三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
今年最後の更新
前回感想来なかったのは残念 今後怪談はマークでもつけます 分かりやすいから
なあ、アメリカの母さん。これって俺が悪いのか?
目の前にはほぼ全裸の上から俺の上着を羽織った事で辛うじて素肌を隠すルサルカさん(絶賛気絶中)。
尚、故意じゃないが上も下も間近で見ちまって責任を要求されたんだが、幾ら何でも理不尽じゃねえか?
『あら、放置しておきなさい。何かあれば腕の良い弁護士をダース単位で雇って逆に訴えてあげるわ。それと連絡するなら時差を考えなさい』
さて、心の中で母さんに相談する現実逃避は此処迄、状況整理に戻るとするか。
尚、母さんなら俺の想像通りの事を言う。絶対言う。
相談なら父さんの方が良いな。
いや、尻に敷かれているから絶対無理か。
「妖精使いは諸々の理由で箱入りの英才教育をされているからね。混乱しただけだし、放置を推奨するよ」
あの妖魔を倒したからか領域が徐々に崩れて元の校舎に戻り始めている最中、小姫が近寄って来たんだが、ニヤニヤと笑って何かを企んでいるのは間違い無いだろ。
その隣にリンマオが立っているんだが、半分寝てるみたいな様子で異常な事態に現れた俺に全く反応しない。
「リンマオは無事か?」
制服が少し雑な着方になっちゃいるが見た所怪我は無いらしい。
手遅れでないのは幸いって所か。
「ああ、殆ど下着姿だった以外は無事だけれど見ておきたかったかい? それなら着させるのは不粋だったみたいだね」
服を着させる? 成る程、一種の催眠状態って奴か。
ちょっと驚いたが、そりゃ妖魔から助けた相手全員が協力者になる訳じゃないんだし、情報規制の為ならそんな術も生み出されるか。
今まで次の日が試験だろうと下位妖魔やら餌になる底位の大量発生の処理を依頼されて来た身からすれば羨ましいっつーか、それがもう少し使い易い奴なら零課も楽になるんだろうな。
「そうだ! その妖精使いの裸を上書きする為に私のヌード画像を送ろうかい? 生で見せるのは……将来のお楽しみって所さ」
「いや、送らな……くて良い」
所で何を企んでるって? 俺を弄る材料を見つけたって事だよ。
此処で“良い”だけや“結構だ”なんて言ったらわざと曲解して来るんだろうなって思ったが、途中で詰まったの何か言われないだろうな……。
「其奴は友達だし、別に下着とか見てもな……」
リンマオは異性の友人だが、異性としては全く意識してないもんな。
気まずさすら感じないし、ぶっちゃけ興味ゼロだよ。
「ふふふ、それにしても妬かせるじゃないか。君に裸を見せるのは私だと思っていたんだがね。……さてと、あまりのんびりとはしていられないよ」
窓から外を見下ろせばゾロゾロと校舎から出て来る生徒や教師の姿、耳を傾けなくてもスピーカーから聞こえて来るのは合成音声の笑い声だ。
『ふはははは! 虎耳ニャンニャンマスク参上! 説明しよう! 虎耳ニャンニャンマスクとは天才ハッカーなヒーローである!』
突然学校のスピーカーにコンピューターをネットを通してハッキング、その他にも電子錠のロックがオンオフを繰り返し、これは一旦授業を中断しよう、そんな風になった所で抜け出して来たんだが……。
『転売ヤーには虎耳チョーップ! 地平の彼方にバイバイだー!』
高笑いと共にの名乗りの後はアニソンっぽい曲が始まり、五分程度のラジオドラマ風の話が流れて今は四話目の曲が始まった所だ。
「どんなテンションでこれを作ったんだろうね」
「徹夜三日目に作ったって言ってたな」
無駄に凝ってるって言うべきか、仕事に楽しみを求めなきゃやっていられない程の激務に同情すべきなのか、それは俺には分からない。
ただ、零課に入っても勇さんの所の支部には配属されたくないなあ、とは思うよ。
「……それでルサルカさんはどうする?」
「私が女子トイレに押し込んで制服を取り戻しておくよ。糸を使えば中から鍵も掛けられるし、自分でどうにかして貰おうよ。全裸だけれど」
「いや、全裸を放置は駄目だと思う。制服は返して貰わないといけないが、それで放置はちょっと……」
「別に知り合って間も無いし、私とすれば君を巡るライバルなんだから全裸で放置で良いと思うんだ。それに妖精使いなら飛べるし幻術も使えるんだから窓から出て行くよ、全裸で」
「……仕方無いか」
「放置するんだね? この全裸を」
「いや、違うからな?」
分かってて言ってるだろ!?
こらっ! 上着を捲ってチラチラ見せて来んな!
「俺達じゃどうにもならないんだから大人に頼ろうってk事(?)だよ」
ご足労願うのは恐縮だが、零課に回収して貰おう……。
「あっ、そうそう。私、オカ研に入部する事にしたから部長は頼むよ?」
「……は?」
え? いや、何でだ!?
取り敢えず来るまで全裸の部外者を放置出来ないって事でトイレに入れておく事になったんだが、何でもない事みたいに告げられた入部の知らせと俺へのお願い。
本当にどうしてだって思ったが、さっさと全裸のルサルカさんをトイレに入れてから俺達もさっさと避難場所に.……うん?
手の甲に走るチクって感じの弱い痛みに目をやれば小姫の針が刺さっている。
「君は気にするだろうしサービスだよ。ほら、行こうか」
所で上着を返して貰うのは良いんだが、直前までルサルカさんが着ていたんだよな、全裸で。
女子トイレにルサルカさんを担いで行った小姫が戻って来た時に上着を受け取ったんだが、それがちょっと気になった。
「ほらほら。さっさと上着を羽織って避難しよう。此方の先輩の術も直前で解かないとね」
ちょっとだけ恥ずかしいと思いながらも上着を脱ぐ理由が無かったので羽織るんだけど……絶対に分かってて言ってるよな?
まあ、その後は何食わぬ顔で皆と合流、もう異常は無いって事だが
「オカ研の部長かあ。あんまり流されない様にな? こう言うにもアレだけど利用価値が色々と高いんだから。にしてもオカ研ねぇ」
オカルト研究会、略してオカ研の立ち上げに必要な手続きを部長としてしに行ったんだが、担当の先生が最初にしたのは渋そうな顔だった。
別に夜の校舎で検証するとかもせず、ちゃんと下校時刻は守るし夜間の外出は勿論の事、調査の名目で私有地に入ったりもしない。
後は俺がそれなりに信用して貰っているからか部の設立申請はすんなりと通ったんだが、どうも先生の反応が妙だな。
俺への忠告っぽい奴は親や伯父さんが金持ちだからってのがあるんだろうが。
「餓鬼の頃からの付き合いの馬鹿と中学から面倒を見ている二人のお守りの延長ですよ。……それにしてもオカ研って何かあったんですか?」
「……ちょっと馬鹿馬鹿しいっつーか、それこそオカルト関連の話になるんだが、どの時代でもオカルト好きな生徒は居るし、オカ研も何度も設立されているんだよ」
「何度も……?」
声を潜めて告げられた事だが、どうも妙な話だが、何度も設立?
それだけなら分かる。ブームが過ぎて誰も興味を持たずに廃部、そしてブームが再燃したから創部だって所だろうが、オカルト染みた話になる、か。
……あー、大体予想出来るな。
「何度も創部しては廃部になっているんだが、失踪事件やら不審死やらが起きて解散って流れらしいぞ。どうせ廃屋やらに忍び込んで崩落事故に巻き込まれたりとかを尾鰭が付いて怪談として、ってパターンだろうけれどな。まあ、お前は強いだろうが学生なんだ。無茶はするなよ?」
「当然です。寧ろ無茶する馬鹿の見張りですね」
当然、其所には何かあった時の責任も存在する。
俺は別にオカルトに興味が有る訳じゃねぇが、あの三馬鹿娘は大好きな上にブレーキ役の筈の泉も橋本の意思を最優先させる以上は俺がブレーキになるしかないんだよな。
正直、小姫の奴が入部しないなら俺も部長になるの引き受け無かったし、休日に趣味で活動するのに付き合ったりする程度だったんだが……。
「何かあったら学校の、つまり教師の俺の将来に関わるし、転勤とかしてからなら何かあっても良いから、その時までは何とかしてくれ」
おい、教師!
しっかし、本当にオカルト研究会なんて入ったんだ?
自分から興味本位で関わる奴とか嫌いだって話だったのによ.……:。
申請書類を出して判子貰ったら終わりだったってのに酷く疲れた気分になる中、窓を連続で叩く小さな音が聞こえる。
「じゃあ、八雲達に許可出たって伝えて来ます」
「おーう。女子生徒ばっかりだし、お前抜きで人気の無い所に行ったりしない様にな。……にしても今日は晴れる筈じゃ無かったか?」
「キツく言っておきますよ」
それと天気予報は見忘れたので、と伝えてから職員室を出るが、未だ残っている生徒達も先生同様に空を見上げて不満顔。
ポツポツと窓ガラスを濡らしていただけの小雨は勢いを増してザーザーと降り注ぐ大雨になって、少し前までの快晴の青空は何処から来たのか鉛色の雲に覆われているんだ。
「普通の雨じゃ……」
「大和さん! 怪奇現象っすよ! 怪奇現象!!」
「五月蝿え。ボリューム落とせ、馬鹿」
ねえな、と口にしようとしながら一年の教室のドアを開ければ大声と共に寄って来る八雲。
耳の指突っ込んで耳栓にしたってのにキンキンしやがるし、残ってた他の生徒が迷惑するだろうが。
テンションが上がったせいで他の生徒の前だってのに抱き付こうとして来たので額を掴んで突っ走流が、高校になってもマジで変わらねえな、この馬鹿は!
「大和さん、折角の怪奇現象だってのにノリが悪いっす!」
「黙れ。大勢の前でテメーに抱き付かれるとか耐えられるかてんだ」
俺に押さえ込まれても動きを止めずに両手を広げて足踏みする八雲から視線を外して教室内を見てみれば特に動揺を見せる奴は居ない。
精々が最初の大声にビックリした程度だろう。
.……マジか。
つまり目の前の馬鹿の奇行は既にクラスメイトにはなれっこって事になってしまう。
入学してから短期間なのに……:。
「橋本、泉。この馬鹿を何とか抑え込んでおいてくれっつったろ?」
「おいおい、八雲さんをどうにか出来るのは大和さんだけさ。僕は見ている方が面白……見ているだけしか出来ないからね」
「私達ではとてもとても。それよりも空を見て下さい。降水確率0%だったのに大雨ですよ。小雨なら兎も角、大雨ですから」
同じクラスになったんだし、中学からの付き合いの二人に期待した俺が馬鹿だった。
忘れていたよ、この二人も馬鹿だって。
「所で四人目の部員は……何だ、その顔は?」
え? 三人揃って何をニヤニヤしているんだ?
「ふっふっふっ! 誤魔化しても全部知ってるっすよ! あの子、大和さんのファンっすね! 近くで行動したいって言ってたっす!」
「オカルト知識も豊富だったし、僕に反対する理由も無いしさ。それにしてもモテるじゃないか」
「家の中の事も話していたし、既に招待した事があるだなんて驚きよ。大和さん、あんな感じの子が好みなのね。……成る程」
俺が状況をのみ込めない間も三人は会話を続けるんだが、泉の視線は未だに俺に向かって突進を押さえられ続けている八雲の胸に向けられている。
うん、まあ、正反対だよな、この馬鹿とは。
それにしても分からない。どうして小姫はわざわざ三人に接触したんだ?
此処で首を捻って考えても彼奴の考えが分かる筈も無い。
何せ出会って一ヵ月も経っていない浅い関係、多少一緒に死線を潜ろうがそれは変わらないからな。
深い理由なのか浅い理由なのかは分からないが、聞いて教えてくれりゃ良いし、入部の報告の時に教えて貰えていないんだから教えて貰えないかも知れないが、それも彼女の選択だと納得して……うん?
何か忘れている様な気がして外を見れば雨は更に勢いを増しているし、八雲の奇行に驚きもしないクラスメイト達の数人が大雨注意報が出ていると驚いている。
「洗濯物を干してたんだったな、そーいや」
今日は一日中快晴だと朝の内に干したのを思い出すが、この雨じゃ無駄になったな。
どうせ突発的な大雨だし、奇跡的にお玉かドロシーが取り込んでいてくれていても洗い直しだ。
「俺は折り畳み傘を持ってるが、お前達はどうするんだ?」
「僕はメイドの誰かにお迎えを頼むとするよ」
「私も今日は佳奈の家に泊まる予定だったし、大丈夫ですよ」
「じゃあ自分は大和さんの傘に入れて貰うっす」
「せめて入れて下さい位言えねぇのか、テメーは」
そしていい加減に諦めて止まれ。何で今だに動き続けてるんだよ。
妖魔とは一種の災害であるとする退魔士の一族は多い。歴史が浅い一族や突発的に力に目覚めた者達は人外に立ち向かう御伽噺の主人公だと自己評価をしているが、長く妖魔に関わって来た一族程妖魔の理不尽さや脅威、そして関わってしまう事が事故の一種だと認識しているのだ。
だから妖魔全てを滅しようとか全ての人を妖魔から守ろうとか馬鹿の考えだと思っているし、自分から関わる一般人は津波が起きそうな海に嬉々として出る馬鹿サーファーみたいな認識だ。
実在する事への認識の有無は無関係、どうして自分から喜んで危険に突っ込む馬鹿の為に危険を犯す必要が有るのだと。
そんな名門一族だからこそ一部の妖魔の居場所や活動の活発化を認識しても討伐には動かず、寧ろ別件で付近に行くのを取り止めるし、派遣された地の付近ならば外出自粛や避難勧告を出す程。
「ああ、不愉快だ不愉快だ。人間の暮らす地はどうしてこうも不愉快なのだ」
大雨がこの街に降る直前、この男が街に向かって歩いていた。
男が街に入った瞬間、降っても小雨程度の筈が災害級になり得る降雨量で降り出した。
誰に話し掛ける訳でもなく、人相の悪い大男は不愉快さを口にしながら歩き続ける。
目的地は存在しない。通り道にこの街があっただけで、台風や大寒波に意思がないのと同じで其所に存在して動くだけの存在。
ただ、妖魔としての名と姿と自我を得ただけの存在はこのまま街から去って行き、不意に己の領域へと姿を消して何時か何処かに現れる。
名を
一人前として認められる為に準備を整えた上での単独討伐を条件とする中位の更に上、歴史的な価値を持つ文献や古来から広まった伝承に登場する存在で有る上位。
更にその上である
雨虎が通った土地に降り注ぐ雨は下位や底位を全て飲み込み糧へとした。
後に残ったのは弱い妖魔が消えた土地。霊力の空白地帯になった土地。
水が高い場所から低い場所に流れる様に他所から何かが流れ込む土地だ。
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし