三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
『まあ、あたしゃこんな感じの化け物さね。どうだい? よーく分かっただろう?』
「分かったアル。ところでお前、医者の免許はちゃんと持てるカ? 足の縫合手術とか副作用に関するインフォームドコンセント? はちゃんとしてるんだろうナ?」
何か凄い話だたナ! このババアが話してくれた都市伝説だけれど、今まで両親が観ていたテレビをボケッと眺めていた記憶の中には存在しない話だし、あのまな板娘なら少し違ったバージョンも知てそうダ。
『いや、あたしゃ人間じゃないから法律とか言われてもねぇ』
「成る程ナ! お前、商売人としてはクソだナ! じゃあ、クーリングオフとかはどうなてるんダ?」
まあ、予測はしてたし、そもそも校内に無許可で来たぽいしナ!
それに法律関係だたら急に蹴り放たワタシもヤバいからセーフだたヨ。
『そういうのはやってないねぇ。売ったら売りっぱなしだよ』
クーリングオフも駄目カ。ナマモノだしナ。
「あれも無いこれも無い。そんな殿様商売で老後の暮らしが成り立つのカ?」
『そういうのも無いからねぇ。お嬢ちゃん、天然って言われないかい?』
「凄いアルな、お前! まさかエスパー……宇宙人アルな!」
『宇宙人とか常識で考えていないだろうさ。足売りババア、都市伝説の存在だって言ってるじゃないか』
「常識的に考えりゃ化け物もいないヨ。寧ろ宇宙人の方が可能性あるだロ」
『馬鹿だねぇ。目の前にいるから化け物はいるのさね』
最初は移植手術とかの仲介をする凄い医者っぽいのかと思ったし、もしくは食品の適温管理もちゃんとしていない三流の豚足専門店かと思ったんだが、クソみたいな行商人で正解だたヨ。
ワタシの勘違いに引いてた癖に、真面目に問いかけたらのらりくらりと躱わすだけで、商売人としての道徳も誇りも無いヨ。
ワタシも別に商売人の娘じゃないけれど、少し不愉快アルな。
大体、要らないなら貰うのどうヨ? ちり紙交換でもトイレットペーパーくれるのに無料で貰うの非常識ネ!
せめて足一本に匹敵する対価を払うべきなのに一方的に貰うとか押し付けるとか……ん?
ワタシは目の前のババアを観察するけれど、小汚い以外は普通のババアだたネ。
このババア、見てると目が腐りそうな二本の足で立ってるナ……。
『そんな事よりも足は要るのかい? 要らないのかい」
ちゃんと話聞いてたのに答える訳が無いのに阿呆ネ。阿呆のチャンピオンだヨ。
お前、落語で御隠居から教わった事を状況によって変えずにそのまま行う奴カ?
辞書で阿呆と調べたら類義語に足売りババアと出るのカ?
クイズ番組に出たらアメーバとビリ争いしそうだナ!
ワタシに顔を近寄らせて臭い口を開いて問い掛けるババアだけれど、化け物相手にそんな事をされようとも、殴ろうが蹴ろうが一切手応えの無い相手だろうと臆する気は無いヨ。
女も男も度胸が必要てことアル。
少し首を傾けて視線を向けるのはババアの下半身……正直見たくはないけどナ。
「ところで訊ねるけれど、お前はどうして足が二本なんダ?」
『ヒヒヒ? お嬢ちゃん、それがどうして……』
「いや、人に売るわりには自分は三本目の足を持ってないからナ」
わざわざ大荷物背負って行商やてるのに自分は三本目の足を使ていないのはおかしいヨ。
何を言っているんだ? とでも言いたそうな顔を向けられたけれど、自分では使っていない事を指摘したら動揺してるナ。
あれだけの大荷物なのに今まで出会た奴は誰も指摘しなかたか。
でも、警備会社の住宅が何の防犯対策もしてなかたり、車会社の奴が別の企業の車乗てるのと同じだし、不思議に感じたから訊ねたけど、ババアは考えた事も無いみたいだネ。
『ヒ…ヒヒ……』
「お前、足は要らないのカ?」
どうなんだろうナ? 普通に気になたから訊いたけれど、ババアは急に震え出した。
『あ、足は要らな……キィヤァアアアアアアアア!!』
気でも触れたみたいにブルブルと震え始めたかと思うと急に服を捲って手を入れて、錆の浮いた鉈を取り出すなり振り回す。
「危なっ!? てか、セコいヨ!?」
咄嗟に後ろに下がったけれど無茶苦茶に振り回す鉈が前髪の先を数本切り飛ばしタ。けれど、さっきワタシの蹴りとか一切通じて無かたよナ!?
こっちの物理攻撃無効なのに向こうは物理攻撃通すとかルール違反アルよ!
怖いとか危ないよりも理不尽な展開に腹が立つ。ワタシも殴れるならイーブンなのに、避けるだけとか……殴らせろヨ!
蹴って終われば一番楽なのに、本当にセコいナ。
『キヒヒヒヒヒ! 足! 足ぃ!』
こりゃ完全に狂たか? とワタシが数歩下がるとババアは焦点の合わない目を自分の右足に向けて、もしかしてと思たら鉈を振り下ろすんだけど、一度目じゃ肉に食い込むだけで足は断てない。
子供の足なら簡単に奪える話だたし、蹴りも効かないのに頑丈とか化け物ネ……化け物だたヨ。
『キィイイィイヤァアアアアアッ!!』
ガラスに爪を立てた時みたいな音に似た叫び声と共に何度も鉈が振り下ろされて、刃が完全に食い込んだ所でババアは指が切れるのも気にせずにガチッと掴んで、ワタシはその場からバイビー選択ネ。
「狂た奴に付き合い切れないヨ」
今までは多分逃げても無駄だし逃げなかたが、ここまで狂た相手、しかも化け物なら逃げるが勝ちヨ。
ワタシ、オカルトマニア違うからナ。
変になっても面倒な相手なの変わらないし、教卓を顔面に向かて蹴りつけたけど予想通りの結果で、命中したのに、まるで音が出ないし、微動だにしないババアの表面を滑り落ちたのを教室の外で確認したけれど、次の瞬間には教室から離れるべく急いダ。
「スタコラサッサー! あんなのの相手無理アルよ。直ぐに此処から出て授業に出たいけれど、ちょっと難しいアルな……ちぇすとー!」
ワタシが居るのは本当の学校と違う三階、本来は二階ネ。飛び降りて三点倒立で受け身取れば一階と変わらないからと窓に触れたけれど、ババア蹴りつけた時と同じ感覚に嫌な予感した。
物は試しと壁への飛び下痢の反動で天井まで飛び上がり、蹴り二発分の蹴り付けた勢い乗せた蹴りを繰り出したのにババアの時と同じ蹴れたけれど蹴れていない変な感覚だし、委員長が彼処まで女みたいなのと同程度に不思議だヨ!
「あーもー! 意味不明アルな!」
蹴りが命中した瞬間に勢いも反動も消えてモヤモヤ、此処までの訳分からん展開に蓄積されたイライラをぶつける為に地団駄踏もうとしたんだガ、嫌な予感で飛び退いタ。
耳に届いたのは小さくて多い変な音、それが徐々に近寄って来る。
ペタペタ ペタペタ ペタペタ ペタペタ
あのババアが追い掛けて来たのかと思いきや、追い掛けて来たのは別のもの。膝から上や根本付近とか切断面がバラバラの足が跳ねながらワタシに向かて来ていたんダ。
「グロいナ……」
断面は保存が悪いのか新鮮な肉の色をしてないし、時々飛び散る血の色も汚ならしい。
あのババア、本当に商売人としてクソだナ、クソに悪い位にクソだヨ。
「こんなの客に売ろうとか何を考えてル。だから自分は使わないのカ。謎は全部解けたナ」
直感だが、多分あの足も攻撃しても無駄だろうと階段を駆け降りようとしたけれど足が止まる。
昼間なのに暗くて見えない……のは別に良いヨ、問題はその先。
廊下は窓から差し込む赤茶色の光に照らされているのに、踊場から下は見えないし、そもそも空気の流れを肌で感じ取れないナ。
じゃあ、多分行き止まり、怯えて逃げる奴が覚悟決めて闇に飛び込んだら壁に激突鼻血ブーとか端から見てても笑え無いアルし、性格悪いナ、これ用意した奴。
ワタシが考えてたのは数秒程度、その間に足は更に距離を詰めて、教室から片足になったババアが腹から足を生やした状態でピョンピョン跳ねて来るし、流石のワタシも冷や汗ものだヨ。
「これは大和との初試合の時以来カ? 不味いネ、ちょっと」
練習相手に連れて来たけれど空手の経験は授業のみ、そんな相手でも武術の心得があるからと叩きのめそうとしたら負けそうになたからナ。
まさか高校入学直ぐに初敗北、初めてを奪われるとは思て無かたが、今回も少し焦るナ。
ワタシ目掛けて断面を向けながら大きく跳ねて来た足達に対し、咄嗟に防火扉のノブを掴んで壁から引張て盾にすれば衝撃が伝わてくる。パワーはそれほどでも無いカ?
「一緒にするのは大和に悪かたナ。こんなの屁でもないヨ! ……グロいけど」
防火扉の反対側を見れば岩に張り付くフジツボみたいに生の足が張り付いててバタバタ動こうとしてるけど、全然取れそうに無いし、完全に一緒になてるカ。
つまり断面に触れたら足が生える……やばイ!
追加で来た足……てか、あの風呂敷の内部にどれだけ入てたのヨ!? 凄い技術だし、本当に宇宙人じゃないのカ!?
迫る足の断面、回避は間に合いそうに無いからワタシは咄嗟に制服を強引に脱いで振り払う。
咄嗟に引き剥がしたからボタンが飛び散るし、制服の内側から外側に向かて血が滲んでて二度と着れそうにないナ。
「まあ、此処で何かあれば新品も着れそうにないけどナ!」
続けて向かて来たのも脱いだスカートを振り払って防ぐけれど、残りは肌着にブラとパンツと面積的に頼りないのに足は最初より少なくても頼りない。
両手に持つ制服とスカートにはジタバタ動く足が蠢いてグロい……ん?
「ホワッチャァアアアアアアアアッ!!」
ワタシは考えタ。ワタシの蹴り、化け物に効かない。なら、化け物を化け物で殴れば良くネ?
多分普通に持つの無駄、今は手に持つ服と一つになてル。だから殴れル!
足付きの服をブンブン振り回し、飛び掛かる足を次から次へと殴る殴る、殴りまくル!
「おりゃりゃりゃりゃ……っ!?」
次から次へと足を撥ね飛ばして残るは片足でグラグラ揺れるババアだけダ!
壁を蹴って上下逆の状態で更に天井を蹴った勢いに回転を加えての叩き付け。
でも、当たる瞬間に全身に走った悪寒に従い手を離す寸前、ワタシの視界は急速に動いタ。
「はあっ!? どうなってるヨ!?」
ワタシの体はほぼ水平に廊下の端に向かて飛んでいる。
手を離す寸前、服に着けた足を掴んだババアに投げられたんだと分かたが、片足片手で人をこの勢いで投げるとか化け物カ!?
化け物だたネ、そーいや。
「どうにか壁をタイミング良く叩いて勢いを……」
もう間近に迫る壁に向かて両手を振り上げて叩き付ける寸前、振り返たワタシの眼前にババアが居タ。
何時? どの瞬間二? 僅かに目を離しただけデ!?
『キヒヒヒヒヒャアアアアアアッ!』
化け物は化け物だから化け物で……と自分で意味が分からない事を考えつつもババアから視線を外さなイ。
目を瞑るとかは無しヨ。んな事して助かる訳も無いんだし、ワタシは最後の西後まで諦める気は無いからナ。
「身を捻って直撃を避けたら……何ダ!?」
歯を食い縛り痛みに耐える覚悟を決めた瞬間にワタシの横を青い泡と白い泡が通り過ぎ、青い泡がババアに触れた瞬間に弾けたと思うと触れた場所を次々に凍り付かせて、ワタシの目の前で白い泡が膨らんでぶつかったと思たらふんわりと受け止められタ。
上質なクッションみたいな泡に勢いを殺されて止またワタシはその場から数歩下がり、後ろに視線を向けると其処には……。
「あっ! あの不審なコスプレ女!」
「不審!?」
そう、ワタシの背後には何処の国のかは知らんが軍服姿の不審な女。ランニング中に大和の家の前で見掛けた厄介な迷惑ファン。
うーん、どうして此処に居るんダ?
「お前、転校生だたのカ? お互いに不運アルな」
こんな場所に迷い混んだのか連れて来られたのか知らないが、多分この女もババアに狙われたみたいだけれど、……自撮り棒掲げるとか余裕で羨ましいヨ。
「いえいえ、私は転校生じゃ……その勝手に校内に入ってきた不審者を見る目を向けないで下さい!? 私、貴女を助けに来たんですよ!? ……こほん。では、そんな訳で……」
不審者は咳払いするとスマホを少し手間取りながら操作して、カメラの部分をババアの方に向けると百均の商品みたいな安物のラッパの玩具を吹き出したけど、ラッパ吹くのが下手だからパフパフ鳴ったり鳴らなかったりの上にスマホ持つ手もブレブレだし、見ていて酔いそうな動画になるナ。
「画面の前の皆様、見えますか? 見えない人には御説明します。何とあの凍った場所にいるのは片足のお婆さんで周囲には足が壁や床にくっついているんです。どんなピンチもパパッと解決! ルサルカの妖精チャンネル~!」
何か始まったけれど・・・・・・相手したくないヨ。
ワタシが不審者が想像以上に異常で不審な奴だと認識した時、不意に視界の一部がぼやけたけれど、正確に言うなラ……。
「あれ? ババアの姿がボヤけて……」
流石にコスプレ女が不審だからババアの影が薄くなた、とかは有り得ないし、どうなてるのか目を擦ってもババアは薄くなるばかり。
「安心して下さい。貴女に存在を認識させるリソースを割く余裕がなくなっただけ。さあ、私の後ろに隠れて下さい」
「ところでその動画だけれど消すのを求めるヨ。ワタシ、肌着と下着だけだからナ」
だからカメラを向けるなと少し怒れば不審者は慌ててスマホを操作して削除画面も見せて来るし、これで安心ネ。
「半裸姿とかネットに流れたらお小遣い減らされる上に大和と委員長に弄られるからナ。ワタシもヌくのに使うなって弄るんだガ」
「抜く? 抜くって何をですか?」
「そりゃあ何ってナニ……いや、そもそもお前誰ダ?」
この状況で落ち着いてるから巻き込まれた奴じゃないみたいだが、さっきの泡を出したのがこの不審者……ルサルカ? だたとして、味方だ嬉しイ! とか考える馬鹿じゃないヨ。
「うっ! 不審者を見る目、この前補導された時に微妙霊感あるお巡りさんが心配しながら向けた奴!? 私、本当に 使いなのに!」
「……へぇ〜」
お巡りさんも大変だたろうナ。
でも、阿呆だけれど悪人とは違うぽいナ。
「じゃあワタシの命は預けるアル。不審者扱いして悪かたナ。……ところであの制服とスカートどうにかなるカ?」
指差した方にはババアに握り潰された上に投げられて折れた足が付いたままの制服が床に落ちている。
「えっと、あの妖魔を倒せば、多分?」
「なら任せるヨ。ジャージ忘れたし、このままじゃ大和か委員長の借りる必要があるからナ」
ところで此奴、日本語上手だナ!
応援待ってます
尚、勇さんはこれ以上
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし