三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
すやすや、すやすや、グースカピー……あれ? もう始まってる?
ゴメンゴメン、ちゃんと起き、すやぁ……読み進めるのは五時間待って。絶対に起きるとは確約しな……ぐぅ。
やっほー! 人類皆の人気者であるパンダのアンノウンだよ。
そうそう、皆って昔のゲームをした事がある?
パパパパ ンンンン ダダダダ
パパパパ ンンンン ダダダダ
こーんな感じのパスワードを入力したら続きから遊べる奴。
僕も散々遊んだよ。パスワードは全部人に覚えて貰ったけど、メモとか暗記って面倒だもん。
美味しい物の名前以外は覚えたくないんだよねぇ、僕ってさ。
ゲームをしている最中ってコントローラを持っているから手は塞がっているし、お菓子やジュースは友達に口に運んで貰って、会議も面倒だからサボりだポーイ! どうせ不参加なんて何時もの事だし、ゲームしながらゴロゴロする方が重要さ。
まあ、レベル上げは任せて僕はお昼寝タイムだけれど、言う事を忠犬みたいに聞いてくれる友達って最高だと思わない?
ほら、何かであったけれど、子供が生まれたら犬を飼えっていうし、犬みたいな友達が良いんだ。
犬は子供の守り手になって理解者で友達で、多感な時期に死をもって命の尊さを教えてくれる。
僕の友達だって最後のを教えてくれた、失う事の大切さを。
上のパスワードが間違ってたんだ。
パパバパ ンンンン ダダダタ
ババパバ ンンシン ダダダダ
これが長時間掛けて友達が見つけ出した本当のパスワード。それが分かるまで僕は頑張って進めたデータが全くの別物になった事実と向き合うことになったからご馳走食べて惰眠を貪ったよ。
まあ、レベルが一レベル違ったりと復活前と中身が変わっていたんだけどさ。
命の大切さとゲームを一緒にするなって? じゃあ、丁度良い例えを考え……グゥグゥ。
「好きな人が出来たの。だから貴方はお父さんと一緒に暮らして」
とある女の記憶の中、少女時代に見た母の最後の記憶は自分を置き去りにして家から出て行く姿であった。
父は男が欲しかったらしく、女が生まれても早く男を産めと急かすばかりで、記憶の中の両親は外では仲睦まじく装っていても家の中では不仲。
そして病気が原因で子供が産めなくなった母を詰る父の姿を見た女は母が他に男を作った事に一定の理解は示していた。
だが、自分を置き去りにしたのは別の話、あんな父と二人っきりにさせたのは自分が憎かったのだと母を恨み、父の八つ当たりに耐える日々の中で心は荒むばかり。
母が居ない事を理由にイジメを受け、家では父の罵倒を受ける。
何時か迎えに来てくれるのだと母が来るのを望んだが、高校生の時に父が死んでも、父の再婚相手に苛められた末に高校卒業と同時に家を追い出されても母は電話の一つもくれはしない。
今までの悲惨な人生、そして家を追い出され歳を誤魔化して水商売をして生計を立てる今の自分の状況は全て母の仕業だと強く恨んだものだ。
その後で結婚相手に浮気された上に貯金を持ち逃げされたのも、生活苦から借金が膨らんだのも、全て全て母のせいだと憎み、今の人生に疲れて自死を考え始めた頃……子供の頃の願いが叶った。
「私の残りの人生は貴女への償いに使いたい。一緒に暮らしましょう」
女は安物の古着ばかりなのに、母親は小綺麗な服装をしていた。
一緒になった筈の男には逃げられたらしい、所詮は浮気をする相手だと鼻で笑い母を嘲笑うが、その後に子持ちの相手と再婚し、連れ子とも仲良くしているとの事だ。
ふざけるな、と罵声を浴びせた。
父が作った借金から逃れる為に全国を転々としていたから探し出せなかったとか、色々と言い訳を述べられても女が許せる訳が無い。
結論として女は母と一軒家で暮らす事にしたのだが、借金の肩代わりや生活の保証が約束されたからであり、母が恋しかった訳ではない……少なくても本人の自覚の範囲では。
再婚相手とは死別、娘は仕事が順調で海外支社の社長に抜擢、随分と悠々自適な老後ね、と皮肉を交えながら女は母が住む一軒家での生活を始めた。
家族仲睦まじいのが伝わって来る幸せの痕跡だらけの家。
女は誓う、償いたいというのなら、徹底的に復讐してやろう、と。
その日から女と母の暮らしが始まったが、女は家事を一切せず、その代わり文句と注文と暴言をぶつける毎日。
母はそれに文句は言えない、言える筈もない。
お前のせいで人生がメチャクチャだと言われるのが分かっているからで、言われなくとも自分自身がそう思っている。
どんな言い訳を重ねようと、酷い男の所に幼い娘を置き去りにした最低の母親なのだと。
それに母にも救いはあった。暴言や丸めた紙などを投げ付ける等は毎日受けたとしても直接手を上げられる事は一切無い。
自分が追い詰めてしまっただけで、本当は心の優しい娘なのだと嬉しく思い、同時に自らを責める材料を増やした。
それも娘の計算だとは知らずに。
簡単な話だ。暴力を振るって怪我をさせれば動機はどうであれ非難の対象となる。
母が悪いのに報復をしたら周囲に責め立てられる等というのは許せず、更に母の夫の連れ子が自分と母を引き離す格好の口実にするだろう、それは避けたい。
働かずとも暮らせるのは母の年金と財産、そして、連れ子の仕送りがあるから。
母が死んだ後の事は未だ考えていないが、特に病気も無いのだから暫くは大丈夫だと女はたかを括り、その日は訪れた。
「……嘘でしょ。何処まで役立たずなのよ」
その日、女は母と家で誕生日を祝う約束をしていた。守る気など無い約束をだ。
許した振りをして何日も前から打ち合わせもして、当日すっぽかして遊びに遊んで帰ったのは翌日の朝、何時もは何度無視されても迎えに出る母の姿が玄関には無く、階段の下で事切れている姿を発見した。
階段から足を滑らせて落ちたのだろうと直ぐに理解し、次に来たのは焦り。
母が死ねば年金や仕送りで成立していた暮らしは立ち行かず、この家だって権利者は母ではなく連れ子が相続したと聞いている。
母の財産の半分は相続可能だが、そもそもどの程度のものなのか。
連れ子は女を嫌っている。
女からすれば自分を捨てた母と親子として育った相手であり、連れ子も実の母と同じように慕っていた継母に強く当たっているのを何処かで知った事は電話で伝えられた。
家も暮らしも駄目になるという事実に女が苛立つ中、開いた扉の先のリビングから若い女の声が聞こえる。
知らない女の、若々しい声だった。
『悩める皆の味方! パンパンショッピングのお時間です!』
「は?」
『ちょっと目を離した間に家族が死ぬなんて大変ですね。葬儀に相続、頭の痛い事ばかり。でも大丈夫! こんな時は此方の商品!』
「な、何なのよ、アンタ!」
声の主たる女の姿は見えず、彼女のものであろう人影が壁面に沿って伸びているだけ。
まるでテレビショッピングの様なノリで何かを取り出したようにみえる女の影。その存在に女が異様な反応をしているのは、影が伸びている大元にはソファーしかないからだった。
そう、人が隠れられる筈もない場所から影が伸びていたのだ。
『私が何者か? 私は影女。本日はお客様に素晴らしい商品をお持ちしました!』
女の影は伸びる向きを変えて女の横を通り過ぎて階段の方向、母の死体の側へと移動すると掌から何かを落とす。
影から飛び出したのは毒々しい青紫色をした一束のお香。
『此方の商品の名前は反魂香。煙を吸わせればなんと死者が黄泉から返ってきて動き出す! 以上、皆様の悪夢にピッタリ届くパンパンショッピングでした!』
影女は最後までテレビショッピングのノリで語り終えると、ソファーの影の中に消えて行く。
まるで声がした時から全てが夢だったかのように思った女だが、お香は確かに母の死体の側に転がっていた。
「死者が蘇るお香……」
戯言や御伽噺、普通ならとても信じられずに鼻で笑う内容だが、それを言うのならば影女との会合自体が不可思議な話で、何より反魂香は確かに転がっていた。
女は母の死体を見る。首があり得ない角度で曲がっており、口は完全に開いていて、誰がどう見ても死んでいる。
自分のポケットからタバコと共にライターを取り出して火を付けて、普段通りにタバコが嫌いだった母の顔に紫煙を吹き掛けると反魂香に火を付けた。
思わず取り落とす程の悪臭が広がり、煙が周囲に纏わり付いた。
濡れた獣の皮と腐肉を混ぜ合わせたかの様な悪臭に女は両手で鼻を覆い、爪先が床の反魂香に軽くぶつかると煙は動きを変えた。
戸も窓も閉め切られて空気が澱む中、発生した気流が進む先は母の口の中。
悪臭だけは家の中にこびり付かせて煙は母の口の中に吸い込まれ、最後まで吸い込むと母は平然と起き上がる。
首の骨が折れた状態で平然と動く姿に女が恐怖を覚える中、母は自分の頭に両手を置いて一気に捻った。
ゴキゴキと嫌な音と共に母の首は元の状態となり、正気が失われた瞳は生者同様に動いている。
「お帰り。それじゃあ朝ごはんにしようかしら。シャワーでも浴びていなさい。その間に準備するわ」
母は女に普段通りの遠慮がちで機嫌を伺う様な笑みを向ける。
その姿は何一つ普段とは違わず見えた。
……少なくとも女はそんな風に自分に言い聞かせる。
違和感なんて何も覚えていない。自分は何にも気が付いてなんていないと……。
影女が消えて母が甦ってから家の中に妙な気配なんてしない、と。
見えないが巨大な何かが間近で顔を覗き込んでいる感じも無く、生臭い吐息も臭わず、床や壁を無数で何かが這い回る気配もしない。
「肩が重い気がするけれど寝不足ね、うん。誰もしがみ付いてなんていないわ」
この日以降も女と母の共同生活は続く。どれだけ女に罵倒や恨みの言葉を浴びせられても文句を言わない母との暮らしの中、家の中では見えない何かの気配は増え続けていた。
「所で商品って言ってたけれど代金は……?」
大の大人をおぶっているみたいに体が重くなって行く中、女は疑問を口にするも答えは出ない。
その答えである支払証明書が発送されて来たのは……。
修行とは常に体を苛め続ければ良いってもんじゃない。動いて動いて体を苛め抜いた後は飯を食って体を休める。それが強くなる為には必要な事だ。
まあ、要するに修行が休みの日ってのも当然に有る訳だ。
「ん……」
カーテンの隙間から差し込む日光に俺は頭から布団を被る事で惰眠を決行。今日は学校も休みなんだから普段よりも寝ていようが構わないからな。
静かな朝を全身全霊で堪能する事こそが贅沢……。
そして響くピンポン連打と窓を乱暴にガタガタと外から叩く音。
「俺の贅沢な時間が……」
このまま無視か? 無視で良いよな?
とは思うものの、十中八九碌でもない用事での来訪だろうという可能性があるから見捨てるのも気が引ける。
「スマホは電池切れで充電してないしな……」
ベッドに入ってからコンセントが抜けているのに気が付いたが、睡魔には抗えずにそのまま眠ってしまったのが昨日の俺だ。
なので用事の内容は客に会って直接聞くしかないのだと、諦めつつカーテンを開ければ八雲の家の飼い猫であるミケと視線が重なった。
「シャァアアアアッ!」
「だからお前達のその日課はなんなんだよ」
毎朝の恒例と化している俺への威嚇を終えたミケは当番は終えたとばかりに窓から離れて、玄関の方を顎でしゃくると塀を飛び越えて神社のは方へと戻って行った。
「あの猫達がチャイム鳴らす時は単発だから、これ鳴らしてるのはあの馬鹿で確定だな」
俺への威嚇は当番制なのか朝に別々に威嚇をしに来る事は無い。
そしてミケがわざわざ早く出ろって指示したって事は来客が誰かは決定か。
「無視……は駄目か」
手早く着替えつつ思い出すのはあの夜の事。人生を左右させる選択肢に俺は直答が出来なかった。
『まあ、じっくり考えてくれたまえ。私と伊弉諾家に可能な事なら何でも叶えよう』
霊給者ってのについては分かった、要するに今後は退魔士として小姫と本格的に組むって事で良いんだよな?
……キスを伴うのが俺の役割の行使っぽいって事でも。
退魔士として今までも活動して来たし、キス云々は忘れるとしても恋した相手と共に居る機会が増えるのは普通に願ったり叶ったりだったが、問題は彼女の家がどうも退魔士を生業にしているらしい事だ。
本格的に退魔士として生きて行くのか否か。俺以外の人達とも関わる人生を左右する問題に俺は此処数日悩み、最近ちょっと八雲の相手が雑になっていたかもとは思う。
まあ、あの馬鹿の相手なんて雑で良いんだがな、雑で。
「へいへい。ちょっと待ってろ。今出るからよ」
だが、ちょっとは相手をしてやっても良いか。
あんなんでも赤ん坊の頃からの腐れ縁で、彼奴の世話をしちゃいるが彼奴の親には世話になっているからな。
適当に着替えて急足で玄関に向かうんだが、扉を開けようとした所で動きを止める。
「妙だな」
八雲なら大声で呼ぶ筈だがそれは無く、扉の向こうからは二人の気配。
まあ、開ければ分かるだろう
「大和さん、大変っす! お見合い話が来たんっすよ!」
「大和、久々に相手をするヨロシ! 空手部の勧誘の為にも気合い入れるアル!」
結果、朝から五月蝿いのが二人居た。
大和の絵をメーカーで作成したけどダウンロードは別の機会だから次くらいに
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし