ど同時にブレーキが踏まれたのは運転手さんも零課の一員である証拠。

 俺も完全に止まる前に飛び出せばバイクの姿がよりハッキリ見える。

 

 

 

 暴走族が乗っていそうな派手な改造バイクで、ペイントは錆が混じってハゲ掛けだ。

 そして、サイドミラーの反対側には血走った目が存在していた。

 

 

 

 

『会うのよ会うのよ。私は彼に会うのよぉおおおおおおおおおっ!』

 

「伏柄流古武術奥義……鳴き打ち(なきうち)

 

 前輪を持ち上げウイリー走行をするバイクは俺に迫ると同時に前輪を振り下ろそうとする。

 だが、先に届いたのは俺の攻撃、振り抜いた掌底打ちが胴体部分に叩き込まれると同時にバイクの動きは止まり、俺が飛び退きざまに蹴り飛ばせば宙で内部から弾け飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちに気が付いて送った尖兵って所かな。お早う、寝起きに面白いものを見せてもらったよ。術が使えないなんて嘘じゃないか。隠すだなんて水臭いよ」

 

「いや、だから古武術だって」

 

「いやいやいや……嘘だろう?」

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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