三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
あの突然の大雨も帰宅途中にすっかり止んで、それどころか水溜まりすら見掛けず枝葉に水滴すら残っちゃいない。
そもそも降る筈の無かった大雨だってのに、余計に妙なのは雨が降ったとは思えない光景を疑問に思ってる様子が八雲の奴には無かった事だ。
「そんな日もあるんじゃないっすか?」
この通り、雨が降った事は分かっちゃいたのに、雨が降ってないみたいな光景は見事にスルー、有り得ないよな?
うーん、馬鹿だからか? 俺の認識以上に馬鹿だから疑問に思えなかったのか?
質問する相手を間違えた可能性が浮上したが、そもそも八雲に聞いた俺も馬鹿だったのかもな。
どう考えても訊く相手を間違えた、そんなの入ったのは考えてみりゃ分かる事なんだよ、どう考えても異変なんだから。
日差しが強いなら雨水が蒸発してしまうのは分かるが、溝や川を見れば雨の勢いが凄かったのに葉っぱに水滴すら残っていないって事は……妖魔の仕業か?
だとすれば……。
「あのー、大和さん。ちょっとだけお願いが有るんっすが……」
訊くべき相手は家に居る。もう直ぐ神社だし、さっさと帰ろうと考えた時に不意に袖が引っ張られる。
上目使いで少し何かを言いたそうで言いにくそうにしている顔を見れば何を頼みたいのか分かるんだよな。
嫌だけれど! 分かってしまうんだよなあ!
「何教科だ?」
どうせ小テストの結果が最悪だったせいで再テストって所だろう?
寧ろそれ以外に何を頼むんだって話だよな。
「わわっ!? 流石っすね! 五教科中四教科っす」
ほらな、向こうも俺にはあれだけで通じるって分かってるんだから嫌になるぜ。
それと馬鹿、おい馬鹿、五教科中一教科は再テストにならなかったからってまっ平らの胸を張るんじゃねえ。
何を自信満々にしてるんだよと思うと頭痛を覚えるが、テスト前に散々勉強を見てやったのに本当に何をやってやがるんだよ、本当に!
取り敢えず赤点の範囲だろうと割りと点数が良い教科(誤差の範囲だろうが)を中心に勉強して、苦手科目(全部苦手だが)は再々テストの時に頑張るって感じか?
他にやるべき事が沢山有るってのに更に増えた厄介な案件、労力だけなら一番かも知れない其について考えただけで心労が半端ねぇ……。
「取り敢えずテストまで満足に眠れると思うなよ」
橋本と泉の二人は大丈夫か? どうせなら二人共巻き込んで……。
「あっ、ミケにブチ! お迎えっすか!」
「「ニャーン!」」
「おい、聞いてるのかよ? ……はぁ」
自分から勉強の話を切り出した癖に、飼い猫二匹が駆け寄って来るのを見た途端に全部忘れた感じで二匹を抱っこして両頬に頬擦りからの舐め回しを受けてやがる。
「フニャア」
「ナー」
「あはははは。もうお婆ちゃん猫なのに甘えん坊さんっすね。じゃあ、早速遊んであげるっすよ」
「いや、勉強はどーすんだよ」
「勉…強……?」
お、おい、マジか!?
何の事だが忘れましたって様子の八雲、その肩に顎を乗せて俺を睨む二匹。さっきの甘える時とは正反対の凶悪顔。
同じ猫かよ、本当に……。
「再テスト受けるんだろうが、再テスト」
「はっ! もっちゃり忘れてたっす!」
「この鳥頭が……」
もっちゃりってなんだよ、もっちゃりって。
「もっちゃり、とは普通言わねえだろ」
「やべっ。うっちゃりの間違いだったっす」
「それは相撲の技だ。……成る程、だから最近腹に肉を付けてるのか。胸には全く、本っ当に全く付かないのにな」
「殴って良いっすか!? マジで殴って良いっすよね!?」
目の前の馬鹿を高校に進学させる為に散々苦労したが、それと今後を考えたら頭が痛くなりそうだ。
だから少し位弄っても良いだろ。
「取り敢えずテスト範囲の内容を勉強用のノートに清書、数学は問題全部解け。八時までに終わらせてないと……一ヵ月は茶菓子抜きだからな」
「ぴぇっ!?」
言っておくが脅しじゃなくて本気、この件に関しては八雲の両親やら巫女さんやらを味方に出来る自信が有る。
伊達にガキの頃からの付き合いじゃないんだよ、とショックで固まる八雲を放置して家の方に向かうが、さてさて、絶対に無理だろうが何処までなら許容範囲にしてやるべきか……。
「……そーいや猫達なら知ってるか?」
門を曲がった所で思い付いたが、あの猫達なら雨について何か知っているかもな。
お玉にも聞こうと思うが、情報源は多い方が良いだろうし。
「その辺、どうなんだ?」
そんな風に思っていたら不意に頭に猫が飛び乗る。
前後左右に体を動かして首に負荷を掛けようとするのも気にせずに見上げれば頭からはみ出した前足が見えた。
「フシャァアアアアアアアッ!」
「ありゃりゃ」
そして返答代わりの威嚇、朝以外にわざわざ威嚇をしに来るのも珍しい。
どうやら今日は朝だけの気分じゃなかったみたいだな。
今日の威嚇登板はクロネコのクロ、わざわざ俺の頭に飛び乗りカギ尻尾で後頭部をペチペチ叩きながら唸っているが、雨について聞いてみても唸るだけで回答は無し。
此奴等、霊力を分け与えられた存在だとか聞いたし、普通の猫じゃないと聞いていたんだが、知能が高いだけで喋れないのか。
「ニャニャニャ!」
「叩くな叩くな」
威嚇が終われば頭の上で寝転がり、額にペチペチ猫パンチ。
取り敢えず叩いておくかって感じの惰性に満ちたちょっかい以外は何も無し。
つまり俺は頭の上に猫を乗せて一方的に話し掛けていると。
目付き悪い大男だし、端から見ればヤバい奴だ。
「喋れると思ってたんだがな」
「フニャン」
クロは塀の上スレスレまで伸びた枝の下まで来ると頭から肩に飛び移ると続いて枝に飛び乗るんだが、どうしてわざわざ頭から肩に移動したのかっつーと、俺の頬を後ろ脚で蹴り飛ばす為だ。
あの猫、俺の顔を蹴って枝まで行きやがった。
「可愛げの無い奴だ。本当にどうして俺にだけ……」
これで見境無しに威嚇すんなら警戒心が強い猫って事で別に良いんだが、俺以外には本当に人懐っこいんだからな、神社の猫共。
喉をゴロゴロ鳴らして頬をスリスリ、座っていたら膝の上で寝転がる。
但し俺以外! それと猫を嫌いな人には基本的に近寄らない。
猫達が嫌ってる俺には威嚇の為に近寄って来るんだが。
「あれか? 猫共に霊力を与えているって奴が俺を嫌ってるんじゃねぇだろうな。餓鬼の頃からなんだし、怪我とかをさせられる程じゃ無いんだが……」
まあ、零課も小姫も放置しているんだし、毎朝猫に威嚇される程度で腹を立てるのも妙な話だとは思うし、俺も放置で良いんだろう。
八雲の奴が普通に暮らせているんだ、下手に手を出して藪蛇ってのも困るか。
俺の軽率な行動で彼奴が困るのは嫌だ。
俺自身はあの馬鹿の軽率な行動で迷惑ばっかだが、ちゃんと俺は叱ってるし、どうとでもなるんだよ。
「まあ、猫の態度からして八雲の敵じゃないから別に気にしないでも良いんだが……」
それでも少しモニョモニョするな。
明日小姫にでもその辺について少し聞くだけ訊いてみるか、と思いつつも角を曲がれば俺の家が見えてくる。
「……うん? 誰かが家の前に……」
誰か来るって話は聞いちゃいないが門の前の此処から微妙に死角になる位置に誰かが立っていた。
多分二人組、セールスって事は無いだろうし、雨も止んだから雨宿りでも無し。
母さんが新しくコレクションに加えた人形でも送ってきたが、それが大量で困ってるとかか?
足早に門に向かえば相手の姿を確かめるよりも前に向こうが俺に気が付いて声を掛けて来た。
「やあ。悪いんだけれど家に上げてはくれないかい? このままでは風邪を引いてしまいそうだ……」
「あ、あの……。私も宜しければ家に……」
家の前に居たのはびしょ濡れで髪からは水滴を垂らし、服は濡れて張り付いたせいで体のラインが丸見え……町の風景とは真逆な二人が立っていた。
「と、取り敢えず入ってくれ。シャワーなら貸すから」
直視は一瞬、その一瞬で目に焼き付けたが、それ以上の視線を向けるのは到底無理だ。
只でさえ濡れた服が体に張り付いてラインをハッキリとさせている上に、髪から垂れる雫は当然の様に胸の上に落ちて、そのまま斜面に沿って中央へと溜まる。
うん、要するに胸の谷間に水が溜まって余計に透けて見えるせいで薄っすらとピンク色が……:。
ルサルカさんは出て来た時に速攻で視線を外したし、全っく、覚えちゃいない全裸が頭に浮かぶ事も無い。
二人に背を向けて門を開け、庭を抜けて玄関の鍵を開けば恭しく跪いたお玉とドロシーが出迎えた。
「お帰りなさいませ、主殿」
「御許可を頂いて居ませんが故にお待たせしましたが、お風呂のご用意をしております」
笑みを浮かべながらタオルを渡されるが、洗い立ては片方だけで、もう片方は玄関近くの洗面台に置いてた奴だろう。
何度見ても慣れない来客用の顔、但し俺にだけ見える僅か一瞬、目は笑っていない。
客を招くなって事だよな……。
「……悪いな。手間を取らせて」
いや、本当にそうだ。
既に遠い過去だろうと二人が文字通りに姫様だったのは俺も知る事実。
それが人にやらせていた小間使いみたいな事を友達の為にとやってくれている。
ちゃんと労う必要が有るよなあ。
多分俺が折り畳み傘を持っているか知らなかったから急な雨に慌てて風呂と洗い立てのタオルを用意してくれたんだろう。
ほんのり温かいからアイロンでも使ってくれたんだろうな。
そんな感謝をしつつリビングで正座中の俺、目の前には腕組みで見下ろす不機嫌そうなお玉の姿だ。
「この拙僧無しめが。親が不在だからと女を平気で連れ込みおって。大体、貴様の顔を立てて従者の演技をしてやっているのだから遠慮を知れ
」
矢張りと言うか何と言うか、二人を家に招き入れたの気に入らないんだな。
不機嫌を隠そうともせず、背後には青い炎に包まれた骸骨は浮かんで歯をカタカタ鳴らしている。
これは本気で怒ってる状態、不機嫌になりがちなお玉だが、此処迄は滅多に怒らないから相当だ。
いやまあ、直ぐに発散させているからボルテージが全然溜まらないってのも有るんだけれど。
「待ってくれ。流石に濡れ鼠で放置は出来ないだろう?」
人として駄目だろ、流石に!
「我が人間だった頃は急な雨で濡れるなどザラであった。それに退魔士であらば体は否が応でも頑丈になる。……故にだ。この家は今や我にとっても家であるのを忘れるとは何事かと……」
あっ、そーいや徳川が天下納めてた時代の生まれだったな、それに今は妖魔になってるから余計に価値観が違うし。
事実、俺の反論すら一切受け付けない様子で正座した足を踏み付けてじわじわと力を込めて来ている。
着物の裾から出て来た足は太股の半分位まで間近で見えているし、こんな時じゃなければ目の保養なんだがな。
「おい、聞いているのか? よもや我の話を聞かずに考え事などしてはおらぬよな?」
「あ、ああ……」
当然、そんな考えを悟られれば罵倒の嵐に折檻が加わるんだ、表情には出さない。
あからさまに目を逸らせば怒るだろうし、直視はせずに視界の端に捉える感じにしていた時、不意にお玉の後ろから伸びる腕。
「ほれ。お説教はそろそろ終いで良かろう?」
それがお玉の着物の裾を掴んでペロリと捲ったのは、俺が腕に釣られて視線を向けた瞬間。
「……ひゃ?」
咄嗟に下を向いたけれど至近距離で見えてしまった。
それはもうしっかりと目に焼き付けた。
それにちょっと可愛らしい声が漏れたのも聞こえた。
直ぐに裾は手で押さえられたが、伯父さんが送って来た画像の人よりちゃんと手入れをした……。
「お、お玉……?」
やばい! やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいっ!?
次の瞬間に蹴りの一発でも来るかと思って身構え、一向に来ない。
何か顔を真っ赤に染めた状態で固まっていて、その脇腹を後ろから伸びた腕が掴んで抱えて横に退かす。
「目の保養であったであろう? 余も小振りで形の良い尻を見れて満足である」
「おい、ドロシィイイイイイイイイッ!?」
何やってるんだ? 本当に何やってるんだ!?
お玉を退かした犯人にして裾を捲った主犯のドロシーはニコニコと笑みを浮かべて満足げに頷きながら俺の両肩に手を置いた。
この後確実にお玉がブチ切れるし、俺も絶対に怒られるよな!?
俺、悪くないのに目の保養だったからって粛正されるよな!?
「別に焦るほどでもない。余は慣れておるし、お主とてお玉とは接吻を交わしたのであろう? 次の段階だと思えば問題無いぞ?」
「問題だらけだし、色々とすっ飛ばしてるよな? そしてテメーみたいに俺は慣れる程に怒られてねぇんだよ」
一緒にすんな、一緒に! って、おい!? どうして俺に顔を近付けるんだ!?
「あの小娘だけでなくお玉とも接吻を交わしたのだし、次は余の番であろう? って言うか! 余だけ仲間外れは許さん! チューせよ、チュー!」
肩はガッチリと掴まれ逃げられず、お玉の顔は獲物を甚振る獣みたいにゆっくりと近付いて直前で止まる。
「そろそろ小娘共が湯浴みを終える頃。その前に接吻の更に先……」
「この痴れ者がっ!」
「までっ!?」
俺は見た。修羅みたいな顔をしたお玉が裾が捲れるのも気にせずにドロシーの後頭部に蹴りを叩き込んだのを。
俺に夢中になってたから不意打ちに反応出来ずに蹴り飛ばされるドロシー、当然くちびる当然唇が触れ、ついでに歯と歯がぶつかってガチって音がした。
「にゃにをするか、お玉! 余と大和の記念すべき最初の接吻ぞ! それを台無しにしおって!」
「人の恥部を勝手に晒し、あまつさえ尻を撫でた貴様が言うか? 前から思っていたのだが、一度勝負を……ちっ」
睨み合う二人、鼻が折れたのを押さえて悶絶する俺。
一触即発の空気の中、風呂場の扉が開く音が聞こえた。
「ふぅ。悪いね、お風呂まで使わせて貰ってさ。本来は君が入る予定だったのにさ」
「俺は折り畳み傘を鞄の奥に仕舞い込んでいたから濡れなかった。かなり前に入れたっきりだから偶々沸かしていてくれていただけだし気にするな」
足を踏み付けて来ていた二人は俺の背後に従者みたいに控え、小姫達が扉を開けて入って来た時にはさっきまでが嘘みたいに大人しい。
鼻も一瞬でドロシーが治して痛みも消えていた。
「……はぁ」
所でソファーの陰に隠れて小突き合うの止めてくれねぇかな……。
最近はエレベーター 電子ロック 水道 この三つが短期間でトラブル
ホラー書いてホラー動画見てるから気になるなあ
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